神経病理(笠井,2002)
□
脳血管疾患 … 脳梗塞,脳出血,クモ膜下出血
□
脳腫瘍 … @ glioma
& neuroma
A Schwannoma
B Meningioma
C Lymphoma
D Germinoma
E Craniopharyngioma
□ 感染症 … 細菌感染症,ウイルス感染症,真菌感染症,Prion病…
□ ![]()
変性疾患 … 大脳皮質変性症 Tauopathies
錐体外路変性症 Synucleinopathies
脊髄小脳変性症 Polyglutamine
disease(Triplet repeat disease)
Motor neuron disease
□ 脱髄疾患
脳血管疾患は日本人の三大死因のひとつで第3位
分類上 脳梗塞 , 脳出血 , クモ膜下出血
頻度 脳梗塞 > 脳出血 > クモ膜下出血
脳循環障害で 「急性運動麻痺や意識障害が起こる状態」を脳卒中という
↑
このような症状が起きるのは,脳循環血流量は非常に多く(心拍出量の15%を占める),
・ 酸素消費量が多く(全身酸素消費の20%)
・ エネルギー源を血中グルコースの酸化に頼る,ため。
だから脳循環疾患の治療には,酸素の確保とブドウ糖輸液点滴が重要
脳梗塞の機序は@脳血栓症やA脳塞栓症により,血管がつまってその下流領域が脳虚血状態となることによる。
@脳血栓症は動脈硬化性である場合が多くそのため老人に多いが,A脳塞栓症は心臓や血管に基礎疾患があれば若い人でも起こりやすい
脳虚血状態が起こると 脳虚血細胞の変化
→ 組織修復プログラムの進行
→ 活性酸素の過剰産生
と進み,いわゆる再灌流障害が問題となる。
@脳血栓症 →動脈硬化性変化
1)アテローム血栓性梗塞と,2)ラクナ梗塞に分けられる。
1)アテローム血栓性梗塞
動脈硬化性。太い主管動脈に現れる。(中大脳動脈や内頸動脈,後大脳動脈に多い)
2)ラクナ梗塞
細い動脈の動脈硬化により,脳の深部に小さな梗塞ができる状態。老人に多く症状は比較的軽い
A脳塞栓症 →出血性梗塞を起こすことがある
3)心塞栓性梗塞
心内血栓による脳梗塞
脳実質内に出血がおき,脳内に貯溜して固まり血腫ができる。血腫が周囲を圧迫するなどして循環不全が起き,脳浮腫が発生する。
脳浮腫により頭蓋内容積が増加し頭蓋内圧が上昇すると,脳ヘルニアを起こしたり,脳浮腫自体がさらに循環不全を悪化させ脳幹2次性出血を起こしたりして,呼吸中枢を圧迫するなど,脳機能不全が発生することが問題となる。
また脳出血は頭蓋内圧亢進の機序により脳全体に影響を与え易く,一般に脳梗塞より予後は悪い。
* 頭蓋内容積増加→頭蓋内圧を上昇させるものとしては
@Space Occupying Lesion (SOL) …脳腫瘍,脳膿瘍,血腫
A脳浮腫←循環不全
B外傷
などがあり,これらは複合して起こりうる
* 脳ヘルニアが起こりやすい部位にはいくつかあり
@
帯状回ヘルニア
A 側頭鈎ヘルニア
B 扁桃ヘルニア
などが代表的脳ヘルニアとして挙げられる。
B扁桃ヘルニアは特に重要で,小脳扁桃が大後頭孔から下方へ飛び出て,
延髄を圧迫し呼吸困難を引き起こすことがある。
脳出血が起こりやすい4つの部位として
@ 被殻出血 (50-60%)
A 視床出血 (20-30%)
B 橋出血 (10%)
C 小脳出血 (10%)
が挙げられる。
脳出血は大脳基底核など脳の内側で起こりやすいが
@被殻出血は比較的外側で起こるので外側型出血と呼ばれ,手術は一応可。
A視床出血は比較的内側で起こるので内側型出血と呼ばれ,手術は不可
内側にあり脳室に近いA視床出血やB橋出血では血腫が脳室へと穿破し,脳室出血を起こすことがあるが
脳室出血は予後不良。手術も不可である。
脳出血を原因から分類すると
@ 高血圧性脳出血:最も多い
A 血液疾患(出血傾向があるもの)
B 外傷
C Cerebral Amyloid Angiopathy (CAA)
などが挙げられる。@やCは脳血管が脆くなって血管が破裂するもの。
@ 高血圧性脳出血の機序
*高血圧がかかることにより血性蛋白が漏出し小動脈の中膜壊死angionecrosisが起こる。(顕微鏡的変化)
血管壁が脆くなるので微小動脈瘤が形成され,それが破裂することにより出血が起きる。
A CAAによる脳出血発生機序
*大脳皮質や髄膜の動脈壁(中膜)にアミロイドが沈着し,動脈壁の変性壊死が起きる。
血管壁が脆くなるので微少動脈瘤が形成され,それが破裂することにより出血が起きる。
また内膜の肥厚を起こして血管閉塞,脳虚血を起こす場合もある。
CAAとは
脳出血の原因の大部分は高血圧性脳出血だが,70歳以上の高齢者で高血圧性脳出血を除外できる場合はこの症例であることが多い。多発性の皮質下出血,つまり脳の外側(表面)での出血の形をとるため,通常の脳出血(高血圧性)と区別できる。
@散発性CAAとA遺伝性CAAが有る。A遺伝性CAAはさらに分類できる
沈着するアミロイド蛋白の種類
@ 散発性CAA …β蛋白型
A
遺伝性CAA ・アイスランド型遺伝性脳出血 …シスタチンC型
・オランダ型遺伝性脳出血 …β蛋白型
脳血管障害の10%を占める。
脳出血のように脳実質で起こる出血ではなく,クモ膜下腔の比較的太い血管での出血である。
脳の外側の出血であり手術の対象疾患
原因としては
@ 脳動脈瘤破裂
A 脳動静脈奇型
B もやもや病 などが挙げられる
@ 脳動脈瘤破裂
脳底部の血管,特にWillis動脈輪前半部の動脈分岐部で90%の動脈瘤が発生する。
↑
a)前交通動脈分岐部
b)内頸動脈-後交通動脈分岐部
c)中大脳動脈第1分岐部
これらの分岐部では中膜や内弾性板が途切れてしまっているため弱く,そこに2次的要因(高血圧や動脈硬化,血行動態)が加わり嚢状に膨らんだ動脈瘤ができてしまう。
A 脳動静脈奇形 (AV malformation)
動脈と静脈とが毛細血管を介さず直接吻合してしまう奇形。吻合部には様々な太さの異常血管が集合している。動脈の高い圧を壁の薄い静脈が直接受けてしまうため吻合部の静脈部分が嚢状に拡張し,破裂・出血してしまう。大脳半球表面部に存在する。
奇形なので若年者の発生が多く,男に多い。
B もやもや病 (Willis動脈輪閉塞症)
原因不明でまれな疾患。
内頸動脈末梢部の狭搾・閉塞とそれに伴う側副血行路の発達で脳底部に異常血管像が見える。
発症年齢によって分類
@ 若年型:1歳〜15歳に発生,5歳にピーク
一過性脳虚血発作(TIA)型 〜意識障害,麻痺,痙攣などの発作がおこり24時間以内に回復する
しかしこれらの発作により知能低下や精神脱落症状を残すことがあるため注意が必要
A 成人型:16歳以上,30-40歳がピーク
脳出血型 〜動脈瘤破裂によりクモ膜下出血や脳出血を起こす。
脳腫瘍―2つの意味を持つ
広義の脳腫瘍 :頭蓋内原発腫瘍 ←講義はこっち
狭義の脳腫瘍 :中枢神経系原発腫瘍
■ 頭蓋内腫瘍(以下脳腫瘍)の特徴
年齢 :20-50歳ピーク
性別 :男>女 ただしschwannoma,meningioma は女に多い
発生部位と年齢の関係 成人:テント上腫瘍が多い
小児:テント下腫瘍が多い
■ 小児の脳腫瘍の特徴
性別 :男>女
発生部位 :テント下腫瘍多い 小脳30%,大脳25%,脳幹,下垂体
組織型別頻度
神経膠腫 glioma …Medulloblastoma:悪性,astrocytoma,ependymoma:良性が多い
頭蓋咽頭腫 craniopharyngioma
奇形腫 teratoma
■ 脳腫瘍の分類(脳腫瘍WHO分類,2000)
1.神経上皮組織腫瘍 glioma & neuroma 大半はglioma
2.末梢神経腫瘍 schwannoma
3.髄膜腫瘍 meningioma
4.リンパ腫造血器腫瘍 lymphoma
5.胚細胞腫瘍 germinoma
6.トルコ鞍部腫瘍 craniopharyngioma
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■ 年齢・部位別にみた発生しやすい腫瘍
A 小児から思春期(1〜20歳)
1)大脳半球 上衣腫,他のglioma,視神経膠腫,頭蓋咽頭腫
2)小脳 髄芽腫,星状膠細胞腫
3)松果体腫
4)脳幹膠腫
☆小児では正中線に発生する腫瘍が多い
B 青年期(20〜39歳)
大脳半球の神経膠腫(星状膠細胞腫,乏突起膠腫),
髄膜腫,下垂体腺腫,神経鞘腫,小脳血管芽細胞腫
C 中年期以降(40歳〜)
膠芽腫,転移性腫瘍,髄膜腫,神経鞘腫
*脳室に発生する腫瘍
・ependymoma 上衣腫 脳室好発,第4脳室(特に小児)
・Medulloblastoma 髄芽腫 小脳虫部好発 播種:脳室,クモ膜下に広がる
・Central neurocytoma 大脳中心部発生→側脳室内腫瘍
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1.神経上皮組織腫瘍 glioma & neuroma
[1] 星状膠細胞腫 Astrocytoma (77%) ☆☆
[2] 稀突起膠細胞腫 Oligodendroglioma (5%) ☆
[3] 上衣細胞腫 Ependymoma (3%) ☆
[4] 神経細胞性腫瘍と混合性腫瘍 Neural & mixed neuronal-glial tumors
[5] 神経芽細胞腫 Neuroblastoma
[6] 髄芽腫 Medulloblastoma
未分化神経外胚葉性腫瘍PNET (4%) ☆
[1] 星状膠細胞腫 Astrocytoma
◇特徴
シェーラーの2次構造 Scherer's secondary structure
Astrocytoma Cellは浸潤部では一定の部位に集まりやすい。
一定の部位とは神経細胞や血管の周囲,あるいは軟膜下・上衣下である
◇Astrocytomaはいくつかの亜型に分かれる。
1) Diffuse Astrocytoma び慢性星細胞腫 29%
2) Anaplastic Astrocytoma悪性(退形成性)星状膠細胞腫 17% ☆
3) glioblastoma (multiform) (多型)膠芽腫 31% ☆
4) pilocytic astrocytoma (毛様細胞性星細胞腫) ☆
5) pleomorphic xanthoastrocytoma(PXA) 多形黄色星細胞腫 ☆
6) subependymal giant cell astrocytoma 上衣下巨細胞性星細胞腫
◇AstrocytomaのGrading (Mayo診断(WHO分類じゃない)
・基準 :4つの組織学的特徴の内いくつが存在するか
特徴 : @核異型
A分裂像(mitosis)
B血管内皮増殖
C壊死
・Grading(悪性度)
Grade1 :上記の特徴がひとつも見られない
Grade2 :特徴がひとつだけ
Grade3 :特徴が2つ見られる
Grade4 :3つまたは4つの特徴が見られる
1) Diffuse Astrocytoma び慢性星細胞腫
(WHO分類でGrade2以下のAstrocytomaを言う。以前は単にAstrocytomaと言われていた模様)
・肉眼所見 :境界が不明瞭で,色は灰白色。触るとやや軟らかい
充実性であり嚢胞をつくる
・組織像 :類円形をした核,好酸性の細胞質,星状に伸ばされた突起が特徴
またmicrocystic change(微小嚢胞)が見られる
細胞異型が軽度なもので,mitosisはみられない
2) Anaplastic Astrocytoma 悪性(退形成性)星状膠細胞腫
発生: 成人では大脳半球,小児では脳幹
浸潤性発育が見られる
退形成性変化のある=異型≒悪性(Grade3)
Cellularity増加
細胞の多型性や核異型
mitosis増加
血管内皮細胞増殖
necrosisがない …glioblastomaとの違い
3) glioblastoma multiform多型膠芽腫
悪性性格の強いグリアの腫瘍で,頻度が高い(約30%)。
成人の大脳半球,特に前頭部や側頭部に多い。
悪性度が高く浸潤性発育を行い,脳梁を介して反対側半球へ移動できる
また脳室系,クモ膜下へ播種が可能
組織像 …細胞の多形性や核異型が強い(Grade4)
Grade4なので @核異型
A分裂像(mitosis)
B血管内皮増殖
C壊死 のほぼ全てが見られる。
多形で細胞密度も高く,多核・巨核の巨細胞も出現する
腫瘍細胞が壊死巣を囲んで柵状に配列するいわゆる偽柵状配列 pseudopalisadingが見られる
4) pilocytic astrocytoma 毛様細胞性星細胞腫
小児に多く発生する。
小児の腫瘍なので発生部位はテント下(小脳,脳幹)であるが,視神経や視床下部にも発生する
悪性度は低く予後は良い
組織像 :髪の毛のように長い双極性突起(bipolar)をもつ
pilo=髪の毛 という名前の由縁
2相性biphasic pattern
充実性増殖 + microcystic changeのある水腫性部分
特徴的な構造
rosenthal fibers :棍棒状・楕円型の均質で光沢のある好酸性無構造Fiber ←alpha B crystalline
granular body :細胞質内の硝子滴
5) pleomorphic xanthoastrocytoma(PXA) 多形黄色星細胞腫
小児と若年成人の大脳半球脳表面に好発する腫瘍。
肉眼的に高頻度に嚢胞(Cyst)を合併し、その壁に腫瘍結節が見られる。
細胞の多形性が顕著で、奇怪な核を持つ巨細胞も出現する。 ←悪性の特徴
核分裂像は乏しく、組織の壊死はみられない。 ←良性の特徴 →比較的予後は良い
大型の腫瘍細胞には細胞質に脂肪滴が含まれていることがある。
[2] 稀突起膠細胞腫 Oligodendroglioma
成人の大脳白質に好発。
組織では,類円型核の周りの細胞質が明るく抜ける、Honey-combed structure(蜂巣構造,Fried egg appearance)が特徴的。
細胞密度は高く,血管増生が顕著であり,50%の症例で石灰沈着が見られる。
(石灰化といえばOligodendrogliomaと言っていいほど特徴的)
[3] 上衣細胞腫 Ependymoma
小児の脳室(特に第4脳室)に発生することが多く、脳室内に突出して腫瘤を形成し,水頭症の原因ともなる腫瘍。
特徴的な構造としては,管腔を腫瘍細胞が囲む構造をしたependymal rosette(上衣ロゼット)と,腫瘍細胞が血管に向かって繊細な突起をのばして血管を囲うperivascular pseudorosette(血管周囲性偽ロゼット)が挙げられる。
[4] 髄芽腫 Medulloblastoma
小児の悪性腫瘍。小児のAstrocytomaでは比較的良性が多いことと対比される。
小脳虫部に好発し、第四脳室に浸潤し水頭症を起こし、あるいは脳脊髄液を介してクモ膜下腔や脊髄膜、脳室系に播種を示しやすい。 (他に播種を起こす腫瘍としてはglioblastomaがあった)
組織像は比較的単調で,類円形に濃染する核を持ち細胞質に乏しく小型の細胞が高い細胞密度を示して増殖する。特徴的な細胞配列は、Homer-Wright rosette(pseudorosette;偽ロゼット)で核は花冠状に配列し、ロゼットの中心は好酸性の基質からなっている。
*未分化神経外胚葉性腫瘍 primitive neuroectodermal tumor,PNET
成人にも起こるが,一般に小児に頻発する神経堤(neural crest)由来と推定される未分化な悪性脳腫瘍で,
PNETはテント上に発生したものを含めた総称であり、小児に好発する中枢性腫瘍は特に髄芽腫と呼ばれる。
末梢性のものではEwing sarcoma,Askin Tumor,神経芽腫なども含まれる。
組織像は髄芽腫に順ずる。ロゼットは見られないことも多い。
この病気の原因として,22番染色体のEWS遺伝子(RNA結合蛋白)と11番染色体のFLI-1(転写因子)の相互転座によって生じるキメラ遺伝子の生成があるといわれる。
[5] 神経細胞由来腫瘍--神経細胞性腫瘍と混合性腫瘍
■
中枢神経系に発生する …非常にまれ
1. 神経細胞腫
neurocytoma
2. 神経節細胞腫 Gangliocytoma
3. 神経節膠腫
Ganglioglioma など
■
副腎や交感神経節(後腹膜や縦隔)に発生するもの
1. 神経芽腫 ←小児の3大悪性腫瘍のひとつ
2. 神経節芽腫
*中心性神経細胞腫 Central neurocytoma
大脳中心部に発生する側脳室腫瘍。中枢神経系に発生する非常にまれな腫瘍。
若年成人に発生するが悪性度は低く予後は比較的良好。
組織像はOligodendrogliomaに類似。 (Oligodendrogliomaの組織像→Honey-comb構造,石灰化)
組織型の違う腫瘍なので特異的マーカーがあり,また電顕でシナプス様構造が見つけられるなど特徴は多い。
2.末梢神経腫瘍 --神経鞘腫 schwannoma
*神経鞘腫 schwannoma
末梢神経の髄鞘を形成するシュワン細胞に由来する良性腫瘍。
多くは脊髄神経根の神経鞘(聴神経or三叉神経)から発生し,第8脳神経に発生したものは聴神経腫瘍ともいう。
中高年女性の小脳橋角部 cerebello-pontine angleに好発する。
腫瘍は被膜に覆われた神経幹内に存在するため、手術によって完全に摘出可能な例が多い。
3.髄膜腫瘍 meningioma
髄膜のクモ膜細胞meningocyte由来の良性腫瘍であり、脳硬膜傍矢状部や小脳橋角部などに好発する。
中年女性に好発し、発症頻度もgliomaについで多い。
組織型では,紡錘形の線維芽細胞が毛細血管や硝子様小体を中心として渦を巻いた像,玉ねぎ状配列が特徴。
組織学型での分類がされる。
髄膜型 meningothelial, 移行型 transitional, 線維芽細胞型 fibroblastic, etc.
*小脳橋角部腫瘍
cerebello-pontine angle tumor
〜SchwannomaやMeningiomaはこの部位に頻発する
4.リンパ腫造血器腫瘍 lymphoma
*脳原発悪性リンパ腫
中高年者に発生し,やや男性に多い傾向がある.
大脳半球が好発部位であるが,基底核,小脳,脳幹にも発生する.
単発あるいは多発性の境界不鮮明な腫瘤を形成する。
大部分の例はB細胞性である.
腫瘍周辺部では,血管周囲の Virchow-Robin 腔に浸潤する傾向が特に強い。
5.胚細胞腫瘍 germ cell tumor
胚細胞由来の腫瘍には胚細胞腫(germinoma)、胎生期癌(embryonal carcinoma)、奇形腫 (teratoma)などがあり、多くが、松果体という脳の正中部に位置する器官の付近に発生する
*松果体腫瘍
通常松果体腫瘍というと胚細胞腫germinomaを指すことが多いが,頻度は低いがpineocytoma ,pineoblastomaというように他の腫瘍もあり,松果体腫瘍=胚細胞腫瘍というわけでは必ずしもない。
*Germinoma
胚細胞腫Germinomaの発生部位は,正中線に沿った部位でみられる。これは胎生期primordial germ cellの遊走の経路上と言う意味であり,具体的には松果体部,仙尾部,後腹膜,縦隔,生殖器である。脳の場合,松果体部が多く視交叉上部にもみられる。松果体の胚細胞腫を特にGerminomaと呼ぶことが多いようだ。
小児や若年者に発症し,組織型は大型単核腫瘍細胞と小リンパ球のTwo
cell patternを見る。
6.トルコ鞍部腫瘍 Tumors of the Seller Region
*頭蓋咽頭腫 craniopharyngioma
胎児期のラトケ嚢由来の良性腫瘍である。良性であるが内分泌的異常をきたす。
小児期に多いが,全年齢層にみられ,全頭蓋内腫瘍の5%,小児脳腫瘍の11%を占める。
肉眼的には嚢胞と石灰化が混在する点が特徴的である。
組織像では重層上皮,エナメル上皮によるcystの形成,肉芽組織やコレステリン,角化物を見る。
中枢神経系感染症の症状と原因
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細菌 |
結核菌 |
真菌 |
ウイルス |
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1)髄膜炎 |
○ |
○ |
○ |
○ |
|
2)脳膿瘍 |
○ |
|
○ |
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3)肉芽腫 |
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○ |
○ |
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4)脳炎 |
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○ |
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5)脊髄炎 |
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○ |
その他の原因として寄生虫(原虫)やPrionなども一部の疾患に関わる
また2),3)はSpace Occupying Lesionであり,頭蓋内圧亢進を起こしうる疾患である
*髄膜炎
CNSでは最も多い感染症であり,男性にやや多く見られる。
軟膜もしくはクモ膜に感染によって生じた炎症のことである。
原因から@細菌性髄膜炎,Aウイルス性髄膜炎,B真菌性髄膜炎などと分けられ,@細菌性髄膜炎のなかでも経過の違いから,結核性髄膜炎を別に扱う。B真菌性髄膜炎の中ではクリプトコッカス髄膜炎が多い。
一般に細菌やウイルスによる髄膜炎では急性に,結核菌や真菌による髄膜炎は亜急性もしくは慢性の経過をとる。
小児で髄膜炎が発生する場合にはその原因が年齢によって大きく分かれることが知られている。1歳未満に多いのは細菌性髄膜炎であり重症となることが多いが,4-5歳で発生する場合はウイルス性髄膜炎であり軽症で予後は良い。
髄膜炎の症状は一般に頭痛,発熱,頚部・項部硬直などが挙げられる。
細菌の感染経路には2種類あり,ひとつは直接侵入であり,耳や鼻・口などから侵入し中耳炎や副鼻腔炎を起こしてそこから移行するものがある。もうひとつ血行性のものもある。敗血症や,あついは髄液を介して脳や髄膜に感染するもので,肺炎や心内膜炎から移行する場合が多い。
主に髄膜炎を起こす。
*急性化膿性髄膜炎
症状としては高熱が持続し,髄膜刺激症状があり,重症化すると死亡することもある。
組織像では好中球浸潤,出血,浸出液,フィブリン析出などを見る。(急性炎症)
起炎菌は年齢により異なり,新生児では大腸菌や溶連菌が多いが成人では肺炎球菌・髄膜炎菌・ブドウ球菌・結核菌が多くなる
*結核性髄膜炎
結核菌による髄膜炎であり,亜急性に発症することが多い。結核や梅毒は特に脳底部を好んで浸すため、脳底部髄膜炎 basal meningitis と呼ばれる病態をきたす。
感染経路は血行性で,脳内結核腫ができてそれが破裂して髄膜に移行する場合や,血液から直接髄膜を侵す場合がある。
ウイルスの感染経路は大きく分けると2つである。ひとつは神経を介するルートで,脳神経,末梢神経を伝わって感染する。もうひとつは血行性のルートであり,Viremiaとなるものの他に,リンパ球に感染してCNSにいたるものがある。
症状としては髄膜炎もしくは脳・脊髄炎だが,原因ウイルスによって病変は局在する。
組織像では血管周囲性のリンパ球浸潤像(perivascular lymphocytic cuffing),神経細胞やグリア細胞の変性や封入体形成,グリア線維の増加(gliosis)が見られる。
[1]ウイルス性髄膜炎
無菌性髄膜炎(aseptic meningitis)と呼ばれ,細菌性よりも軽症で予後は良い。
原因ウイルスとしては以下がある
・エンテロウイルス(エコー,コクサッキー) …全体の80%(特に夏に多い)
・ムンプスウイルス …全体の10%
・単純ヘルペスウイルス
・その他(水痘,麻疹,風疹,EBV,アデノウイルス)
[2]脳炎・脳脊髄炎
脳に起こる炎症である。ウイルス性脳炎が重要。
急性脳炎,スローウイルス感染,感染後性脳炎に分けられる
特に重篤なものには
■ 日本脳炎
■ 急性灰白髄炎(ポリオ)
■ 急性単純ヘルペス脳炎
■ 巨細胞性封入体病 などが挙げられる
1)急性脳炎
*急性単純ヘルペス脳炎
起炎菌は年齢により異なり
成人ではHSV typeT(口唇ヘルペスウイルス)
小児ではHSV typeU(性器ヘルペスウイルス) である
健常人でもかかりうるし,ワクチンがなく,さらに致死率は30-70%と非常に高いため重要な疾患である。
強い出血,壊死が認められ,側頭葉・前頭葉に多い。組織型としてはCowdry type A封入体が特徴的である。
2)Slow Virus Infection
特徴として ・長年に渡る潜伏期がある(慢性〜亜急性)
・発症すると症状は漸次進行して最後は死に至ることもある
・病変は単一の臓器に限局する
症状としては知能低下や錐体外路症状(片麻痺)などで,変性疾患に近い。
原因ウイルスには麻疹,風疹,JCVなど
中枢神経系では @亜急性硬化性全脳炎(SSPE) …麻疹 …小児,若年
A進行性多巣性白質脳症(PML) …JCV …成人(日和見)
B進行性風疹全脳炎(PRP) …風疹 …成人(日和見)
@ 亜急性硬化性全脳炎(SSPE)
1歳未満で,M蛋白機能を欠損した麻疹ウイルスに感染することが発症の条件となる。ウイルスは潜伏し小児期から思春期にかけて発症する。発症後は亜急性経過(〜6ヶ月)をたどり死亡する
進行性痴呆,あるいは痙攣,ミオクオーヌス発作と言った症状があらわれる。
gliosisを起こしており脳の萎縮,硬化が見られる。Neuronが脱落していたりmyelinが消失していたりと変性疾患様の状態を示す。
組織像ではNeuronやOligodendrogliaに好酸性封入体が見られる。
A 進行性多巣性白質脳症(PML)
JC virus感染による。
幼児期に経口・経気道的に不顕性感染し腎に潜伏していたウイルスが,成人後,白血病,ホジキン病,膠原病(SLE),AIDSなどの免疫低下を引き起こす疾患に罹患することで再燃し,腎からB細胞を介して脳へ感染し発症する。
脳ではOligodendrogliaに感染がおこり,反応性のAstrocytomaが浸潤し,大小の脱髄斑を形成し,多発性の大脳白質脱髄病巣が見られる.
症状は,知的障害や言語障害,視力障害などがある
B 進行性風疹全脳炎(PRP)
真菌感染症は,多くの場合何らかの免疫低下を引き起こす基礎疾患を持つ患者に起こる。
病巣は膿瘍や肉芽腫といったSOLや,髄膜炎である。
感染経路は,ほとんどの場合は血行性に脳へ移行するのだが,眼窩などから直接侵入するもの(ムコールなど)もいる。
起炎菌はカンジタ,アスペルギールス,クリプトコッカス,ムコールが代表的である。
*クリプトコッカス感染症
髄膜炎や肉芽腫を起こす。
ハトの糞などから呼吸器に感染し,肺から血行性に脳へ移行する場合が多い。
組織型では,クリプトコッカスを貪食した多核巨細胞や,組織球,リンパ球の浸潤を見る。
*アスペルギールス感染症
白血病患者に多い。肺や上気道から血行性に脳へと移行し,膿瘍や肉芽腫を起こす。
血管侵襲性が強く出血性軟化巣も見られる。
亜急性海綿状脳症といわれる一群の疾患で,ヒトでのCreutzfeldt-Jakob disease(CJD)以外にも,羊のスクレイピーや牛の牛海綿状脳症BSEなど他の動物でも見られる。
発症すると1-2年で死亡する。
神経細胞が消失するため肉眼的に脳が萎縮し,顕微鏡下で海綿状に空胞が見られるという病態から名前が付けられている。海綿状変化はシナプス終末の空胞化によるといわれ,他にはgliosisも見られる。炎症細胞浸潤は見られないが,これはアポトーシスが関与しているためと考えられている。
またシナプス型,Kuru斑型などのPrion蛋白沈着が見られる。
疾患には異常型プリオンが関与するといわれる。正常型プリオンと異常型プリオンとでは,アミノ酸配列は同一であるが立体構造が異なり,異常型プリオンではβ-sheets構造が顕著に増加している。分布も異なり,正常型プリオンは細胞膜表面に局在するが,異常型プリオンは細胞内小器官に局在する。
また異常型プリオンはプロテアーゼ抵抗性を持つ。
異常型プリオンが脳内へ侵入すると正常型プリオンを異常型プリオンへと変換してしまい,感染(伝播)が成立する。異常型プリオンによりPrion病が発生する機序としては,
@ 異常型プリオンがNeuronに対してToxic Effectを発揮する
A 脳内で正常型プリオンが減少するため脳機能が低下する
B 異常型プリオンがMicrogliaを活性化され,貪食能が発揮されることでneuronが障害される
C 異常型プリオンがSuperoxydeを発生させ,Neuronが障害される
などの機構が考えられている。
[1] Creutzfeldt-Jakob disease(CJD)
孤発性,医原性(硬膜移植などによる),家族性のものなどが挙げられる。孤発性のものが最も頻度が高く100万人に1人程度。日本人では50-60代,女性にやや多い。
痴呆やミオクローヌスの症状を呈し,1-2年で死亡する。
[2] 新変異型CJD New variant of CJD
発症年齢が19-41歳と若く,失調症や感覚障害などKuruに似た症状を示す。
これまでの発症はほとんど英国(100人ほど)で,フランスでも発症者が現れた。日本での発症はまだない。
Kuru type plaquesといわれるKuru斑類似のプリオン沈着が見られる。このプラークはPAS陽性で,周囲に空胞を伴う点が特徴である。
*BSEが新変異型CJDを引き起こしている可能性が指摘されるがその理由として
・ プリオンの潜伏期とBSE流行-新変異型CJDの周期が一致すること
(BSE流行ピークから5-10年遅れて発症が起きている。)
・ BSE蛋白のサルへの接種でCJD様症状が出現したこと
が挙げられる。
感染経路としては,腸からリンパ系組織を介して脳へと感染する経路が考えられている。リンパ球がプリオン蛋白を発現することが傍証とされる。
特徴
特定の神経路が系統的に障害され,神経細胞が変性・減少して死んでいく疾患。アポトーシスが関与するといわれ,炎症は起こらない。神経細胞が顕著に減少するため肉眼的にも萎縮がわかる。
進行性で予後は不良である。
散発性のものと遺伝性のものがあり,発生機序は不明な点も多いが,遺伝性のものについては解明されつつある。
原因
変性疾患は生活習慣病などと同じように多因子遺伝病であるといわれる。
環境因子では,Parkinson病の原因として弱毒神経毒,活性酸素,興奮性アミノ酸などが神経を障害するのではないかという説があるし,Alzheimer病の原因としてアルミニウムがあるという説もあった。
遺伝子異常も原因であるといわれる。Tauやα-Synucleinなど蛋白の異常発現や,特定の配列が増加するTriplet Repeat Diseaseなど,遺伝子異常により特定の蛋白が蓄積する傾向がある。これらの蓄積が細胞に毒性を発揮したり正常な機能を喪失させアポトーシスを誘発するのではないかといわれる。
分類
系統的に障害が起こるため発生する部位別に分類できる。
1. 大脳皮質変性症
2. 錐体外路変性症
3. 脊髄小脳変性症
4. 運動ニューロン疾患 Motor Neuron Disease
また分子の蓄積が起こることがわかってきたため,最近では蓄積する分子による分類が考えられている。これにより,@Tauopathies,ASynucleinopathies,BPolyglutamine diseaseなどと分類される。
@Tauopathiesは神経細胞に異常なTau蛋白の出現を見る疾患である。Tauはmicrotubuleの集合に関連する蛋白であり,両者は同時に見られることが多い。代表的な疾患としてはAlzheimer病があり,NFTという構造として見られる。
ASynucleinopathiesは神経細胞にα-Synucleinが見られる疾患群である。α-Synucleinは蛋白の折りたたみや集合に関与する分子シャペロンであり,代表的な疾患として挙げられるParkinson病ではLewy小体として細胞質に現れる。
BPolyglutamine diseaseはTriplet repeat diseaseのなかでglutamineを規定するCAGという配列が顕著に増加した疾患を指す。代表疾患にはHuntington病が挙げられる。
一般に症状に痴呆を伴う疾患である。
cf) 「老年痴呆」の原因による分類
a) Alzheimer型老年痴呆(SDAT)およびAlzheimer病 30%
b) 血管性痴呆 Vascular dementia 60%
c) 混合型痴呆 Mixed form = SDAT + MID 10%
MID
(Multi-infarct dementia,多発梗塞痴呆;血管性痴呆の一種)
d) その他の原因
他にPick病などが挙げられる。Pick病でも痴呆症状は現れる。
a) Alzheimer型老年痴呆(SDAT)およびAlzheimer病
Alzheimer型老年痴呆(SDAT)およびAlzheimer病は病理的には違いはない。便宜的に65歳という年齢で区切られる。
特徴
肉眼所見では,脳全体が萎縮する。左右対称性で前頭葉や側頭葉に強い。また萎縮に伴い脳回の狭小化や,脳溝・脳室の拡大が見られる。
組織像では,皮質や神経核,視床でのNeuronの消失のほか,@老人斑とANFTという2つの特徴的な構造を見る。
@ 老人斑 →β-amyloidの沈着
灰白質にある銀染色で黒染されるプラークである。
中心部のコアの周囲を変性神経突起が囲んだ構造をとる。コアにはβ-amyloidの沈着が見られ,コンゴレッド染色や免疫染色で染めることで容易に発見可能である。
疾患の最も早期の段階から発見できる。
A NFT(neurofibrillary tangle,神経原線維変化) →Tauの沈着
神経細胞内や突起内で銀染色で黒染される粗大線維。その形は糸巻き状,ロウソク炎状,錐体状などと表現される。その本体はリン酸化Tau蛋白である。
またEMでは2本の細線維がらせん性にからみ合っていることがわかり,二重らせん状細線維(paired helical filament;PHF)と呼ばれている
原因
環境因子と遺伝因子が複雑に絡まりあって起こる多因子遺伝病であるといわれる。
アミロイドの沈着により発症するとするアミロイド仮説が有力であり,家族性Alzheimer病の遺伝子解明により検証が進められている。
またアポリポタンパクE(ApoE)のアイソフォームであるw4はAlzheimer病の危険因子の1つといわれている。
*アミロイド仮説
遺伝因子や環境因子の影響によりアミロイド蛋白(特にAβ42)が蓄積,凝集・沈着したアミロイド塊すなわち老人斑が形成され,それが神経毒性を発揮し神経細胞死が起きるとする仮説。
*アミロイドについて
アミロイドの主要構成成分はアミロイドβ蛋白(Aβ)と呼ばれる40〜42アミノ酸からなるペプチドで,APP(amyloid precursor protein,アミロイド前駆体蛋白)と呼ばれる前駆体蛋白から,β-セクレターゼ・γ-セクレターゼといったプロテアーゼの作用により生理的に産生される。
産生されたAβの大部分を占めるAβ40は水溶性であり、脳内に沈着せず種々のメカニズムにより脳実質から除去されると考えられるが、アルツハイマー病の脳では正常ではあまり産生されない不溶性のAβ42がアミロイドとして沈着する。
アルツハイマー病の一部をなす家族性アルツハイマー病(FAD)遺伝子の解析により,原因遺伝子として第21番染色体にコードされたAPP,第14番染色体のプレセニリン1(presenilin 1,PS1)や第1番染色体のプレセニリン2 (presenilin 2,PS2)が同定された。プレセニリンはγ-セクレターゼの機能に関与するものであり,アミロイド蛋白産生系の異常が早発型FADの原因の一部をなすことものと考えられる。
治療
現在のところ有効な治療薬はなく、常に進行性で,合併症を起こして死亡する場合が多い。
現在治療法が研究されているが,平成13年に沈着したβアミロイドを分解する酵素であるネプリライシン,アルツハイマー病による細胞死を防ぐ物質であるヒューマニンが発見され,治療法として期待される。
b) 脳血管性痴呆
@多発梗塞痴呆 …大脳白質、基底核などの多発小梗塞を特徴とし、白質病変がビンスワンガー型ほど広範ではない
ABinswanger型 …高血圧性の皮質下白質に広範に広がる多発小梗塞
B大梗塞型 …血栓または塞栓による広範な梗塞
C多発性皮質梗塞 …おもに脳塞栓による多発梗塞
D多発性皮質出血 …おもにアミロイドアンギオバチー(CAA)による
進行性の小脳性運動失調を主訴とする原因不明の神経性疾患。
思春期から成人期に発症し,緩徐に進行する。症状は歩行障害から始まり,次第に上肢や言語に障害が現れてくる。つまり次第に体を思うように動かせなくなる疾患である。
障害される部分と症状によりさまざまな型があり,小脳障害型,脊髄小脳型,脊髄障害型の3病型に分けられる。
遺伝性のものと孤発性のものがある。
・孤発性脊髄小脳変性症
*孤発性オリーブ橋小脳変性症(OPCA)
中年以降に発症。小脳性運動失調が主体。小脳・橋の萎縮が特徴的。
日本の脊髄小脳変性症の中で最も多い病型である
・遺伝性脊髄小脳変性症
Triplet repeat diseaseが多く見られる。特にPolyglutamine diseaseが多い
SCA1,SCA2,SCA6,SCA7 (*Spinocerebellar
ataxia) これらは全て
マシャド・ジョセフ病(MJD) Polyglutamine disease
歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA) でもある
*Polyglutamine diseaseにおける神経細胞障害機構
@ポリグルタミン鎖は変異したAtaxin-1と結合する。(Ataxin-1はRNA結合蛋白)
Aさらにユビキチン化する
B一部のものは分解され,分解されないものは核内に移行する。
C核内で凝集し,核内結合蛋白と結合する。顕微鏡的には核内封入体として認識される。
Dこの構造体が核の機能障害(特に転写障害)を行い,あるいは神経細胞死を導くと考えられる。
特徴
単一遺伝子の3塩基繰返し配列が異常増加することによって起こる遺伝性疾患。
優性遺伝するものが多く,また世代を経るごとに子孫の発症年齢が早まり,より重症化する(*表現促進)。
メンデル遺伝には従わない。
*表現促進 anticipation
世代を経るごとに3塩基繰返し配列(TR)の繰り返し数が増加し,子孫の発症年齢は早まる。
これはTRが不安定な配列であり,細胞分裂時に多重に読み込まれるためといわれる。
減数分裂時でも体細胞分裂時でも繰り返し回数の増加は起こりうる。
@ 減数分裂時:
精子形成時のTR増加をmale transmission,卵子形成時をfemale transmissionという。CAG繰返し配列の場合は前者において不安定になりやすい傾向があるという。表現促進にはこちらが関わる
A 体細胞分裂時にも起こりうる。(体細胞モザイク)
つまり加齢によってTRは増加する。また部位によってTR増加の起こり易さは異なる。小脳や心臓では起こりにくく,大脳や肝,腎では起こりやすい。
*Triplet repeat diseaseのなかで-CAG-配列が異常に増加した場合を,特にPolyglutamine diseaseという。
部位別分類における位置
Triplet repeat diseaseでは一般に神経変性疾患が起こる。
部位分類では@脊髄小脳変性症(特に遺伝性のもの),A錐体外路変性症,BMotor neuron diseaseの原因の一つであり,神経変性疾患以外には筋疾患(筋緊張性ジストロフィーなど)を引き起こす。
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Triplet repeat disease |
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Polyglutamine disease |
それ以外 |
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@遺伝性脊髄小脳変性症 |
SCA1,2,6,7 MJD,DRPLA |
Friedreich失調症 |
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A錐体外路変性症 |
Huntington病 |
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BMotor neuron disease |
SBMA |
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TRの位置と疾患
Triplet repeat diseaseは大きく2つのタイプにわけられる。
・Type T :TRが翻訳領域にある。(CAG繰り返しのタイプなど)
Polyglutamine diseaseが代表である。TRが翻訳領域にあるためどんどんとペプチド鎖が生成され,生成物がneuronを障害すると考えられる。
遺伝子に異常なペプチドを産生する能力が備わる機能獲得性変異と言える。
・Type U :TRがIntronもしくは非翻訳領域にある。(CGG,CCG,CTG,GAA繰り返しのタイプなど)
Friedreich失調症:GAA,筋緊張型ジストロフィー:CTG
翻訳が失敗しやすくなるため(?),機能喪失性変異を起こしやすく,本来産生されるべき蛋白が産生されない。
*Parkinson病
中脳黒質の変性を主病変とする変性疾患である。黒質から線条体へ投射されるドーパミン作動性ニューロンの変性によって、錐体外路系の機能不全が生じる。
症状
運動亢進ならびに運動低下が同時に生じる。
ここで言う 運動亢進とは筋硬直rigidityおよび安静時振戦tremorであり、
運動低下とは無動症akinesiaおよび運動緩徐である。
組織所見
Lewy小体というエオジン好性の好酸性封入体を見る。Lewy小体の実態はα-synucleinであり,それはシャペロン分子なので封入体は神経細胞の細胞質に見られる。
Parkinson病と遺伝子
遺伝性(家族性)Parkinson病はPark1からPark7まであり,そのうちPark1は常染色体優性遺伝するα-synuclein遺伝子異常によって,Park2は常染色体劣性遺伝するparkin遺伝子異常によって発生する。
Parkinson病の原因
黒質ニューロンが障害される原因はいくつか想定される。
@ 弱毒神経毒による作用がまず考えられている。まだ生体内では発見されていない未知の弱い神経毒が影響するというものである。
合成物質ではあるがMPTPという薬物を例にとると,この物質はMAO-Bによって代謝され,代謝産物が黒質ニューロン細胞に取り込まれ,ミトコンドリア機能が抑制されると酸化的ストレス増大により膜の過酸化が進み黒質ニューロンは死んでしまう。
A フリーラジカルによっても膜の過酸化が進み黒質ニューロンは死んでしまう。
脳は酸素消費用が多いためフリーラジカルは産生されやすいと考えられる。
B グルタミン酸などの興奮性アミノ酸が増加することによる障害機構も考えられる。
慢性虚血や外傷などにより細胞外グルタミン酸が増加するとNMDA receptorのカチオンチャネルが開き,Ca2+が細胞内に流入して,プロテアーゼやリパーゼ活性の過度の上昇により細胞が障害されてしまう。
上位運動ニューロンと下位運動ニューロン,あるいは下位運動ニューロン単独に神経細胞が変性する疾患。
・上位運動ニューロン :大脳皮質(前頭葉)から始まり中脳・橋・延髄あるいは脊髄前角に終わるニューロン
・下位運動ニューロン :脳神経運動核や脊髄前角細胞から始まり骨格筋へとつながるニューロン
*Motor neuron diseaseでは下位運動ニューロンが障害されるため,下位運動ニューロンからの筋萎縮を防ぐ刺激が途絶え,筋の萎縮・筋力低下が起きる。これを神経原性筋萎縮という。
*筋萎縮性側索硬化症,amyotrophic lateral sclerosis;ALS
脊髄前角細胞の減少,によって下位運動ニューロン障害が生じ,
脊髄側索神経線維の減少によって上位運動ニューロンとして錐体路障害が生じる。
それらの細胞が減少してできた隙間にはgliosisがおき硬化する。
運動系が中枢・末梢ともに障害された特異的な病態を呈する。
中年男性に多く発症,上肢末梢の筋萎縮から徐々に体幹に萎縮が広がり,最終的には呼吸筋麻痺により死に至る。
孤発性のものと遺伝性のものがあるが孤発性のものが多い。
遺伝性のものでは21番染色体のSuperoxyde dismutase gene –1(SOD-1)遺伝子の常染色体優性変異により,free radicalな分子が不活性化されず,neuronを障害してしまうことが原因となる。
*その他のMotor neuron diseaseは遺伝子異常によって起こるものがあり,SBMA(球脊髄性筋萎縮症)はアンドロゲン受容体遺伝子の異常,つまりCAGの繰り返し配列の伸長が病態を決定する重要な因子であり,SMA(脊髄性筋萎縮症)ではSMN遺伝子(survivor motor neuron gene)の異常により抗アポトーシス作用が低下し,neuron変性が起こる。
Neuronを覆う髄鞘が脱げ落ちることにより神経興奮の伝導が阻害され,様々な神経症状を呈する疾患。
神経線維の存在する白質に異常が見られる。
*多発性硬化症 multiple sclerosis,MS
中枢神経内に広範囲にわたって多発性の脱髄と硬化 gliosisを来たす疾患である。
病巣は中枢神経系において多発性に出現し(空間的多発性)、
多彩な症状が再発と寛解を繰り返す(時間的多発性)。
すなわち、病巣に応じた多彩な神経症状を呈しながら寛解と増悪を繰り返し、長期にわたって進行する
高緯度地域に多いといわれ,50歳以下の若年成人に多い。
自己免疫が発症に関与するといわれ,CNS髄鞘蛋白に特異的に反応するCD4陽性T細胞が血中や髄液中に見られる。免疫機序は細胞性免疫によるらしい。
組織では大小様々な脱髄斑が脳室周囲、視神経、脊髄などに生じる。視神経に影響を与えることが多く,初発症状は視力欠損であることが多い。