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収蔵標本解説


 第32号(2003年 12月1日発行)

展示の毛について

山崎 英雄
元札幌医科大学生物学教授

 "Yetiの頭皮"と称されるものが、ネパール奥地の僧院に秘蔵されている(図1)。40数年前、私はこの"頭皮"から、数本の毛の提供を受けた。 その一部が展示の毛(標本館に展示)である。注1)
この"頭皮"は、1953年、英国の登山隊により見出され、初めて西欧社会に知らされた。それ以後、各国の登山隊、調査隊、また日本の調査隊 注2)などにより、"頭皮"やその毛が精査されたが、結論が出ぬまま、今日に至っている。我々が行った調査の結果は、学会 注3)で発表し、その概要は標本館展示のコピーを参照されたい。

 "Yeti"の正体は、有名なシプトンの写真(図2)や、中国から発見された大きな臼歯の化石 注4)の存在などから、化石類人猿生残説をとなえる人類学者もいるが、まだ有力な説はない。

 しかし登山家達に発見されている雪上に残された不思議な足跡(図3)は、明らかに動物の存在を示す証拠であろう。これらが皆同じ動物の足跡なのか、"頭皮"の主と関係があるか、または、未知の動物のものか、これらの疑問は未解決のままである。

 展示の標本は、当時光顕レベルでの調査を行ったが、最近の進歩した検査法を用いるならば、何らかの新しい所見が出るかも知れない。その結果、資料が単なる既存の動物のものとの結果が出れば、それはそれで良い。謎の一つが解けたことになるのである。しかし、私は謎が解けても、現地の僧院に、"Yetiの頭皮"として、そのまま奥深く残しておきたいと思う。(収蔵番号:SPE-YET-01.02.)

図1
パンボチエ寺院の"頭皮". 頭に被れる大きさで縫目はない.(筆者撮影)
図2
シプトン氏撮影の足跡 (1951年 メンルン氷河). 左はピッケル.(約30cm)
図3

足跡の一例. マナスル先遣隊(1956年) 橋本誠二、北大理学部教授撮影 (マナスル東尾根,モレーン上).彼は多くの真新しい足跡を、決定的証拠として数本のフィルムに収めたはずであったが、殆どが二重写しとなり、これは残された貴重な写真の1枚.

 

"Yeti(雪男)の頭皮"と言われるものより採取した毛
(A hair of the scalp of what they suppose a "Yeti")

1959年、日本雪男学術探検隊(小川鼎三隊長<東大教授・解剖学>)により 採取されたもの。
東大解剖学教室及び、東京上野動物園に於いて、肉眼的、組織学的に他の動物と比較調査したが動物名を確定するに至らなかった。

ネパール、ソロ・クンプ地区、パンボチエ寺院所蔵(SPE-BIO-YET-01)

アリストフォトによる拡大画像
ネパール、ソロ・クンプ地区、クムジュン寺院所蔵(SPE-BIO-YET-02)

アリストフォトによる拡大画像

 


脚注
注1)収納場所が不明であったが、最近見つかったので標本館に展示した.
注2)日本雪男学術調査隊、東大医学部小川鼎三教授他5名(1959年).
注3)日本人類学会・日本民族学協会連合大会(1960年)で、小川教授が報告した.
注4)フォン・ケーニヒスワルトが香港の薬屋で巨大な大臼歯を発見し、ギガントピテクス・ブラッキと名付けた(1935年). その後、中国の学者により数10本の歯と、下顎骨も発見された.

 

 


 

 

 

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