第 6 章 腹部・骨盤部
6.1 腹膜
6.1.1 腹膜腔を開く (Fig.286,299)
腹壁 (筋) で囲まれた腹腔の中に、腹膜腔と腹膜後隙 (後腹膜腔) がある。すでに腹直筋鞘の解剖が終わり、前腹壁から腹膜が露出している (Fig.259)。剣状突起から恥骨上まで、前正中線の左側 1 横指 (臨床でよく用いる表現) で腹膜にタテの長い割を入れて腹膜腔を開放する (Fig.286)。臍から肝臓に続く肝円索を温存するため、臍は前腹壁の右半分に付ける。深側を損傷しないように注意する。さらに臍下方で適当に横方向の割を追加して剖出後の側腹筋を切断し、できるだけ大きく視野を広げる。この際に右側では臍から肝臓まで、肝鎌状間膜とその中の肝円索をベルト状に前腹壁から遊離する (Fig.299)。
腹膜は連続した膜で、腹膜腔を囲む (Fig.289,291)。これは心膜や胸膜と同じである。裂け目や孔は、卵巣表面のような特殊な例外 (排卵のための孔がある) を除けば存在しない(p.118図)。腹膜、間膜の発生はラングマン p.220-221,223-228 及び Fig.288-291 参照。腹膜の深部にある内臓や血管が、腹膜にヒダやへこみを作る (p.146)。このヒダやへこみは、手術中に深部の構造を知る指標となる。
Abdominal cavity 腹腔 286
Peritoneal cavity 腹膜腔 289 B
Retroperitoneal space 腹膜後隙 (後腹膜腔) 289 B
Peritoneum 腹膜 286
Xiphoid process 剣状突起 154
Pubis 恥骨
ちこつ 261Umbilicus 臍
へそ、さい 248Liver 肝 292
Round ligament of liver 肝円索
かんえんさく 286 Ligamentum teres hepatisFalciform ligament 肝鎌状間膜
かんかまじょう− 299Ovary 卵巣 401
腹膜腔には、網嚢という複雑な形のポケットが存在する (Fig.291,301, ラングマン p.226)。網嚢の入口は肝十二指腸間膜の後方にあり、ウインスロー孔 Winslow's (網嚢孔) と呼ばれる。連続した腹膜が、どこにどのように広がっているかを理解するため、多くのライヘで触診してもらう。最初に自班で同定確認し、次いで指示に従い複数の班を回りながら腹膜関係を確認する(腹膜実習)。ライヘによって大いに状態が異なる。<腸間膜は腹膜 2 枚>などと概念的に覚えるのではなく、指で腹膜をつまみながら広がりを確認する。
Omental bursa 網嚢
もうのう 301,291Hepatoduodenal ligament 肝十二指腸間膜(−靭帯) 299
Epiploic foramen, Winslow's - 網嚢孔,ウインスロー孔 299
Mesentery 腸間膜 327,291
Mesenterium,Meso腹部について 1-2 日の間は、メスやピンセットを用いた剖出作業は原則として行なわない。メスやピンセットを用いて腹膜を剖出すると本来の形が失われる。
6.1.2 大網を現位置で (Fig.282-286)
まず視診、次に触診で、腹部内臓と前腹壁及び大網の癒着状態を観察する (Fig.286)。大網の病的癒着、つまり胃・横行結腸以外への付着を認めたら、スタッフの確認を得た上で癒着を剥離する。Fig.282,283 のように典型的な内臓配置は見られるだろうか。結腸の位置は、中にガスを入れている生体とはやや異なる (Fig.342)。以下の項目を順に確認していく。幽門では括約筋にコリコリ触れる。
1) 内臓配置の確認、第1回
Stomach 胃 299
der Magen,Gaster,VentriculusPylorus 幽門 296
ゆうもんLiver 肝臓 299
die Leber,HeparGall bladder (GB) 胆嚢 299
たんのうdie Gallenblase,Vesica felleaGreater omentum 大網 286
Grosses Netz (発生学 : 後胃間膜)Transverse colon 横行結腸 286
↑たいもうSigmoid colon S状結腸 340 略してSigma
2) 各臓器の部位及び前胃間膜各部の確認 (Fig.299, ラングマン p.223-228)
前胃間膜=小網+肝十二指腸間膜+肝臓表面の腹膜+肝冠状間膜+肝鎌状間膜。 肝胃間膜=小網+肝十二指腸間膜 (肝臓は前胃間膜内に形成された)
Greater/Lesser curvature 大/小弯
たいわん/しょうわん 295Right/Left lobe
(Anatomical/Surgical) 左葉/右葉 (解剖学的/外科的) 310Falciform ligament 肝鎌状間膜 310
Coronary ligament of liver 肝冠状間膜 310
Lesser omentum 小網
Kleines Netz 299Hepatoduodenal ligament 肝十二指腸間膜/靭帯 299
Hepatogastric ligament 肝胃間膜 299
6.1.3 大網を上方に反転 (Fig.287,325,327)
大網を上方、つまり胃の前方にそのままの状態で反転する。癒着がまだ残っていれば指示を受けてはがす。再び腹部内臓の同定を行なう。ラングマン p.237 も参照せよ。視診 ・触診、次に空腸・回腸を動かして下記の項目に○を付けながら確認する。小腸の配置には、左上から右下、上から下、左から骨盤内というように様々な個体差がある。周囲のライヘも見てみよう。
Small intestine 小腸 der Dunndarm 282
Duodenum 十二指腸 318(注2)
Duodenojejunal flexure 十二指腸空腸曲 318
Jejunum 空腸
くうちょう 325(注1)Ileum 回腸
かいちょう 325(注1)Large intestine 大腸
(盲腸+結腸+直腸) 282 der DickdarmCecum 盲腸
もうちょう 335(注2)Appendix 虫垂
ちゅうすい 335(注1)Ileocecal junction 回盲部
かいもうぶ 335Colon 結腸
けっちょう 340Ascending colon 上行結腸
じょうこう− 340(注2)Transverse colon 行結腸
おうこう− 340,333(注1)Descending colon 下行結腸
かこう− 340(注2)Sigmoid colon S状結腸 略Sigma 340,333(注1)
Mesocolon 結腸間膜 333
Spleen 脾臓
ひぞう 333 die Milz,LienKidney 腎臓 343
die Niere, Ren(注1):間膜あり、(注2):間膜は癒着して一見消失
ただし十二指腸は、最初と最後(第1,4部)に間膜あり。
6.1.4 網嚢下壁を開放 (Fig.303,333,334)
スタッフが大網 (後胃間膜の大部分を占める)と横行結腸間膜は2次的に癒着している:そこを剥がすシヒト (剥離面) を示して回る (Fig.291)。大網が胃の大弯に付着することを確認し、大網を胃の前面に翻転する。この作業によって、胃の後方にある網嚢下壁が開放される。横行結腸間膜は多少破れてもかまわない。胃小弯側の小網 (Fig.299) を破らないように注意する。後胃間膜=大網+胃脾間膜+横隔脾ヒダ+腹部食道の間膜+胃後面の癒着部(後胃動脈の通路)。膵臓の一部と脾臓は後胃間膜内に形成される(ラングマン p.223-228)。
視診・触診、次に空腸・回腸を動かして下記の項目に○を付けながら確認する。不明の点は遠慮せずにスタッフに聞くこと。Fig.303 では、実習とは異なり大網を胃大弯から切離している。指示に従い、班ごとにまとまって数体を順次移動、提出用紙に従がって観察項目を記録する。
1) 全体の復習
o 肝、胆、脾、胃、幽門、空腸・回腸とその間膜
o 盲腸、虫垂と虫垂間膜(Fig.337-339)
o 上行結腸および下行結腸とその癒着筋膜 (p.150の作業で剥がす)
o 横行結腸、S状結腸、腎
o 膵と十二指腸に触れてみる
2) 網嚢の広がり
下から胃の後方、つまり網嚢に手を入れる (Fig.301)。網嚢後壁に横たわる膵臓を確認する。肝左葉と腹部食道の間で上方に陥凹(網嚢の突出部,広がり)があるか (Fig.291)。左方に手を伸ばして脾に触れることはできるか (Fig.303)。ウインスロー孔に右方から入れた手指を網嚢内で確認する (Fig.299)。
Omental bursa 網嚢
もうのう 301,291Pancreas 膵臓
すいぞう 303Spleen 脾臓
ひぞう 303 die Milz,LienEpiploic foramen、Winslow's− 網嚢孔 、ウインスロー孔 299
3) 血管系の確認 : 無理をせず、腹膜を通して触診し、同定できるものだけでよい。
Common hepatic artery 総肝動脈 292
Left gastric artery 左胃動脈
さい−,ひだりい− 292Splenic artery 脾動脈292
Inferior mesenteric artery/vein下腸間膜動脈/静脈
か− 331Abdominal aorta 腹大動脈
ふく− 343 Aorta abdominalisInferior vena cava(IVC) 下大静脈 343
Vena cava inferiorCommon iliac artery/vein 総腸骨動脈/静脈 343
Renal artery/vein 腎動/静脈 345
4) 腹膜ヒダ、腹膜陥凹
o 十二指腸空腸曲の周囲の腹膜ヒダ (上・下十二指腸ヒダ)(Fig.327)
o 回盲部周囲の腹膜ヒダ ( 上下の回盲ヒダ)(Fig.339)
o (左) 胃膵ヒダ (Fig.303)
o 肝膵ヒダ (右胃膵ヒダ)
o S 状結腸間膜根にできるポケット状の腹膜陥凹(S状結腸間陥凹)
(Fig.327) ↑−
かんまくこん腹膜ヒダ fold や腹膜陥凹 recess の多くは、腹膜に接してすぐ深側を走行する血管が腹膜を盛り上げて形成する。下腸間膜静脈ないしその根が十二指腸空腸曲の側方に腹膜ヒダを盛り上げ、回結腸動脈枝が回盲部に腹膜ヒダを盛り上げる。左胃動脈が (左) 胃膵ヒダを作り、総肝動脈が肝膵ヒダ (右胃膵ヒダ) を作る。S状結腸間膜のように、 間膜根が折れ曲って角を作ると、そこにもポケット状の腹膜陥凹が生じる (Fig.303,327,333,334)。フィンガーディセクション (指先による解剖) によって、できる限りの構造を把握する。最初は慎重に次第にえぐるように触診する。不明の点は速やかに質問する。
Duodenojejunal flexure 十二指腸空腸曲 318
Superior/Inferior duodenal fold 上・下十二指腸ヒダ 327
Ileocolic artery
かいけっちょう− 回結腸動脈 339Ileocecal junction
かいもうぶ 回盲部 335Ileocecal fold 回盲ヒダ 339
Gastropancreatic fold 胃膵ヒダ 303
Sigmoid mesocolon S状結腸間膜 334
Intersigmoidal recess S状結腸間陥凹 327
6.1.5 骨盤内臓の観察 (Fig.399,439)
女性骨盤内臓は、分かりやすいライヘが限られている。アナウンスするから必ず観察する。同様に提出用紙に従がって観察項目を記録する (p.180)。Kot(便) によって直腸が拡張しているライヘは Kot を除去するので指示を受ける。
Ant. superior iliac spine上前腸骨棘 376
Spina iliaca ant. sup.Rectum 直腸 (Rs,Ra,Rb,P: p.174) 399
Ureter 尿管 448,397
(Urinary) Bladder 膀胱
ぼうこう 442 die Harnblase,Vesica urinariaSpermatic cord 精索
せいさく 272 Funiculus spermaticusDuctus/Vas deferens 精管 448
Uterus 子宮 399
Ovary 卵巣 399
OvariumUterine tube 卵管 399
Rectouterine pouch (Douglas'pouch
ポ−チ)直腸子宮窩 (ダグラス窩) 398Vesicouterine pouch 膀胱子宮窩 398↑
Excavatio rectouterina男性 : (Fig.439-441)
精管とその内容の確認。深鼡径輪、鼡径管の 4 壁と iliopubic tract(p.93)。
小骨盤壁で精管に触れることはできるか。
女性 : (Fig.394,395,399)
子宮、子宮広間膜、子宮円靭帯、卵巣、卵管采、卵巣提索、固有卵巣索
(最後の 2つは多くの解剖体では不明瞭だが国試頻出問題: p.148図)
Broad ligament of uterus
こうかんまく 子宮広間膜 399 Lig. latum uteriRound ligament of uterus
えんじんたい 子宮円靭帯 399 Lig. teres uteri*Fimbriae of uterine tube
らんかんさい *卵管采 399Suspensory ligament of ovary 卵巣提索 401
Lig. suspensorium ovariiOvarian lig.
(Round lig.) of ovary 固有卵巣索 401 Lig. ovarii proprium■付図 卵巣周辺の小構造 (Fig.404,400) 特に固有卵巣索、卵巣堤索など
(ネッタ− FH Netter の図を改変:巻末の参考書紹介を参照)
■付図 ゲロータ腎筋膜 Fig.372
(Woodburneの教科書の図を改変)
■付図 後腹膜の生理的癒着
(佐藤達夫教授の総説から引用改変:巻末の参考書紹介を参照)
6.1.6 後腹膜の生理的癒着、ゲロータ腎筋膜 (Fig.334,343,372)
デモを参考にして上行結腸・下行結腸の生理的 (2 次的) 癒着を用手的に剥離する (同部を癒着筋膜とも言う)(Fig.334)。盲腸が後腹膜に固定されていない移動盲腸は比較的多い変異である。膵頭十二指腸後方の生理的癒着を剥がすコッヘル授動術 Kocher
’s maneuver (腹部外科の基本術式: ビデオ) は、デモをよく見てから慎重にしかし一気に行なう。コッヘル授動術が行なわれたら、反転した十二指腸の第 1-4 部を後方から見て確認する (Fig.318)。以上の作業で、消化管の後方にはゲロータ腎筋膜が露出する。ゲロータ腎筋膜は脂肪被膜を包み、脂肪被膜の中に腎臓がある (Fig.345)。最後にゲロータと後体壁の間のシヒト (剥離面) にも手を入れて、筋膜に包まれた腎・尿管等を一塊 en mass,en bloc として前方に浮かす。以上の生理的 (2次的) 癒着は、いずれも外科手術の際に重要なシヒトになる。ゲロータに包まれた中身を前後からはさみ、フィンガーディセクションによってできる限り下方、小骨盤内まで把握する。筋膜に包まれた中身、例えば尿管をむき出しにしてはいけない。下腹神経と骨盤神経叢 (下-下腹神経叢 Fig.456) を含む層 (シヒト) を示説するので、今後その温存に努める。肝硬変 (慣用語 : LC,LZ)、各部の腫瘍、大動脈瘤 (アノイリスマ)aneurysm など、病変があれば報告する。
Kidney 腎臓 345
die Niere, RenRenal fascia (Gerota's) 腎筋膜 372
Ascending/Descending colon 上/下行結腸 340
Cecum 盲腸 340
Duodenum 十二指腸 318
Superior part(portion) 第 1 部 (上部) 317
Descending part(portion) 第 2 部 (下行部) 318
Horizontal part(portion) 第 3 部 (水平部) 318
Ascending part(portion) 第 4 部 (上行部) 318
Ureter 尿管 345
Hypogastric nerve 下腹神経 456,344
Pelvic plexus 骨盤神経叢 456,344
(昔はInferior hypogastric plexus下-下腹神経叢
かかふく−と呼んだ)6.2 肝臓とその周囲
6.2.1 カロー三角、胃小弯 (Fig.292,295,308)
肝胃間膜 (肝十二指腸間膜+小網) とウインスロー孔を再確認する (Fig.299)。肝十二指腸間膜を作る腹膜を剥がして、同間膜の芯である (固有) 肝動脈・総胆管・門脈を剖出する (Fig.298)。総肝管・胆嚢管・肝臓が三辺を作るカロー三角 Calot's をあらかじめ想定し、剖出の進行とともに確認する (Fig.313)。ラパ胆 (laparoscopic cholecystectomy : 腹腔鏡下胆嚢摘出術) の時代になってもカロー三角は腹部外科のメッカである。三角内で胆嚢動脈を見つける。左右の肝管は思いのほか十二指腸側で合流する。健康体でも肝十二指腸間膜内の胃癌取扱い規約 12 番リンパ節は発達している。除去しても構わないが余裕があれば、この 12 番リンパ節から膵後面を経て腎動脈の高さまで下方にリンパ管を追跡したい (Fig.308)。胃の小弯の血管を剖出する (Fig.295)。右胃動脈は有名な割に細いので注意すること。この動脈以外にも幽門部に分布する動脈がある。
Hepatogastric ligament 肝胃間膜 299
Hepatoduodenal ligament 肝十二指腸間膜/靭帯
Lesser omentum 小網
Kleines NetzEpiploic foramen, Winslow's - 網嚢孔,ウインスロー孔 299
Proper hepatic artery 固有肝動脈 298
A. hepatica propriaCommon bile duct 総胆管 298
Portal vein 門脈 298
V. portaeCommon hepatic duct 総肝管
そうかんかん 313Cystic duct 胆嚢管 313
Liver 肝臓 299
die Leber,HeparCystic artery 胆嚢動脈 311
Left/Right hepatic duct 左/右肝管
ひだり/みぎ−312Lesser curvature 胃小弯 295
Right gastric artery 右胃動脈
みぎ/うい− 292 A. gastrica dextra左胃動脈・総肝動脈を剖出、腹腔動脈に近づく (Fig.292)。小網は破ってもいいが、その中を走る迷走神経肝枝を切ると、ジスキネジア (運動障害) による胆嚢炎で死に至ることがあるので、できるだけ同神経を温存する。稀に胃癌取扱い規約の 1.3.5 番リンパ節が健康体でも発達していることがあるが、血管・神経を残してリンパ節を除去する。日本が誇る胃癌取扱い規約のリンパ節はいずれ外科の試験で暗記しなくてはならない:付図(p.160)および講義資料参照。
胆嚢を切開して内腔を観察する。内容がこぼれるのでティシュペーパーを当てながら行ないたい。大きな胆石があれば周囲に見せてあげる。胆嚢頚のラセンヒダは分かるか (Fig.312):状態のいい材料があればスタッフが供覧する。
Left gastric artery
さい/ひだりい− 左胃動脈 292 A. gastrica sinistraCommon hepatic artery 総肝動脈 292
A. hepatica communisCeliac trunk (Celiac axis)
ふくくう− 腹腔動脈 292 Truncs celiacusHepatic branches of vagus nerve 迷走神経肝枝 −
かんしGall bladder(有名な略称:GB) 胆嚢 312
die Gallenblase, Vesica felleaSpiral folds ラセンヒダ 312
6.2.2 肝の摘出 (Fig.298,309-311)
すでに心・肺の摘出が行なわれて、横隔膜を自由に動かせる。
肝動脈・総胆管・門脈が剖出されたら、肝門から 3-5cm の部位でこれらを切断する。肝円索 (肝鎌状間膜の遊離縁) はできるだけ長く肝側に付け、臍が残っていれば臍まで一続きで温存する (Fig.262,286)。肝円索から静脈管に至る胎児循環は覚えているか (Fig.223,281, ラングマン p.204-206)。肝臓を横隔膜と後体壁に固定している肝冠状間膜を慎重に切断し、肝無漿膜野を露出させながら肝臓をはずす。肝無漿膜野では、肝臓と横隔膜腱中心が固く結合している。同野はさらに後方で広く後体壁に接する。下大静脈の一部を肝臓に付けた状態で肝臓をはずす (Fig.311)。下大静脈を横隔膜の大静脈孔から剥がす。なるべく下大静脈から肝静脈(左・中・右)を切り離さないようにする。右副腎が肝に密着していることがあるので、一緒に摘出しないように注意する (Fig.283,345)。
Porta hepatis 肝門 311
Round ligament of liver 肝円索 310
Ligamentum teres hepatis
Falciform ligament 肝鎌状間膜 310
Umbilicus 臍
へそ、さい 262Coronary ligament of liver 肝冠状間膜 310
Bare area of liver 肝無漿膜野 −
むしょうまくや 311 Area nudaDiaphragm 横隔膜 362
Central tendon of diaphragm 横隔膜腱中心 362
Inferior vena cava 下大静脈 311
Vena caval foramen 大静脈孔 362
Left/Middle/Right hepatic vein 左/中/右肝静脈
ひだり,ちゅう,みぎ226Suprarenal gland 副腎 345
摘出肝で腹膜に覆われている部分と肝無漿膜野を区別する。肝の外景を観察して、解剖学的な左葉と右葉、横隔面と臓側面、肝門を中心とするHを構成する部分名 (静脈管索裂、下大静脈窩、肝円索裂、胆嚢窩) を確認する (Fig.311)。常に原位置にもどして再確認する。肝門部を剖出し、門脈・胆路・動脈を区別する。尾状葉を観察し、尾状葉の一部のスピーゲル葉が下大静脈を完全に包みこんでいるようであれば報告する。胆嚢管等は切断せず、胆嚢を胆嚢床 (胆嚢窩) から剥がす。胆嚢床剥離で胆嚢の静脈の多くが切れる。胆汁はホルマリンで変化して緑色に着色している。剖出してある範囲で胆道 (胆路) を確認する (Fig.312,313)。肝動脈の変異があれば、あとで気づくだろう (付図p.164)。
Right/Left lobe
(Anatomical/Surgical) 左葉/右葉 (解剖学的/外科的) 311Diaphragmatic surface
(Anterior surface)横隔面 (前面:正確には前上面) 311Visceral surface
(Posterior surface) 臓側面 (後面:正確には後下面) 311Fissure for the ligamentum venosum 静脈管索裂 −
さくれつ 311Fossa for the inferior vena cava 下大静脈窩 311
Fissure for the ligamentum teres 肝円索裂 311
Fossa for the gall bladder 胆嚢窩 (慣用名 : 胆嚢床)
Biliary duct system (Biliary tract) 胆道 (胆路) 312
Hepatic artery 肝動脈 311
Caudate lobe 尾状葉 311
Cystic duct 胆嚢管 311
肝臓を摘出しないで、どうしても原位置で剖出したい班は申し出る。その場合は、横隔膜に大きく切開を入れて肝臓を露出させる。この場合、後述の肝区域では先に肝静脈を剖出し、肝内門脈は末梢から攻めることになる。
肝硬変の症例があるかも知れない。肝硬変などで肝内門脈流が制限されると、門脈血 (Fig.226,298) はバイパスを通って体循環系 (ここでは上大静脈ないし下大静脈) に直接注ぐようになる。この経路を門脈側副路 (あるいは門脈副行路) と呼び、解剖の教科書になぜか書かれており、肝臓の解剖で最も重要だと信じている人も多い。大切なのは肝の内景である。
門脈側副路として次の 5 つが有名 (Fig.232):
1) 門脈-左胃静脈-食道静脈叢 (食道静脈瘤)-奇静脈系-上大静脈
2) 門脈-下腸間膜静脈-上直腸静脈-直腸静脈叢 (痔核)-下直腸静脈-
内陰部静脈-内腸骨静脈-下大静脈
3) 肝内門脈左枝-肝円索沿いの臍傍静脈-臍周囲の皮静脈 (メズサの頭)-
浅腹壁静脈・浅腸骨回旋静脈-大腿静脈-外腸骨静脈-下大静脈
5) 肝無漿膜野-横隔膜の静脈-奇静脈系-上大静脈
6.2.3 肝区域 (Fig.309-311)
まず肝の外景を確認する。肝の下 (後) 面=臓側面にH字型に配置している溝や凹みをきちんと頭に入れたら、友人の肝臓を前から透視してそのH字を再現する。肝門がある臓側面が斜めに位置するのでわかりにくい。
肝内門脈を剖出して外科的肝区域とクイノー肝区域 Couinaud's を理解する。外科的肝区域による左葉・右葉の境界は、カントリー線と呼ばれる。カントリー線は、およそ中肝静脈の走行に一致している。外見的な左葉に加えて、尾状葉のおよそ左半分と、胆嚢の張りついている部分 (胆嚢床) を加えて、外科的な左葉を構成する。これは外観上の約束ではなくて、グリソン(グリソン鞘樹、-系脈管)の枝分れに基づく。外科的左葉・右葉のことを左肝・右肝とも呼ぶ。
ここでいうグリソンとは、門脈・肝動脈・胆管が結合組織(脈管鞘)に束ねられたもので、日本の外科用語である。大きく左右に分れたグリソンが、外科的左葉と外科的右葉に分布している。グリソンの枝分れに従って、外科的左葉はさらに内側区域と外側区域に分れ、外科的右葉は前区域と後区域に分れる。解剖学的左葉とはこの肝区域の外側区域を指す。内側区域と外側区域の境界に左肝静脈が、前区域と後区域の境界に右肝静脈が走行するとされている。
クイノー肝区域は、グリソンの枝分れに従って外科的肝区域 (内側区域、外側区域、前区域、後区域) をさらに 2 つに分けたもの。内科でも外科でも今やルーチンに用いられる肝臓の地番だ。1994 年 12 月、クイノーの提唱により尾状葉は、下大静脈を後左方から包むような部分 (スピーゲル葉 :常に左葉) と下大静脈のすぐ前方 (尾状葉突起及び下大静脈部 :左葉+右葉) に分けられた。
ピンセットで肝実質を少しずつ崩して、肝内門脈と太い肝静脈を剖出する。最初に付図を参考にして肝表面にクイノー肝区域を想定する。肝を常に原位置にもどして再確認する。
次に 3 本の肝静脈に慎重にゾンデを入れて、外科的肝区域の見当をつける。それからピンセットで肝門部を崩して行く。肝門板と呼ばれる結合組織に埋没した太い部分からひたすらグリソンを追及する。末梢の細いグリソンにこだわることはない。肝がバラバラにならないように、肝の横隔面を温存する。但し、肝区域の選択課題を選ぶ場合は後述の方法に従う。
Anatomical right/Left lobe 解剖学的右葉/左葉 311
Surgical right/Left lobe 外科的右葉/左葉 311
Cantlie's line カントリー線 311
Posterior/Anterior/Medial/Lateral sector後/前/内側/外側区域
(-sectorに代えて-Segmentも用いるが、後述のsegmentと紛らわしい)
Left/Middle/Right Hepatic vein 左/中/右肝静脈 309
Gall bladder(GB) 胆嚢 312
die Gallenblase,Vesica fellea
Hepatic(Portal/Liver) segment (外科的) 肝区域
Couinaud's
hepatic(Portal/Liver) (sub)segment クイノー肝区域
Caudate lobe 尾状葉
びじょうよう 311Portal vein 門脈 311
V.portae
腹部の局所解剖をある程度理解したら、実習室内で備え付けのエコー 3 台を用いて自分たちの腹部を観察する。腹部皮下に脂肪の少ないやせた者を被検者に選び、空腹にして観察することがポイント。腹腔動脈枝、上腸間膜動脈などの解剖 (p.162) が進んでからの方が理解しやすい。肝内門脈もよく見える。実習室で初めてエコーを行なう時は、横断面で大動脈と脊柱をまず確認する (Fig.371)。次いで大動脈の縦断を試み、SMA(上腸間膜動脈), Celiac trunk(腹腔動脈)、腎動脈を探す。いずれ国試ではエコーを読まなければならないのだから、解剖実習をしている今から慣れておけばいい。
Aorta 大動脈 316
Vertebral column 脊柱 371
Sup. mesenteric artery (SMA) 上腸間膜動脈 316
Arteria mesenterica sup.Celiac trunk(Celiac axis) 腹腔動脈 316
Truncus celiacusRenal artery 腎動脈 316
6.2.4 選択スケッチ課題 : 肝区域とグリソン系脈管
すでに肺区域を学んでいる。肺区域は気管支分岐だけで決定されていた。これに対して肝区域は、気管支分岐に対応するグリソン (門脈・胆管・肝動脈Fig.297,314) の分岐だけでなく、肝静脈の走行や外観上のバランスが歴史的に重要である。換言すると、肝区域の概念はまだ成熟しておらず、用いている医師が都合のいいように解釈しているフシがある。肝区域には、ラフな外科的肝区域とより細分化されたクイノー肝区域がある。今は診断ばかりでなく手術もクイノー肝区域で行なう。ピンセットで肝実質を少しずつ崩してグリソンと太い肝静脈を剖出するのが基本である。メスはなるべく使わない。
肝門のHは理解しているか。あらかじめ肝表面からクイノー肝区域を想定してみる (剖出すると多くは予想とかなり異なる)。次に、摘出肝に張りついている下大静脈に直線的に割を入れて内腔を開放する。3 本の太い肝静脈の他に、細い短肝静脈がしばしば観察される。短肝静脈はあらゆる門脈枝よりも後方にある。細いものは尾状葉からも来る。10mm くらいの比較的太い短肝静脈はクイノー肝区域 S7 と S6 の深部から来る。3mm くらいの細い短肝静脈は S7, S6 の下面浅層から来る。手術で肝を脱転する時に、これらの静脈の処理を誤ると大出血を起こす。S7 だけに分布する短い独立した (しかし右肝静脈に類似した) 静脈がしばしば見られる。S6から来る太い短肝静脈をしばしば右下肝静脈
みぎした−(Right inferior hepatic vein)と呼ぶ(本来の右肝静脈は Right superior - -)。静脈を確認したら、ピンセットで肝実質を崩して太い肝静脈を下方に 3-5cm 程度追及する。短肝静脈の多くは次第に浮いてはがれてしまう。3 本の太い肝静脈を確認するため、下大静脈周囲を横隔面から 1cm 程度掘り下げていく。しかし、外形がくずれるので過度に横隔面をこわしてはいけない。右肝静脈モドキの太い静脈根が 2-3 本出てくるが、ここでは一括して右肝静脈と呼ぶ。
次に尾状葉をピンセットで崩して、尾状葉に分布する門脈・肝静脈を分離し、ある程度切詰めて剖出の視野を広げる。門脈右枝・左枝いずれから枝が来るかを基準に、尾状葉を左右に分けることは困難(右方のS9にも左から枝が来る)。さらに尾状葉の静脈も必ずしも左右別ではない。あまり尾状葉にこだわると先に進めない。尾状葉がくずれて初めて、その深部で中肝静脈を下方に肝門部 (グリソンの左右分岐) まで追及することができる。左右の肝静脈を剖出する視野も尾状葉 (があった部分) から得られる。赤黒くもろい肝静脈と、白い丈夫なグリソンの区別は付くだろうか。「何だこの邪魔な結合組織はー」 と思ったら、静脈管索を疑う (ラングマン p.205)。
同時に、ピンセットで肝門部から肝実質を崩し、グリソンをクイノー肝区域レベルまで剖出することを忘れない。まずグリソンが左右 2 枝に分れる。さらに右は前後 2枝に分れる。この前区域枝から S5, S8 が、後区域枝から S6, S7 の区域枝・亜区域枝が分れる。左では肝円索に続く太い門脈臍部をまず確認し、さらに S2, S3 の 2 枝あるいはS4 を含めた数枝に分れる。このように肝門に近い太い部位から順次剖出していく。末梢の細かいグリソンにこだわると先に進めないし、応用的には重要性が低い。グリソンの中で動脈がどこに位置するかは変異も多く、臨床的にも重要だが、実習では省略する。クイノー肝区域レベルのグリソンとは肝臓の大小にもよるが、かなり太いものである (直径 10mm 程度)。学生は前区域枝 (S5, S8) の剖出が常に甘い。特に S8 の範囲は広く、右葉の上方に突出した部分の多くを占める。尾状葉 (があった部分) から視野を得て剖出する。S5 は 2-3 本あり、本幹を作らないのでわかりにくい。同時 4 分岐とか3 分岐とか、右のグリソンの分岐パターンには多くの変異がある。
グリソンに注意を奪われると、肝静脈を破壊してしまう。最初に横隔面で見つけた静脈は、その後もきちんとフォローしていく。中肝静脈は、尾状葉 (があった部分) で掘り下げたら、今度は胆嚢床を軽くひっかくと続きが出てくる。胆嚢床 (S4, S5) では静脈もグリソンも大変浅く細く、横隔面の要領で剖出すると破壊してしまう。中肝静脈は S8にも食いこむ。右肝静脈は、グリソンの前区域枝を確認しながら、前区域枝と後区域枝の間にピンセットを進めて、さらに S6 浅層下方まで追求する。左肝静脈は S2, S3 の肝内グリソンとあみだを組んでおり、内側・外側区域の境界とは言えない。左肝・右肝の境界は単純な平面ではない。前方でS4(左)が右方に突出、中央でS8(右)が左方に突出、後方では時にS9(ここでは右)が左上方に突出する。
スケッチには前から見た肝の輪郭を大きく入れた上、前から見たごとく、グリソンと太い肝静脈を 1 枚のケント紙に描く。下から見た絵ではない。グリソンには S1,S2 の要領で名称を付ける。なお、課題作業中に小グループで肝内エコーの示説を受け、P-point, U-point(本来は門脈造影の用語) について理解する。S2-S8 の各門脈枝を生体で同定できれば完璧である。
P-point:右枝から後区域枝が分岐する部位(分岐角),U-point:門脈臍部 p.157。
1998年から上述の選択課題に代えて、肝のスライス標本(約10-20mm厚)を用いた肝内門脈と肝静脈根の同定演習を行っている。スライス標本を並べ、ゾンデを通しながら最初に3つの肝静脈の根を同定する。次に、肝門部から順次区域門脈枝を同定する。切断の方向は学生を困らすため固体によりまちまちで、下大静脈(ないしその圧痕)と比較して、切断方向をあらかじめ理解しておく必要がある。いずれかのスライスで(左前から右後に向けて)S4の門脈枝-中肝静脈-S8の門脈枝-右肝静脈-S7の門脈枝という配置を見つける。門脈枝の断面は細く同定しにくい。同定の後は腹部外科・内科のDrによってチェックを受ける。
■付図 クイノー肝区域
(オリジナルの図、および「腹部エコ−のABC」を改変)
6.3 腹部消化管
6.3.1 腹腔動脈、上腸間膜動脈 (Fig.293,295,326,365)
腹腔動脈枝と上腸間膜動脈枝の血管造影 angio は国試頻出問題である(Fig. 297,330)。
まず胃大弯と空腸・回腸の血管を剖出する (Fig.295,329)。トライツ靭帯 Treitz's (ないしそれに相当する部分) に糸を結んで回るから、注意して温存する。トライツ靭帯は、十二指腸空腸曲から膵臓後方を経て横隔膜右脚にいたる結合組織索で、臨床ではトライツ上部あるいは下部というようにしばしば腸管の位置の基準として用いる。次いで、食道から迷走神経をたどり、噴門部後方で迷走神経腹腔枝を確認する (Fig.237)。これも後の作業中に切れやすいので注意する。胃小弯の動脈 (左・右胃動脈) はすでに剖出されているはずだ (p.150)。
Celiac trunk(Celiac axis) 腹腔動脈 297
Truncus celiacusSup. mesenteric artery 上腸間膜動脈 330
Arteria mesenterica sup.Stomach 胃 295
der Magen,Gaster,Ventriculus
Greater/Lesser curvature 大/小弯 295
たいわん/しょうわんCardia 噴門部 296胃の区分:p.159下
Ileal/Jejunal arteries 回腸/空腸動脈 329
Suspensory lig. of duodenum トライツ靭帯 316
Treitz's ligamentDuodenojejunal flexure 十二指腸空腸曲 318
−くうちょうきょくPancreas 膵臓 318
Right crus of diaphragm 横隔膜右脚 362 −
うきゃくEsophagus 食道 237
Celiac branches of vagus nerve迷走神経腹腔枝 237
−ふくくうし回腸・空腸の血管は腸間膜の 1 面からだけ剖出する (Fig.326)。反対面をきれいに残しておくと、美しいだけでなく剖出中の人為的な腸管のねじれにすぐ気付く。生体でねじれたまま腹腔にもどせば、イレウス (腸閉塞) で死に至るかも知れない。小腸間膜根は通常は左上から右下に向かって斜走するが、変異があれば報告する。腸間膜の動静脈の基本構成は、幹動脈-辺縁動脈-直動脈からなる。幹動脈はノミナの付いた動脈で、回腸・空腸の場合は、例えば回腸動脈といっても複数ある。辺縁動脈は腸管に沿って動脈アーケードを作り、そこから腸管に多数の直動脈が出る。直動脈の 1 本 1 本は、特定の小領域を独占的に栄養する 「終動脈」 と考えられている。回腸より空腸の方が直動脈が密である。空腸より回腸の方が辺縁動脈が複雑で、アーケードが多層構成になっている。ライヘで確認されたい。
回腸・空腸の血管は、あまり末梢 (腸管側) にこだわらず、SMA(上腸間膜動脈) 根部に近い部分から行ない、なるべく早く SMA 根部に到達する。リンパ節 (例えば胃癌の 14 番)、時にかなり太いリンパ管、自律神経線維束が、腸間膜内の血管に沿って観察される。これらは観察しながら除去して、血管を露出させていく (Fig.326)。SMA 根部には、強靱な線維性結合組織のような神経叢が発達している (Fig.365)。ハサミをうまく使って神経叢を大きく開き、視野を作る。SMA が大動脈から起こることが確認できる程度に神経叢を残しておく。臨床では、動脈周囲のこの神経叢を取り除くと激しい下痢などで術後管理が大変だ。Fig.330 を読むのは易しいだろう。虫垂動脈とその間膜は確認しているか (Fig.339)。
Mesentery (普通名詞)腸間膜、(固有名詞)小腸(の)間膜 327
Root of mesentery (同上) 腸間膜根、 (同上) 小腸(の)間膜根 337
Appendicular artery 虫垂動脈 339 ↑−
かんまくこんMesoappendix 虫垂間膜 339
胃大弯に沿って左右の胃大網動静脈を剖出する (Fig.292,295)。膵の上縁で脾動静脈を剖出する (Fig.293)。脾動脈の枝で、胃の後方に分布する後胃動脈は 50 %で存在するが、解剖の本には書いていない。脾に近接して左胃大網動脈の根部と短胃動脈を探す。脾臓の観察もこの機会に行なう (Fig.300,302)。脾の上縁に多いくびれは肋骨によるものではない。脾の下極に割を入れて、被膜と断面を観察する。肝や肺の断面とどこが違うだろうか。
胃の多くの静脈は動脈に伴走しているが、右胃大網静脈だけは違う。横行結腸から来る中結腸静脈他と合流して太いヘンレの胃結腸静脈幹を作り、膵頭下方の膵切痕付近で深部に入る。門脈本幹は膵頭の後方で形成される。腸に始まり肝に終わる 「門脈」 という静脈について整理できているだろうか (Fig. 298,316)。
Gastroepiploic artery/vein 胃大網動/静脈 292
みぎ/ひだりいたいもう−Splenic artery/vein 脾動/静脈 293
Arteria/Vena lienalisPosterior gastric artery 後胃動脈
こうい−Short gastric arteries 短胃動脈 293
たんい−Spleen 脾臓 300
ひぞうTransverse colon 横行結腸 329
Middle colic vein 中結腸静脈 329
ちゅうけっちょう−(Henle's) gastrocolic trunkヘンレの胃結腸静脈幹
Portal vein 門脈 298
ここで胃の区分を整理しておく。臨床では、小弯と大弯の 3 等分点を結んで人為的に引いた境界により、U領域(旧C領域)・胃上部 (=概ね噴門部 Cardia)、M領域・胃中部 (=概ね胃体部 Body)、L領域(旧A領域)・胃下部 (=概ね幽門部 (幽門洞) および前庭部 Antrum) に分ける。例えば中心病巣が M で、M と Uの 2 領域にまたがる癌なら、MU 癌というように表現する。生体では小弯の L-M 境界付近に顕著なくびれがあり、胃角 (解剖用語では角切痕) と呼ばれる。生体で立位レ線上、最も垂れ下がった下部を胃底、空気 (胃泡) が入って膨らんだ最上部を胃窮隆 (窮隆部) と呼ぶ。つまり、U領域・胃上部・噴門部・窮隆部という用語が重複する。解剖学では窮隆部を胃底と呼び、胃底腺という名称だけは今でも広く使われている。L 領域・幽門部の中で胃体部よりの部分は、内視鏡で見ると比較的平滑な筒状になっており、ここを前庭部とか幽門前庭と呼ぶ。幽門管という用語もあるが、あまり厳密に使い分けされていないように思う。
Greater/Lesser curvature 大/小弯 295
Cardiac orifice 噴門 296
Body of stomach 胃体 (部) 296
(pyloric)Antrum 幽門洞 (しばしば幽門部と同義) 296
*Angular notch *角切痕 295,304
Stomach fundus 胃底 296
■付図 胃癌取り扱い規約によるリンパ節
■付図 胃の造影
(「日本人のからだ」に紹介)
■付図 膵臓の動脈
(Woodburneの教科書の図を改変)
☆ 指名課題 腹部エコー課題
(詳細は配布プリント参照, エコー機器は3台, 1日 2-3 グループ計 4-6 人で行う)
エコーは習うより慣れろ, ただの技術です。エコー実習の担当者は, それがよく分かると思います。いったん<解脱>してしまうと, それまでチラチラしていただけの像が解剖所見と結びついて認識できるようになります。
課題 (例) 肝内門脈左枝における U-point の位置 (対象は男子 10 人)
まず画面上で肝臓, 腎臓などを認識する (すでに実習を終えた者から指導を受ける) 。直線的で壁の薄い肝静脈と, 曲線的で枝が多く壁が白く厚い肝内門脈を区別する。(図のp.163)。門脈が1本にまとまる部位を確認し, 門脈左枝を追及する。向きが急に変わってS4 枝を放つ部位が U-point である (機械の上に備えてある文献を参照)。U-point の位置を, 皮膚からの距離 (深さ) と, 肋骨弓からの上下距離で表現する。検索は最大吸気位で行う。その他の課題例
・肝内の門脈右枝および後区域枝の太さ ・腎の呼吸性移動
・肝内門脈後区域枝の分岐形態 ・脾の呼吸性移動
・腹腔動脈と上腸間膜動脈の共同幹形成 ・体位変換による肝の移動
・右肝静脈あるいは中肝静脈の本数 ・腎嚢胞を探す
まだコッヘル授動術が行なわれていなければ、膵頭十二指腸のすぐ後方のシヒトを右から剥がして膵頭部を内側に反転する。コッヘル授動術の際に、すでに糸でラベリングしてあるトライツ靭帯を温存する。十二指腸の第 1-4 部は確認しているか (p.150)。膵の区分を述べる。膵頭は十二指腸から門脈及び上腸間膜静脈左縁まで。左方に残る部分を 2 等分して膵体・膵尾と呼ぶ。膵頭の前下方に膵鈎部がある。門脈形成部は膵頭後方にある。膵頭部の血管を後方からも剖出する。後方から見ると、門脈本幹がはっきりわかるはずだ (Fig.317)。膵頭十二指腸の前 (後) 面には前 (後) 膵十二指腸動脈アーケードがある。前・後の上・下膵十二指腸動脈が吻合してアーケードを作る。前・後の上膵十二指腸動脈は独立して胃十二指腸動脈から起こるが、前・後の下膵十二指腸動脈はしばしば共同幹 (下膵十二指腸動脈) を作り、上位の空腸動脈から起こる。前膵十二指腸動脈アーケードの下部は、一般に膵実質に隠れている。この他に、膵体下縁には下膵動脈があり、後膵動脈と大膵動脈が下膵動脈と脾動脈を結ぶ。後膵動脈は膵頭膵体境界付近、大膵動脈は膵体膵尾境界付近にある。膵頭前面を左右に横切る膵横動脈もしばしば出現する。多くの解剖学の図譜・教科書では膵の血管が弱い (Fig.316)。Fig.297 は読めるようになっただろうか。もう読めなくてはいけない。多くの先輩が 5 年になってから、これが読めないので夏休みなどに解剖させてくれと泣きついて来る。エコーを用いて自分のおなかで復習して欲しい。
Duodenum 十二指腸 318
Suspensory lig. of duodenum トライツ靭帯 316
(より正確には十二指腸堤靭帯)
Treitz's ligamentPancreas 膵臓 316
Body of pancreas 膵体
すいたい 316Head of pancreas 膵頭
すいとう 316Tail of pancreas 膵尾
すいび 316Portal vein 門脈 317
Anterior superior/inferior
pancreaticoduodenal artery 前上/下膵十二指腸動脈 293
Posterior superior/inferior - 後上/下膵十二指腸動脈 293
*Inferior pancreatic artery *下膵動脈 ↑
こうじょう/かすい−*Dorsal pancreatic artery *後膵動脈
こうすい−*Arteria pancreatica magna *大膵動脈
だいすい−Splenic artery 脾動脈 292
*Transverse pancreatic artery *膵横動脈
すいおう−膵頭後方で上腸間膜静脈 SMV と脾静脈が合流して門脈本幹ができる (Fig.317)。下腸間膜静脈 IMV は同名の動脈と離れて十二指腸空腸曲の左上方を経て膵後方まで上行する (Fig.298)。門脈への合流型には変異が多い。ヘンレの胃結腸静脈幹は SMV の終末部に注ぐことが多い。膵頭後面には動脈に伴走しない後膵静脈が出現するが、この名称は同名動脈との伴走を思わせて好ましくない。
Superior mesenteric vein (SMV) 上腸間膜静脈 298
Inferior mesenteric vein (IMV) 下腸間膜静脈 298
(Henle's) gastrocolic trunk ヘンレの胃結腸静脈幹
*Dorsal pancreatic vein *後膵静脈
左胃動脈、総肝動脈、脾動脈を再確認してから、腹腔動脈根部の剖出にはいる (Fig.292)。周囲の強靱な神経叢をハサミで切断して視野を作る (Fig.365)。神経叢の断面を見ると、神経色 (白) ではなく神経節色 (灰色) をしている部分がかなりあるはずだ。腹腔神経節=太陽神経節である。胸部の後縦隔の剖出が終えていれば、交感神経入力である大/小内臓神経 (p.138,付図p.142) を腹腔神経節およびその周辺につなげる。迷走神経腹腔枝が残っていれば、それが副交感神経入力である。腹腔動脈根部に接して下横隔動脈を剖出する (Fig.345)。副腎や胃C領域の栄養動脈でもある。腹腔動脈根部と上腸間膜動脈を合せた分岐型については、京都帝大の足立による広範な研究がある。SMA から来る肝動脈があったら報告してほしい。後下膵十二指腸動脈はしばしばその肝動脈から起こる。
Celiac trunk (慣用名:Celiac axis) 腹腔動脈 292
Truncus celiacusLeft gastric artery
さ/ひだり− 左胃動脈 Arteria gastrica sinistraCommon hepatic artery 総肝動脈
Splenic artery 脾動脈
Celiac plexus 腹腔神経節 365
Greater/Lesser splanchnic nerve 大/小内臓神経 365
Celiac branches of vagus nerve 迷走神経腹腔枝 344
Inferior phrenic artery 下横隔動脈 345
Adrenal (Suprarenal) gland 副腎 345
右半結腸 の血管を剖出する (Fig.329)。疾患の多い回盲部に特に注意する。結腸ヒモ (Fig.336) と虫垂間膜 (Fig.339) を確認する。結腸の後方で、腎周囲の腎筋膜と脂肪被膜はまだ除去しない (Fig.345)。尿管や精巣 (卵巣) 動脈も 腎筋膜の深側に温存されているはずだ。消化管とは層が異なることを認識する。大動脈に張りつく自律神経叢(大動脈神経叢)は、胃癌No.16 のリンパ節と共に剖出しながら温存する (Fig.344)。大動脈をむき出しにしてはいけない。
Colon 結腸 329
Ileocecal junction 回盲部 335
Taenia 結腸ヒモ 336
Mesoappendix 虫垂間膜 339
Renal fascia 腎筋膜 372
Ureter 尿管 345
Testicular artery 精巣動脈 345
Ovarian artery 卵巣動脈 344
(Peri)Aortic (sympathetic) plexus 大動脈(周囲自律)神経叢 344
■付図 腹腔動脈と上腸間膜動脈を合せた分岐型
外科でS4枝を中肝動脈と呼ぶ。また固有肝動脈の左/右枝を左/右肝動脈と呼ぶ。
(「手術のための新・局所解剖アトラス」の図を改変:巻末の参考書紹介を参照)
最後に以下の動脈の同定をもう一度行い、復習とする。
Inferior phrenic artery 下横隔動脈 345
Celiac trunk(Celiac axis) 腹腔動脈 292
Truncus celiacusSplenic artery/vein 脾動脈/静脈 293
A./Vena lienalisShort gastric arteries 短胃動脈 293
Posterior gastric artery 後胃動脈
Left gastroepiploic a. 左胃大網動脈 292
*Inf./Dorsal pancreatic a. *下/後膵動脈
*Arteria pancreatica magna *大膵動脈
Left gastric artery 左胃動脈 292
A.gastrica sinistraCommon hepatic artery 総肝動脈 292
Right gastric artery 右胃動脈 292
Proper hepatic artery (固有) 肝動脈 292
Cystic artery 胆嚢動脈 292
Gastroduodenal artery 胃十二指腸動脈 292
Right gastroepiploic a. 右胃大網動脈 292
Ant. Superior 前上膵十二指腸動脈 293
pancreaticoduodenal a.
Post. sup. - - 後上膵十二指腸動脈 293
Ant. inf. - -
ぜんかすい− 前下膵十二指腸動脈 293Post. inf. - - 後下膵十二指腸動脈 293
以上4動脈「標準外科学」レベルの略語:ASPDA, PSPDA, AIPDA, PIPDA
Sup. mesenteric artery (SMA) 上腸間膜動脈 329
Ileal/Jejunal arteries 回腸/空腸動脈 329
Ileocolic artery 回結腸動脈 329
Appendicular artery 虫垂動脈 339
Middle/Right colic artery 中/右結腸動脈
ちゅう/みぎ 329Inf. mesenteric artery (IMA) 下腸間膜動脈 331
Sigmoid artery S状結腸動脈 331
Left colic artery 左結腸動脈
ひだり 331Sup. rectal artery 上直腸動脈 331
6.3.2 消化管の内景 (Fig.296,318,335)
消化管は摘出しないで、原位置で切開を加える。
胃の各部の名称について復習せよ (p.159下)。大弯に沿って噴門から幽門まで切開する (Fig.296)。胃を腹部から切除してはいけない。中がよごれていれば、スポンジや布で拭き取る。粘膜面のヒダを造影写真 (MDL: Fig.304) と比較して観察する。大弯に沿って粗大なヒダ fold, Falte が縦走する。胃の 3 部における粘膜ヒダの違いをよく頭に入れる。胃小窩 (Gastric foveolae) は分かりにくいかも知れない。粘膜をできるだけ剥がして胃の筋層3 層を確認する。C 領域を中心に行う。幽門括約筋は明瞭だが、噴門はどうだろうか。斜走筋が噴門に集まることが確認できるライヘがあれば教員に報告してほしい。胃と食道を切り離してはいけない。噴門は逆流しやすい部位だが、胃内圧が高いことを応用して手術で治すのは比較的やさしい (食道アカラシアの手術)。どこをどうしたらいいか。
Stomach 胃
Greater curvature 大弯 295
Cardiac orifice 噴門 296
Cardia 噴門部 296
Body 胃体 (部) 296
Pylorus 幽門 296
(pyloric)Antrum 幽門洞 (しばしば幽門部と同義) 296
Pyloric sphincter muscle 幽門括約筋 296
十二指腸ではループの外まわりから切開を入れて、典型的な輪状ヒダを観察する。絨毛はこのヒダの辺縁に並ぶ。膵頭部を前面から必要最小限で崩しながら、総胆管、膵管 (ウィルズング管)、副膵管 (サントリーニ管) を剖出する (Fig.318)。サカナの骨のように膵管枝が配列する。剖出した総胆管と膵管が開口するファーター乳頭 (大十二指腸乳頭) を確認する。中にオッデイ括約筋がある。胆膵管合流異常が認められたら報告する (Fig.318-324)。合流異常の型によっては高率に胆管癌を発症する。副膵管は小十二指腸乳頭に開口したか。膵頭部の膵管の枝分れには変異が多い。膵の発生と膵管、副膵管の位置関係はラングマンp.232-233 参照(しかし腹側膵が単純に背側膵の後方に張り付いたのではないことが明らかにされつつある:両者の境界は入り組んでいる)。なお、十二指腸球部は十二指腸上部の胃側大部分を指す。生体では十二指腸球部の右下縁に、鋭い上十二指腸角 (SDA) がある (内視鏡ビデオ参照)。
Duodenum 十二指腸 316
Superior part(portion) 第 1 部 (上部) 317
Descending part(portion) 第 2 部 (下行部) 318
Horizontal part(portion) 第 3 部 (水平部) 318
Ascending part(portion) 第 4 部 (上行部) 318
Circular fold 輪状ヒダ 318
Common bile duct 総胆管 318
(Main)Pancreatic duct 膵管
(ウィルズング管 Wirsung's) 318Accessory pancreatic duct 副膵管
(サントリーニ管 Santorini's) 318Greater duodenal papilla 大十二指腸乳頭
(ファーター乳頭 Vater's) 318Sphincter at duodenal papilla オッディ括約筋 (Oddi's) 319
Lesser duodenal papilla 小十二指腸乳頭 318
回腸内面で、米粒様の集合リンパ小節 (パイエル板 Peyer's) が見つかったら報告する。切開した腸間膜付着対側に多いという。高齢者では、退縮して不明瞭。
回盲部の内景を観察するため、血管のない側つまり自由ヒモから盲腸とterminal ileum、Ileumende(回腸末端を指す慣用名) を切開して、バウヒン弁 (回盲弁) と虫垂口を確認する (Fig.335)。横行結腸で 3 本の結腸ヒモ、結腸膨起、結腸膨起と結腸膨起の間の半月ヒダを確認する (Fig.341)。アッペ (虫切) 天国日本の虫垂切除痕とまれな先天性虫垂欠損をマクロで鑑別するのは案外むずかしい。直腸の内景と直腸指診:p.174 参照。
Ileum 回腸 340
Ileocecal junction 回盲部 335
Cecum 盲腸 335
Ileocecal valve 回盲弁 (バウヒン弁 Bauchin's) 335
Appendix 虫垂 335
Orifice of appendix 虫垂口 335
Transverse colon 横行結腸 341
Taenia 結腸ヒモ 341
Taenia libera 自由ヒモ 341
Taenia mesocolica 間膜ヒモ 341
Taenia omentalis 大網ヒモ 341
Haustra
ハウストラ 結腸膨起 −ぼうき 335Semilunar fold 半月ヒダ 335
ここで腹部断面のイメージができるかどうか、友人を透視しながら繰返し頭の中で再現する。そのためには、第 1 腰椎体の高さ、第 2 腰椎体の高さと決めて、集中的に同一平面を剖出・観察する必要がある (Fig.370-373)。最初から教科書の図を覚えても短期記憶にしかならず、また応用が効かない。
ビデオで 『胃上部早期癌の手術』 を供覧する。次のような手順で作業が進む。
<手術のストーリー>
(腹膜腔を開放後) (左下から)
↓
左右胃大網動脈にクリップ 膵前筋膜の剥離、膵の露出
↓ ↓
肝十二指腸間膜の開放 横行結腸間膜の剥離
↓ ↓
右胃動脈の結紮と切離 胃大網動脈の切離
↓ ↓
小網切開 大網の切除
↓ ↓
腹部食道の露出, 切離 胃幽門部の切離 (噴門側 3/4 を切除)、
残胃断端の縫合
↓ ↓
脾を前方へ脱転、短胃動脈の結紮と切離 脾門部から脾動脈根部の郭清
↓ ↓
左胃動脈の結紮と切離 消化管再建
(右上へ)
6.3.3 下腸間膜動脈 (Fig.331,334)
最初に、岬角前方の大動脈分岐部前面で仙骨前神経 (上-下腹神経叢) を見つけ、テーピングして温存する (Fig.344,365)。仙骨前神経から下方に続く左右の下腹神経、さらに下外側方に続く骨盤神経叢 (下-下腹神経叢) の層 (シヒト) は、すでに多くのライヘでスタッフが剥がして示説しているはずだ。
小骨盤腔の腹膜は、腹膜と骨盤内臓の位置関係を失うので安易に剥がしてはいけない。結腸の後方では、腎周囲の腎筋膜と脂肪被膜を温存する。尿管や精巣 (卵巣) 動脈も腎筋膜の深側に温存されているはずだ。消化管とは層が異なることを認識する。
Promontory
こうかく 岬角 (仙骨の) 385 PromontoriumPresacral nerve 仙骨前神経 456,344
(正式には:Superior hypogastric plexus,上-下腹神経叢
じょうかふく−)Hypogastric nerve 下腹神経 456
Pelvic plexus 骨盤神経叢 456,344
(昔は:Inferior hypogastric plexus、下-下腹神経叢
かかふく−)Testicular (Spermatic) artery 精巣動脈 345
Ovarian artery 卵巣動脈 344
左半結腸の血管を剖出する(左半結腸と右半結腸の境界は横行結腸にあり、親動脈が左右で異なる:生体ではその境界にほぼ一致して「キャノンの収縮輪」が見られる)。あまり末梢 (腸管側) にこだわらず、下腸間膜動脈 (IMA) 根部に近い部分から始め、できるだけ早く IMA 根部に到達する。上直腸動脈 (旧名:上痔動脈) は確実に温存する (Fig.453,454)。伴走する静脈を上方に追及すると、次第に動脈から離れて下腸間膜静脈にまとまる (Fig.455)。下腸間膜静脈は十二指腸空腸曲の側方に腹膜ヒダを盛り上げ、膵後方に至り、上腸間膜静脈・脾静脈と様々な形で合流して門脈を形成する (Fig.298,p.162)。
Celiac trunk (Celiac axis)・SMA・IMAの各根部と門脈が明らかになっていることを目標にする。大動脈周囲の神経叢を下方まで完全に剥離・除去すると性機能障害を起こす。Aortaと IVC まわりの大動脈周囲リンパ節と腰リンパ本幹もなるべく温存する (Fig.369)。
Colon 結腸 329
Inferior mesenteric artery 下腸間膜動脈 345
A. mesenterica inferiorSuperior renal artery 上直腸動脈 453
Inferior mesenteric vein 下腸間膜静脈 455
Superior mesenteric vein 上腸間膜静脈 298
Splenic vein 脾静脈 298
Portal vein 門脈 298
Para-aortic lymph nodes 大動脈周囲リンパ節 344 (正式には大動脈傍−)
Lumbar lymphatic trunk 腰リンパ本幹 344
6.4 後腹膜臓器
正しくは腹膜後器官。腹膜腔の後壁を作る壁側腹膜、そこから立上がる腸間膜という腹膜腔の構成を復習する (Fig.288,289,371-373)。これから腹膜腔の後方、つまり後腹膜腔 (腹膜後隙) を剖出するが、「腔」があるわけではない。
Peritoneal cavity 腹膜腔 289
Parietal peritoneum 壁側腹膜 289
Mesentery 腸間膜 291
Mesenterium6.4.1 腎臓・副腎・尿管 (Fig.343,348,355)
壁側腹膜の後方にゲロータ腎筋膜がある (Fig.372)。この腎筋膜は腎と尿管を前後から包んで小骨盤腔まで続いている。壁側腹膜の後方で体壁までの範囲のゆるい結合組織層を、腹膜後隙とか後腹膜腔と呼ぶ (腎筋膜に包まれた空間を含む)。以下、必要に応じて、腹部消化管を左右に寄せながら作業する。まだ摘出しない。
Renal fascia (Gerota's) 腎筋膜 372
Pelvic cavity 小骨盤腔 387
Retroperitoneal space 後腹膜腔 (腹膜後隙) 343
1) まず尿管や精巣 (卵巣) 動脈を剖出する (Fig.343,344)。この過程で、腎筋膜の下方に続く部分が崩れていく。腎前面に腎筋膜が残っていれば剥がし、腎筋膜と腎の間にある厚い脂肪被膜を除去する。ライヘの副腎はぼろぼろとくずれやすく、また近接する腹腔神経節と似ている。副腎や腹腔神経節を損傷しないよう注意する。
Ureter 尿管 343
Testicular (Spermatic) artery 精巣動脈 343
Ovarian artery 卵巣動脈 344
Perirenal fat (Adipose capsule of kidney) 腎脂肪被膜 344
Adrenal (Suprarenal) gland 副腎
die Nebenniere 344Celiac ganglia 腹腔神経節 344
Sup./Middle/Inf. suprarenal a. 上/中/下副腎動脈 348
Inferior phrenic artery 下横隔動脈 345
(Urinary) Bladder 膀胱 368
die Harnblase, Vesica urinaria4) 卵巣ないし精巣の血管は温存されているか。卵巣/精巣静脈は、左は腎静脈
に右はIVCに注ぐ。
Kidney 腎臓 349
die Niere,RenRenal pelvis 腎盤 (腎盂) 356
Renal hilum 腎門 353
Hilus renalisRenal pyramid 腎錐体 355
Cortex/Medulla 皮質/髄質 355
Renal papilla 腎乳頭 356
(エコーでもここまで確認してみよう)Renal calyx 腎杯 356
Renal artery/vein 腎動/静脈 352
6.4.2 横隔膜起始と裂孔 (Fig.229,360,365,369)
1) 横隔膜は平らな隔壁ではなくてドームである。開胸する時に横隔膜の前方起始を観察したことを覚えているか (Fig.162,p.114)。横隔膜後部は脊柱と後体壁から起始する (Fig.360)。脊柱に沿って横隔膜脚を剖出。後体壁では、大腰筋と腰方形筋をまたいで第 11,12 肋骨に付く弓状靭帯(腱弓という構造)から、横隔膜が起始している (Fig.360,362)。この弓状靭帯起始部と横隔膜脚の間は腰肋三角と呼ばれ、ボホダレック孔ヘルニアが起こる部位として知られる (ラングマン p.160-163)。横隔膜に分布する下横隔動脈の全体像を確認する (Fig.364)。胃 C 領域や副腎にも枝を出していることを忘れずに (Fig.293,345)。
ここで重要な作業を行う。右側で肋骨と弓状靭帯から横隔膜を剥がし取り、正中線に向けてめくり上げる。この結果、胸腔と腹腔がひと続きになり、胸管や大内臓神経を剖出する視野ができる。
Diaphragm 横隔膜 245
*Left/Right crus *横隔膜脚 360
Psoas major muscle 大腰筋 362
*Quadratus lumborum muscle *腰方形筋 362
*Arcuate ligament *弓状靭帯 363
Lumbocostal triangle
(Bochdalec hiatus) 腰肋三角 (ボホダレック孔) 363Inferior phrenic artery 下横隔動脈 364
2) 胸管を腎動脈後方まで追求する最後のチャンスである。食道と大動脈の間で確認した胸管をたどって、乳び槽 (胸管起始部の膨大部) を確認する (Fig.242,344)。ここまで慎重にやっていれば、数本の腸リンパ本幹と腰リンパ本幹を胸管につなげることができる。多くの教科書では胸管が大動脈裂孔を通過すると記載されているが、必ずしもそうではない。胸管の剖出過程で、副腎周囲や横隔膜の食道裂孔・大静脈孔なども剖出されていく (Fig.362)。
大小の内臓神経を胸部で確認し (Fig.233,237)、下方に追及して腹腔神経節につないでいく (Fig.365)。大動脈分岐部で下腹神経を再確認する。これに続く腹大動脈周囲の自律神経叢を剖出する (Fig.344)。同時に、大動脈周囲リンパ節 (胃癌の 16 番、解剖で言う腰リンパ節) と太い腰リンパ本幹を確認する (Fig.369)。太いリンパ管がきれいに剖出できたら、供覧するので報告すること。胃のリンパ管系が、いったん腎血管の高さまで下がってから胸管として上行することを復習する。この 10 年、全国の腹部外科医が 16 番の郭清にしのぎをけずってきた。しかし必ずしも生存率の改善にはつながらず、むしろ離床を遅らせ、インポと激しい下痢を生み出し、患者のQOLを下げた。現在は反省期である。
Thoracic duct 胸管 242
Cisterna chyli 乳び槽 242
Intestinal lymph trunk 腸リンパ本幹 344
Lumbar lymphatic trunk 腰リンパ本幹 344
Aortic hiatus 大動脈裂孔 362,229
Esophageal hiatus 食道裂孔 362,229
Inferior vena cava foramen 大静脈孔 362,229
Greater/*Lesser splanchnic nerve 大/*小内臓神経 233
Celiac ganglia 腹腔神経節 365
Hypogastric nerve 下腹神経 456 ,344
Para-aortic lymph nodes 大動脈周囲リンパ節 344
3) 噴門の括約作用については検討しているだろうか。横隔膜に前から割を入れて、食道裂孔を慎重に開放する (Fig.229,362)。ピンチコックアクション (内視鏡の用語) が起こるだけに、横隔膜は食道に密着して狭めている。3(4) か所の食道狭窄部を復習する (p.139)。噴門周囲の鞘状の結合組織が食道裂孔を通って上方にドーム状に突出している。胃食道接合部 EC junction と胃窮隆 (噴門部) にはさまれたヒス角 (噴門切痕) はライヘでは明瞭ではない。(Fig.295)。胃噴門部が上方に脱出した食道裂孔ヘルニアの例があれば、みなで観察するので報告すること。最後に大静脈孔・食道裂孔・大動脈裂孔の高さを椎体と対応させて確認する。参考書のごとく Th8, 10, 12 だろうか (Fig.227)。
Cardiac orifice 噴門 296
Esophagus 食道 229
*Cardiac notch *噴門切痕 (ヒス角) 295
4) 後縦隔の復習をするいい機会でもある (p.137-141)。左反回神経の全経過が剖出されているかどうか確認する (Fig.715)。食道前面に心膜の残りがあれば除去し、食道と迷走神経を全長にわたって明らかにする (Fig.237)。奇静脈系、交感神経幹、肋間動静脈・神経を剖出する (Fig.234,237)。胸部交感神経幹を頚部と連続させ、星状神経節を剖出してその位置を理解する (第 1 肋骨との関係 p.138, 付図p.139、胸膜頂がどこにあったかも思い出せ)(Fig.164)。椎骨動脈も再確認の上、横突孔を開いて上方に剖出してみる (Fig.721)。
Posterior mediastinum 後縦隔 148o
Recurrent laryngeal nerve 反回神経 237
Vagus nerve 迷走神経 237
Azygos vein 奇静脈 234
Sympathetic trunk 交感神経幹 237
Intercostal artery/nerve 肋間動脈/神経 234
Stellate ganglion
(Cervicothoracic ggl.)星状神経節 (頚胸神経節) 238Cupula of pleura 胸膜頂 164
Vertebral artery 椎骨動脈 721
Transverse foramen 横突孔 643
6.4.3 大動脈枝 (Fig.365,367)
1) 大腰筋をほぐして腰神経叢 (Fig.367) を剖出する作業は終えているだろうか (p.97)。腹部消化管に至る 3 本の太い動脈を再確認する。これら 3 本の動脈がどの椎骨の高さで腹大動脈から起こるかを確認するため、大動脈を脊柱から浮かすように剖出を進める。その過程で腰動脈や腰部交感神経幹が見つかる (Fig.364,365)。大動脈枝の高さ: 付図 p.187
2) 交感神経幹は仙骨前面の仙骨内臓神経 までつなげたい(Fig.365,456)。仙骨内臓神経は細いが固く、神経節も明瞭である。骨盤神経叢への交感神経入力としては腰内臓神経-下腹神経の経路がメジャーだが、仙骨内臓神経から後部子宮支帯 (p.183) を通る線維なども少なからぬ役割がありそうだ。小骨盤の腹膜はまだできるだけ残す。
Psoas major muscle 大腰筋 362
Lumbar plexus 腰神経叢 367
Abdominal aorta 腹大動脈 364
Lumbar artery 腰動脈 364
Lumbar sympathtic trunk 腰部交感神経幹 365
Intervertebral foramen 椎間孔 674
Sympathetic trunk 交感神経幹 365
Sacral splanchnic nerve 仙骨内臓神経 456
Pelvic plexus 骨盤神経叢 456,344
(昔はInferior hypogastric plexus、下-下腹神経叢
かかふく−)Lumbar splanchnic nerve 腰内臓神経 328
Hypogastric nerve 下腹神経 456,344
3) 胸腹部の大動脈の前壁ないし側壁を部分的に開けて、内景と壁の厚さを観察する。典型的なアテロatherosclerosis(動脈硬化の 1 つ) やアノイリスマ aneurysm(動脈瘤) は報告すること。ここで再び、腹部断面のイメージができるかどうか、繰返し頭の中で再現する (p.173)。
■付図 基靭帯と骨盤神経叢 Fig.456も参照
(「臨床解剖学ノ−ト小骨盤編」の図を改変)
■付図 骨盤内蔵と骨盤神経叢
(佐藤達夫教授の総説の図を改変:巻末の参考書紹介を参照)
6.5 骨盤内臓
6.5.1 原位置の骨盤内臓 (Fig.368,399,426,450,456)
直腸は病変の多い部位であるから、きちんと勉強したい。直腸内に Kot(便) がたまっていれば処置する。Sigma (sigmoid colon)-Rs 境界で切断して Kot をしぼり出す。この際に骨盤内をよごさないように注意する。Kot は汚物流しに捨てる (通常の流しではない)。肛門に綿が詰めてあれば除去し、直腸指診を行なってみる。男性なら前立腺がすぐ前にある。明らかな痔核があれば報告する。綿と Kot のために直腸の粘膜面はしばしば平滑になっている (Fig.450)。Rs は岬角から S2 下縁までの範囲、Ra は S2 下縁から腹膜反転部までの範囲である。腹膜反転部から肛門挙筋付着部までの範囲を Rb と呼ぶ。生体の直腸指診は、トイレで自分で是非やってもらいたい。指がスポッと入る部位が肛門挙筋付着部、つまり Rb-P 境界である。指がスポッと入る手前では、指の周囲に筋の圧力を感じる。そこが肛門管 (P) である。小児用の坐薬を配るので、各自で体験してみよう。男性では前立腺の固さを指先で感じることも忘れてはいけない:指診の目的は直腸癌と前立腺癌のスクリ−ニングであり、特に前立腺癌は近年激増している。
Rectum 直腸 (Rs,Ra,Rb,P) 450
Anus 肛門 426
Promontory 岬角 441
Levator ani muscle 肛門挙筋 426,450
すでに坐骨直腸窩の解剖は終わっているだろうか (Fig.426,457,464,p.194)。皮下肛門括約筋は皮膚を剥がしながら切断面を観察する。まだ坐骨直腸窩に脂肪が残っていれば、できるだけ除去して下方から骨盤隔膜を露出させる (Fig.461)。切半する前に、仙結節靭帯と仙棘靭帯を確認しておく。仙棘靭帯の内面に尾骨筋がある (Fig.392,428)。
Ischiorectal fossa 坐骨直腸窩 426,457
Anal sphincter muscle 肛門括約筋 426,450
Pelvic diaphragm 骨盤隔膜 461
Sacrotuberous ligament 仙結節靭帯 392
Sacrospinous ligament 仙棘靭帯 391
*Coccygeus muscle *尾骨筋 428
膀胱の上方・腹壁内面にわずかに残る腹膜面で、正中臍ヒダ (正中臍索=尿膜管の遺残) と内側臍ヒダ (臍動脈索) を確認する (Fig.368,224 ラングマン p.196,255)。膀胱頂に接して尿膜管の遺残腔を認めることがある。臍動脈索は下方で上膀胱動脈に続く (Fig.441)。上膀胱動脈はしばしば小骨盤腔内において、上に凸の腹膜ヒダを形成する。この腹膜ヒダを膀胱下腹筋膜と呼ぶ。その下方には、この腹膜ヒダとほぼ同じ面をなして骨盤神経叢 (Fig.456) がある。
Median/Medial/Lateral umbilical fold 正中/内側/外側臍ヒダ 368
さいUrachus 尿膜管 443
Ligament of umbilical artery 臍動脈索
さい−さく 441Superior vesical artery 上膀胱動脈 441
すでに糸でラベリングしてある下腹神経 (p.173) を、大動脈分岐部から下方にたどる。下腹神経は腹膜のすぐ外面に張りついて下行する。骨盤神経叢の位置はすでにわかっているだろうか。腹膜をなるべく 1 枚のまま剥がして断片化しないことが、オリエンテーションを付ける上で重要だ。視野が狭いので、詳細は骨盤切半後に解剖する (p.187)。
Hypogastric nerve 下腹神経 456 ,344
Pelvic plexus 骨盤神経叢 456 ,344
(Inferior hypogastric plexus、下-下腹神経叢)
小骨盤腔に残る壁側腹膜を断片化しないようにできるだけ 1 枚としてめくる (Fig.394)。特に膀胱・子宮・直腸の間の陥凹から慎重に剥がし、どこか 1 点だけで付着させておく。子宮広間膜の前後の腹膜もそれぞれ 1 枚として剥がす (Fig.399,401)。
小骨盤内の内臓と、脈管神経路 (導通路) の配置を知るため、フィンガーディセクション (指先による解剖) を行なう。前後に並ぶ膀胱・子宮・直腸の間と、3 臓器の外側に、最初は慎重に次第に大胆に指を入れる (付図 p.173上, p.178下参照)。3 臓器の外側にやや固い索状物を求める。それが脈管神経路、すなわち基靭帯 (中部子宮支帯) と直腸外側靭帯である。内側ー外側方向に走る索状の脈管神経路と直交するように、骨盤神経叢を含む層 (シヒト) がある。
Parietal peritoneum 壁側腹膜 394
(Urinary) Bladder 膀胱 394
Uterus 子宮 394
Rectum 直腸 (Rs,Ra,Rb,P) 394
Broad ligament of uterus 子宮広間膜
こうかんまく399 Lig. latum uteriCardinal ligament of uterus 基靭帯
き− 491Lateral ligament of the rectum 直腸外側/直腸側方靭帯 419
6.5.2 原位置の骨盤内臓 : 女性 (Fig.394,401,410,419)
腹膜実習の時に観察した項目を再確認する。そのためにはライヘを選ばなくて はならない。衝立状の子宮広間膜の上縁には卵管があり、下縁には基靭帯がある (Fig.401,419)(C.D.Clementeの図は今1つ分かりにくい 、付図p.173上参照)。
Uterus 子宮 401
Broad ligament of uterus 子宮広間膜 399
Lig. latum uteriRound ligament of uterus 子宮円靭帯 399
Lig. teres uteriOvary 卵巣 401
Ovarium ↑=子宮円索*Fimbriae of uterine tube *卵管采 401
らんかんさいUterine tube 卵管 401
子宮広間膜は卵管に吊られた巨大な腹膜ヒダだ。その腹膜はすでに剥がしている。残っていても、解剖開始前にまず子宮支帯の配置を知識として整理する。
「子宮支帯」 は日本で頻用されるノミナである。まず、前部子宮支帯(膀胱子宮靭帯など)を切断して子宮と膀胱を大きく引き離す。やや不明瞭な後部子宮支帯(直腸膣靭帯,仙骨子宮靭帯など:付図p.178)を切断して子宮と直腸を引き離すと、ディノビエ筋膜という疎性結合組織層が下方に展開する。子宮広間膜の基部を指で探って、静脈にうっ滞した血液でコリコリした基靭帯 (中部子宮支帯) を同定し、ヒモか糸でラベリングして温存する。これが広範子宮全摘術ならば尿管トンネル作成という作業が続く。
*(Mesometrium) *子宮支帯 (英語圏と独語圏で大きな違いがある) 419
*Vesico-uterine lig.(Ant. lig.) *前部子宮支帯 419
Cardinal lig. 基靭帯 (中部子宮支帯の主要部) 419
*Recto-vaginal lig.(Post.lig.) *後部子宮支帯(仙骨子宮靭帯が中心) 419
骨盤神経叢や上膀胱動脈を温存しながら、尿管を膀胱につなげる (Fig.397)。蔓状に発達した静脈は、視野を塞ぐようならある程度刈り詰めていい。詳細は切半してから十分にできるから、今は無理しないこと。ここでは位置関係の把握に重点を置く。膀胱鏡 TUR ビデオを流す。
Pelvic plexus 骨盤神経叢 456,344
(Inferior hypogastric plexus) (下-下腹神経叢) 456,344
Superior vesical artery 上膀胱動脈 414
Ureter 尿管 397
(Urinary)Bladder 膀胱 397
総腸骨動脈を確認し、さらに外・内腸骨動脈を剖出する (Fig.410)。周囲のリンパ節は子宮癌取扱い規約で重要なもので、可能な範囲で残しておく (Fig.414)。特に閉鎖動脈根部で発達する。内腸骨動脈の枝をたどり、基靭帯の中に入る血管を確認する (Fig.405,409)。膀胱に至る血管も剖出する。視野が狭いので、できる範囲で行ない無理はしない。診断や手術の場合と同じように、原位置でオリエンテーションを付けるのが目的である。
Common iliac artery 総腸骨動脈 410
Int./Ext. iliac artery 内/外腸骨動脈 410
Obturator artery 閉鎖動脈 410
女性外陰部を観察する最後の大切な機会だ。女性外陰部のヒダには個人差が大きく、外尿道口の位置は図譜ほどクリアではない。臨床実習で<腟導尿?>をして大恥をかかないように、女性外尿道口に細いネラトンカテ−テルを挿入してみよう(導尿)。なお、男性(付図p.179)では死後変化のため挿入できない。
腟内に綿が詰めてあれば除去し、指で内診してダグラス窩 Douglas' の位置を腟から確認してみる。腟の内診がこれほど落ち着いてできる機会はない。子宮腟部の突出と前後の腟円蓋だけでも確認したい(死後の清拭
せいしき の際に詰められた綿で圧迫されて、内景は原型を留めていないことが多い。適切なライヘをアナウンスするので集まれ)。外陰部では慎重に皮膚ないし粘膜を剥がして、豆粒状の大前庭腺 (バルトリン腺Bartholin's) を探してみる (Fig.430)。Vagina 腟 405
die SheideRectouterine pouch (Douglas'−) 直腸子宮窩 (ダグラス窩) 394
(Ant./Post.) Fornix of vagina (前/後) 腟円蓋 402
*Greater vestibular gl. *大前庭腺 (バルトリン腺) 430
分娩時に、子供が頭から出ていく通路 (産道) の中で、どこが広いか狭いかを考えてみる (Fig.382-389,432-438)。児頭は前後に長い。骨盤の前後径と横径を比較して、長い方に児頭の前後径を合せて移動するしかない。だから児頭は回旋する。骨盤の模型で<取り出し方>を練習しよう:昔は国試の実技試験だった(第8章、付図 p.237 を参照)。
産道としての骨盤 : みなさんに比べて数値が小さ過ぎる ? (82 年のデータ)
前後径 横径
骨盤入口部 岬角中央-恥骨結合後面中央上縁
11cm 13cm 左右最大距離骨盤潤部 2-3 仙椎間-恥骨結合後面中央
13.5 12.5 寛骨臼内面中央間骨盤峡部 仙骨下端-恥骨結合下縁中央
11.5 10.5 坐骨棘間骨盤出口部 尾骨先端-恥骨結合下縁中央
11.5 11 坐骨結節間
■付図 骨盤の各部:入口部、潤部、狭部、出口部
(産科婦人科学体系の図を改変)
■付図 子宮を中心とした骨盤内結合組織 (骨盤内筋膜)の模式図
Fig.419も参照
(産科婦人科学体系の図を改変)
■付図 導尿 Fig.445も参照
(エキスパ−トナ−スの図を改変)
*下肢の方向を固定すると陰茎陰嚢角部(屈曲部の1つ)が痛い(びらんを生ずる)。
後方(図、下方)の屈曲部は全麻下で初めてのばすことが出来る(→TURのビデオ)。
■付図 分娩時の会陰切開 Fig.427も参照
(産科婦人科学体系の図を改変)
6.5.3 原位置の骨盤内臓 : 男性 (Fig.441,468)
女性同様、現位置でオリエンテーションをつける。
鼡径部で解剖した精索 (p.91) を骨盤内に追及して尿道につなぐ (Fig.254,448,468)。精索内の精管はすでに剖出しているだろうか (Fig.271)。膀胱を骨盤壁から後方に剥がしながら下方に剖出を進める。発達した蔓状の静脈叢があり、サントリーニ静脈叢と呼ばれる (Fig.441,460)。内腸骨動脈の本幹から枝をたどり、上下の膀胱動脈を剖出する。以上の作業は視野が狭いので、できる範囲で行なう (Fig.368,441)。詳細は骨盤を切半してからでいい。メスを多用してはいけない。
Spermatic cord 精索 254
Urethra 尿道 468
Ductus/Vas deferens 精管 448
Internal iliac artery 内腸骨動脈 441
Superior/Inferior vesical artery 上/下膀胱動脈 441
陰茎では、陰茎海綿体と尿道海綿体を分離する (Fig.468)。海綿体に分布する血管・神経を温存する。陰茎脚で尿道は屈曲している (Fig.445)。導尿手技を考えてみよ (付図 p.185)。クーパー腺 (尿道球腺) を含めて海綿体の基部の詳細な観察は骨盤を切半してからの方がいい。陰嚢の解剖は、筋膜(p.249、付図p.93)を順番に剥がして精巣を分離し、精巣動静脈を温存、精巣と精巣上体を露出させる (Fig.272)。前立腺ガンを制御するための除睾術は、ノイヘが最初に行う手術の1つだ。精巣上体の頭 Head と尾 Tailをきちんと区別し、精管への連絡を確認する。
すでに一側で解剖が進んでいるかも知れない(p.92)。割を入れて精巣と精巣上体の内景を観察する (Fig.276,278)。精巣は丈夫な 白膜Tunica albuginea に包まれている (Fig.276)。海綿体を包む強靱な膜も白膜と呼ぶ。水の中に精細管を一続きでほぐし出すことができれば、みなで観察するので報告する。
Penis (Shaft of penis) 陰茎 468
Corpus cavernosum penis 陰茎海綿体 468
Corpus spongiosum penis 尿道海綿体 468
Crus penis 陰茎脚 468
*Bulbourethral gland (Cowper) *尿道球腺 (クーパー腺) 468
Scrotum 陰嚢 271
der HodensackTestis 精巣,睾丸 272
die HodenEpididymis 精巣上体 272
Tunica albuginea of testis 白膜 (精巣の)
はくまく 276
6.5.4 消化管の摘出と内腔の観察 (Fig.345)
内景観察を行なった後 (p.165)、以下の手順で消化管の摘出を行うことがある。
1) 消化管を EC junction (食道胃境界)と Sigma-Rs 境界の 2 箇所で結紮切断。
2) Celiac trunk、SMA、IMA を Aorta 近くで切断、腹部消化器系を一塊 en mass,en bloc として摘出する。リンパ管、自律神経系も同時に切れる。門脈系は切る必要はない。すでに肝は摘出されている。
3) 摘出の障害になる血管がこの 3 本以外にあれば、その血管を十分に同定・理解した後に切る。不明ならスタッフに聞く。
6.5.5 腰部離断と骨盤切半 (Fig.396,445)
大腰筋と腰神経叢 (p.94-95) の剖出が終わってから行なう。次のいずれの方法で行ってもよい。保健医療学部の学生とも相談してほしい。
1) 腹部内臓とその血管・神経を復習のため今後も原位置に残す場合
L5-S1 の椎間円板で切断する。腰神経叢(Fig.366)の枝を復習し、大腿神経、閉鎖神経、腰仙骨神経幹の 3 本は糸でラベルする。2 箇所に糸を付けて間を切断する。尿管、精巣(卵巣)動静脈もL5−S1の高さで同様に処置する。S状結腸は結紮切断するが、EC junction (食道胃境界)は切らない。
2) 腹部内臓をすべて摘出した場合(上述6.5.4参照)
T12-L1 の椎間円板で切断する。腰神経叢はほぼ全部が下肢側に付いて温存される。大動脈、横隔膜などの軟部はメスで一割する。腎臓は下肢側に付ける。割線がジグザグすると後でつながりを見る時に困るので、直線的に横断する。
上述の 1)、2) いずれにしても、腰部離断後はすべての骨盤構造を完全に正中で切半する。陰茎もきちんと正中で切半する。必ずしも直線にはならない。断面で、骨盤内臓の配置を再確認する。Rs から Pにかけての内景は保存されているだろうか (Fig.450,451)。まだ Kot があれば汚物流しで洗う。
*骨盤内臓を切半せずに左右どちらか一側に付ける場合
希望する班は申し出る。一側に寄せる場合、注意して行なわないと反対側の
血管・神経を完全にこわしてしまう。反対側の血管・神経をきちんと剖出し、
坐骨直腸窩 (Fig.427,465) の清掃を終えてから内臓を処理する。
脊柱の断面で、椎間円板を観察し、線維輪と髄核を区別する (Fig.674)。内面から脊髄神経根と椎間孔を確認する。髄核が後縦靭帯を破って脊柱管に突出する椎間板ヘルニアはないか。付図pp.106,110 及び Fig.673参照
Intervertebral discs 椎間円板 674
*Anulus fibrosus *線維輪 674
*Nucleus pulposus *髄核 674
Root of spinal nerve 脊髄神経根 687,688
Intervertebral foramen 椎間孔 674
Posterior longitudinal ligament後縦靭帯 674
Ventral canal 脊柱管 687o
下肢の解剖は進んでいるだろうか。もう一側の下肢の進行はどうか。進行にアンバランスがあれば遅れている方は大腿部か膝関節で下肢を切断してもいい。
6.5.6 骨盤内臓の導通路(脈管神経路) (Fig.404,441,444,456)
男女それぞれのライヘを観察すること。最初に下腹神経と骨盤内臓神経と共に骨盤神経叢を剖出して温存する (Fig.456)。さらに精嚢と前立腺、腟など、今まで見えにくかった構造を同定・剖出する (Fig.409,439)。
Hypogastric nerve 下腹神経 456,344
Pelvic splanchnic nerves 骨盤内臓神経 456
Pelvic plexus 骨盤神経叢 456,344
(Inferior hypogastric plexus) (下-下腹神経叢) 456,344
Seminal vesicle 精嚢 439
Prostate gland 前立腺 439
ProstataVagina 腟 409
die Sheide女性のライヘでは以下の順に確認せよ。
1) 子宮の前傾前屈 Anteversio-anteflexio を確認する:膣に対して前傾、頚部に対して体部が前屈 (Fig.394)。
子宮がいかに固定されているか、つまり子宮支帯 (Fig.419) を改めて復習する。
2) 骨盤壁と子宮頚部を結ぶ脈管・神経路、すなわち基靭帯 (中部子宮支帯) を確認する。すでに内部の血管・神経が剖出されているかも知れない。まだならば、基靭帯を剖出して子宮の血管・神経を露出させる (Fig.405)。
3) ダグラス窩に接する後腟円蓋 を確認する (Fig.394)。後腟円蓋は前腟円蓋より高いはずだ。
子宮頚管と腟は分娩時に太い一連の管になり、通過管と呼ばれる。若き日に活躍した子宮を思う。
*(Mesometrium) *子宮支帯 419
Cardinal ligament of uterus 基靭帯 419
Rectouterine pouch 直腸子宮窩 394
Excavatio rectouterina(Douglas' pouch) (ダグラス窩)
(Ant./Post.) Fornix of vagina (前/後) 腟円蓋 402
Ovary 卵巣 401
OvariumUterine tube 卵管 401
Fundus of uterus 子宮底 404
Body of uterus 子宮体 404
Cervix of uterus 子宮頚部 404
Cervical canal 子宮頚管 404
男性のライヘでは、まず、前立腺を恥骨に固定する強靭な恥骨前立腺靭帯を切断し授動する (Fig.439)。サントリーニ静脈叢が発達しているかもしれない (Fig.441,460)。前立腺の下方で精管を尿道につなげ、開口部を確認する (Fig.444)。前立腺は少なくとも外・中間・内の 3 葉 (腺) から構成されるが、解剖体の断面で確認するのは困難だ (Fig.444,449)。男性の宿命である前立腺肥大 BPH(BPH は内腺由来、癌は外腺由来) の典型例があれば供覧する。男性では精嚢周辺で骨盤神経叢が最も発達している。
膀胱の中で尿道口と尿管口を見つけ、それらに囲まれたやや平滑な膀胱三角を確認する (Fig.442,446)。この部分は、他の膀胱壁と異なり中腎管に由来する (ラングマン p.258-262)。粘膜ヒダの違いに注目したい。
Prostate gland 前立腺 439
ProstataPubis 恥骨 439
Puboprostatic ligament 恥骨前立腺靭帯 439
Ductus/Vas deferens 精管 444
Urethra 尿道 444
Pelvic plexus 骨盤神経叢 456,344
(Inferior hypogastric plexus) (下-下腹神経叢) 456,344
(Urinary) Bladder 膀胱 442
Orifice of ureter 尿管口 444
(Ext./Int.) Urethral orifice (外/内) 尿道口 446
Trigone of bladder 膀胱三角 442
内腸骨動脈の内臓枝を確認・整理する。動脈を確認する過程で骨盤神経叢が壊れて行く (Fig.441,456)。こういう手術は患者の QOL を損なう。子宮動脈と下膀胱動脈は太い。中直腸動脈 (中痔動脈) は有名だが、実は半数近くで欠如する。一般に骨盤内臓の静脈は、蔓状静脈叢(
まんじょう−:草のつるの意味)と呼ばれる迂曲蛇行した網状の形態を示す(静脈弁はない)。下直腸動脈 (Fig.453,454) は内陰部動脈の枝である。子宮 (癌) の所属リンパ節は、正常なライヘでは閉鎖動脈根部に多い (Fig.414)。閉鎖動脈は閉鎖神経と共に閉鎖管にはいる (Fig.418, 420,501)。大腿の内転筋群 (p.199) の間で血管・神経を再確認しておく。Internal iliac artery 内腸骨動脈 441
Uterine artery 子宮動脈 409
Inferior vesical artery 下膀胱動脈 441
Middle/Inferior rectal artery中/下直腸動脈 441,453
Internal pudendal artery 内陰部動脈 453
Obturator artery/nerve 閉鎖動脈/神経 418
Obturator canal 閉鎖管 420
6.5.7 骨盤底 (Fig.421,427,461)
坐骨直腸窩 (Fig.427,465) の脂肪は、残っていれば完全に除去し、骨盤隔膜を骨盤腔の内外から確認する (Fig.428,461)。口腔底や横隔膜同様に筋である。内面から支配神経を受ける。骨盤隔膜は肛門挙筋と尾骨筋から構成され、肛門を頂点とする下向きのドームを作る。肛門挙筋の中では恥骨に付着する部分が最も強く、恥骨直腸筋と呼ばれる (Fig.420)。日頃、最後に便を 「切る」 時に使っている。尾骨筋は仙棘靭帯の内面に密着する (Fig.421)。
Ischiorectal fossa 坐骨直腸窩 464
Pelvic diaphragm 骨盤隔膜 461
Levator ani muscle 肛門挙筋 461
*Coccygeus muscle *尾骨筋 461
Pubis 恥骨 420
Puborectalis muscle 恥骨直腸筋 420
Sacrospinous ligament 仙棘靭帯 421
骨盤隔膜の上外側縁は、腱弓を作って骨盤壁の内閉鎖筋 (の筋膜) に付着する (Fig.418,420,461)。ここを破ってしまって、坐骨直腸窩からなぜか小骨盤腔が見えるライヘはないか。恥骨直腸筋が直腸壁に合流する部分 (連合縦走筋) を丁寧に剖出し、浅深 (あるいは内外) の肛門括約筋を確認する (Fig.420,455)。非常に病気の多い部位だが解剖はおろそかになりやすい。坐骨結節に触れて位置を再確認する (Fig.421)。坐骨直腸窩にポケットを作る尿生殖隔膜 (深会陰横筋) を確かめる。陰部神経・内陰部動脈を殿部で再確認し (Fig.427,465,507)、内閉鎖筋に付着するアルコック管 Alcock(陰部神経管) を開放しながら尿生殖隔膜に進入するまで追及する (Fig.429,462)。男性で球海綿体筋・坐骨海綿体筋を剖出しよう (Fig.464)。分娩時の会陰切開で太い血管・神経を損傷しないように (付図 p.179)、坐骨結節との近接関係を頭に入れる (Fig.427,428)。女性外陰部の剖出がまだならば、大前庭腺(バルトリン腺)を探してみる (Fig.430)。余裕があれば、さらに神経・動脈を陰茎ないし陰核まで完全に追及する (Fig.427,465)。外陰部のデルマトーム(クレメンテ参照)を復習する。下肢より尾側の神経が分布する。
*Obturator internus muscle *内閉鎖筋 461
Anal sphincter muscle 肛門括約筋 420
Ischial tuberosity 坐骨結節 421
*Urogenital diaphragm *尿生殖隔膜 429,462
Pudendal nerve 陰部神経 427,465
Internal pudendal artery 内陰部動脈 427,465
Pudendal canal 陰部神経管 426,464
*Bulbospongiosus muscle *球海綿体筋 464
*Ischiocavernosus muscle *坐骨海綿体筋 464
*Greater vestibular gland *大前庭腺 (バルトリン腺) 430
Penis 陰茎 465
Clitoris 陰核 430
6.5.8 骨盤壁 (Fig.410)
骨盤壁は下肢帯だが、進行の都合ここで扱う。骨盤壁を貫通する仙骨神経叢の枝と内腸骨動脈壁側枝を剖出する (Fig.410)。骨盤隔膜が張る骨盤底は、体壁として扱われる (Fig.420)。肛門よりも尾側にも体壁があることは、胚子の解剖で示説する。
以下の順で、同定、確認する (p.95)。
3) 殿部で坐骨神経・上下の殿筋神経・陰部神経などを再確認し (Fig.507)、梨
状筋の上下から骨盤内に向けて剖出する。中からは仙骨前面を剖出して交感
神経幹 (仙骨内臓神経) を確認する。
4) 仙骨を前後から触れて前仙骨孔の位置と梨状筋の起始を確認する (Fig.418)。
5) 骨盤内から観察しながら、殿部で坐骨神経を動かして位置を確認する。
6) 骨盤神経叢・骨盤内臓神経を温存しながら、仙骨神経の根部を剖出する (Fig.456)。
Sacral/Lumbar plexus 仙骨/腰神経叢 367
Internal iliac artery 内腸骨動脈 410
Lumbosacral trunk 腰仙骨神経幹 365
Sciatic nerve 坐骨神経 507
Superior/Inferior gluteal nerve 上/下殿神経 507
Pudendal nerve 陰部神経 465
*Piriform muscle
りじょうきん *梨状筋 418Sacrum 仙骨 675
Sacral/Pelvic splanchnic nerve 仙骨/骨盤内臓神経 456
Pelvic plexus 骨盤神経叢 456,344
(Inferior hypogastric plexus, 下-下腹神経叢)
*Pelvic sacral foramen *前仙骨孔 675
Sacral nerves 仙骨神経 456
次第に、骨盤内から大坐骨孔を通して殿部の神経が見えるようにする (Fig.410,420,507)。その過程で梨状筋がくずれてもやむをえない。坐骨神経の中の腓骨神経部分はしばしば梨状筋を貫通する。仙骨神経叢の全体が見えたら Fig.366 と合せて確認する。仙結節靭帯と仙棘靭帯は残してあるだろうか (Fig.421)。梨状筋と内外の閉鎖筋は位置関係が分かりにくい。閉鎖神経の前後枝を短内転筋の前後で確認し (Fig.501,p.200)、外閉鎖筋を貫いて閉鎖孔内側の閉鎖管まで追求する (Fig.500)。骨の閉鎖孔(Fig.380)が閉鎖膜によってほとんど塞がれている様子を見るのも今しかない。大小の坐骨切痕 p.235 が靭帯と梨状筋に区切られていくつかの<孔>を作ることを確認したい。
*Greater sciatic foramen *大坐骨孔 420
Fibular nerve (腓骨神経) 513
腓骨神経という用語は正式には坐骨神経の背側成分の名称として用いる
Sacrotuberous ligament 仙結節靭帯 421
Sacrospinous ligament 仙棘靭帯 421
*Obturator internus/externus muscle *内/外閉鎖筋 418,500
Obturator nerve 閉鎖神経 501
Adductor brevis muscle 短内転筋 501
Obturator canal/foramen 閉鎖管/閉鎖孔 500
以上の過程で内腸骨動脈から骨盤壁に向かう枝 (壁側枝) も確認される (Fig.410,411)。上殿動脈と下殿動脈が圧倒的に太い。内陰部動脈と閉鎖動脈はすでに末梢が剖出されている。太い閉鎖動脈枝が恥骨内面を上行して深鼡径輪に接して冠状に走行し、大腿動脈や下腹壁動脈に続くことがある。昔はヘルニア手術の際に損傷することがあり、死冠と呼ばれた(Fig.412)。閉鎖動脈から寛骨臼 (Fig.568) に入り、大腿骨頭靭帯から骨頭に至る枝はあるか。大腿の解剖では見にくかった内側大腿回旋動脈は大腿骨上部の栄養動脈を出す (Fig.513)。その温存に頚部骨折の予後がかかっている。調べるなら今が好機だ。腸腰動脈、外側仙骨動脈などから、前仙骨孔ないし腰椎椎間孔にはいる枝はないだろうか。脊髄 (馬尾、p.109) に至る可能性がある。さらに上方で各高さの腰動脈から腰椎椎孔にはいる枝がないか。損傷すれば障害を残す動脈である。
Internal iliac artery 内腸骨動脈 410
Superior/Inferior gluteal artery 上/下殿動脈 410
Internal pudendal artery 内陰部動脈 410
Obturator artery 閉鎖動脈 410
Deep inguinal ring 深鼡径輪 410
Femoral artery 大腿動脈 501
Inferior epigastric artery 下腹壁動脈 410
Acetabulum 寛骨臼 278
*Ligament of head of femur *大腿骨頭靭帯 567
Medial circumflex femoral artery 内側大腿回旋動脈 513
*Iliolumbar artery *腸腰動脈 410
Lateral sacral artery 外側仙骨動脈 410
Intervertebral foramen 椎間孔 674
Lumbar arteries 腰動脈 364
■付図 大動脈枝の高さと脊柱 (国試頻出)
(オリジナルの図)
腹腔動脈:平均して第1腰椎上部。85%が第12胸椎下部から第1−2腰椎間の高さ。
上腸間膜動脈:平均して第1腰椎下部。85%が第1腰椎上部から第2腰椎下部の高さ。
腎動脈:平均して左右とも第2腰椎中央部。左右とも85%が第1腰椎下部から第2腰椎中央部の高さ。
下腸間膜動脈:平均して第3腰椎下部。85%が第3腰椎上部から第4腰椎上部の高さ。
大動脈分岐部:平均して第4腰椎下部。85%が第4腰椎上部から第5腰椎上部の高さ。
第 7 章 下肢・下肢帯
7.1 殿部
7.1.1 殿筋群 (Fig.511,513)
最初に、陰嚢周囲など股の間に皮膚が残っていれば完全に除去する。 陰嚢皮下の赤い平滑筋組織=肉様膜が皮膚側に付いても差し支えない (Fig.271)。大殿筋の内側下方、つまり肛門の周囲には、大量の脂肪組織がある (Fig.505)。また、大殿筋の上方で腸骨稜との間 (中殿筋の浅側) にも皮下組織が残っているだろう (Fig.505)。これらも除去する。皮神経には気の毒だが(せめて後大腿皮神経だけは助けて)、時間的制約からメスを使う必要があるかもしれない。腸骨稜直下から中殿筋の表面を清掃すると自ずと大殿筋の上縁も明らかになる(Fig.506,511)。その上縁から大殿筋のすぐ深側に指を挿入し、筋のできるだけ外側部をメスで切断していく。大殿筋を仙骨に向けて反転していく過程で、上殿動静脈・下殿動静脈を剖出する。
切断部より外側では、大転子と大殿筋の間にある滑液包が確認できる(Fig.506)。大殿筋の筋束の浅側 2/3 は腸脛靭帯に停止する。この部分は人が立位を維持する上で非常に大切なので、できれば温存したい。筋肉注射についてp.75付図参照
Scrotum 陰嚢 271o
Dartos layer 肉様膜 267
Tunica dartosGluteus maximus muscle 大殿筋 505
Iliac crest 腸骨稜 376
Gluteus medius muscle 中殿筋 506
Sacrum 仙骨 506
Superior gluteal artery/nerve上殿動脈/神経 507
Inferior gluteal artery/nerve下殿動脈/神経 507
Femur 大腿骨 561
Greater trochanter 大転子 506
Trochanteric bursa 転子包 506
てんしほうIliotibial tract 腸脛靭帯 506
以下、下肢の解剖は一側だけ行なう。残る一側は、保健医療学部OT・PT 科の 1 年生が週 1 回解剖するので、諸君も助言しながら参加して欲しい。
反転作業がむずかしいのは大殿筋の内側下方で、仙結節靭帯と大殿筋の固い癒着に悩まされる。まず触診して坐骨結節を確認する。仙結節靭帯を確実に温存したい:メス使うのをがまんして靭帯表面を露出させたい。大殿筋にはいる血管・神経の処理だが、上殿動静脈の枝は後で同定するため、2 箇所に色糸でラベルした上で切断してもよい。下殿神経と下殿動静脈はなるべく温存したいが、同上の処置を行わないと視野が得られないことが多い(Fig.507)。
中殿筋と梨状筋の境界は分かりにくいが、先にラベルした上殿動静脈が通ることを指標にする(Fig.513)。腸骨稜直下から中殿筋を下方に剥離して反転すると、小殿筋が見える。中殿筋と小殿筋の間は、上殿動静脈枝と上殿神経の通路になる。上殿神経を外側に追求して大腿筋膜張筋に至る。腸脛靭帯は、前方上部では大腿筋膜張筋の下方に連続して始まり、後方では大殿筋の大部分の筋束の停止になる(Fig.492,503)。これらの筋の作用を、立位や歩行と関係付けて考察する。
Sacrotuberous ligament 仙結節靭帯 511
Ischial tuberosity 坐骨結節 511
Gluteus medius muscle 中殿筋 506
*Piriform muscle *梨状筋 507
りじょうきんIliac crest 腸骨稜 506
Gluteus minimus muscle 小殿筋 511
Tensor fasciae latae muscle 大腿筋膜張筋 511
■付図 殿筋群と立位・歩行との関係
(オリジナルの図)
殿筋群のマヒ(外転障害)
正常 マヒが強いとき骨盤は マヒが軽い時軸足の
跳ね足の側に下降する。 側に上体を傾けて
(Trendelenburg 骨盤の低下を防ぐ。
微候陽性) (Duchenne跛行)
Waddling gait
動揺性歩行
7.1.2 坐骨直腸窩へ (Fig.427,465,506)
大腿後面では、大腿筋膜をメスでタテに切開し、後大腿皮神経 (p.19参照) を確実にとらえる。次いで、大胆にフィンガーディセクションしてハムストリング (坐骨結節に付く 3 筋) の間に坐骨神経をつかむ。坐骨神経を上方に追及すると、梨状筋の下縁に至る (Fig.506)。殿筋に筋注する際に坐骨神経など太い神経を避けるには、大殿筋上方で中殿筋が露出している部位を選べと言われている (付図p.75) (Fig.508)。しかし、そこは痛い。仙結節靭帯の深側をくぐって坐骨直腸窩に出てくる陰部神経・内陰部動静脈を剖出する(アルコック管:p.249下)。これらの血管・神経が出現する梨状筋の下縁を明らかにする。坐骨直腸窩の脂肪をできるだけ除去し、バッタのお尻のように突出している骨盤隔膜 (主体は肛門挙筋) を露出させる (Fig.465)。肛門挙筋は、恥骨と肛門を結ぶ部分が最も強い (Fig.428)。坐骨直腸窩の前部には、より浅層に尿生殖隔膜 (主体は深会陰横筋) があるので (Fig.429,467)、尿生殖隔膜と骨盤隔膜の間にポケット状の空間ができる。骨盤隔膜と尿生殖隔膜を骨盤底とも呼ぶ。最後に骨標本、靭帯標本を参考に仙棘靭帯を探す。その内面には尾骨筋が張りついている (Fig.390,428)。
陰部神経・内陰部動静脈の走行は、坐骨結節と関係付けて頭に入れる。分娩時に外陰部の不規則な損傷を防ぎ、同時に分娩を容易にするために行なう会陰切開 (腟口から坐骨直腸窩に向けて割を入れる。p.179参照) の際に、これら血管・神経を保護しなくてはならない。坐骨直腸窩はまた、肛門周囲の難治性の瘻孔が形成される部位でもある。この脂肪の量を思うと、オペ後にガーゼがいくらでもはいるのは頷ける。
Ischiorectal fossa 坐骨直腸窩 457
ざこつちょくちょうかFemoral fascia 大腿筋膜 504
Hamstring muscles ハムストリング 510o
Sciatic nerve 坐骨神経 513
Nervus ischiadicus*Piriform muscle *梨状筋 506
りじょうきんPudendal nerve 陰部神経 427
Internal pudendal artery/vein 内陰部動/静脈 427
Pelvis 骨盤 384
Pelvic diaphragm 骨盤隔膜 461 −
かくまくLevator ani muscle 肛門挙筋 464
こうもんきょ−Pubis 恥骨 380
ちこつAnus 肛門 464
*Urogenital diaphragm *尿生殖隔膜 462
*Deep transverse perineal muscle *深会陰横筋 462
しんえいんおう−Sacrospinous ligament 仙棘靭帯 421
*Coccygeus muscle *尾骨筋 421
Ischial tuberosity 坐骨結節 428
7.1.3 股関節の固定 (Fig.511,567)
短回旋筋群 (上・下双子筋、内閉鎖筋、 大腿方形筋、外閉鎖筋) の輪郭と特に内閉鎖筋腱を明らかにする (Fig.512)。余裕があって神経を調べる場合は、内閉鎖筋以外の支配神経は、各筋の深側前面で坐骨との間を剖出する。動脈は下殿動脈枝の他、大腿前面から内側大腿回旋動脈枝が来ているかもしれない (Fig.507)。
Hip joint
こかんせつ 股関節 563 Articulatio coxae*Superior/Inferior gemellus muscle *上/下双子筋 511
じょう/かそうしきん*Obturator internus/externus muscle *内/外閉鎖筋 512
ない/がいへいさきん*Quadratus femoris muscle *大腿方形筋 511 −
ほうけいきんMedial femoral circumflex artery 内側大腿回旋動脈 507
坐骨結節で、ハムストリング (大腿二頭筋長頭、半腱様筋、半膜様筋) の付着をきれいに剖出する (Fig.511)。後から短回旋筋群、前から腸腰筋腱、さらに内転筋群 (薄筋、恥骨筋、長・短内転筋、大内転筋) や殿筋群を加えて、股関節の動的固定機構 (運動に対応した筋と腱による固定) を検討する。各筋群が、肩関節の何に対応するかを考える。
Ischial tuberosity 坐骨結節 511
Hamstring muscles ハムストリング 510o
Biceps femoris muscle 大腿二頭筋 511
Semitendinosus muscle 半腱様筋 511
はんけんようきんSemimembranosus muscle 半膜様筋 511
Iliopsoas muscle 腸腰筋 497
Gracilis muscle 薄筋 510
はっきんPectineus muscle 恥骨筋 497
Adductor longus/brevis muscle 長/短内転筋 499
Adductor magnus muscle 大内転筋 499
最後に、股関節の固定を理解すると共に、下肢の解剖を容易にすることもねらって、手術アプローチに従い股関節を脱臼させる。まず、大腿方形筋など短回旋筋群、内閉鎖筋腱そして中・小殿筋を、メスで大腿骨(転子窩)から1横指幅のベルト状に除去する。骨面が見えたら、膝を曲げて下腿を外側に倒す:視野が広がるので、股関節を後方から覆う坐骨大腿靭帯を切除し、大腿骨頚部を後方から露出させていく (Fig.567)。前方深部に小転子が確認できるだろうか。最後に、軟骨性の関節唇を後方からメスで除去する。膝が曲がることは、これらの作業とその後の脱臼・整復の理解にとって重要:少しずつ力を加えて膝を曲げていく(無理すると骨折してしまう)。
Tendon of obturator internus muscle 内閉鎖筋腱 512
Gluteus medius muscle 中殿筋 512
Gluteus minimus muscle 小殿筋 512
Femur 大腿骨 560
Trochanteric fossa 転子窩 565
てんしかLesser trochanter 小転子 564
Head/Neck of femur 大腿骨頭/頚部 567
*Ischiofemoral ligament *坐骨大腿靭帯 564
Acetabular labrum 関節唇 568
股関節手術の足持ち係りと同じように、下肢を内転させながら膝を屈曲させて外側に倒す (下肢を内旋させる) と、大腿骨頭が寛骨臼からはみ出してくる。関節唇の切除を追加する。膝が屈曲しない時は、足を持って同様のひねりを加える。さらに力を加えると大腿骨頭靭帯が切れ、突然、ツルツルした骨頭が飛び出す。これが股関節脱臼である。股関節という構造を理解するため、下肢をどのように動かすと脱臼が整復されるか練習する。骨粗鬆症 osteoporosis の女性ライヘでは、股関節脱臼の代りに大腿骨頚部骨折が生じるかもしれない(女性体では、脱臼しにくい時は臼蓋を十分に削る必要がある)。大腿骨頚部骨折は寝たきり老人を生み、痴呆のきっかけになることで有名。骨折しても下肢の解剖に支障はない。きれいに脱臼したライヘで必ず整復の練習をする。
Head of femur 大腿骨頭 567
Acetabulum 寛骨臼 380
Acetabular labrum 関節唇 568
Ligament of head of femur 大腿骨頭靭帯 567
<股関節を動かす筋の作用> (Fig.502) 巻末の下肢計測 p.256も参照のこと
屈曲 腸腰筋、大腿筋膜張筋、恥骨筋、大腿直筋、縫工筋
伸展 大・中・小殿筋、大内転筋、半腱様筋、半膜様筋
内転 中殿筋、大腿筋膜張筋、大殿筋の一部、梨状筋
外転 大・小・長・短内転筋、大殿筋の一部、薄筋
内旋 中・小殿筋、大腿筋膜張筋、大内転筋
外旋 大・(中・小) 殿筋、大腿方形筋、内閉鎖筋、腸腰筋
注 :内旋/外旋は膝を屈曲させ、下腿を内側/外側に倒して検査する。 ライヘの膝は固いので後方から膝窩を強く押しつけながらゆっくりと屈曲させる。
7.2 大腿
伏在裂孔を再確認した後、大腿筋膜を除去する (Fig.492)。同筋膜は大腿外側で腸脛靭帯に移行している。腸脛靭帯はなるべく無傷で残したい。外側広筋と腸脛靭帯の間にピンセットを入れて靭帯を剥離する。大腿筋膜張筋があるために外側広筋の範囲が分かりにくいかもしれない。
Thigh 大腿 492o
Saphenous opening
ふくざいれっこう 伏在裂孔 495Fascia lata 大腿筋膜 492
Iliotibial tract
ちょうけい− 腸脛靭帯 503Vastus lateralis muscle −
こうきん 外側広筋 503Tensor fasciae latae muscle 大腿筋膜張筋 503
7.2.1 大腿三角 (スカルパ三角Scarpa's) (Fig.494,498)
大腿三角は、大腿の伸筋群と内転筋群の間のゆるい部分である。概念上は内側大腿筋間中隔だが、内側上腕筋間中隔に比べてあまりに広大である (Fig.614)。大腿三角の 3 辺を作る縫工筋、長内転筋の内側縁、鼡径靭帯を確認する (Fig.494)。鼡径靭帯は、外腹斜筋腱膜の下縁である (Fig.250)。腹部の皮下脂肪が厚く腹が下方に垂れた人でも、腹部の皮下組織は鼡径靭帯で固定されている。大腿三角は大腿における主要な脈管神経路であり、特に下肢に至るほぼすべての血管はここを通過して三角の頂点から内転筋管に続く (Fig.496,498)。内転筋管の前壁は広筋内転筋板という腱膜で、外側には内側広筋、内側には大内転筋がある (Fig.498)。
Femoral triangle(Scarpa's triangle) 大腿三角 (スカルパ三角) 494
Medial femoral intermuscular septum 内側大腿筋間中隔 614
Sartorius muscle 縫工筋 494
Adductor longus muscle 長内転筋 494
Inguinal ligament 鼡径靭帯 494
Aponeurosis of external oblique muscle 外腹斜筋腱膜 250
Adductor canal 内転筋管 498
Vastus medialis muscle 内側広筋 494
Adductor magnus muscle 大内転筋 499
大腿三角の中で、フィンガーディセクション (指先による解剖) によって太い血管・神経を確認していく (Fig.494)。内側から VAN(Vein-Artery-Nerve) の順で配列する。大腿三角も肋間同様に VAN が有名である (p.97)。大腿動静脈を指で持上げると、深部に向かう血管が緊張する。大腿動静脈に沿って伏在神経が見つかれば、これを近位にたどって大腿神経にふれる。以下ピンセット 2 本を用いて、筋の解剖と血管・神経の剖出を並行して行なう。大腿動脈からの動脈血採血はきわめてルーチンの手技だが、生体では脈拍を触れるのでライヘで模擬するよりはるかに容易だ。自分の鼡径靭帯直下で脈をとってみよう。
Femoral artery/vein/nerve 大腿動/静脈/神経 494
Saphenous nerve 伏在神経 498
7.2.2 大腿の伸筋群 (Fig.497)
縫工筋を十分に浮かせながら、深側からはいる血管・神経を探す。視野を広げる必要があれば、同筋を下方で切断して上外側に反転してもよい。大腿四頭筋の各部を確認する (Fig.497) : 大腿直筋、内側広筋、外側広筋、中間広筋。太い外側大腿回旋動脈が分布している (Fig.501)。腸腰筋が鼡径靭帯の下方から大腿三角に出現することを確かめよ (Fig.493)。同時に大腿伸筋への大腿神経枝を確認する (Fig.501)。これを近位に追求すると、大腿神経の本幹が鼡径靭帯直下に剖出できる。今度は遠位に追求して、伏在神経を求め、内転筋管前壁を貫通して膝で皮下に出るところまで確認する。すでに下腿皮下で剖出されていれば、そこに連続する (Fig.489,498)。膝より下では大伏在静脈と伴走しているか。
Quadriceps femoris muscle 大腿四頭筋 −
しとうきん 497Rectus femoris muscle 大腿直筋 497
Vastus medialis muscle 内側広筋 −
こうきん 497Vastus lateralis muscle 外側広筋 497
Vastus intermedius muscle 中間広筋 499
Lateral femoral circumflex artery 外側大腿回旋動脈 501
Iliopsoas muscle 腸腰筋
ちょうようきん 497Psoas major muscle 大腰筋
だいようきんIliacus muscle 腸骨筋
Femoral nerve 大腿神経 498
Saphenous nerve 伏在神経
ふくざい− 4987.2.3 内転筋群 (Fig.497,501)
まず長内転筋、薄筋、恥骨筋を確認する (Fig.497)。これら内転筋群は、上肢ではどこに対応するだろうか。各筋をフィンガーデイセクションで分離しながら筋を同定し、間を走る血管・神経を剖出していく。筋が非常に発達して良視野を得られない場合に限って、一部の筋腹を切断してよい。大内転筋は大腿後面からの剖出で全体像が分かる (Fig.512)。長内転筋は生体でも明らかに触れる (自分で確認せよ)(Fig.481)。恥骨筋の神経は大腿神経から来ていたか、それとも閉鎖神経枝か。閉鎖神経の前枝を薄筋の内面で剖出すると、しばしば閉鎖神経の皮枝のいっしょに見つかる。ここで見つかる動脈は閉鎖動脈枝ではなくて、大腿深動脈枝のことが多い。短内転筋の前後で閉鎖神経の前枝と後枝を捉える (Fig.501)。さらに外閉鎖筋を貫くまで神経を追求するのは骨盤壁の剖出の際が適当だろう。
Adductor longus muscle 長内転筋 497
Gracilis muscle 薄筋 497
はっきんPectineus muscle 恥骨筋 497
Adductor magnus muscle 大内転筋 512
Adductor brevis muscle 短内転筋 501
Obturator artery/nerve 閉鎖動脈/神経 501
Deep femoral artery 大腿深動脈 501
だいたいしん−
7.2.4 大腿動脈とその枝 (Fig.501,513)
まず大腿深動脈を同定する (Fig.501)。その最大の枝が外側大腿回旋動脈だが、大腿深動脈からの分枝形態には変異が多い。外側大腿回旋動脈は大腿四頭筋の主要な筋枝であり、さらに末梢は下行して膝蓋骨と膝関節に至る (Fig.501)。
Deep femoral artery 大腿深動脈 501
Lateral femoral circumflex artery 外側大腿回旋動脈 501
Patella
しつがい− 膝蓋骨 501Quadriceps femoris muscle 大腿四頭筋 497
Knee joint
しつ/ひざ− 膝関節 501 Articulatio genu内側大腿回旋動脈は分かりにくい。その末梢部分は殿部と大腿後面の解剖の際に見える。大腿ではハムストリング上端に分布する。内側大腿回旋動脈は大腿骨頚部の重要な栄養動脈である (Fig.513)。高齢者の骨折として何かと話題の頚部骨折の際に内側大腿回旋動脈の骨枝が切れるとまずい。大腿深動脈は数本の貫通動脈として大内転筋の腱裂孔ないし同筋自体を貫通して大腿後面に至る(Fig.513)。最下位の腱裂孔が内転筋管、最下位の貫通動脈が大腿-膝窩動脈(鎖骨下動脈のように名称が変わる)と考えられる。
Medial femoral circumflex artery 内側大腿回旋動脈 501
Neck of femur 大腿骨頚部 560
Perforating arteries 貫通動脈 501
Adductor hiatus 大内転筋の腱裂孔 500
Adductor canal 内転筋管 498
Popliteal artery
しつか−しっか− 膝窩動脈 5137.2.5 膝蓋骨と膝蓋靭帯 (Fig.570,574)
大腿四頭筋の筋質を膝蓋骨上方で切断し、切断部位より下方の筋を下方に向けて大腿骨から剥がしながら膝蓋上包を開放する。膝蓋上包で関節包に付く筋束 (中間広筋の一部) があれば、伸展位で関節包が巻き込まれるのを防ぐ膝関節筋である (Fig.570)。さらに、膝蓋骨の外側からまっすぐ下方にメスを進めて膝関節を上方から開放し、膝蓋靭帯をつかんで厚さを認識する (Fig.574)。膝蓋骨の外側縁から下に向かえば、側副靭帯はほとんど無傷に残る。
Patella 膝蓋骨 570
Suprapatellar bursa 膝蓋上包 570
Articular capsule 関節包 572
Vastus intermedius muscle 中間広筋 570
*Articularis genu muscle *膝関節筋 570
Patellar ligament 膝蓋靭帯 570
7.2.6 大腿後面 (大腿の屈筋) (Fig.500,510,513,574)
殿部の解剖に並行して行なう。すでに後大腿皮神経を求めて筋膜を切開している(Fig.504)。大胆にフィンガーデイセクションを行ってハムストリングの輪郭を明らかにする。外側 (大腿二頭筋) と内側 (半腱様筋、半膜様筋) に位置する筋の間に、ゆるい場所がタテに大きく広がり (後大腿筋間中隔)、坐骨神経と貫通動脈枝 (大腿深動脈の末梢) の通路になっている (Fig.513)。大内転筋の輪郭を確認し、貫通動脈は大腿前面の大腿深動脈につなげる (Fig.501)。引続き膝窩の清掃にはいる。膝窩は菱形をなす凹みだが、4 辺を構成する筋を整理せよ (Fig.516)。半腱様筋、薄筋、縫工筋の腱が合わさり、ガチョウの足のように放散する鵞足、その深側にある滑液包 (鵞足包) など、余裕があれば観察する (Fig.500)。坐骨神経を下方にたどって脛骨神経と総腓骨神経につなぐ (Fig.513)。
Posterior femoral cutaneous nerve 後大腿皮神経 504
Hamstring muscles ハムストリング 510o
Biceps femoris muscle 大腿二頭筋 510
Semitendinosus muscle 半腱様筋 510
Semimembranosus muscle 半膜様筋 510
Posterior femoral intermuscular septum 後大腿筋間中隔 614
Sciatic nerve 坐骨神経 513
Nervus ischiadicus
Perforating arteries 貫通動脈 513
Adductor magnus muscle 大内転筋 513
Deep femoral artery
だいたいしん− 大腿深動脈 501Popliteal fossa
しつか 膝窩 516oGracillis muscle
はっきん 薄筋 500Sartorius muscle 縫工筋 500
*Pes anserinus
がそく *鵞足 500*Anserine bursa
がそくほう *鵞足包 500Tibial nerve 脛骨神経 513
Common fibular nerve 総腓骨神経 513
ピンセットで強くひっかいて膝関節の側副靭帯を剖出する。束をなす外側側副靭帯は明瞭。腱膜状の内側側副靭帯をメスで削り落とし、筋を切断して膝蓋骨を大きく下方に反転し、膝関節を上方と内側方から広く開放する。メスを使うが、腓骨頭直下で総腓骨神経を必ず温存するように。関節内で十字靭帯と関節半月を確認する (Fig.573,574,577)。膝関節の側副靭帯は、外側では腓骨頭がでっぱるために関節半月から離れていることになっている。十字靭帯損傷は膝の代表的外傷。下腿の解剖を終えたら後方 (膝窩) からも膝関節を開放し、Fig.576,577の状態を作りなさい。
Lat/Med. collateral lig. (膝関節の) 内側/内側側副靭帯 570
of knee joint
Ant/Post.Cruciate ligament 前/後十字靭帯 (前が上外側から下内側) 574
Lat./Med. meniscus 外側/内側関節半月 574
7.3 下腿
下腿筋膜をメスで除去すると筋の輪郭が見えてくる。まず、4 つの筋区画 (伸筋区画、腓骨筋区画、浅屈筋区画、深屈筋区画) とその間の筋間中隔を確認する (Fig.523,616-618)。以下、筋の解剖と血管・神経の剖出は並行して行なう。
Leg 下腿 520
Crural fascia 下腿筋膜 523
Intermuscular septum 筋間中隔 523
7.3.1 伸筋区画 (Fig.522,523)
前脛骨筋・長母指伸筋・長指伸筋の 3 筋の同定 (Fig.522) は、足背まで腱を追求した段階で行なう。足背で腱と伸筋支帯を剖出して、その腱を上方にたどりながら各筋を遊離する。伸筋支帯は切らずに温存する。骨から剥離しないと 3 筋を区別できないと思ったら、腱をたよりに下方から順次、しかし必要最低限の範囲で骨から剥がす。その過程で剖出された血管・神経は温存して、後で本幹とつなげて同定する。
Tibialis anterior muscle 前脛骨筋 522
Extensor hallucis longus muscle 長母指伸筋 522
Extensor digitorum longus muscle 長指伸筋 522
Dorsal foot
そくはい 足背 521Extensor retinaculum 伸筋支帯 521
7.3.2 腓骨筋区画 (Fig.525,527)
長腓骨筋と短腓骨筋は外果下方の扁平な腱からつかまえる (Fig.527)。腱に伴走する腓骨神経枝を損傷しないように、腱と筋を腓骨から離していく。筋に分枝した後に足背皮下に至る浅腓骨神経をつかまえたら、上に追求して深腓骨神経を見つける (Fig.525)。総腓骨神経はすでに腓骨頭直下の皮下で見つかっているはずだ。深腓骨神経はいきなり数枝に分れて、前脛骨筋・長母指伸筋・長指伸筋の 3 筋に上端から分布するので、これら 3 筋をある程度腓骨上部から剥離しないと観察できない。以上の過程で前脛骨動脈枝が出てくる。前脛骨動脈の本幹は、下腿屈側の解剖が進んでから確認する。
Fibularis(Peroneus) longus/brevis muscle 長/短腓骨筋 527
Lateral malleolus
がいか 外果 527Superficial/Deep fibular(peroneal) nerve 浅/深腓骨神経 525
Common fibular(peroneal) nerve 総腓骨神経 543
Anterior tibial artery 前脛骨動脈 525
7.3.3 浅屈筋区画 (Fig.515,543)
皮神経、皮静脈をよけながら、下腿筋膜をメスで除去する。特に腓腹神経 (皮神経) と小伏在静脈は剥がして、温存しておく (Fig.538)。
Crural fascia 下腿筋膜 523
Sural nerve
ひふく− 腓腹神経 538Great/Small saphenous vein 大/小伏在静脈 538
1) 下腿三頭筋 (腓腹筋の内側頭・外側頭、ヒラメ筋) とアキレス腱を確認する (Fig.540)。アキレス腱周囲の清掃も始める。
2) 腓腹筋の内側頭 (必要に応じてさらに外側頭) を大腿骨から剥がして (Fig.562)、腓腹筋を外側 (腓骨側) 下方に反転していく。同筋の血管が緊張したら膝窩の剖出を加えてできるだけゆるめる。
3) 膝窩で膝窩動静脈と脛骨神経・総腓骨神経が剖出できたら、それらを下方に追求する (Fig.543)。次の 4) を同時に進める。膝窩の剖出が進んでいれば膝窩筋の輪郭も確認できる (Fig.545)。膝窩筋を剥がして後方から膝関節の補強構造を観察する (Fig.575)。
4) ヒラメ筋を脛骨から剥がして、外側 (腓骨側) に反転する (Fig.544)。後述の深屈筋区画が視野に入る。ヒラメ筋上縁は、腱性の組織(腱弓)を介して脛骨に付着している。血管 ・神経を下方に追求する邪魔になる場合は必要に応じて、ヒラメ筋を腓骨からも剥がし、筋をさらに下方に反転ないし浮かせる。腓腹筋の血管・神経が緊張して視野を妨げたら、膝を屈曲させ、2 頭の間を下方に向けて裂くことで対応する。ヒラメ筋の表面 (後方) に足底筋がはりついて残っているだろうか (Fig.543)。足底筋の長い腱をアキレス腱までたどることができる (Fig.542)。ヒラメ筋の裏には、しばしばもう 1 匹ヒラメが張りついている。
Triceps surae muscle 下腿三頭筋 540
Gastrocnemius muscle 腓腹筋 540
Soleus muscle ヒラメ筋 540
Calcaneal tendon (Achilles')踵骨腱 (アキレス腱) 540
しょうこつ−Femur 大腿骨 562o
Popliteal fossa 膝窩 515
しつかPopliteal artery/vein 膝窩動脈/静脈 515
Tibial nerve 脛骨神経 515
Common fibular nerve 総腓骨神経 515
Popliteus muscle 膝窩筋 545
Knee joint 膝関節 575
Tibia 脛骨 547o
けいこつFibula 腓骨 547o
ひこつPlantaris muscle 足底筋 542
そくてい−7.3.4 深屈筋区画 (Fig.544,545)
筋膜を剥がして脛骨神経・後脛骨動脈を下方に追求しながら (Fig.544)、筋の輪郭を明らかにしていく。後脛骨筋・長指屈筋・長母指屈筋 (Fig.545) の同定は、内果下方から足底にかけて腱を剖出した後でいい。後脛骨動脈から伸筋区画に向かう前脛骨動脈を探す (Fig.525,546)。長母指屈筋に覆われて下行する腓骨動脈は、同筋を腓骨からはがしながら剖出する (Fig.479)。解剖学では知名度が低いが、骨付き筋皮弁フラップ作成のため重要な動脈である。腓骨動脈からわかれる腓骨の栄養動脈をきちんと剖出する。アキレス腱周囲の清掃は終わったか。外果と内果周囲には多くの動脈吻合がある (Fig.546)。動脈吻合は、足底足背の剖出が進んでから確認する。
Tibial nerve 脛骨神経 544
Posterior tibial artery 後脛骨動脈 544
Tibialis posterior muscle 後脛骨筋 545
Flexor digitorum longus muscle 長指屈筋 545 (足に止の旧字もある)
Flexor hallucis longus muscle 長母指屈筋 545 (足に止の旧字もある)
Lateral/Medial malleolus 外/内果 544
Sole of foot 足底 552
そくていFibular(Peroneal) artery 腓骨動脈 546
<膝関節を動かす筋の作用>
屈曲 半膜様筋、半腱様筋、大腿二頭筋、薄筋
伸展 大腿四頭筋
7.4 足
7.4.1 足背 (Fig.535,537)
手背とは異なり、足背には長い伸筋 (筋実質は下腿にある) の他に短い伸筋がある。足背で、下腿から来る長い伸筋腱を再び同定した後、必要最低限の範囲で伸筋支帯を切断し、腱を浮かせて短母指伸筋と短指伸筋を剖出する (Fig.535)。余裕があればゾンデを入れて滑液鞘の観察を行なう (Fig.533,534)。さらに短母指伸筋と短指伸筋を浮かせながら、その支配神経 (深腓骨神経) を確認する。深腓骨神経を第 1-2 指間の皮下まで追求する (Fig.537)。足背動脈は重要な脈診部位 (糖尿病など. 脈診:付図P.24) であり、下腿のどの動脈の続きであるかを確認する (Fig.537)。看護学科有志が実習に来た場合は、まずこの足背動脈を剖出させている。手背とは異なり、足背には動脈のアーチ=弓状動脈が存在することがあり、また足指にも強力な枝 (背側中足動脈) を出している。最後に足背から腓骨筋の停止を剖出しておく。短腓骨筋が停止する第五中足骨底の突出部 (Fig.604) を、自分の足で確認する。小さな剥離骨折がよく生じる部位だ。足底に向かう長腓骨筋腱は、小指外転筋の深側まで追求し (Fig.555)、その先は次節の足底の解剖の進行を待つ (Fig.611)。
Dorsal foot
そくはい 足背 535Extensor retinaculum 伸筋支帯 521
*Extensor hallucis brevis muscle *短母指伸筋 535
*Extensor digitorum brevis muscle *短指伸筋 535
Tendon sheath
かつえきしょう 滑液鞘 532Deep peroneal nerve 深腓骨神経 537
Dorsalis pedis artery 足背動脈 537
*Arcuate artery *弓状動脈 537
*Dorsal metatarsal artery *背側中足動脈 537
Fibularis(Peroneus) longus/brevis muscle 長/短腓骨筋 527
Tuberosity of 5th metatarsal bone 第5中足骨底の突出部 610
(和名では 第5中足骨粗面 が正式)
Tendon of fibularis
(peroneus) longus muscle長腓骨筋腱 555*Abductor digiti minimi muscle *小指外転筋 552
7.4.2 足底 (Fig.552,554,604)
下腿の屈筋 2 層の間を走行する後脛骨動脈・脛骨神経を下方に追求し (Fig.544)、内果の下方の導通路を確認する (Fig.550)。下腿に始まる長い 3 本の屈筋腱 (後脛骨筋・長指屈筋 ・長母指屈筋) も、互いに交差しながら内果下方を通る (Fig.541)。滑液鞘に包まれているのでゾンデで確認 (Fig.533,534)。
細い皮神経には気の毒だが、足底の皮下組織をメスで除去して足底腱膜をいきなり露出させる (Fig.549)。カカトの厚い脂肪組織もメスで除去する。深部までメスがはいらないように注意する。皮下組織の厚さだけはしっかりと認識する。足底腱膜が露出したら、カカト側から指先に向けて足底腱膜をメスで剥離する。内果下方から下腿屈筋区画の血管・神経を足底に連絡させ、外側・内側足底動脈・神経を剖出する (Fig.550,553)。
Posterior tibial artery 後脛骨動脈 544
Tibial nerve 脛骨神経 544
Medial malleolus 内果 545
Tibialis posterior muscle 後脛骨筋 545
Flexor digitorum longus muscle 長指屈筋 545
Flexor hallucis longus muscle 長母指屈筋 545
Plantar aponeurosis 足底腱膜 549
Lat./Med. plantar artery/nerve 外側/内側足底動脈/神経 553
母指外転筋の輪郭を出して、その起始部に切開を入れて下腿と足底の血管・神経をつなげる (Fig.553)。短指屈筋と長指屈筋の腱の合流形態を観察する (Fig.552)。手のように (あるいは図譜の足のように)、長 (深) が短 (浅) をくぐりぬけているだろうか。太い血管 ・神経を切らないように注意しながら、短指屈筋を踵骨から剥がして指先に向けて反転する。さらに足底方形筋も同様に指先に向けて反転する。ここで長指屈筋腱と長母指屈筋腱 (Fig.555) を、内果下方から指先まで一続きになるよう剖出する。外側足底神経を遠位に追求すると深部にもぐりこむ (Fig.554)。視野確保のために、場合によっては長指屈筋腱を一部切断してもいい。
*Abductor hallucis muscle *母指外転筋 551
*Flexor digitorum brevis muscle *短指屈筋 552
Calcaneus 踵骨 597
*Quadratus plantae muscle *足底方形筋 552
足底動脈弓や内側/外側足底神経の分枝を確認するには、さらに母指外転筋を徐々に浮かすか切断除去しなくてはならない (Fig.554)。足底動脈弓は手掌と異なり明瞭ではない。小指外転筋も指先に向けて反転、長足底靭帯を確認、その深側で長腓骨筋腱を停止まで追求する (Fig.527,555,611)。足指で物をはさむわけでもないのに母指内転筋や骨間筋がよく発達しているから注目。手と異なり、足底の短い筋は何の役に立つのか疑問に思うかもしれないが、足アーチ (Fig.612) を維持したり、歩行時に足が地面を離れる直前に足の前半分を固く維持したりする作用が重要視されている。これらの小筋が麻痺した患者の歩行を見る機会が、いずれあるだろう。
Plantar arch 足底動脈弓 554
Lateral/Medial plantar nerve 外側/内足足底神経 554
Abductor digiti muscle 小指外転筋 551
Long plantar ligament 長足底靭帯
Tendon of fibularis
(peroneus) longus muscle 長腓骨筋腱 555Plantar interosseus muscles 骨間筋 555
Adductor hallucis muscle 母指内転筋 551
Longitudinal/Transverse plantar arch 足アーチ
(縦足弓, 横足弓) 612
足底の剖出が終了したら、下腿からの長い腱を寄せながら、足関節を側方から補強する捻挫の靭帯 (三角靭帯、外側靭帯) などを剖出する (Fig.604,606)。特に前距腓靭帯(外側靭帯の1つ)は個体差が大きく、ライヘでも捻挫の痕跡 (断裂・瘢痕・弛緩) を認めることがある。浅いので最初に確認したい (Fig.604)。足背の腱を寄せながら足背から足根骨と中足骨を露出させる (Fig.596)。足関節の靭帯ではないが損傷を受けやすい二分靭帯も確認する。戦争や事故で足を切断する部位であるショパール関節 Chopart's joint 、リスフラン関節 Lisfranc'sjoint は有名だから参考書で調べること。足底で長足底靭帯を除去しながら足ア−チの深さを体験する。足関節を理解するため、距骨をはずしながら距骨と周囲の骨を固く連結する靭帯を確認する (Fig.608)。足根洞の中の強靭な靭帯は(膝の十字靭帯などと同様に)距骨下関節の関節腔内に存在する。
最後に、距腿関節面を作る脛腓靭帯結合を後方から開く (Fig.602)。必ず手と足の構造を比較して、何が何に対応するかを検討する。
Ankle joint 足関節
あし/そくかんせつ 600Talocrural joint 距腿関節 600
Subtalar joint 距骨下関節 600
(足関節の概念には混乱がある: p.243下の本文を見よ)
*Deltoid ligament *三角靭帯 606
*Anterior talofibular ligament *前距腓靭帯 604
Tarsal bones
そっこんこつ 足根骨 607oMetatarsal bones 中足骨 607
*Bifurcate ligament *二分靭帯 604
*Long plantar ligament *長足底靭帯 606
Talus 距骨 607
Tibiofibular syndesmosis 脛腓靭帯結合 600
(「標準整形外科学」の図を改変)
(「標準整形外科学」の図を改変)
7.5 上下肢の総括
上下肢の解剖のまとめとして、上肢と下肢の各関節の特性、筋配置、および導通路を比較して、その違いを各部位ごとに整理する。全身の関節の形と運動をチェックする。支配分節ごとに筋を整理する。
【上肢】
鎖骨下動脈 ┬ 甲状頚動脈 ─ 肩甲上動脈・頚横動脈・下甲状腺動脈
├ 深頚動脈(p.101,138)
├ 内胸動脈(p.113)
├ 胸肩峰動脈
├ *外側胸動脈 (乳腺へ)(p.69下)
├ *胸背動脈 (p.73,102)
├ *前・後上腕回旋動脈
└ 上腕動脈 ┬ 上腕深動脈 (伴走する神経は何か)
├ 橈骨動脈 ─ 深掌動脈弓 (尺骨動脈と吻合)
└ 尺骨動脈 ┬ 総骨間動脈 ─ 前・後骨間動脈
└ 浅掌動脈弓 (橈骨動脈と吻合)
注 : * を付けた 3 動脈はしばしば共同幹として肩甲下動脈を形成する。
【下肢】
総腸骨動脈 ┬ 内腸骨動脈 ─ 骨盤内臓・殿部に分布 (各自復習のこと)
└ 外腸骨動脈 ─ 大腿動脈 ┬ 下腹壁動脈など(p.16,91)
├ 大腿深動脈 ┬ 外側大腿回旋動脈
│ ├ 内側大腿回旋動脈
│ └ 数本の貫通動脈
└ 膝窩動脈 → 【下腿】 へ
【下腿】 膝窩動脈 ┬ 前脛骨動脈 ─ 足背動脈 ─ 弓状動脈
└ 後脛骨動脈 ┬ 腓骨動脈
└ 内側・外側足底動脈 ─ 足底動脈弓
■付図 四肢断面の比較:肩と骨盤、上腕と大腿、前腕と下腿、手と足
(オリジナルの図)
第 8 章 骨学実習
この骨学実習マニュアルは、合計 30 回程度の実習回数の中で 2-3 回を骨学に当てるという時間的にきついカリキュラムのために作製されました。どのセクション、どの節(A,B,..)から始めてもかまいません。学生は、その後の解剖実習の合間にも自主的に骨標本に触れる機会を作る必要があります。
骨実習は解剖実習の基礎です。骨実習を一定レベルでこなしていれば、遺体の解剖を通して、さらに骨に関する理解は深まるでしょう。逆に今、骨実習で手を抜けば、解剖の際にさらにツケが加わるに違いありません。骨実習を通して諸君は初めて人体を部位ごとに記載することを覚えます。患者を診る時、目的の骨に触れることができなければ意味がありません。用語 (ノミナ) に*を付けた構造について、自分の体表でも確認して下さい。骨に関する2年次の最終目標は、正常な単純X線写真で骨の主な部分形態を識別同定できることです。実習室に各部の正常な単純X線写真 (X-P) を出しておきます (クレメンテ各所の X-P 等も参照 : Fig.103,115,125,122-124,159,381,571,580,584,599,603 他)。次に君たちが骨を見るのは4年次の診断学、整形外科、耳鼻咽喉科、脳神経外科等ですが、その時には病的な変化を読影しなくてはなりません。付録に付けた関節可動域の計測法も活用して下さい。なおこの章で用いているノミナの数は、多くの大学よりかなり少ないので、すべて試験に出す可能性があります。
8.1 総論
8.1.1 方向と各部
o 方向を示す呼称は基本中の基本 (p.8参照)。
o 人体の各部の名称について。人体を頭、体幹、四肢・肢帯に分ける。
体幹 Trunkはさらに下記のように分ける (Fig.1-5)。
頭Head:頭部と顔面に分れる。
他に前頭部 Frontal region、頬部(きょうぶ)などの部分名称が頻用され
る。
頚 (くび) Neck (Fig.691,692):頚では特に大鎖骨上窩 (Fig.692) を確認
(外側頚部 Lateral neck region の一部)。
胸Chest:胸では乳房 Mamma, Breast と腋窩 Axillary fossa を確認。
腹Abdomen:腹では上腹部、臍部(さいぶ)、側腹部、下腹部という4区分
を確認。さらに季肋部 (下肋部)、鼠径部、腰部という用語を知る。
背中 Back (Fig.623,624):背中では項部 (項 : うなじ Nape)、腰部
Lumbar region、肩甲部 Scapular region を確認。
会陰 (えいん) Perineum(Fig.302,422,423,463) :股の間は、前方の外陰
部 Urogenital region、後方の肛門部 Anal region、および狭義の会陰
(前2者の境界部) から構成される。
殿部 Gluteal region は下肢帯。四肢・肢帯については8.5参照
(Fig.40,41,Fig.481,482,485,488)。
骨には、凹凸をはじめ様々な表面形態があり、それを示す名称が与えられている : 『突起、隆起、結節、顆、果、稜、棘』 (以上は凸)、『溝、窩』 (いずれも凹)、『粗面、線』 (いずれも凹ないし凸)、そして 『面』。特に頭蓋骨では、神経や血管が骨を貫通することがある : 『管、孔、裂孔』。これら様々な形態には3つの種類がある : a) 別の骨と結合するための形態、b) 筋, 腱, 靱帯などを付着させるための形態、c) 神経, 血管, 腱, 筋などが通過したり接触することで骨の一部が削られた形態。
骨は他の骨と結合しなくてはならない。その様式には、a) 骨と骨の間に生体で間隙(関節裂隙ないし関節隙) がある 『関節』 と、b) 生体で間隙がない (骨標本では隙間がある) 『縫合』 『靱帯結合』 『軟骨結合』 に分けられる。関節があれば、骨標本でも必ず平滑な 『関節面』 が観察される。関節には3方向の運動が期待される : 蝶番運動 (屈曲・伸展)、側方運動 (外転・内転)、長軸回転 (内旋・外旋)。しかし、関節を作る骨自体の形と、関節を固定する靱帯等の構造によって、上記3方向に様々な制限が付く。
8.1.4 骨の分類と骨化
骨を長管骨 (管状骨) と扁平骨に分けることがある。この区別は特に四肢の骨で明瞭。長管骨には中に骨髄を入れる髄腔がある。扁平骨では、海綿質という骨性の網目状構造の中に骨髄を入れる。長管骨では骨端 (Epiphysis)(遠位端と近位端) をまず確認し、そこがいかに特殊化しているかを観察する (必ず部分名称を伴う)。次いで、骨体ないし骨幹と呼ばれる中間部分を見る。扁平骨では面の向きを確認し、次いで辺縁を確認する。
頭蓋骨の多く(頭蓋冠など)と鎖骨は膜性骨化という様式で形成され、それ以外の多くの骨は軟骨性骨化を行う (ラングマンないし標準組織学総論を参照)。骨化時期、特にX線で見やすい手の骨の骨化時期は、発達・成長を評価する上で小児科必須の知識だが、ここでは省略する。
8.1.5骨標本を手にしたら
まず骨の上下前後左右を確認する (クレメンテで調べる)。以下マニュアルに従って、上述したような骨の部分形態 (名称) を確認していく。自班の標本で不明ならば他の標本を見る。次に、自分自身を用いて生体で骨の各部を触診する (用語=ノミナに*を付けた部位を触診する)。解剖体で検討したい事項に印を付ける。最後にX-Pを見て部分名称を確認する。
■付図 体表観察のために
(体表スケッチ:オリジナル)
8.2 頭蓋骨
(とうがいこつ、 ずがいこつ)頭蓋は15種23個 (うち8種は左右各1) の骨から構成されている (Fig.752-755,780,787-790) 。その多くは縫合ないしそれに類似した骨結合を行い、関節が形成されるのは側頭骨と下顎骨の間だけである。系統発生の観点から頭蓋骨を、脳を入れる神経頭蓋とその前下方に位置する顔面頭蓋に分ける。
頭蓋上部は、脳摘出のためにフタを空けるように切断されている。頭頂骨を中心としたこの部分を頭蓋冠と呼び、他に前頭骨と後頭骨の一部が加わる。 まず外面から、典型的な縫合を観察する。矢状縫合と冠状縫合 (前)、矢状縫合とラムダ縫合 (後) の交点には、乳児期まで泉門という孔が開いており、前を大泉門、後を小泉門と呼ぶ。他に側頭部にも泉門があった。小泉門部分には、頭頂骨および後頭骨とは別に独立した骨が形成されることがある (例、インカ骨)。縫合は頭蓋だけの骨結合様式であり、縫合の波線はフラクタルを扱う数学者の関心を集めている。頭頂部に導出静脈(Fig.747)が通る小孔があるかも知れない。
次に頭蓋冠の内面を見る。正中線上には上矢状静脈洞がはまっていた上矢状洞溝、その外側には主に中硬膜動脈が刻んだ動脈溝が見られる。上矢状洞溝に沿ってクモ膜顆粒小窩というへこみが散在しているかも知れない。
Calvaria 頭蓋冠 756,758,759
Parietal bone 頭頂骨
Frontal bone 前頭骨
Occipital bone 後頭骨 757
Sagittal suture 矢状縫合
しじょうほうごうCoronal suture 冠状縫合
Lambdoid suture ラムダ縫合
Anterior fontanelle 大泉門
だいせんもん 760-763Posterior fontanelle 小泉門 760-763
Superior sagittal sinus 上矢状洞溝
(頭蓋と静脈洞, 板間静脈) 764-768,777
Emissary vein 導出静脈
どうしゅつ− 764-768,777Arachnoid granulations クモ膜顆粒 766
前頭部 (前額部) と顔面に大きく分けられる (下顎骨は後述)。鼻骨を中心とした鼻背(いわゆる鼻すじ) が隆起する。上方で鼻背の左右に眼窩、鼻背の下方には梨状孔が開く。梨状孔は、最近では分りやすく前鼻口と呼ぶことが多い。外側には頬骨弓が張り出す。美容形成では鼻骨や頬骨弓をしばしば操作するが、君はどこを削除ないし補填したいか。さて、中央下部は上顎体 (上顎骨の主要部) からなり、歯列を入れる歯槽がならぶ。正中線上で鼻骨と前頭骨が接する点をナジオンと呼び、骨計測上の基準の1つになる。ナジオン付近のへこみを眉間と呼ぶ。眼窩の上方には眉弓が隆起する。眼窩上縁には内側に前頭切痕という切れ込み、そのすぐ外側に眼窩上孔という孔があるが、いずれも変異に富む。梨状孔からは鼻腔と骨鼻中隔が見える。梨状孔下縁の正中線上には前鼻棘がある。鼻腔に外側から棚状に突出する骨構造 (鼻甲介、篩骨胞、鈎状突起) については、別に標本を供覧する。鼻腔に続く副鼻腔については、今は骨標本の破損部位から見えるに過ぎない。
* Nasal bone *鼻骨 752,825
* Orbita *眼窩
がんか 753,787-790*Piriform foramen *梨状孔
りじょうこうAnterior nasal aperture 前鼻口
Zygomatic arch 頬骨弓
きょうこつきゅうBody of Maxilla 上顎体
Alveolar socket 歯槽 (868 は下顎のみ)
*Glabella *眉間
みけんFrontal notch 前頭切痕 −
せっこん 753Supraorbital 眼窩上孔 752
Nasal cavity 鼻腔 →鼻腔
びくうを囲む骨 788,790,825-829Bony nasal septum 骨鼻中隔 829
Anterior nasal spine 前鼻棘
ぜんびきょく 752Paranasal sinus 副鼻腔 837,840,841
眼窩は、眼球とそれに関連した構造を収納する (まとめて眼窩内容と呼ぶ : p.46) 。眼窩は四角錐状の空間で、4つの壁を持つ。四角錐の尖に相当する深部を解剖では漠然と眼窩底と呼ぶ。上壁の多くは前頭骨で, 後方に蝶形骨 (蝶形骨小翼) が見える。下壁は主に上顎骨(上顎体) からなり、眼窩下溝を認める。下壁のことを臨床ではしばしば眼窩底と呼ぶので注意。外側壁は頬骨 (前頭突起) と蝶形骨 (蝶形骨大翼) からなる。内側壁は構成が複雑で、前から上顎骨前頭突起、涙骨、篩骨が参加し、さらに後方では分りにくいが口蓋骨と蝶形骨小翼も加わる。涙骨に鼻涙管が開く。眼窩底に開く3つの大きな孔 (視神経管、上眼窩裂、下眼窩裂) は、後述の内頭蓋底と合せて観察する。口蓋骨、篩骨、蝶形骨などの複雑な形態は、これからの実習を通して長い時間をかけて理解する。
*Orbita *眼窩 753,787-790
Lesser wing (Ala minor) of sphenoid bone 蝶形骨小翼
ちょうけいこつ−Infraorbital sulcus 眼窩下溝
Greater wing (Ala major) of sphenoid bone 蝶形骨大翼 −
たいよくLacrimal bone 涙骨
るいこつEthomoid bone 篩骨
しこつ 838,839,842Palatine bone 口蓋骨
こうがいこつNasolacrimal duct 鼻涙管 800
Optic canal(Optic foramen:一般的でない) 視神経管
Superior orbital fissure 上眼窩裂
かがんかれつInferior orbital fissure 下眼窩裂
神経頭蓋の前下方に顔面頭蓋が位置する。そのほぼ中間に頬骨弓が張り出している。側頭骨 (後) と頬骨 (前) のそれぞれから突起が出て、頬骨弓が形成されている。頬骨弓には神経と血管が通る小孔が複数ある。頬骨弓の内側には、側頭窩という空間をはさんで側頭骨の平坦な部分 (側頭鱗) がある。側頭窩には咀嚼のための筋が収納されている。側頭窩の前部は実は蝶形骨大翼が作る。側頭鱗には、筋と筋膜が線を刻みつけている (側頭線)。頬骨弓の後下方には、顎関節の関節窩、さらに外耳孔、乳様突起がある。外耳孔は外耳道に続くが、いわば盲端になっていて頭蓋内に大きく開くことはない。外耳孔の下には細長い茎状突起が見えるかも知れない。頬骨弓後部から後方にかけての上記諸構造は側頭骨の一部だが、側頭骨の重要な部分は下および内面 (後述) からしか見えない。側頭窩の内側下方で頬骨弓の陰になる部分だが、上顎体の後方に翼状突起外側板が確認できるだろうか。上顎体と翼状突起外側板の間の隙間を翼上顎裂と呼び、その奥 (内側) の縦に長く狭い空間を翼口蓋窩という。翼上顎裂と翼口蓋窩は、神経と血管の通路あるいは分岐点として重要であり(Fig.746,836)、下方からもよく確認する (後述 : 内頭蓋底)。下顎骨を側頭骨の関節窩 (下顎窩) にはめこむと、頬骨弓の下方で下顎骨と上顎骨の間に側頭下窩という空間ができる (Fig.733,738)。側頭下窩の上方は側頭窩に続く。顎関節のX線像:Fig.743,745
*Zygomatic arch
きょうこつきゅう *頬骨弓Temporal bone 側頭骨
Zygomatic bone 頬骨
Temporal fossa
そくとうか 側頭窩Greater wing (Ala major) of sphenoid bone 蝶形骨大翼
*Squamous part of temporal bone (Pars squamosa) *側頭鱗 −
りん(Superior/Inferior) Temporal line *側頭線 *756
*Temporomandibular joint , Jaw joint(俗) *顎関節
(*側頭下顎関節) *737,738,740-745
Mandibular fossa *下顎窩 *781,738
*External acoustic foramen *外耳孔 *754,919
* Mastoid process (Process mastoideus) *乳様突起
External acoustic meatus (Auditory canal) 外耳道 *929
Styloid process
けいじょうとっき 茎状突起 754,919*Body of maxilla *上顎体
Pterygoid process (Sphenoid bone)
よくじょう− 翼状突起 *781Pterygopalatine fossa
よくこうがいか 翼口蓋窩 *755Mandible 下顎骨
外頭蓋底の後部は後頭骨が占める。延髄−脊髄移行部 (中枢神経系) が通る大孔(大後頭孔)は後頭骨に開く。大孔の外側に隆起するのは、椎骨と関節する後頭顆である。後頭顆の根部を舌下神経管が貫通し、また後頭顆のすぐ後方には導出静脈が通る顆管が開く。さらに後方では、正中線上に外後頭隆起、その外側に筋が付けた線状の隆起 (上項線、下項線など) を認める。
外頭蓋底の中央部は主に側頭骨と蝶形骨が占める。正中線上で大孔のすぐ前に続く斜台は、大部分が後頭骨だが、前方には蝶形骨も参加している。
まず側頭骨を見る。斜台の側方には、後外側から前内側に向けて斜に側頭骨の一部 (錐体ないし岩様部) が食い込んでいる。錐体と後頭骨の間には、大きく不整形の頚静脈孔が開く。錐体中央には円形に近い頚動脈管が開き、錐体の前端には破裂孔が開く。破裂孔は生体では軟骨が埋めている。錐体の前縁から後方に斜めに向かう一連の[溝−孔−管]はよく見ないと分らないが、生体では耳管を収納している。その溝を耳管溝、管を筋耳管管といい、保存のいい標本なら管の内腔が2段になっているのが分る。同じく側頭骨の部分構造として、細長い茎状突起と塊状の乳様突起を確認する。茎状突起の根部後方に接して、顔面神経が出てくる茎乳突孔がある。顎関節の関節窩 (下顎窩) をよく見ると、へこみの後部を横断して縫合のような骨接合部があり、その溝の一部を錐体鼓室裂と呼ぶ (前ツチ骨靱帯の一部と鼓索神経p.58,62が通る)。前ツチ骨靱帯の一部は中耳と顎関節を結び、顎関節症における聴覚異常を起こす。錐体鼓室裂から茎状突起に至る小部分を側頭骨鼓室部と呼び、進化の上でも個体発生でも側頭骨の大部分とは独立して形成される。鯨の鼓室部(耳包骨)は化石としてよく保存され、時に神社で御神体にされる。下顎窩から外側に側頭骨の頬骨突起が延びだし、頬骨弓に参加する。
次に蝶形骨を見る。大きな後鼻孔をはさむように翼状突起がある。翼状突起は外側板が大きく、内側板は細長い。翼状突起後方には前内側で大きな卵円孔と後外側で小さな棘孔が開く。翼状突起の外側は蝶形骨大翼が広がり、その前方は翼上顎裂で途絶える。翼上顎裂の奥は、すでに外側から見た翼口蓋窩である。後鼻孔の正中線上には鋤骨という単独の骨があり、骨鼻中隔の後端をなしている。
外頭蓋底の前部に骨口蓋がある。骨口蓋は上顎骨と口蓋骨からなる。ここで見える歯槽はすべて上顎骨にある。後部を横走する縫合 (横口蓋縫合) の後方が口蓋骨水平板で、その外側端には大小の口蓋孔が開く。後鼻孔から鼻腔を覗き込むと、後鼻孔に接して口蓋骨垂直板がある。口蓋骨は単純に言えば、水平板と垂直板がL字型に合わさった形態を示す。骨口蓋の前端に開く切歯孔は、進化の過程では特殊な感覚神経 (終神経 : ヒトにはない) の経路だった。上顎体の中に広がる上顎洞 (副鼻腔の1つ) は破損のない標本では見えないが、上顎歯の歯槽は深部 (上方) でしばしば上顎洞に突出している。上顎洞は疾患の多い部位であり、古典的な上顎洞の手術(Cadwell & Luc 法) では、切歯孔付近の骨口蓋を回窓してアプロ−チする。
■付図 外頭蓋底:特に側頭骨錐体と鼓室部
(オリジナルの図)
Skull base 頭蓋底
Skull base、external aspect
がいとうがいてい 外頭蓋底 781,782Occipital bone 後頭骨 757
Foramen magnum
だいこう 大孔 (大後頭孔)Occipital condyle 後頭顆
Hypoglossal canal
ぜっかしんけいかん 舌下神経管Condylar (Condyloid) canal 顆管
*External occipital protuberance *外後頭隆起
(Superior/Inferior) Nuchal line
かこうせん (上・下) 項線Temporal bone 側頭骨
Sphenoid bone
ちょうけいこつ 蝶形骨Clivus
しゃだい 斜台 827,891(Clivus:なぜかクレメンテの頭蓋底の図には書いていない)
Petrous part 側頭骨岩様部 = 錐体 +乳様突起
がんようぶPyramis 錐体
Jugular foramen 頚静脈孔
Carotid canal 頚動脈管
Foramen lacerum 破裂孔
Auditory tube
じかん 耳管 920,921Styloid process 茎状突起
*Mastoid process (Process mastoideus) *乳様突起
Stylomastoid foramen
けいにゅうとつこう 茎乳突孔Mandibular fossa 顎関節の下顎窩 781,738
(Left/Right) Choana, Posterior nasal aperture後鼻孔
こうびこう(後鼻口:一般的ではない)
Pterygoid process (Sphenoid bone) 翼状突起 781
Foramen ovale 卵円孔
Foramen spinosum 棘孔
きょくこうGreater wing (Ala major) of - 蝶形骨大翼
Pterygopalatine fossa 翼口蓋窩
Vomer 鋤骨
じょこつBony nasal septum 骨鼻中隔
*Hard palate *骨口蓋 872
Maxilla 上顎骨
Palatine bone 口蓋骨
こうがいこつ*Alveolar sockets *歯槽
しそう*Transverse palatine suture *横口蓋縫合 −
ほうごうHorizontal part/plate of palatine bone 口蓋骨水平板
Greater/Lesser palatine foramen 大小の口蓋孔
Perpendicular plate of palatine bone 口蓋骨垂直板 827
Incisive foramen 切歯孔
せっしこうMaxillary sinus 上顎洞 840
まず3つのへこみを区別する (前頭蓋窩、中頭蓋窩、後頭蓋窩)。この順で各頭蓋窩は階段状に低くなる。中頭蓋窩と後頭蓋窩の間には、外頭蓋底からも見えた側頭骨錐体が稜状に盛り上がっている。後頭蓋窩の中央には大後頭孔が開く。
前頭蓋窩には大脳の前頭葉が乗り、脳回 (しわ) に対応する圧跡 (あっこん) がある。前頭蓋窩の正中線上に鶏冠、その左右に篩板を見る。篩板の細かい孔を嗅神経が通る。前頭蓋窩の大部分を占める前頭骨は、眼窩の上壁にも相当するので、再び眼窩からも確認する。前頭蓋窩の後縁は蝶形骨小翼が作り、鋭い自由縁で終わる。その自由縁の内側端は突起をなす (前床突起)。
中頭蓋窩には大脳の側頭葉が乗る。中頭蓋窩の前部は蝶形骨大翼が、後部は側頭骨鱗部が作る。蝶形骨に開く孔を確認する。視神経管と上眼窩裂は眼窩からも見える。正円孔は翼口蓋窩に続く。卵円孔、棘孔および破裂孔は外頭蓋底に続く。棘孔からは、中硬膜動脈が作る動脈溝が頭蓋冠に向けて延びている。左右の中頭蓋窩にはさまれた高台はトルコ鞍と呼ばれ、中央に下垂体を入れるへこみ (下垂体窩) がある。トルコ鞍の左右に接して、生体では海綿静脈洞という構造があった (Fig.773)。下垂体窩の後方に後床突起を見ると、後は斜台を経てすべり台状に下がり、大後頭孔に至る。これら中頭蓋窩の中央領域は、現在の脳神経外科で最も高度な Skull base surgery の対象になっている。中頭蓋窩と後頭蓋窩を区切る側頭骨錐体は、後日に耳の解剖で詳細に検討する (p.63)。錐体前面で破裂孔に続く大錐体神経管裂孔、錐体内部の前半規管に対応する弓状隆起(クレメンテにはないが、しばしばあきらかな突出)、後面では内耳孔をそれぞれ確認する。内耳孔に続く内耳道は、微細な孔の開く内耳道底に終わる。錐体の前端には頚動脈管が開いているが、そこは破裂孔に近接しているので分りにくい。外頭蓋底からここに至る頚動脈管は、S字状に湾曲しているので見通すことはできない (髪の毛を通してみる)。君たちは、迂曲した頚動脈管とその前後の内頚動脈の走行を、造影によってル−チンに読影しなくてはならない(写真供覧)。
後頭蓋窩には小脳等が接する。錐体に接して大きな頚静脈孔を見る。上方から頚静脈孔に続くS状洞溝は、上方にたどれば横洞溝を経て頭蓋冠の上矢状洞溝に連続する。左右の横洞溝が合わさる正中線上に内後頭隆起がある。
Skull base, internal aspect 内頭蓋底 779,780
Anterior/Middle/Posterior cranial fossa前頭蓋窩、中頭蓋窩、後頭蓋窩
Petrous part of temporal bone *側頭骨岩様部
がんようぶ 779Temporal bone 側頭骨 919,920
Foramen magnum 大後頭孔、大孔
Crista galli 鶏冠
けいかんCribriform plate of ethmoid bone 篩板
しばんEthmoid bone 篩骨 838,839,842
Frontal bone 前頭骨
Orbita 眼窩
Lesser wing (Ala minor) 蝶形骨小翼
Anterior clinoid process 前床突起
ぜんしょう−Greater wing (Ala major) 蝶形骨大翼 −
たいよくSquamous part (Pars squamosa) 側頭骨鱗部 −
りんぶOptic canal 視神経管 787
Superior orbital fissure 上眼窩裂 787
Foramen rotundum, Round foramen 正円孔
せいえんこうPterygopalatine fossa 翼口蓋窩
よくこうがいかForame ovale, Ovale foramen 卵円孔
Foramen spinosum 棘孔
Foramen lacerum 破裂孔
Sella turcica トルコ鞍
トルコあんHypophysial fossa 下垂体窩
Posterior clinoid process 後床突起
Clivus 斜台
しゃだい 827,891(なぜかクレメンテの頭蓋底の図には書いていない)
Foramen magnum 大後頭孔,大孔
External/Middle/Internal ear 外耳, 中耳, 内耳 915-940
Internal acoustic foramen 内耳孔
Internal acoustic meatus 内耳道
Carotid canal 頚動脈管
Jugular foramen 頚静脈孔
Sulcus for sigmoid sinus S状洞溝 764-768
Internal occipital protuberance 内後頭隆起
ないこうとうりゅうき歯槽の付いた頑丈な下顎体と板状の下顎枝を区別する。下顎枝の上部は、後方の関節突起と、前方の筋突起に分れ、2つの突起の間に下顎切痕がある。生体で下顎切痕から卵円孔に向けて針を刺すことがある (卵円孔ブロック:付図参照)。関節突起上端の下顎頭は、側頭骨下顎窩と組んで顎関節を作る。下顎は前後方向にもかなり動くので (滑走)、下顎窩前方の隆起にも下顎頭は乗り上げる。下顎枝の後下端が下顎角、下顎体の下部が下顎底である。下顎底の前面で正中線上にオトガイ隆起、下顎体前面に左右のオトガイ孔を認める。下顎枝内面では、下顎孔、顎舌骨筋線、翼突筋粗面を探す。下顎孔に始まる下顎管は(Fig.866)、神経と血管を入れて各歯槽とオトガイ孔に至る。下顎孔は、大臼歯の歯槽からどのくらい離れているだろう。
Mandible 下顎骨 867-870
*Body of mandible *下顎体
*Ramus of mandible *下顎枝
かがくし*Condylar process *関節突起
*Coronoid process *筋突起
*Mandibular notch *下顎切痕
*Head of mandible *下顎頭
Mandibular joint 顎関節 (側頭骨下顎関節)Jaw jointは俗語
*Angle of Mandible *下顎角
*Base of mandible *下顎底
*Mental protuberance *オトガイ隆起
Mental foramen オトガイ孔
Mandibular foramen 下顎孔
Mylohyoid line 顎舌骨筋線
Pterygoid tuberosity 翼突筋粗面
Mandibular canal 下顎管 875,866
(エキスパ−トナ−スの図を改変)
8.2.7 歯 Tooth (Fig.866-887)
日本の歯学部学生なら誰もが購入する模型がある。それを用いて実習する。歯槽から抜いた歯を紛失しないよう、金属トレ−の中で実習を行う。
歯科口腔領域に独特の方向用語がある : 頬側(きょうそく)−舌側、
近心(前方)−遠心(奥の方)。各歯に歯冠と歯根を区別する(両者の境界部が歯頚)。歯冠には4面がある:舌側面、頬側面、隣接面、咬合面。咬合面にある結節(小隆起)を咬頭という。
上顎歯・下顎歯とも、左右それぞれ各8本、計32本 (第3大臼歯、いわゆる智知・親知らずを含む)。1側について近心から遠心に向けて見ると、切歯2本 (中切歯と側切歯)、犬歯1本、小臼歯2本 (第 1,2 小臼歯)、大臼歯3本 (第 1,2,3 大臼歯) から構成される。これら8本を番号で記載する :1(中切歯), 2(側切歯),3(犬歯),4(第1小臼歯) ,5(2小臼歯),6(第1大臼歯),7(第2大臼歯),8(第3大臼歯)。小臼歯は通常2咬頭で1-2 根、大臼歯は 4-5 咬頭で必ず2根以上。ただし第3大臼歯は半数近くで1根。
同じ番号の下顎歯と上顎歯を比較する。切歯と犬歯では下顎歯の方が細長い。小臼歯について下顎歯と上顎歯を比べると、上顎歯では咬合面が頬舌方向に長い。大臼歯は同じ番号ならば、根の数が上顎歯の方が多い (時に同数) : (例) 第1大臼歯なら下顎歯3根は20 %、上顎歯3根は 100 %。また大臼歯では、下顎歯の咬合面は正方形に近いが、上顎歯の咬合面はひしゃげている。
<課題>左右いずれかだけ、歯槽から抜いてばらばらにした歯を、歯槽を見ることなく並べて、番号を同定する (歯学部なら留年ボ−ダ−ラインレベル)。
Alveolar sockets 歯槽
しそうBuccal 頬側
きょうそくLingual 舌側
ぜっそくMesial 近心
きんしんDistal 遠心
えんしんCrown 歯冠
しかんRoot 歯根
しこんOcclusal surface 咬合面
こうごうめんCusp 咬頭
こうとうUpper teeth 上顎歯
じょうがくしLower teeth 下顎歯
かがくしIncisor 切歯
せっしCanine tooth 犬歯
けんしPremolar 小臼歯
しょうきゅうしMolar 大臼歯
だいきゅうし8.2.8 その他
o 舌骨 Hyoid bone : Fig.904-907 : 生体で舌骨体(喉頭隆起の約1cm上) とその後上方に続く舌骨大角を触診する。
o 翼口蓋窩の出入口と通過構造(神経・血管)を整理する (表)省略
(例:上方が下眼窩裂、内側前方が蝶口蓋孔、後方が翼突管、など)
o 内頭蓋底に見る神経・血管の主な通路を下記の要領で整理する
(例) (どこからどこへ) (通過構造)
視神経管 眼窩−中頭蓋窩
視神経、眼動脈卵円孔 外頭蓋底 (側頭下窩) −中頭蓋窩
下顎神経破裂孔 同上 (軟骨で埋められる)
大錐体神経は軟骨の上方で翼突管へo その他 : 上眼窩裂、下眼窩裂、大後頭孔、舌下神経管、頚静脈孔、頚動
脈管、筋耳管管、茎乳突孔、錐体鼓室裂、正円孔、棘孔、翼上顎裂、大小
の口蓋孔 等についても試験までに上例のごとく整理しなさい。
8.3 脊柱と肋骨 (Fig.655-657、 155-157)
椎骨と椎間円板が連結して脊柱を作る(椎骨の連結:Fig.663-667,672-674)。椎間円板は軟骨なので標本には含まれていない。脊柱は(教科書的には)腰部と頚部で前弯し、胸部で後弯するが、頚部前弯は不明瞭な人が少なくない。腰部前弯の最も凸(前)の部分は仙骨の岬角(後述)である。側弯は病的状態:多くは突発性(原因不明)で乳幼児男子ないし思春期女子に好発。軽度の側弯をスクリ−ニングするのは案外難しい(図p.225)。脊柱の中には脊柱管があり、脊髄を収納する。椎骨の形態はどの脊椎動物でも体の部位によって異なるが、進化の過程から見てヒトでは、胸椎が最も基本的な形態を留めていると考えられている。胸椎には肋骨が関節し、さらに前方の胸骨も合せて全体として胸郭を形成する(後述2)。哺乳類の肋骨は胸部に限られているが、その他の脊椎動物ではより広範囲に存在する。クレメンテの図譜と後述の記載を参考にして、胸椎、頚椎、腰椎を分けることから実習が始まる。
Vertebral column 脊柱 655-657
せきちゅうIntervertebral disc 椎間円板 674
ついかんえんばんVentrally convex curvature 前弯 Lordosis
Dorsally convex curvature 後弯 Kyphosis
Promontory 岬角
こうかくScoliosis 側弯
Vertebral canal 脊柱管 (椎孔
Vertebral foramenの連なり)Spinal cord 脊髄 681
せきずい*Cervical vertebrae *頚椎
けいつい*Thoracic vertebrae *胸椎
*Lumbar vertebrae *腰椎
*Sacrum *仙骨
■付図 側弯のスクリ−ニング:子供を立たせておじぎをさせると..
(「標準整形外科学」の図を改変)
胸椎は略してTないしThと記す。観察には上位胸椎を選ぶといい。まず椎体と椎弓を区別する。椎体と椎弓は、脊髄を入れるまるい椎孔を囲んでいる。椎弓に、椎孔をはさむ左右の椎弓根と椎孔後方の椎弓板を区別する。椎弓板の下部から棘突起が後下方に突出し、外側から横突起が突出する。横突起の先には肋横突関節の関節面がある。椎弓根の下方には、椎体と椎弓板にはさまれた小さな湾入が生じる。これを下椎切痕と呼び、上下が組みあわさると(教科書的には椎弓根上方に上椎切痕をも想定している)、椎間孔という脊髄神経の通路が成立する。
椎弓板の上部には上関節突起が立ち、椎弓板下部の前面にある関節面と手と手を合せるごとく椎間関節を作る(医師はこの関節を単にファセットジョイントと呼ぶ)。上関節突起の関節面は後方を向く。下の関節面は、教科書的には下関節突起と呼ばれるが、上関節突起のように独立せずに椎弓板の一部をなすことが多い。胸椎の椎間関節面は、ほぼ前頭面(前額面)上にあることに注意する。関節突起は、進化の過程を見れば横突起とは別に形成されるが、医学書ではしばしば横突起の一部として扱われている。椎体後部には上下左右に計4個、肋骨頭が当たる関節面がある(肋骨窩)。肋骨窩は第1,11,12 胸椎では各2個で、位置も異なる。椎孔に面して、椎体の後面には静脈の通る孔が見られる(Fig.689)。生体では後縦靱帯という重要な帯状の構造があり、椎体の後面(静脈の孔がある)を後頭骨から仙骨まで縦に連結していた。後縦靱帯の硬化や肥厚は有名な難病の1つである。椎体の上面下面の辺縁は加齢に伴って、大なり小なり押しつぶされたようにめくりあがり、顕著な場合は骨棘が形成される。多くの脊椎動物では、椎体の腹側から棘突起のような長い突起が出る(腹側突起:今晩の焼魚を見よ)。その根部は大動脈を囲み、血管弓と呼ばれる。
上関節突起にはさまれた切痕状の部分(切れ込み)をよく見ると、辺縁に段があって粗面を呈する。いわゆる下関節突起の間(椎弓板の下部前面)にも同様の粗面がある。これら粗面には黄色靱帯という重要な弾性構造が付着し、上下の椎弓板を連結している。椎弓板と黄色靱帯を後方から少しずつ削り取る手術(Love 法) は、椎間板ヘルニアの基本術式である(ビデオ後日、p.106)。
Thoracic vetrebrae 胸椎 658-661
Body of vertebra
ついたい 椎体Vertebral arch
ついきゅう 椎弓Vertebral foramen 椎孔
Lamina (of vertebral arch) −
ばん 椎弓板Pedicle (of vertebral arch) −
こん 椎弓根*Spinous process
きょくとっき *棘突起 *Process spinosusTransverse process
おうとっき 横突起 *Process transversusCostotlansverse joint
ろくおうとつ− 肋横突関節 662-664Inferior vertebral notch
かついせっこん 下椎切痕Intervertebral foramen 椎間孔 665
Spinal nerve 脊髄神経 13,626
Superior articular process 上関節突起
Zygapophysial joint, Facet joint (Facetも関節の意味)椎間関節 67
Superior/Inferior costal facet(foveaが正しい)(上・下)肋骨窩
Costovertebral joint 肋骨頭関節 662-664
Posterior longitudinal ligament 後縦靱帯 672
Ligamentum flavum
おうしょくじんたい 黄色靱帯(黄靭帯) 667,674肋骨と胸骨は、胸部脊柱と合せてカゴ状の胸郭(Thorax)を形成する。第 11,12肋骨はカゴ(Thoracic cage)形成に参加しない。胸郭に胸郭上口と胸郭下口を区別する。胸郭の内腔を胸腔という(最も広義)。胸郭上口が後方で高いので、胸腔も後方で丈が高い。広義の肋骨は、骨標本として見る狭義の肋骨(肋硬骨)とハサミで切れる柔らかさの肋軟骨からなる。胸郭が呼吸に果す役割は、死期の迫った患者で最もよく見ることができる。彼らは、胸郭を精一杯上下させて呼吸を維持しようとするが(肩で息をする)、やがて力尽きて下顎呼吸に移り、呼吸停止に至る。
(通常は胸郭に胸壁筋とその筋膜が付いた状態で、その内腔を胸腔と呼ぶ)
肋骨に肋骨頭、肋骨頚、肋骨結節、肋骨体を区別する。肋骨結節のやや外側で、肋骨体の前方への曲りの強い部位があり、その曲りに一致して背側面に若干の角および粗面ができる(肋骨角)。肋骨角は背部の筋群の境界であり(p.108)、上位肋骨で明瞭。ただし第1肋骨では肋骨結節の後端が肋骨角になる。肋骨頭と肋骨結節には椎骨との関節面がある(肋骨頭関節、肋横突関節)。肋骨頭関節ではわずかだが回旋(回転)に近い運動を行い、肋横突関節がテコの支点になり、肋骨の長さとねじれによって増幅された運動が胸骨を前上−後下方向に動かす。胸郭の上昇により、胸腔容積は増大し、吸気を行う。肩甲骨が胸郭に張り付いているため、『肩で息をする』ように見える。胸郭運動を増幅する肋骨のねじれは、軸方向のねじれと、椎骨端の上方湾曲に分けて考えることができる。肋骨体の下縁は鋭く、血管がはまる肋骨溝が認められる。上縁は鈍いが、第2肋骨には上縁にもしばしば溝がある。12対の肋骨を並べて部位ごとの特徴をつかむ(図p.222)。上下に扁平な第1肋骨は、第 11,12 肋骨と共に肋骨頭がまるい。第2-10肋骨の肋骨頭は、隣接する上下2椎と関節するため、くさび型をして関節面が2面に分れる。第6-7肋骨付近が最も長い。なお生体では、第1肋骨は鎖骨に隠れて触診しがたい。
胸骨に、胸骨柄、胸骨体、剣状突起を区別する。胸骨柄の上縁には頚切痕がある。胸骨柄と胸骨体の結合部は胸骨角と呼ばれ、生体でわずかに盛り上がって胸部触診その他の位置基準として用いられる(p.115 縦隔の区分、p.139食道の区分):胸骨角の外側が第2肋骨。剣状突起は小さいが重要な構造物である(p.114 横隔膜,ラ−レ−孔)。剣状突起の左右には、生体では下位の肋軟骨と肋硬骨が組み合わさった肋骨弓が形成される。肋軟骨は軟骨ではあるが、関節裂隙を持って胸骨と関節する。胸骨全体が胸郭にめりこむように陥凹する病気を漏斗胸 Funnel chest といい、多くは男児に見られる。逆に前方に突出すると鳩胸 Pigeonchest という。
胸郭のX線写真(X-P): Fig.159
Thoracic cage 胸郭 147,149,152,157
(胸部脊柱を含めて、日本では一般に胸部のことをThoraxと呼ぶ)
*Sternum *胸骨 ↑
きょうかく 153,154*Ribs *肋骨 (肋硬骨、肋軟骨)155
*Costal cartilages *肋軟骨
Head of rib 肋骨頭
Neck of rib 肋骨頚 −
けいTubercle of rib 肋骨結節
ろっこつけっせつBody of rib 肋骨体
Costal angle 肋骨角 −
かくCostovertebral joint 肋骨頭関節、肋横突関節
662-664
Costal groove 肋骨溝
*Manubrium *胸骨柄 −
へい*Body of sternum *胸骨体
*Xiphoid process *剣状突起
*Jugular notch *頚切痕
*Sternal angle *胸骨角
*Costal margin,Costal arch *肋骨弓 147
*Sternocostal articulation *肋軟骨と胸骨の連結 156
■付図 肋骨を並べて比較しよう
(「骨学実習の手びき」の図を改変)
腰椎(略してLと記す)の椎体は明らかに大きい。椎体の上面下面の辺縁には、胸椎以上に顕著な加齢変化がしばしば認められる。椎孔は円形でなく、ひしゃげている。棘突起は短く、下方ではなくほぼ後方に突出する。上関節突起だけでなく下関節突起も明瞭に認められる。椎間関節の関節面は曲面をなし、胸椎のような前頭面ではなく矢状面に近い。後方から見て上下4つの関節突起を結ぶと、正方形に近い四角になる。上関節突起の後部には、標本の保存がよければ、上方のごつい乳頭突起と下方の鋭い副突起を区別することができる。乳頭突起と副突起は背部の異なる筋群の起始になっており、間の狭い溝を神経が走る。椎弓板の上縁下縁には、胸椎同様に黄色靱帯の付着する面が見つかる。横突起のように外側に出る突起は実は肋骨(腰肋)の遺残で肋骨突起と呼ばれる。腰椎の横突起は、進化の過程から見れば厳密には乳頭突起+副突起を指す。したがってそれは、胸椎の外側に張り出した横突起とは、かなり形態が異なる。なお臨床医の多くは教科書も含めて、肋骨突起を胸椎の横突起と相同と考えているので、彼らが肋骨突起を横突起と呼んでも話を合せて欲しい。
腰椎を外側から見て、椎体をくわえるテリア犬の姿を描いて欲しい。犬の鼻 (口)=椎弓根、耳=上関節突起と横突起、前足=下関節突起、後足=棘突起、(肋骨突起は無視して欲しい)。しかし残念なことに、臨床現場ではこのテリア犬の像を約 45°の角度(斜位)で単純X線撮影して捕らえる。すると(保存のいい標本でないと分らないが),犬の鼻(口)=肋骨突起、目=椎弓根(椎体付着が丸く見える)、左右の耳=上関節突起と横突起、左右の前足=左右の下関節突起、後足=棘突起という関係になる (かえって前半の知識がない方がよかったかも知れない ? )。このX線上のテリア犬は臨床では非常に有名で、脊椎分離症では椎弓板と椎弓根の連結部が離れて(いわば骨折して)犬の首輪として見える。
Lumbar vertebrae 腰椎 668-670
椎骨と脊髄・血管 (断面) 687-689
Mamillary process 乳頭突起
Accessory process 副突起
Costal process 肋骨突起 669
Transverse process 横突起 668
(「標準整形外科学」の図を改変)
仙骨 (略してSと記す) は5個の椎骨が癒合して形成されている。後面には、棘突起に相当する正中仙骨稜、関節突起に対応するかすかな中間仙骨稜、横突起に対応する外側仙骨稜を認める。当然 (理由は省略) 中間仙骨稜と外側仙骨稜の間に、脊髄神経後枝が通る後仙骨孔がある。前面には脊髄神経前枝が通る前仙骨孔があり、神経を外側にガイドするような溝を伴う。仙骨が腰椎に対して後方に向かうことから、骨盤は腰椎に 30 ° の前傾をなし、仙骨の中で岬角が最も前に突出する。仙骨の中には仙骨管があり、その下端 (仙骨裂孔) を後方からはさむように突起 (仙骨角) が形成される。仙骨裂孔には、サドルブロックの際に麻酔のために針を挿入する。仙骨上部には第5腰椎の下関節突起と関節する面があり、また外側には腸骨 (寛骨) と関節して骨盤を形成する関節面 (耳状面) がある。耳状面の後方には、靱帯と筋が付着する粗面がある。仙骨上面の加齢変化により、第5腰椎と仙骨の間 (臨床では5Sと記す) を通る脊髄神経を囲むような骨性の管様構造がしばしば見られる。
尾骨 (略してCoと記す) は 4-5 個の退化した椎骨からなる。椎孔に相当する孔ないし管も、棘突起様の構造もない。
*Sacrum *仙骨 675-678
*Coccyx *尾骨 675-678
びこつMedian sacral crest 正中仙骨稜
Anterior/Dorsal sacral foramen 前/後仙骨孔
(正式にはanterior/posterior, ventral/dorsal の組み合わせで用いるが−)
Pelvic/Anterior surface 前面
Ventral ramus of spinal nerve 脊髄神経前枝
Promontory(of sacrum) 岬角
こうかく (他に耳にも岬角がある)Sacral canal、 Sacral hiatus 仙骨管、 仙骨裂孔
Sacral horn 仙骨角
Auricular surface of sacrum 耳状面
じじょうめん頚椎の最大の特徴は横突孔にある。横突孔には椎骨動脈が通る(Fig.719)。頚椎の横突起は、中央に横突孔があるため、前結節と後結節に分れる。進化の過程を考えると、腰椎の肋骨突起と同様、前結節は肋骨の一部と考えられている。前結節と後結節の間、そして上関節突起と隆起した椎体外側縁 (鈎状突起 : 後述) の間には、脊髄神経が通る溝 (脊髄神経溝)が形成される。頚椎が連結した状態では、脊髄神経溝は椎間孔になる。上述の 『上関節突起と鈎状突起の間』 とは、すなわち椎弓根の上縁に当たる。棘突起は短く、先端は結節状でしばしば2つに割れる。椎孔は三角形をしている。椎間関節面は曲面をなし、前頭面よりやや水平面に近く、こうした傾向は上位頚椎で顕著である。
第 1,2 頚椎を除けば、椎体上部の外側縁が競り上がって隆起している。この隆起は一般に加齢と共に上方に突出して鈎状突起と呼ばれる。この突起は隣接する上位椎体との間でしばしば関節 (ルシュカ関節) を形成する。鈎状突起が大きく後外側に成長して骨棘になると、椎間孔を狭小化し、そこを通る脊髄神経根を圧迫していわゆる根症状を出すようになる。頚椎の単純X線写真を読影する際の観察ポイントの1つである。
第 1,2 頚椎は一目で分かる。第1頚椎は環椎と呼ばれ、リング状で椎体と棘突起がない。椎体を第2頚椎に奪われたため、前方部分が薄く、椎孔もまるい。薄い前方部分 (前弓)には、椎孔に面して関節面 (歯突起窩) がある。椎間関節面がある外側部分を外側塊と呼ぶ。横突起はかなり大きい。椎間関節面は水平面に近い曲面で、椎孔に向けて傾く。椎弓根と椎弓板の区別はなく、後弓と呼ばれる。
第2頚椎は軸椎と呼ばれ、進化の過程で第1頚椎から奪った椎体が歯突起を作る。歯突起の前面には関節面がある。第1頚椎とは逆に、強大な棘突起があるが、横突起は小さい。横突孔をはさんで、上下の椎間関節面が前後に大きく離れている (上が前方)。
頚椎のX線写真 (X-P):Fig.654 (Fig.694,890 も参照)
Cervical vertebrae 頚椎 639-646
Transverse foramen
おうとつこう、おうとっこう 横突孔Vertebral artery 椎骨動脈 719
Anterior tubercle 前結節
Posterior tubercle 後結節
Uncus of vertebral body(Uncinate process) 鈎状突起
こうじょうとっき 646
Luschka's Joint ルシュカ関節(鈎椎関節)
Atlas 環椎
Fovea for dens 歯突起窩
しとっきかAnterior/Posterior arch 前弓/後弓
Lateral mass 外側塊
Axis 軸椎
Dens, Odontoid process 歯突起
Atlantooccipital joint, Atlantoaxial joint 環椎後頭関節、環軸関節
647-654,890
上肢骨 (自由上肢骨) と上肢帯骨
各部の名称 : Fig.40,41 上肢 Upper extremity、上肢帯 Shoulder girdle、上腕 Upperarm、肘 Elbow : 肘窩Cubital fossa 前腕 Forearm、手 Hand(手掌,手背,指)
前腕と手では、しばしば内側(小指側)を尺側、外側(親指側)を橈側と呼ぶ。また、指先に近い方を遠位、体幹ないし肩に近い方を近位と呼ぶ(遠位・近位は下肢でも用いる)。
鎖骨は肩を一定の高さに支えると共に内側に偏位するのを防いでいる。しかし鎖骨を摘出しても、ADL上はあまり支障はない。鎖骨は長管骨だが髄腔がなく、しかも長管骨だが膜性骨化を行い、人体の中で最も早く胎生期に骨化する。
内側(近位)でごつい胸骨端と外側(遠位)で平坦な肩峰端を区別する。次に上面下面の区別だが、下面には外側で靱帯付着による結節が顕著 (烏口鎖骨靱帯など)、内側にも肋鎖靱帯が付く粗面がある。鎖骨は内側で前方に凸、外側で後方に凸、全体としてS字状を呈する。断面は内側でまるく、外側で楕円。
鎖骨骨折は非常に頻度が高いので常識として整理する。通常は中1/3で折れる。近位骨片 (こういう呼び方をする) は胸鎖乳突筋に引かれて上方へ、遠位骨片は上肢の自重によって下方に転位、さらに、上肢と体幹を結ぶ多くの筋によって上肢が内側に引かれるため、遠位骨片の上方に近位骨片が必ず重なりあう。したがって、骨折の整復 (両骨片を本来の位置関係にもどすこと) が必要。
両端の関節面は、関節裂隙に関節円板という軟骨をはさむこともあって、必ずしも光沢のある平滑面ではない。しかも、相手の関節面とは大きさも形も合わないにも関わらず、無理して関節円板によって適合させている。上肢の挙上・下制に伴い、胸鎖関節は約 40° 、肩鎖関節は約 20 ° 動く。さらに鎖骨が、両関節の間で長軸方向に 40-50 ° 回旋していることを自分の体で確認したい。上肢の挙上・下制を繰り返しながら、鎖骨上に当てた指で (単なる上下運動ではなく) 回旋していることを確認する。
*Clavicle *鎖骨
さこつ 150*Sternal extremity/terminal *胸骨端
*Acromial extremity/terminal *肩峰端
けんぽうたんCoracoclavicular ligament 烏口鎖骨靱帯
うこう− 96,98Costoclavicular ligament 肋鎖靱帯
ろくさ− 148*Sternocleidomastoid muscle 胸鎖乳突筋
きょうさにゅうとつ− 699Articular disc 関節円板 148
Sternoclavicular joint 胸鎖関節 148
*Acromioclavicular joint *肩鎖関節
けんさ− 96-98(*Scapuloclavicular joint)
付図 上肢の挙上と肩甲骨&鎖骨の回旋
(「骨学実習の手びき」の図を改変)
肩甲骨は生体では前頭面に対して約 30 ° 外側前方に傾いて胸郭に固定されている。肩甲骨に肋骨面 (前面) と背側面 (後面) を区別する。背側面は、強大な肩甲棘を堺にして棘上窩と棘下窩に分れる。肩甲棘の外側端は平坦に広がり、肩峰と呼ばれる。肩甲棘の内側端は、生体でほぼ第3胸椎の高さにある。肋骨面には肩甲下筋の筋束に対応した凹凸が見られる。
次に、辺縁に上角・下角・上縁・内側縁・外側縁を区別する。生体では、上角はほぼ第2肋骨の高さ、下角はほぼ第7肋骨の高さにある。外側縁の上部には関節窩がある。関節窩は西洋梨型をしており、関節の相手となる上腕骨頭の形とは対応しない。広範にわたり上腕骨頭がはみ出すが、そこは主に腱板 (ロ−テ−タカフ) という骨以外の構造が補う(Fig.102)。自由上肢からの荷重を受ける関節窩、回旋力が加わる下角、したがって両者を結ぶ外側縁は強固にできている。上縁には神経が通る肩甲切痕があるが、その形は変異に富む。生体では、上縁はほぼ第2肋骨の高さにある。上縁で関節窩のすぐ内側から烏口突起が出ている。烏口突起は生体で触診しにくい構造の1つだが、三角筋胸筋溝の上端やや外側、鎖骨の 1-2 横指下方で触れてみよう。
肩峰と烏口突起が、関節を上から屋根のように保護していることに注目。上角−内側縁−下角には、肩甲骨を胸郭に固定かつ回旋させる筋群が付く。回旋させる上で下角に付く筋が特に重要なことは、交連標本を参考に理解すること。したがって下角は丈夫にできている。
ここで肩関節について述べる。広義の肩関節は、肩甲上腕関節 (狭義の肩関節) と肩鎖関節から構成される。この他、肩甲骨と胸郭の間の筋群間の滑面を、肩甲胸郭関節と呼ぶことがあるが、筋と筋の間なので真の関節ではない。
肩甲胸郭関節では0− 60 ° の範囲で肩甲骨の回旋を行う。回旋軸は肩甲棘中央のやや下方にあり、運動中に上下 10-12mmの範囲で移動しうる。肩甲骨の回旋と一概に言っても、肩甲骨が鎖骨で固定されていることも忘れてはいけない。一般論としては、肩甲骨の回旋の前半 30 ° は肩鎖関節単独で吸収できるが、後半 30 ° では胸鎖関節も共に動いて鎖骨自体に回旋が生じる (鎖骨参照)。肩関節の運動用語は多彩なのでp.80、259 参照 (『肩の内旋外旋は肘を曲げて脇をしめて手を振る』ことだけ取り敢えず覚える)。自由上肢が外転 (例えば 90 ° つまり水平位) している時、その 1/3 は肩甲骨の回旋 (30 ° ) により負担されているという原則がある。肩甲胸郭関節の可動域は0− 60 ° なので、180 ° 挙上位では広義の肩関節が 120 ° 動いた計算になる。肩甲上腕関節の良肢位 (機能的肢位) は、外転では 10-30 ° で、たとえ動かなくてもその位置で固定されていれば一定のADLを維持できる。肩関節脱臼に伴う関節窩前縁の破損をバンカ−トリ−ジョンと呼ぶ。常識の1つなので覚えておこう。
肩関節のX線写真 (X-P) : Fig.103
*Scapula *肩甲骨 92-95
*Spine of scapula *肩甲棘
Spina scapulae*Supraspinatus fossa *棘上窩
きょくじょうか*Infraspinatus fossa *棘下窩
きょくかか*Superior angle *上角
じょうかく*Inferior angle *下角
かかくSuperior/Medial/Lateral border 上縁、内側縁、外側縁
*Acromion *肩峰
けんぽうGlenoid cavity 関節窩
Head of humerus 上腕骨頭 −
こっとうRotator cuff 腱板
けんばん(ロ−テ−タカフ)Scapular notch 肩甲切痕
けんこうせっこん*Coracoid process *烏口突起
うこうとっきShoulder joint 広義の肩関節
かたかんせつ 96-102Bankart's lesion バンカ−トリ−ジョン
上腕骨は典型的な長管骨で、骨体 (骨幹) と骨端が区別できる。近位端 (上端) には上腕骨頭がある。前方からは、遠位端 (下端) に球型の上腕骨小頭が見える。長い部分を上腕骨と呼ぶ。上腕骨頭と上腕骨体の軸は約 135 ° の骨頭体部角を持って交わる。上腕骨頭の関節面の周辺を解剖頚と呼び、不明確だが上腕骨体の上端を外科頚と呼ぶ。上腕骨頭の外側方には粗面状で平たい大結節があり、上腕骨頭の前方には隆起の明確な小結節がある。大結節は腱板の付着部である。大結節と小結節の間には、上腕二頭筋長頭腱を入れる結節間溝が刻まれる。2つの結節の下方には稜状の粗面が続く (大結節稜、小結節稜)。上腕骨体の外側には三角筋粗面がある。骨体に橈骨神経が刻むという橈骨神経溝は、よく知られているが実は明確でない。
遠位端を見ると、前には上腕骨小頭と上腕骨滑車、それらの上方に接して鈎突窩を認める。後方には上腕骨滑車の続きと、その上方に接して深い肘頭窩がある。これら遠位端の構造に、尺骨・ 橈骨それぞれと関節する関節面を確認する。鈎突窩・肘頭窩の側方には、小さい外側上顆と大きい内側上顆が隆起する。生体では、内側上顆の直下で尺骨神経をコリコリと触れることができ、標本の状態がよければこの神経が骨に刻む溝が識別できる (尺骨神経溝)。生体で肘頭窩に肘頭がはまった状態では、伸展位で外側上顆・内側上顆・肘頭近位端の3つは一直線上に並ぶ。子供が手を付いて転倒した後の骨折として有名な上腕骨顆上骨折では、上記の3つが一直線上に並ばなくなる点に注意して、単純X線写真を読影する。肩関節脱臼の際には上腕骨頭の後外側部を損傷することが多く、ヒルザックリ−ジョンと呼ばれる。肘関節については橈骨の章を参照。
Humerus 上腕骨 103-107
Body 骨体
Diaphysis (普通名詞として使う) 骨幹
こっかんEpiphysis (同上) 骨端
こったんHead of humerus 上腕骨頭
Capitulum of humerus 上腕骨小頭
*Body of humerus *上腕骨体
Anatomical neck 解剖頚
Surgical neck 外科頚
げかけいGreater tubercle 大結節
だいけっせつLesser tubercle 小結節
Tendon of long head of biceps muscle 上腕二頭筋長頭腱
−ちょうとうけんIntertubercular sulcus 結節間溝
けっせつかんこうCrest of greater tubercle 大結節稜
Crest of lesser tubercle 小結節稜
Radial groove 橈骨神経溝
Deltoid tuberosity 三角筋粗面
Trochlea of humerus 上腕骨滑車
Coronoid fossa 鈎突窩
こうとつかOlecranon fossa 肘頭窩
ちゅうとうか*Medial/Lateral epicondyle *内側上顆, 外側上顆 −
じょうか*Ulnar nerve sulcus *尺骨神経溝
Hill-Sacks' lesion ヒルザックリ−ジョン
8.4.4 尺骨 (しゃっこつ)
近位端には大きな鈎のような肘頭 (後上方) と鈎状突起 (前下方)、そして2つの関節面がある。ここでは遠位端を尺骨頭と呼び、橈骨に接する環状の関節面とその外側に短い茎状突起がある。関節軟骨 (後述 TFCC) が介在するため手の骨は、直接には尺骨に接することがない。肘頭と鈎状突起に囲まれた大きな滑車切痕には、上腕骨滑車の鼓状ないし糸車状の形に対応した凹凸がある。滑車切痕の外側には橈骨切痕という関節面がある。橈骨切痕の下方には、鋭い骨間縁が延びている。そこには前腕骨間膜が付く。鈎状突起のすぐ遠位には、上腕筋が付く尺骨粗面がある。肘関節については橈骨の章を参照。
*Olecranon (Olecranon process) *肘頭
ちゅうとう*Coronoid process *鈎状突起
こうじょうとっきHead of ulna 尺骨頭
しゃっこつとう*Styloid process *茎状突起
けいじょう−Trochlear notch 滑車切痕
Radial notch 橈骨切痕
とうこつせっこんInterosseous crest 骨間縁
こっかんえん(Antebrachial)Interosseous membrane 前腕骨間膜
Brachialis muscle 上腕筋 62
Ulnar tuberosity 尺骨粗面
橈骨は尺骨とは逆に、近位端がまるく (橈骨頭)、遠位端がごつい。橈骨頭には2つの関節面がある。近位端の凹んだ関節面は上腕骨小頭に対応し、橈骨頭周囲の環状の関節面は尺骨の橈骨切痕に対応する。橈骨頭の下方には前を向いて橈骨粗面があり、上腕二頭筋が付着する。長い橈骨体にも鋭い骨間縁が識別できる。ごつい遠位端には、尺骨に対応する小さい関節面 (尺骨切痕) と手関節の関節面がある。外側端の茎状突起も結節状である。遠位端の後面には、手関節の伸筋腱が複数の溝を刻んでいる。
ここで肘関節について述べる。肘関節は、腕尺関節・腕橈関節・上橈尺関節の3関節から構成される。各骨の何という名称の部位が接するかは自分で整理する。腕尺関節を中心に腕橈関節も加えて屈曲・伸展を行う。上橈尺関節と遠位端の下橈尺関節で回内・回外を行うが、この際には腕橈関節でも小頭の回旋が行われている。p.237のように骨を組合わせて各運動を試みたい。上橈尺関節では、橈骨頭の環状関節面が尺骨の切痕に比べてはるかに広いので、橈骨輪状靱帯という構造に関節軟骨が張り付いて関節面を補う。机に手を置いて親指が上を向いた状態を、回内・回外中間位(0 °)と定義し、手掌(手のひら) が机に付けば回内 90 ° (通常は最大 90 °まで)、手背(手の甲)が机に付けば回外 90 °(通常は最大 110 °まで)と見なす。誰でも見かけ上、回内は 90 ° 以上できるように見えるが、実はその際は肩関節の内旋を伴っている(肘関節は可動域の限界に達している)。起立して肘関節を完全に伸展すると手と前腕が体幹から離れる。重い物を持てば一層明確に外転し、さらに回外する(理由は関節面の傾き)。上腕軸に対するこの外向き約 15 ° を肘関節の Carrying angle と呼ぶ。肘関節の良肢位は屈曲 90 ° で回内・回外中間位と言われ、やむを得ず患者の肘関節を固定する(動かなくする)時はこの位置にしてADLを少しでも保つ。
肘関節の X-P : Fig.122-124
Radius 橈骨 とうこつ 110,111
*Head of radius *橈骨頭
Radial tuberosity 橈骨粗面
Biceps muscle 腕二頭筋
*Body of radius *橈骨体
Interosseous crest 骨間縁
*Styloid process *茎状突起
けいじょう−*Elbow joints *肘関節
ちゅう−,ひじ− 16-124Humeroradial joint 腕橈関節
わんとう−Humeroulnar joint 腕尺関節
わんしゃく−Superior/Inferior radioulnar joint上橈尺関節,下橈尺関節 -
とうしゃく-■付図 肘関節を組み立てて動かしてみよう
(「骨学実習の手びき」の図を改変)
8.4.6 手の骨 (Fig.112-115,125)
本学には、なぜか手と足の骨標本がほとんどない (1998 年から3年次特論の学生に頼んで作製中、諸君も来年は協力して欲しい)。
手背 (手の甲) と手掌 (手のひら) を区別する。手の骨は近位から遠位に向けて次のように配列する : 手根骨近位列−手根骨遠位列−中手骨−指節骨。手根骨近位列は橈側から尺側に向けて、舟状骨、月状骨、三角骨 (+豆状骨)。豆状骨は種子骨 (後述) で、手の力学的構築とは無関係。手根骨遠位列は橈側 (母指側) から尺側に向けて、大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、有鈎骨。遠位列の各骨は、それぞれ2本以上の中手骨と関節している。つまり遠位列の骨と中手骨は 1:1対応ではない。指節骨には、第 2-5 指で基節骨・中節骨・末節骨の3つ、第1指で基節骨・末節骨の2つがある。
生体の手と対応させると、手根骨の占める範囲はごく狭い。自分の手背を見よ。指先から末節骨・中節骨・基節骨に触れる。間の2つの関節をまず DIP 関節(遠位),PIP関節(近位)と覚える。次いで中手骨に触れる。中手骨と基節骨の関節を MP 関節と覚える。中手骨と手根骨の間の関節を自由に動かせるのは母指だけである(第1CM 関節)。同時に手くび(手関節)を動かすと、手根骨の範囲が分かる。
手根骨近位列について述べる。近位列の3骨 (舟状骨、月状骨、三角骨) は、基本的には手関節を作るために存在する。舟状骨と月状骨は橈骨と関節する (橈骨手根関節)。舟状骨は、単純X線写真による骨折の判定が最も困難な骨として有名。月状骨は血液供給の乏しい骨として有名で、したがって骨折はきわめて治癒しがたい。三角骨と尺骨の間には、三角骨線維軟骨複合体 (TFCC) という一種の関節円板が介在する。豆状骨は、尺側手根屈筋の腱の中に生じた骨 (種子骨) で、三角骨の手掌側に付着する。種子骨は、腱の骨付着を容易にしたり、腱と骨が接して生じる摩耗を防ぐための、腱の補助装置。
手根骨遠位列について述べる。遠位列の4骨 (大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、有鈎骨)は基本的には、筋や靱帯を付着させ、しかも中手骨と関節するために存在する。大菱形骨には大きな結節(大菱形骨結節)がある。有頭骨は手掌の中央にあって力学的に重要とされる。有鈎骨の有鈎骨鈎には多くの靱帯が付着する。手くびの橈側で大菱形骨結節が出っ張り、手くびの尺側では有鈎骨鈎と豆状骨が出っ張る(生体で明確に触診できる)。双方の出っ張りの間に手根溝という大きな溝が形成され、手掌に出入りする多数の腱や神経・血管の通路になる。手根溝の全面には強靱な横手根靱帯が張り、手根管が形成される(Fig.90,137)。有鈎骨と豆状骨の間の溝も前から靱帯に覆われ、ギヨン管という神経・血管の通路になる。
中手骨は長管骨で、近位端は中手骨底、遠位端が中手骨頭、間が中手骨体である。中手骨底の関節面 (CM 関節) は各指で形が違う。第1指 (と5指) は鞍状、第2指は中央が凹み3骨と関節し、第 3,4 指は平面的である。第1 CM 関節は典型的な鞍関節であり、屈曲伸展 ・内転外転の他、両者を組合わせた対立運動 (一種の回旋) を可能にしている。指節骨 (末節骨・中節骨・基節骨) にも、中手骨同様に底・体・頭を区別する。IP 関節 (指節間関節 : DIP + PIP) は典型的な蝶番関節で、MP と共に典型的な側副靱帯を見ることができる。
手の X-P : Fig.115,125
Bones of the hand 手の骨 *112-115,125
Carpal bones 手根骨
しゅこんこつ*Metacarpal bone *中手骨
Phalanges 指節骨
Scaphoid 舟状骨
しゅうじょうこつLunate 月状骨
げつじょうこつTriquetrum 三角骨
*Pisiform *豆状骨
とう/ずじょうこつ*Trapezium *大菱形骨
Trapezoid 小菱形骨
Capitate 有頭骨
*Hamate *有鈎骨
ゆうこうこつ*Proximal phalanx *基節骨
*Middle phalanx *中節骨
*Distal phalanx *末節骨
*Joints of the wrist *手関節
て/しゅかんせつDistal interphalangeal joint DIP 関節 (遠位指節間関節)
Proximal interphalangeal joint PIP 関節 (近位指節間関節)
Metacarpophalangeal joint MP 関節ないし MCP 関節
(中手指節関節 )
Carpometacarpal joint CM 関節 (手根中手関節)
Joints of the hand and fingers *手の関節
Radiocarpal joint 橈骨手根関節
(手関節 : Wrist joint)
Triquetrum fibrocartilagenous complex 三角骨線維軟骨複合体 (TFCC)
Flexor carpi ulnaris muscle 尺側手根屈筋 *81
Carpal sulcus 手根溝
しゅこんこうTransverse carpal ligament 横手根靱帯
(屈筋支帯 Flexor retinaculum との区別: p.83参照)
Carpal tunnel 手根管 *90
canal de Guyon (Ulnar tunnel) ギヨン管
Interphalangeal joint IP 関節 (指節間関節 )
Collateral ligament 側副靱帯
下肢骨 (自由下肢骨) と下肢帯骨
各部の名称:Fig.485,488下肢Lower extremity、下肢帯 Pelvic girdle:殿部
Fig.463,骨盤 、Pelvis 寛骨 Hip bone: Fig.376-393、大腿
Thigh, 膝
ひざKnee : 膝窩 しつか Popliteal fossa,ふくらはぎ(腓腹部
ひふくぶ) ,下腿 Leg, 足 Foot足背,足底,かかと(踵骨部:
しょうこつぶ)骨盤としての組み立て骨標本がほとんどないので、やむを得ず 2-3 の模型も用いる。骨盤=仙骨+左右の寛骨、さらに仙結節靱帯と仙棘靱帯を骨に付けて考えること(靱帯標本を見よ)。寛骨=腸骨+坐骨+恥骨、しかし3骨の境界は成体では分らない。骨盤を大骨盤と小骨盤に分ける。大骨盤は、仙骨上部と上方に開いた腸骨翼からなる。骨盤が脊柱に対して約 30 ° の前傾をなすため、大骨盤は前上を向いて開く。小骨盤は筒状で、腸骨体・坐骨・恥骨・仙骨に囲まれる。小骨盤の筒の中を小骨盤腔ないし単に骨盤腔と呼ぶ。大骨盤と小骨盤の境界を分界線という。分界線は、仙骨上部から腸骨翼の内面下端(弓状線)を通り、恥骨上縁に至る。分界線に囲まれた小骨盤の上口を骨盤上口、尾骨が接する下方を骨盤下口という。小骨盤は胎児が分娩時に通過する産道の骨格(骨産道)であり、胎児の頭は前後に長いので、より広い部分に児頭の前後を合せようとして 『児頭の回旋』(付図 p.237)が起る。最も狭いのは(骨盤狭部)、恥骨結合下縁と仙骨下端の間で、ここで胎児が出れるかどうか決まる(骨盤の各部: p.177)。骨産道の計測はいずれ産科で細かく覚えるが、真結合線(産科的結合線)だけは教養として記す:岬角と恥骨結合後面を結ぶ最短距離 (ほぼ骨盤上口の縦径に一致)(付図p.236)。
諸君の標本は仙骨と左右の寛骨に分離している。寛骨は8の字型をしている。8の字の上半分は腸骨翼で、下半分 (腸骨体・坐骨・恥骨) とは鈍角をなして結合する。男性では腸骨翼が立ち、女性では寝る (大骨盤が大きく開く)。8の字中央内面の折れた部分が弓状線である。寛骨の下半分には正に8の字型のごとく大きな閉鎖孔が開く。閉鎖孔は坐骨・恥骨の2骨に囲まれる。外面には股関節を作る寛骨臼がある。寛骨臼も3骨からなる。寛骨を正しい向きと傾きに置ける (立てる) ようになることが、実習の第1歩だ。
腸骨翼の頑丈な上縁が腸骨稜、生体で腸骨稜の最高点を結ぶ線をヤコビ−線という (p.21)。腸骨翼の前縁と後縁には各2つの結節がある : 腸骨稜の前端に相当するのが上前腸骨棘、後端が上後腸骨棘、それぞれのやや下方に下前腸骨棘と下後腸骨棘がある。寛骨下部の後縁で、下後腸骨棘の下方は大きく切れ込む (大坐骨切痕)。大坐骨切痕は坐骨神経等の通路になる。寛骨の最下点には強大な坐骨結節があり、広い粗面を呈する。仙結節靱帯が坐骨結節と仙骨を結ぶ。坐骨結節と大坐骨切痕の間には小さな突起があり (坐骨棘)、さらに坐骨棘と坐骨結節の間に若干の湾入部がある (小坐骨切痕)。小坐骨切痕は陰部神経等の通路になる。仙棘靱帯が坐骨棘と仙骨を結ぶ。寛骨の前端には恥骨結合 のための粗面
がある (恥骨結合面)(関節ではない) 。寛骨の上後部、すなわち腸骨翼の後部は顕著な凹凸を呈する (仙骨盤面)。この部分を、やや滑らかな耳状面 (仙腸関節面) と靱帯が付く腸骨粗面に区別する。
閉鎖孔の周囲を見る。下方の細い柄のような部分は坐骨枝(下方) と恥骨下枝 (上方)。閉鎖孔の上方には、外面で寛骨臼が爆烈火口のごとく開く(寛骨臼切痕)。内面は穏やかで、寛骨臼の後方に相当する部分は腸骨体の平滑な面があるのみ。閉鎖孔の前縁上縁は恥骨上枝と恥骨体が作る。恥骨結合面に近い恥骨上縁には、小さな恥骨結節と低いが鋭い稜(恥骨櫛・ちこつしつ) を認める。恥骨結合下方には、左右の寛骨を合せると、恥骨下枝にはさまれた弓状の部分が生じる (恥骨弓)。恥骨弓の開き (恥骨下角) には性差がある(男 60 °,女 80 °)。閉鎖孔の大部分は閉鎖膜で閉鎖され、わずかに上端に孔が開いて神経・血管が通る。
寛骨臼の中を見る。平滑な関節面 (月状面) に逆U字に囲まれて寛骨臼切痕がある。寛骨臼は前方で浅く、後方ほど深い。これは、そこにはまる大腿骨の屈曲に有利である。寛骨臼の天井部分は特に外方に競りだしているが、そこを臼蓋という。先天性股関節脱臼(CDH or LCC) は女児に多い有名な奇形だが、多くは臼蓋形成不全を伴う。また、加齢によって臼蓋部の関節面の一部が変性すると (変形性股関節症)、日本ではまず、良好な関節面が上方に来るように寛骨臼をはずして回転させる(回転骨切り術) が、欧米ではいきなり人工関節 (供覧) を入れる。
骨盤のX線写真 (X-P) : Fig.381
Pelvis 骨盤 376-385
Hip bone 寛骨
かんこつHip joint 股関節 563-568
Os coxaeSacrotuberous ligament 仙結節靱帯 384,392
Sacrospinous ligament 仙棘靱帯 384,392
Ilium 腸骨
Ischium 坐骨
Pubis 恥骨
Ala of ilium 腸骨翼 −
よくLesser pelvis 小骨盤
Pelvic cavity 小骨盤腔、骨盤腔
Linea terminalis 分界線 384
Arcuate line 弓状線
きゅうじょうせん*Coccyx *尾骨
びこつBody of ilium 腸骨体
Acetabulum 寛骨臼
かんこつきゅう*Iliac crest *腸骨稜
*Anterior/Posterior superior iliac spine*上前腸骨棘/上後腸骨棘
*Anterior/Posterior inferior iliac spine*下前腸骨棘/下後腸骨棘
Greater sciatic notch 大坐骨切痕
Sciatic nerve 坐骨神経
*Ischial tuberosity *坐骨結節
Ischial spine 坐骨棘
ざこつきょくLesser sciatic notch 小坐骨切痕
Pudendal nerve 陰部神経
* Symphysis pubis *恥骨結合
(スィンフィシスプビス)Articular surface of symphysis pubis 恥骨結合面
Sacropelvic surface 仙骨盤面
Articular surface with sacrum 耳状面 (仙骨関節面)
Sacroiliac joint 仙腸関節 ↑
じじょうめんTuberosity of ilium 腸骨粗面
Obturator foramen 閉鎖孔
* Ramus of ischium *坐骨枝
Inferior ramus of pubis 恥骨下枝
Acetabular notch 寛骨臼切痕
*Superior ramus of pubis *恥骨上枝 −
じょうしBody of pubis 恥骨体
Pubic tubercle *恥骨結節
Pecten of pubis 恥骨櫛
ちこつしつ*Pubic arch *恥骨弓 386
Lunate surface 月状面
げつじょうめん 376■付図 産科における骨盤の計測 (各部の定義は p.177本文参照)
(「国試対策シリ−ズ産婦人科」の図を改変)
■付図 児頭の回旋
(「国試対策シリ−ズ産婦人科」の図を改変)
8.5.2 大腿骨 (膝関節、膝蓋骨を含む) (Fig.560-561)
人体で最も長い長管骨で、身長の 1/4 を占めるという。近位端に大腿 (骨) 骨頭、遠位端に2つの顆 (内側顆・外側顆)、そしてそれぞれに関節面がある。大腿骨頭は内側上方に突出する。内側顆と外側顆の間には後方に深い陥凹 (顆間窩) がある。顆間窩の前方には膝蓋骨との関節面 (膝蓋大腿関節) があるが、内側顆・外側顆の関節面 (大腿脛骨関節)と一続きに見える。長い大腿骨体には、後方に稜状の粗線とその上部の殿筋粗面を認める以外あまり特徴がない。大腿骨頭の付け根には、くびれた大腿骨頚 (頚部) があり、頚部と骨体の軸は 120-130 ° の頚体角を持って交わる。大腿骨体の上部には、外側上方に向く大転子と内側に向く小転子がある (転子とはハンドルのこと)。顆間窩の見える方が後、大腿骨頭と小転子が向く方が内側ということになる。大転子と小転子の間には転子間稜があり、その内側の凹んだ粗面を転子窩という。女性の腰で最も外側に突出しているのは大転子であり、骨盤ではない( Fig.382)。
ほぼ球状の大腿骨頭は寛骨臼に比べて大きく、不足分は寛骨臼周囲に軟骨性の関節唇が付いて補う。骨頭にある臍のような凹みには大腿骨頭靱帯が付き、そこは特に骨形成期に血管の通路になる。
大腿骨頚部には骨折が多い。股関節内で起こる頚部内側骨折は、女性高齢者の難治性骨折として有名。昨日までまともだったおばあさんが道でころび、頚部内側骨折、寝たきりになってボケるというお決まりのコ−スがあったが、ナースの努力で改善されている。骨折線は垂直方向に入り、後述の煎断力をまともに受けてしまう。
大腿骨体から頚部にかけてねじれがあると考えられる。すなわち、内側顆と外側顆を結ぶ線に対して骨頭は 18-19 ° 前方を向く (前捻角)。この前捻角のため、荷重は素直に下方に伝わることなく、頚部には煎断力が加わる。この煎断力にくわえて、頚部内側骨折では血行が途絶しやすく、しかも骨折部位に関節内の液 (滑液) が侵入して難治性になる。
股関節 45 ° 屈曲位では、上前腸骨棘と坐骨結節を結ぶ線が大転子上端を通らなくてはならない (股関節脱臼等の鑑別に重要)。また股関節の良肢位は、屈曲 10-30°, 外旋 0-10°, 内転外転中間位である。やむを得ず股関節を固定する (動かなくする) 時は、この良肢位に保ち、ADLを少しでも高く維持する。
大腿骨頭の中心から距腿関節の中心に降ろした線を下肢機能軸と呼び、この線に対して下肢骨の各部がどこに位置するか (下肢のアラインメント) は、正常と異常を鑑別する重要な基準である。例えば、O脚では膝が下肢機能軸の外側に大きく偏位し (下肢の外反)、X脚では内側に偏位する (下肢の内反)。小児では外反が強く、成人ではやや回復して約5 ° の外反 ( O 脚) を呈する。
■ 付図 X脚、O 脚
(「標準整形外科」の図を改変)
ここで膝関節と膝蓋骨について述べる。広義の膝関節は、大腿脛骨関節 (狭義の膝関節) と膝蓋大腿関節からなる。
膝蓋骨は、大腿四頭筋の腱 (膝蓋腱) が骨に接して擦り切れないように生じた、人体最大の種子骨である。種子骨は他に手 (豆状骨)、下腿 (ファベラ)、足底などにある。膝蓋骨では、関節面 (後面) と上下を区別する。
膝関節 (以下狭義の膝関節) は、大腿骨と脛骨それぞれの内側顆・外側顆の関節面が対応するが、間に関節半月 (内側半月、外側半月) という関節円板が介在する。膝関節は教科書的には蝶番関節だが、実は屈曲に伴って回旋軸が移動する (厳密には蝶番関節ではない)。その結果、屈曲に伴って、脛骨が (大腿骨に対して) 前方に出てくると同時に内旋していく。回旋は最大伸展位の近くで大きいので触診してみよう。膝関節では、最大伸展位で大腿骨と脛骨の関節面が最も広く接する。しかも、膝関節を固定する靱帯は最大伸展位で最も緊張するように配置している。したがって、膝関節は最大伸展位で最も安定する。言い換えると、膝関節は立つために作られている。膝関節の靱帯が屈曲位で弛緩することから、屈曲位では外転内転と内旋外旋を行うことができる。上述の下肢のアラインメントも参照のこと。
膝の X-P と MRI : Fig.571,580,584
■付図 四肢の比較解剖
(ロ−マ−&パ−ソンズ「脊椎動物のからだ」の図を改変)
上図:四肢の対応関係
(肩帯=上肢帯,腰帯=下肢帯)
爬虫類の大腿は体幹から
水平に出ている。
下図:手根骨(A,B,C)と足根骨
(D,E,F)の対応関係
A,D: 化石哺乳類
B,E: 化石爬虫類
C,F: 現在の哺乳類
Femur 大腿骨 *560-561
* Head of femur *大腿 (骨) 骨頭
Medial/Lateral condyle 内側顆/外側顆
Intercondylar fossa 顆間窩
かかんかPatella 膝蓋骨
しつがいこつ *574*Body of femur *大腿骨体
Linea aspera 粗線
Neck of femur 大腿骨頚部
*Greater/Lesser trochater *大転子/小転子
だい/しょうてんしIntertrochanteric crest 転子間稜
Trochanteric fossa 転子窩
Acetabular labrum 関節唇
かんせつしん *567Ligament of head of femur 大腿骨頭靱帯 *567
Hip joint 股関節
こかんせつ *563-568Mechanical axis (of the lower extremity)下肢機能軸 Mikulitz 線
*Knee joint *膝関節
ひざ/しつかんせつ*569-588Medial/Lateral meniscus メニスクス 関節半月(複数形:Menisci)
(昔は半月板と言った): (内側半月、外側半月)
脛は単独ではスネと読む (例 : すねかじり)。近位端 (上端) には台状の内側顆と外側顆、その間の顆間隆起がある。腓骨を受ける面は小さい (脛腓靱帯結合)。この台は立位時に水平ではない。前面上部には膝蓋靱帯が付く脛骨粗面があり、さらに外側には腸脛靱帯(Fig.503)が付くジェルディ結節 (Gerdy's) がある。長い脛骨体では、ぶ厚いが鋭い前縁、低い線状の骨間縁、後面で稜状のヒラメ筋線を区別する。遠位端 (下端) の内側には内果 (ないか=うちくるぶし) が突出する。遠位端にも腓骨を受ける面がある (脛腓靱帯結合)。距腿関節面は、内果外側の鉛直方向の内果関節面と、天井のごとく水平方向の果間関節面 (脛骨天蓋 : Tibial plafond) に分ける。
Tibia 脛骨
けいこつ 589-594*Medial/Lateral condyle *内側顆/外側顆
Intercondylar eminence 顆間隆起
Proximal/Distal tibiofibular syndesmosis 脛腓靱帯結合 589,600
*Patellar ligamenmt *膝蓋靱帯
しつがい− 570*Tuberosity of tibia *脛骨粗面
Iliotibial tract 腸脛靱帯
ちょうけい− 503*Body of tibia *脛骨体
*Anterior border /crest *前縁
Interosseous margin 骨間縁
こっかんえんSoleal line ヒラメ筋線
*Medial malleolus *内果
ないかMedial malleolar articular surface (Med.malleolar facet)内果関節面
Inferior articular surface 果間関節面
Tibial plafond 天蓋
てんがい腓は単独ではコムラと読む (例 : こむらがえし)。腓骨は体重支持にはあまり役立っていないが、距腿関節 (後述) で足からの歩行時の反発力を腓骨がより多く受け止めている。また、下腿の筋に付着を提供している。
近位端の腓骨頭は体表から明確に触診できる。腓骨頭の内側には、脛腓靱帯結合の面がある。細長い腓骨体では鋭い前縁がしばしば明瞭。他の縁ないし稜については、今の段階では省略(下腿の解剖が終わると筋群とのきれいな対応が理解できる。Fig.523,616,617)。遠位端には外果(がいか=そとくるぶし) と関節面様の部分がある。この関節面様の部分は、距腿関節 (後述) の外果関節面と、脛腓靱帯結合のための面に分けなくてはいけない。
Fibula 腓骨
ひこつ 592,593*Head of fibula *腓骨頭
Tibiofibular syndesmosis 脛腓靱帯結合
けいひ− 589,600*Body of fibula *腓骨体
* Anterior border *前縁
lateral malleolus 外果
Lateral malleolar articular surface外果関節面 (Lat.malleolar facet)
足も手と同様、本学にはほとんど骨標本がないので、3年次の特論で作製中。 足の骨を次のように整理する。足根骨近位列ないし後足部 (距骨、踵骨)、足根骨遠位列ないし中足部 (外側の立方骨、内側の舟状骨+3つの楔状骨)、5本の中足骨、指節骨 (手と同様に第1指を除き3節からなる)。足根骨近位列と遠位列の間にショパ−ル関節 (横足根関節)、遠位列と中足骨の間にリスフラン関節 (足根中足関節) がある。
1. 距骨 (きょこつ) と踵骨 (しょうこつ)、足関節
距骨と脛骨・腓骨の関節を距腿関節(狭義の足関節)、距骨と踵骨 (+舟状骨)の関節を距踵関節 (距骨下関節) と呼ぶ。全体で広義の足関節をなす。
距骨は関節を作るためにある。ただ1つの筋や腱も付着しない。距骨上部の距骨滑車と呼ばれる大きな関節面で距腿関節を作る。上方の曲面(距骨滑車、Talar doom) は前方が広く、そこは脛骨の Tibial plafond (果間関節面) と関節する。内側面は脛骨の内果関節面と、外側面は腓骨の外果関節面と関節するが、外側の方が広くて低い位置にある。距骨の下方には前中後3つの関節面がある。前関節面の中で球面部分は舟状骨と関節する。中と後の関節面の間には溝 (距骨溝) があり、靭帯が付着する。
踵骨の後下方には踵骨隆起がありカカト (踵) の骨格を作る。踵骨隆起上部の踵骨突起には、人体最大最強のアキレス腱が付く。棚状で特徴的な載距突起は、距踵関節の1つ (中関節面) を乗せている。踵骨上面には、距骨に対応する前中後3つの関節面がある。中と後の関節面の間には溝 (踵骨溝) がある。踵骨溝と距骨溝は合わさって足根洞を作り、多くの靱帯を入れて踵骨と距骨を結合する (距踵関節内の靱帯結合)。他に踵骨前端には、立方骨との関節面がある。踵骨内側には長母趾屈筋腱が溝を刻む。
2.その他の足の骨
ヒトに限って足の骨は、全体としてア−チ (足弓) を形成し、荷重を分散し、踵骨が砕けるのを防いでいる (それでも高い所から飛び降りれば踵骨が砕ける)。足弓は横方向と縦方向いずれにも認められ、横足弓および縦足弓と呼ばれる。縦足弓は内側で顕著。舟状骨は、足弓によって生じる足底の凹み (土踏まず) の頂点に位置する。一方で、外側にある立方骨はわずかに床から離れるのみ。立方骨の外側には長腓骨筋腱が深い溝を刻む。3つの楔状骨の中では内側楔状骨が段突に大きい。中足骨には、中手骨同様に底 (近位)と体と頭 (遠位) を区別する。中足骨は第1が飛び抜けて大きい。第5中足骨底は突起状で、体表からも明確に分かり、しばしば単独で剥離骨折を起こす。中足指節関節 (MTP)の中で第1 MTP が外側に屈曲変形したものが外反母趾。第1 MTP の内側部が靴に当たって痛い。やがて第1趾は第 2-3 趾の底側にもぐりこむ。足の骨も手と同様に、足底ではなくて足背から触診しよう。
足の X-P : Fig.599,603
Bones of the foot 足の骨 596-59,607
*Talus *距骨
きょこつ*Calcaneus *踵骨
しょうこつCuboid bone 立方骨
Navicular bone
(手の舟状骨とはスペル違い) 舟状骨 しゅうじょう−(Medial/Intermediate/lateral) 3つの楔状骨
Cuneiform bone
けつじょうこつ*Metatarsal bones *中足骨
*Phalanges *指節骨 (趾は旧字)
Chopart (Transverse tarsal) joint ショパ−ル関節 (横足根関節)
Lisfranc (Tarsometatarsal) joints リスフラン関節 (足根中足関節)
*Ankle joint *599-613
Talocrural joint (狭義の Ankle joint) 距腿関節
きょたい−Tarocalcaneal joint (Subtaral joint) 距踵関節(距骨下関節)
* 踵骨には上記2関節の他に、踵舟関節と踵立方関節が存在する。しかし、いずれの関節も臨床では通常、距骨下関節という概念に含まれており、応用的には死語になっている。つまり、距踵関節よりも距骨下関節の方が概念が広い。
*Taral trochlea (Talar doom) *距骨滑車
Ant./Mid./Post. facet of talus / calcaneus 前中後3つの関節面
Talar sulcus 距骨溝
きょこつこう*Calcaneal tuberosity *踵骨隆起
Lateral/Medial process of calcaneal tuberosity踵骨突起
しょうこつ−Sustentaculum tali 載距突起
さいきょとっきCalcaneal sulcus 踵骨溝
Taral sinus 足根洞
そっこんどうTendon of flexor hallucis longus muscle 長母趾屈筋腱
*Arch of the foot
そっきゅう *足弓 612,613Transverse/Longitudinal arch 横足弓/縦足弓
Tendon of fibularis longus muscle 長腓骨筋腱 555,611
*Metatarsophalangeal joint *中足指節関節 (MTP)
Hallux valgus 外反母趾
■付図 足関節の運動軸と筋の位置関係 (筋の名称等については付図p.202)
(「標準整形外科学」の図を改変)
付録
リンパ管系総論
1. リンパ管系 Lymphatics とは
o 全身からの第2の排液系。静脈に注ぐ。リンパ(液)が流れる (リンパ流)。
o 悪性腫瘍の転移経路として重要(リンパ行性転移) cf.血行性転移、隣接内臓への直接浸潤
(リンパ管系自体の疾患は欧米に多い。日本では、癌手術に伴うリンパ節郭清の後遺症として
起こるリンパ浮腫が中心:乳癌術後の上肢浮腫、子宮癌術後の下肢浮腫)
o 脳、角膜にはリンパ管系がない。
o リンパ節とリンパ管から構成される。
o リンパ管の太さは、静脈のように1+1=2とはならない (2未満)
2. リンパ流の駆動力 (方向は弁によって決まる)
(1) 筋・動脈などによるマッサージ (2) 濾過圧 (浸透圧)
(3) 胸腔内が陰圧であること (4) 胸管では平滑筋の収縮
3. (あまり使わないが) 教科書的な分類
浅リンパ管系:皮下組織内に発達しているリンパ管網。色素注入しないと肉眼では見えない。
特定の部位で深リンパ系に注ぐ (Fig.241)=皮静脈が深部に注ぐ部位に同じ。
【例】腋窩、鼠径部 (Fig.19,490)
深リンパ管系:いわゆる 「リンパ管系」 とほぼ同義
4. 「リンパ路」 の特徴
(1) 特定部位に発するリンパは特定の経路 (リンパ路) を経て静脈に注ぐ。
(但し、癌のリンパ節転移後など病的条件下では経路が大きく変るかも知れない)
主要リンパ路: 多くのリンパ路が集まった共通経路。リンパ本幹よりも末梢側で用いることが多い。
特定部位に発する複数のリンパ路の中で主要なもの。【例】舌−顎下リンパ節−深頚リンパ節
(2) すべてのリンパ路は静脈角およびその付近に集まり、静脈系に注ぐ。
(発生学的には下大静脈に注ぐ可能性も残るが、成人では証明されない。)
*静脈角:鎖骨下静脈と内頚静脈が作る上外側に開く角(Fig.244,711)。cf腕頭静脈角 p.115
(3) 正中交叉律:正中線上の器官に始まるリンパ流は、対側に(も)向かう。【例】舌,顔面,喉頭
※左側の気管支・肺からのリンパ流は下方から始まるものほど右に集まる
(4)介在律 : すべてのリンパ流は少なくとも1個のリンパ節を経て静脈に注ぐ。
但し胸管に隣接する構造、例えば食道では、リンパ節を経ずして胸管に注ぐことが
少なくない。この場合、さらに下流で胸管に介在リンパ節がなければ、リンパ流は
リンパ節を通らずに静脈に注ぐことになる(介在律の例外)。
5. リンパ節
o 「○○リンパ節」(略してLyn.**)と呼ぶ時も通常は複数のリンパ節(略してLynn.**)
から構成される。時には腋窩リンパ節、深頚リンパ節、大動脈周囲リンパ節のように、
複数のリンパ節群のさらに総称として「○○リンパ節」を用いることがある。
o 戦前は 「リンパ腺」 と呼んだ。 *リンパ節のノミナは時代とともに大きく変化している。
所属リンパ節 Regional lymph nodes
ある器官に発したリンパ流が静脈に注ぐまでの間に存在するリンパ節を、その器官の所属リンパ節という。(上流から下流に向けて) 一次(所属)リンパ節、二次リンパ節、三次リンパ節、(四次リンパ節) を区分する。しかし、リンパ節をバイパスするリンパ管がしばしば存在することから、途中のリンパ節(例えば二次リンパ節)をスキップする跳躍転移 skipped metastasis が見られる。
介在リンパ節
所属リンパ節を結ぶ連絡リンパ管に介在。(曖昧な定義だが)
最終介在リンパ節 Last-intercalated nodes
ある器官からのリンパ路が静脈 (あるいは胸管) に注ぐ直前に介在する。
<「癌取扱い規約」 における所属リンパ節分類>
o 主に臨床経験から判断して、転移しやすいリンパ節を臓器 (部位) ごとに
3(4) 群に分けている。上述の<一次所属リンパ節から三 (四) 次所属リンパ節>とほぼ同義。
【例】 幽門部胃癌 (胃 A 領域癌) の第1群リンパ節は○○○○
※胃 (癌) の所属リンパ節は特に有名でabcレベルまで重要。配布資料や標準外科学を
参照。「国試対策シリ−ズ」でさえ番号で呼んでいる。
o 各臓器の所属リンパ節には、各臓器ごとに番号 (と名称) が決められている。1991年に
統一番号が設けられたが、まだ普及していない(普及しそうもない)。
【例】 胃癌の 16 番リンパ節 (大動脈周囲リンパ節) は統一番号では326
【例】 乳癌・食道癌の鎖骨上リンパ節 (一般外科)
= 頭頚部癌の下深頚リンパ節内側群 (耳鼻咽喉科)
o 所属リンパ節の中で、最初に(そして最も高頻度に)その臓器からのリンパ流を受けるリンパ節をセンチネルノ−ドと呼ぶ(p.70参照)。センチネルノ−ドをバイオプシ(生検)して癌の転移が無ければ、手術は縮小の方向で行えると考えられる。
<独特の愛称で呼ばれる有名リンパ節>
ウィルヒョウリンパ節 Virchow's node
大鎖骨上窩に存在する深頚リンパ節群の中で、胸管の最終介在リンパ節として機能したもの。胃癌末期の転移で有名。厳密な意味で胸管の途中に介在していなくても、静脈角付近のリンパ節(例えば後述の斜角筋リンパ節)が、リンパ流の逆流によって腹部からの癌転移を受け、ともかく腫れれば臨床的にはウィルヒョウリンパ節と見なしている。
斜角筋リンパ節 Scalene node
前斜角筋前面にあるとされる。肺疾患でしばしば穿刺生検 biopsy を行なう。必ずしも前斜角筋前面に発達しているとは限らない。鎖骨上リンパ節の中の1リンパ節と考えていい。特に右側では反回神経起始部からの太い集合リンパ管を受ける。
ハルステッドリンパ節 Halsted's node
鎖骨下リンパ節の一つで第1肋骨と最上胸動脈に接する。「最上部鎖骨下リンパ節」 とも言う。
ロッターリンパ節 Rotter
’s node大胸筋・小胸筋の間にある。進行乳癌の際に腫張が認められることで有名。
(Kuttner の) Principal nodes (頚部主要リンパ節、頚静脈二腹筋リンパ節)下顎角下方で
日常的に医師が手を当てて触診する部位。顎二腹筋中間腱直下で内頚静脈前面。
ルビエールリンパ節 Rouviere: 咽頭後面に1個程度。健常者では稀。
ローゼンミューラーリンパ節 Rosenmuller(=クロケーリンパ節 Cloquet)
深鼠径リンパ節群の中で大腿管 (鼠径靭帯後方) にはいりこんだもの。=婦人科の鼠径上節
よこね: 浅鼠径リンパ節が性病で腫大したもの。
肺門リンパ節: 気管気管支リンパ節との境界は不明瞭。肺根に集族。
右最上縦隔リンパ節
(癌研)右反回神経リンパ節 (鎖) (がんセンター)、トップリンパ節 (Top=高い、東北大他)。右反回神経起始部にある。食道癌が早期に転移する。右気管傍リンパ節と斜角筋リンパ節に近接。
6. リンパ管
o (末梢の)リンパ管 − 集合リンパ管(太さ1 mm程度) − リンパ本幹(太くて2-3 mm) −
胸管(太くて10 mm)(Fig.234,242,711)
o リンパ本幹: 頚リンパ本幹、鎖骨下リンパ本幹、気管支縦隔リンパ本幹、腰リンパ本幹、
腸リンパ本幹 ※各リンパ本幹は必ずしも1本ではない。特に気管支縦隔リンパ本幹と
腸リンパ本幹は少なくとも3本は見られる。
o リンパ管は一般に、血管に伴走すると考えられているが、必ずしも血管に
沿うわけではない。(リンパ管にはリンパ管の意志 (原則) がある。)
【例】 動脈に沿う : 大動脈周囲リンパ節と腰リンパ本幹(腹大動脈)、
胃の所属リンパ節とリンパ路(特に左胃動脈が重要)
静脈に沿う : 鎖骨下リンパ本幹(鎖骨下静脈)、頚リンパ本幹(内頚静脈)、
右半結腸所属リンパ管系(Surgical trunk=上腸間膜静脈の一部)
自律神経叢・その他神経に沿う : 骨盤神経叢(子宮,直腸のリンパ管系の一部)、
反回神経(特に右)(気管支縦隔リンパ本幹の一部)
独立して走行する : 胸管起始部 (しばしば横隔膜脚を単独で貫通)
【例】 直腸癌の転移経路 (国試問題)
上方へ : 下腸間膜動脈枝に沿うリンパ路
外側方へ : 骨盤神経叢の枝 (外側靭帯) に沿うリンパ路
下方へ : 外陰部静脈に沿うリンパ路
それぞれ転移リンパ節が異なる点が設問のポイント。
筋膜総論
Deep fascia or Fascia (昔は深筋膜と和訳した)
1. 骨格筋の筋膜
(1) 個々の筋の筋膜 【例】 胸筋筋膜 : 大胸筋 (特に前面) の筋膜
(2) 筋群を一括して外から覆う筋膜
【例】 大腿筋膜 : 大腿の筋を包む強靱な筋膜で、腸脛靭帯を外側から補強する。
【例】 深下腿筋膜 : 下腿屈筋群深層を後方から包む強い筋膜
(3) 筋間中隔 : 筋群の境界にあって、(2) が癒合したもの
【例】 上腕外側筋間中隔 (上腕筋/上腕三頭筋)
【例】 外側大腿筋間中隔 (外側広筋/大腿二頭筋短頭)
になる。筋膜隙は、脈管神経路 (導通路) として利用される。
(実習で明確に分かる例:上腕内側筋間中隔=より伸側に尺骨神経&尺側側副動脈)
(不明瞭な例:内側大腿筋間中隔=大腿動静脈・大腿神経等の通路になっているが広すぎる)
【例】 鼠径ヘルニアに関係して:腹横筋膜 (横筋筋膜)、クーパー靭帯、
Iliopubic tract など
【例】 根治的頚部リンパ節郭清 (Radical neck dissection) に関係して :
頚筋膜椎前葉・気管前葉・浅葉 など
【例】 乳癌手術に関係して : 浅胸筋膜、腋窩筋膜、烏口腋窩筋膜、
鎖骨胸筋筋膜など
2. 内臓の筋膜 (後述)
内臓・血管・神経などを包む膜状の結合組織のことも<筋膜>と呼ぶことがある。
骨格筋の筋膜が筋を芯としてその周囲にあるように、内臓の筋膜にも芯になる構造が必ず存在する。組織学で言う内臓の外膜とは、実はしばしば分けがたい。
3. 皮下組織の特殊化したもの (Superficial fascia、昔は浅筋膜と和訳した)
典型例 : カンパー筋膜 Camper
’s(下腹部の皮下脂肪層が板状になったもの)スカルパ筋膜 Scarpa
’s(下腹部の皮下脂肪層のすぐ深側の結合組織層)その他 : コレ筋膜 (会陰:後述), クーパー靭帯 Cowper
’s (乳房で発達した皮膚支帯)など
<内臓の筋膜について>
A. 血管鞘 あるいは 血管・神経鞘
1. 典型例 : 頚動脈鞘 (芯: 総頚動脈+内頚静脈+迷走神経)
ゲロータ筋膜 Gerota
’s(腎筋膜) (芯: 腎臓+腎動静脈+尿管+副腎)2. その他 : 基靭帯(子宮支帯の主要部分である中部支帯、芯:子宮動静脈等)、
(直腸の)外側靭帯あるいは側方靭帯 (芯: 骨盤神経叢+中直腸動脈)
窩間靭帯 (芯: 下腹壁動静脈→外側臍索)、下腹血管鞘 (芯: 内腸骨動静脈)
B. 内臓の外膜 (組織学用語) の特殊化したもの
1. 子宮・膀胱・直腸の外膜が癒合したもの
【例】 前部子宮支帯 (膀胱子宮靭帯)、後部子宮支帯 (直腸子宮靭帯)
cf. 仙骨子宮靭帯という構造もある:神経鞘か ? 外膜の癒合か ?
2. 直腸外膜と尾骨骨膜が癒合したもの
【例】 尾骨直腸靭帯 (Posterior lig.)
3. 横隔膜胸腔面の筋膜と食道外膜が癒合したもの (上に凸のドーム状)
【例】 横隔食道膜
4. 恥骨骨膜と前立腺外膜の癒合したもの (強靭)
【例】 恥骨前立腺靭帯
C. 漿膜 (特に腹膜) の変化したもの
1. 血管ヒダ (例 : 胃膵ヒダ) と同様に、何等かの構造が漿膜を持上げて形成
【例】 子宮広間膜、骨盤漏斗靭帯、膀胱下腹筋膜 (膀胱側方靭帯を含む) など
2. 胎生期に機能していた or 明瞭だった構造が変化したもの
【例】 円靭帯 (子宮円索)、腹膜鞘状突起、ディノビエ筋膜 Denonvilliers、仙骨前靭帯、
甲状腺心膜筋膜、トライツ靭帯 (十二指腸空腸曲-膵臓後方-腹腔神経叢後方-横隔膜右脚)等
ただし 肝円索、静脈管索、正中・内側臍索は通常筋膜には含まない。
【例】 肺間膜 (胸膜間靭帯)、気管支心膜結合組織性膜
横隔結腸ヒダ、脾結腸靭帯 (間膜) =載脾靭帯
左右のトルト筋膜 Toldt(結腸の生理的癒着部)、トライツの膵後筋膜 Treitz など
4. 漿膜 (間膜) そのものだが、靭帯と呼ばれることがあるもの
【例】 肝十二指腸靭帯、脾腎ヒダなど
<陰茎の筋膜>
1. 浅陰茎筋膜
・カンパー筋膜とスカルパ筋膜が癒合して陰茎を包む。陰嚢の肉様膜に続く。
部を抱く。浅陰茎筋膜に続く。
茎海綿体に至る索状の結合組織。バック筋膜に続く。
2. 深陰茎筋膜 (バック筋膜 Buck)
・浅腹筋膜および深会陰筋膜に続く。
の間は、深陰茎筋膜と外精筋膜の間で容易に裂くことができる。
<会陰部の筋膜>会陰部皮膚から深側へ
1. 皮下筋膜浅層 (特に名称なし)
下腹部のカンパー筋膜に続く。
男性では他に、陰嚢の肉様膜に続く。
2. 浅会陰筋膜 (コレ筋膜 Colles)
・皮下筋膜深層を指し、下腹部のスカルパ筋膜に続く。
・男性では他に、陰嚢の肉様膜および陰茎の浅陰茎筋膜に続く。
☆ Superficial perineal fascial cleft (仮訳 : 浅会陰筋膜陥凹)
・後大腿皮神経会陰枝が走る
3. 深会陰筋膜 (外会陰筋膜、ガロード/ギャロ−デット筋膜 Gallaudet)
☆浅会陰隙 (時には浅会陰筋膜と下尿生殖隔膜筋膜の間を指す)
・男性では、陰茎根を構成する海綿体とそれを覆う筋、そこに至る血管・神経が存在。
・女性では、バルトリン腺 Bartholin(大前庭腺) が存在。
4. 下尿生殖隔膜筋膜 (会陰膜)
☆深会陰隙
・尿生殖隔膜 (主に深会陰横筋)、内陰部動静脈、陰部神経が位置する。
・さらに男性では、クーパー腺 Cowper(尿道球腺) が位置する。
5. 上尿生殖隔膜筋膜
・尿生殖隔膜 (主に深会陰横筋) 上面に密着。
・貫通する構造は同上。この膜の上面に男性では前立腺が乗る。
6. 下骨盤隔膜筋膜
・骨盤隔膜 (主に肛門挙筋・尾骨筋) 下面に密着。
・肛門挙筋腱弓に沿って (内) 閉鎖筋膜に癒合。
7. 上骨盤隔膜筋膜
・骨盤隔膜 (主に肛門挙筋・尾骨筋) 上面に密着。
・肛門挙筋腱弓に沿って (内) 閉鎖筋膜に癒合。
8. (内) 閉鎖筋膜
・坐骨直腸窩の外側壁および (小) 骨盤腔の側壁を作る。腹横筋膜に続く。
・同窩の外側壁では、2葉に分かれてアルコック管 Alcock (陰部神経管) を作る。
・閉鎖動静脈・神経を包んで、閉鎖孔から膨出する閉鎖管を作る。
脳神経のまとめ (求心性神経,sensory nerve)
◇ : 末梢における神経細胞体の位置
I(嗅神経) 鼻粘膜嗅部
II(視神経) 眼球の網膜
III(動眼神経) 支配筋からの深部感覚 III →三叉神経節◇ ?
IV(滑車神経) 支配筋からの深部感覚 IV →三叉神経節◇ ?
V(三叉神経)
o 顔面、前頭部の皮膚感覚 (V1,V2,V3)
o 角膜の感覚 (V1)
o 脳硬膜の感覚 (硬膜枝)(V 根部へ) V →三叉神経節◇
o 鼻腔、口腔、舌の粘膜の温痛覚など (V1,V2,V3)
o 顎関節、歯根膜、支配筋からの深部感覚 (V2,V3)
VI(外転神経) 支配筋からの深部感覚 VI →三叉神経節◇ ?
VII(顔面神経)
o 外耳道の温痛覚など→耳介枝→小管を経て頚静脈孔→内耳の顔面神経管→膝神経節◇→
o 舌の前2/3の味蕾→舌神経(V3)→鼓索神経→顔面神経管下行部のVII→舌→膝神経節◇→
o 支配筋からの深部感覚→三叉神経枝または頚神経枝→三叉神経節または後根神経節◇→
VIII(内耳神経)
o 蝸牛のコルチ器→蝸牛神経節◇→膨大部稜、平行斑→前庭神経節◇→
IX(舌咽神経)
o 外耳道の温痛覚など→耳介枝→小管を経て頚静脈孔→ IX の上神経節◇→
o 口腔後部、咽頭、中耳、耳管の粘膜の温痛覚→ IX の舌枝など→ IX の下神経節◇→
o 頚動脈小体、頚動脈洞→頚動脈洞枝→ IX の下神経節◇→
o 舌の後 1/3 と軟口蓋の味蕾→ IX の舌枝→ IX の下神経節◇→
o 咽頭の筋の深部感覚 ?
X(迷走神経)
o 耳介、外耳道の温痛覚など→耳介枝→小管を経て頚静脈孔→ X の上神経節◇→
o 咽頭、喉頭の温痛覚など→上喉頭神経、反回神経→ X の上神経節◇→
o 胸腹部内臓、大血管の感覚受容器、喉頭蓋の味蕾、SA node、AV node→ X の下神経節◇→
XI(副神経) 支配筋からの深部感覚
o XI →頚神経叢との交通枝→脊髄神経節◇
XII(舌下神経) 支配筋からの深部感覚 ?
脳神経のまとめ (遠心性神経,motor nerve)
◇ : 末梢における神経細胞体の位置
I(嗅神経) なし
II(視神経) なし
III(動眼神経)
o 5つの外眼筋
o 瞳孔括約筋の運動 : III →毛様体神経節◇→短毛様体神経→
o 交感神経系の節後線維:瞳孔散大筋 (平滑筋)、動脈の平滑筋など(脳の動脈)→上頚神経節◇
→内頚動脈神経叢(節後線維)→海綿静脈洞内で IIIへ(他の脳神経へも)→
o 毛様体筋 (=遠近調節) : III →毛様体神経節◇→短毛様体神経→
IV(滑車神経) 上斜筋の運動、交感神経系の節後線維 ?
V(三叉神経)
o 4つの咀嚼筋、2つの口腔底の筋、鼓膜張筋、口蓋帆張筋(いずれも V3)
o 交感神経系の節後線維→上頚神経節◇→海綿静脈洞内でor顎動脈周囲(節後線維)→
VI(外転神経)
o 外 (側) 直筋の運動、交感神経系の節後線維 ?
VII(顔面神経)
o 顔面筋 (広頚筋、耳介筋も)、あぶみ骨筋、顎二腹筋後腹
o 交感神経系の節後線維 ? (主に動脈周囲から)
o 内耳の VII →大錐体神経→翼突管神経→翼口蓋神経節◇
翼口蓋神経節→頬骨神経 (V2) →涙腺神経 (V1) →涙腺の分泌
翼口蓋神経節→大口蓋神経、他→ 鼻粘膜の腺、口蓋の腺
翼口蓋神経節→三叉神経枝?→脳の動脈(血管拡張性)(VIIか否か?)
o 顔面神経管下行部の VII →鼓索神経→舌神経 (V3) →顎下神経節◇→顎下腺の分泌
VIII(内耳神経) 交感は動脈周囲のみ ?
IX(舌咽神経)
o 咽頭の筋、茎突舌骨筋 (嚥下運動)(延髄内に◇)
o 交感神経系の節後線維 (小管を経て鼓室神経叢、他に動脈周囲から)
o 頚静脈孔直下の IX →小管を経て中耳の鼓室神経叢→小錐体神経→耳神経節◇→ V3→
耳介側頭神経 (V3) → VII 枝と交通→耳下腺の分泌
X(迷走神経)
o 上/下喉頭神経→喉頭の筋(延髄内に◇)、
o いわゆる心臓神経(心臓に◇)→心筋、SA node、AV node
o 上部消化管の筋層と分泌腺、気管枝の平滑筋 (肺枝)(消化管、気管枝に◇)
o 血管の平滑筋 ?
o 交感神経系の節後線維 ?
(星状神経節◇と反回神経などの交通、頚部の X と交感神経幹との交通 ? )
XI(副神経)
o 胸鎖乳突筋と僧帽筋 (頚神経叢からの交通枝にも運動神経線維が含まれる)(脊髄内に◇)
XII(舌下神経)
o 内舌筋、2つの外舌筋、甲状舌骨筋 (延髄内に◇)
o 交感神経系の節後線維 ?
参考書に関するコメント
1. このマニュアルの主な引用・参考文献は下記の通りです
◎標準外科学 医学書院
◎標準整形外科学 医学書院
◎消化器外科別冊 手術に必要な局所解剖のすべてへるす出版
(1997,7282 円)
新 画像診断のための解剖図譜 メジカルビュー社
イラストレイテッド外科手術 医学書院
臨床解剖学ノート 木村書店
国試対策シリーズ 産婦人科 金芳堂
医師国家試験一般問題 外科 医学評論社
2. 内臓に関して言えば、学生向けの日本語のマクロ解剖学教科書 (分担解剖学2・3巻やグレイ訳本も含めて) は、臨床の講義にとっては不要な記載が多すぎ、また卒業して臨床各科の専門を志す上では、肝心なことが書かれていないので使えないでしょう。ムーア臨床解剖学、スネル臨床解剖学、解剖学講義は、学生向けとしては比較的臨床対応ですが、臨床の講義が始まればモノ足りないと感じるでしょう。上述の◎は購入して損はないと思います。私見を述べれば、教科書に金を費やすのではなく、図譜に投資すべきと思います。臨床の医局には、学生向けの日本語のマクロ解剖学教科書はなくても、優れた図譜 (ペルンコップフ、ズボッタ、ネッター、西など) が備っていることにお気付きでしょうか。例) Sobbotta 図説人体解剖学(全2巻),医学書院, 各 16000円
3. それでも推薦に代えて何かを述べれば下記の通りです。
a. 臨床各科用に推薦されている朝倉の内科学、標準外科学、胸部X線写真のABC、標準耳鼻咽
喉科学、国試対策シリーズ産婦人科など多数の臨床の教科書では、要点を押えて各臓器の解剖
が記述されています。
b. 新外科学大系や現代産科婦人科学大系の解剖の記載は、学生が容易に使える文献としては最
も詳しいものです。
c. 消化器外科臨床外科など臨床雑誌の解剖学総説は、学生が読んでも分かりやすいものです。
図書館でコピーできます。例えば東京医科歯科大学から出ているものでは、
骨盤内臓なら、「講座 泌尿器手術に必要な局所解剖」 臨床泌尿器科42-7から46-6 (1988-1992)
泌尿器外科 1:293(1988)
腹部内臓と乳腺・食道に関しては、
消化器外科 13:1262,1522,1678(1990)/14:423(1991)
手術 38 巻 (10,11,12.1984).
前後1983−1985/41:725(1989)/46:1337(1992)
外科診療 32:902(1990)
頭頚部内臓なら、耳喉頭頚 65-66(1993,1994)
d. どうしてもマンガでないとダメと言う人には、
マンガで見る手術と処置 (エキスパートナース 1991 年の各号) (例えば肝は 6 号)
イラスト解剖学, 松村著, 中外医学社,1997,7400 円
e. 英文ならば、Gray's Anatomy. Churchill-Livingstone. 1995. 38th ed. (26500円) が
定評があり、大学によってはかなりの学生が購入してチャレンジしています。
英語の入門としては病理から始める (本学では多くの学生が病理から輪読会を始める) よりも
easy でしょう。
f. リンパ (管) 系については、上述の臨床書籍にもよく出ていますが、
リンパ系局所解剖アトラス, 南江堂,1997,23000 円
リンパ管-形態・機能・発生, 西村書店,1997,15000 円
消化器外科 13:1957(1990)/14:78(1991)/14:153,1875
手術 45:1341(1991)/47:1527(1993) 外科 45:400(1993)
g. 筋膜に関しては、臨床対応の日本語のまとまった教科書はまだありません。
フランスの学生向け教科書 (!) を訳した臨床解剖学ノート
(小骨盤編が特に優れ物)は詳し過ぎます。
h. 日本語の一冊ものとしては、岡嶋解剖学が優れています。
日本でもっともよく使われている分担解剖学 (金原書店) は、第 1 巻 (骨・筋) については
優れているという定評があります。第 2・3 巻については皆さんが判断して下さい。
各部位ごとに多くの巻が発行されています (一冊 20000 円程度)。そのダイジェスト判が
1997 年に発行され、学生には便利になりました。
ATLAS OF HUMAN ANATOMY. F.H.Netter,NOVARTIS 社 (10000 円程度)
本学における最近の人体解剖学研究論文から(抜粋)
解剖学は、細胞生物,中枢神経,分子発生など近年盛んな分野から古典的なマクロ比較解剖学まで多岐にわたる学問領域です。人体解剖学は解剖学の1つの分野に過ぎません(念のため)。
Variations of the uncinate process of the lateral nasal wall with clinical implication. Isobe M, Murakami G, Kataura A. Clinical Anatomy 11: 295-303, 1998.
(内容) 副鼻腔炎の外科的治療法として主流になっている内視鏡的鼻内手術の際、鼻腔の外側壁にある篩骨鈎状突起はメスを進める上で重要な指標になる。その形態に変異が多いことは知られているが、多数例の統計的な研究は磯部らが初めて行った。彼らによれば、鈎状突起が上顎洞裂孔を上下に区切る教科書的な形態は34.6%に過ぎず、鈎状突起は下端以外の様々な部位で周囲の骨に付着して上顎洞裂孔の形を複雑にしている。
Vascular anatomy of the pancreaticoduodenal region: A review. Murakami G, Hirata K, Takamuro T, Mukaiya M, Hata F, Kitagawa S. J Hepatobiliary and Pancreatic Surgery 6:55-68, 1999. (内容) 膵頭十二指腸領域の血管に関するここ3年の研究(和文2編,英文1編)の総括。前後の動脈弓を結ぶ交通動脈およびOddi括約筋枝(乳頭動脈)に関する未発表所見を含む。
Anatomical studies of the autonomic nervous system in the human pelvis by the whole-mount staining method: left-right communicating nerves between bilateral pelvic plexuses. Taguchi K, Tsukamoto T, Murakami G. J Urology 161: 320-325, 1999.
(内容) 左右の骨盤神経叢の間に交通があることは従来から予想されていたが、誰もまだ人体で確認したことはなかった。田口らは、病理解剖から得た<まるごと>(whole-mount)の骨盤内臓新鮮標本にアセチルコリンエステラ−ゼ染色を施し、実体顕微下に解析、その後さらに同じ標本から光学顕微鏡用の切片を作成して組織学的に解析した。その結果、1)直腸の前後を通る左右骨盤神経叢間の太い交通神経を認めた。2)神経節細胞の所在と神経線維連絡から見て、骨盤神経叢が不均一な構造である(逆に言うと部位特異性がある)ことを示した。以上の結果は、骨盤神経叢を温存する手術術式確立の基礎知見として重要である。現在、交通神経に含まれる感覚神経成分(CGRP陽性線維)とその意義について英文論文を投稿中。
Does the Adamkiewicz artery originate from the larger size of the intercostal artery? Koshino T, Murakami G, Morishita K, Mawatari T, Abe T. J Thoracic and Cardiovascular Surgery 117: 898-905, 1999. (内容) アダムキ−ビッツ動脈は肋間動脈&腰動脈の最も重要な枝である。複数ある下位肋間動脈&上位腰動脈の中で、より太い1-2本の動脈からアダムキ−ビッツ動脈が分岐するという<常識>がある。したがって、大動脈を人工血管に置換する手術では、太い肋間動脈&腰動脈だけを再建すればアダムキ−ビッツ動脈も温存されると考えられてきた(他の肋間動脈&腰動脈は、生命予後はもちろん下半身麻痺にも無関係?)。しかし越野らは、肋間動脈&腰動脈の太さとアダムキ−ビッツ動脈の有無を検討し、両者に相関がないことを初めて明らかにした。医原性麻痺を防ぐには、細い肋間動脈&腰動脈も再建しなくてはならない。
pp254-259:関節運動の計測について、「標準整形外科学」の「診察と検査」の章から引用
pp260-268:索引(後述の原稿を3列に組んで印刷)
ラスト268ペ−ジ
編集後記
1997年、1998年の2回にわたりUnixマシンで作られてきたマニュアルですが、1999年版から村上の手元でWindows 98上で作成することにしました。骨学実習を加え、ノミナの読みと独語を一部に加えました。99年に大改定を行い、2000年版ではスペルミスや文字配列などのケアレスミスを完全になくしたものと信じていますが、どうでしょうか? 最後に、編集に協力してくれた山本(亜)さん、山本(由)さん(医学部4年)に改めて感謝いたします。
追記:札幌医大医学部5年の高丸君の好意と尽力により、2
000年版をインタ−ネット上で公開いたします。そのままコピ−したり、思うままに修正を加えて、多くの人に利用していただければ幸いです。なお、高丸君には原本(印刷版)を渡してあります。必要があれば、彼に迷惑のかからない範囲で図等のコピ−を求めることができるかも知れません。2000.10.24. 著者 村上 弦
索引
AC 134
Adamkiewicz' artery 95,107,141
Adenoid 54
Alcock's canal 184
AM 134
AMI 133
Anatomical position 8
Anteversio-anteflexio 182
Anthracosis 116
ASD 129
AV node 128
AV 134
Axial 9
A
領域 159AHA
規約 133BPH 183
Cadwell & Luc
法 211Calot's triangle 150
Cantlie’s line 154
Caput Medusae 16
CB/CN 134
Ce 139
Celiac axis (=Celiac trunk) 154,158
CM joint 233
Crux 133
Cx 134
C
領域 159Decubitus 17
DIP joint 233
Ea 139
EC junction 171
Ei 139
EKG/ECG 130,133
Erb's point 25
Falte=fold 165
Fold 146,165
Gerota's fascia 148
Guyon's canal 80,233
Ileumende 166
iliopubic tract 93
Im 139
IMA 168
IMV 162
IP joint 233
Iu 139
IVC 126
IVH 22,67
Jacoby's line 21
Kiesselbach's area 43
Kocher’s manouver 150
Kot 174
LAD 134
LAO 8,135
laparoscopic cholecystectomy 150
Laterale Achsellucke 74
LC/LZ 150
LCx/RCx 134
LMT 134
Lymphatics 245
Locus Kiesselbachii 43
Lanz
点 24Love
法 219McBurney
点 24Mediale Achsellucke
MP joint 233
MTP joint 244
muscular bridge 133
M
領域 159no man's land 80
Oddi's sphincter 166
OM 134
P-point 156
PD 134
PDA 137
Peyer's patches 166
PIP joint 233
PL 134
PLV 134
posterior tympanectomy 63
Prone 8
QOL(Quality of Life) 21,95,171,183
Ra 174
radical neck dissection 28
RAO 8,135
Rb 174
RCA 134
Recess 146
rotator cuff 74,228
Rs 174
RV 134
Rb-P
境界 174S 134
SA node 128
SA 134
Scalene nodes 28,246
SDA 166
SMA 154
SMV 162
spinoglenoid notch 76
stripping 20
Supine 8
SVC 126
Sigma-Rs
境界 181terminal ileum 166
TFCC 233
Treitz's ligament 158
U-point 156
Valsalva's sinus 128
VAN 97,193
VSD 129
アキレス腱
198,243亜区域気管支
121,122,124足
11,234,242足ア−チ
201,202,243足関節
202,242足の骨
243頭
10,205アダムキービッツ動脈
95,107,141アブミ骨
63アブミ骨筋
64アルコック管
184鞍隔膜
(あんかくまく) 50アンテラ
116胃
158胃角
159胃癌取扱い規約リンパ節
159,160,163,171,246胃窮隆
159胃結腸動脈幹
159,162胃食道接合部
171,181胃上部早期癌の手術ストーリー
167胃十二指腸動脈
162,164胃膵ヒダ
146,147胃体
159,165胃大網動静脈
159胃底
160胃の区分
159陰核
185陰茎
16,180,185陰茎海綿体
180陰茎脚
180咽頭
35,38咽頭後隙
38,52咽頭の区分
36咽頭収縮筋
55咽頭側隙
55咽頭扁桃
54陰嚢
16,180,188陰嚢縫線
16陰部神経
95,185,186,190,236陰部神経管
184ヴァルサルバ洞
(大動脈洞) 128右胃動脈
151,164右胃大網動脈
164ウィルズング管
166ウィルヒョウリンパ節
28,246ウインスロー孔
144,146,151上
9烏口鎖骨靭帯
226烏口突起
228烏口腕筋
(うこう−) 72右室
127右室・左室の区別
129後
(うしろ) 8右心室の内景
131内
(うち)がわ 9項
(うなじ) 205右葉
144,152鋭縁枝
134会陰
205会陰切開
179腋窩
15,18,66腋窩隙
74,75腋窩神経
74腋窩静脈
/動脈 71腋窩リンパ節
70,71エコー課題
161S状結腸
144,145S状結腸間膜
147S状結腸間陥凹
147S状結腸動脈
165S状静脈洞
50S状洞溝
215エラスタ−
18,22遠位
9遠位指節間関節
83,86,233遠位橈尺関節
85,231円回内筋
82嚥下筋
33,55,60遠心
217円靭帯
92円錐枝
134オーベルスト麻酔
83横隔胸膜
138横隔神経
26,30,69,116,117,126,138横隔膜
26,91,96,98,114,139,141,152,158,170横隔膜脚
140,170横隔膜腱中心
152横隔膜ヘルニア
114,170,171横隔面
120,133,152横筋
41横筋筋膜
91,92,93横口蓋縫合
213横行結腸
144,145,159,166横手根靭帯
33,81黄色靭帯
/黄靭帯 109,220横静脈洞
50横足根関節
243横突起
101,105,108,109,220,223横突間靭帯
105,106横突孔
52,172,225横披裂筋
41オッデイ括約筋
166オトガイ下動脈
34,44オトガイ孔
/隆起 216オトガイ神経
/動脈 58オトガイ舌筋
55,57オトガイ舌骨筋
33,56外陰部
205外陰部動静脈
19外果
149,198,242外果関節面
242回外
78,79,85回外筋
82,85外眼角
47外眼筋
46外頚静脈
15,25,31,45外頚動脈
34回結腸動脈
147,165開口筋
33外後頭隆起
13外耳
61,215外耳孔
210外耳道
61,210外精筋膜
17外舌筋
54外旋
77回旋筋
106回旋筋腱板
77,228回旋枝
134外側
8外側腋窩隙
74外側縁
228外側顆
241外側塊
225外側環軸関節
52外側胸筋神経
71外側胸動脈
70外側弓状靭帯
98外側筋間中隔
18外側区域
154外側広筋
192,194外側臍ヒダ
175外側上顆
78,85,229外側上腕皮神経
74外側仙骨動脈
187外側前腕皮神経
18外側足底神経
201外側大腿皮神経
19,95外側直筋
46外側乳腺枝
70外側半規管
64外側半月
241外側皮枝
15,16外側ヘルニア
91,92外側翼突筋
59外側輪状披裂筋
41外鼠径輪
92外腸骨動脈
177回腸
145,166回腸動脈
158,165外椎骨静脈叢
106外転
77外転神経
48,50外頭蓋底
213回内
78,79,85外腹斜筋
67,94,96,100外腹斜筋腱膜
16,94,193外閉鎖筋
186解剖学的左葉
/右葉 154解剖学的正位
8解剖頚
229蓋膜
53海綿静脈洞
49,51,64回盲部
145,147,163回盲ヒダ
147回盲弁
166外肋間筋
96,97,106下咽頭
36下咽頭収縮筋
55下横隔動脈
98,163,164,169,170下角
228下顎窩
210,213下顎角
,下顎管,下顎孔 28,216下顎後静脈
45下顎骨
44,53,210,215下顎枝
58,215下顎歯
217下顎神経
33,44,50,59下顎切痕
57,216下顎体
215下顎底
14,31,33,43,216下顎頭
216下
-下腹神経叢 150,168,172,176,182,186顆管
213顆間窩
/顆間隆起 241下眼窩裂
49,210果間関節面
242下眼静脈
49窩間靭帯
93蝸牛
62顎関節
39,59,210,216顎舌骨筋
33,56顎舌骨筋神経
33,56,58顎舌骨筋線
216角切痕
160顎動脈
58顎二腹筋
28,31,33角膜
48下頚神経節
29下瞼板
47下行結腸
145,150下行口蓋動脈
60下甲状腺静脈
35,116下甲状腺動脈
35,38下項線
213下後鋸筋
103下行大動脈
140,141下後
/下前腸骨棘 235下喉頭神経
41下矢状静脈洞
50下歯槽動脈・神経
44,58下肢
,下肢帯 234下斜筋
47下尺側側副動脈
72下深頚リンパ節内側群
28下唇動脈
43下垂手
88下膵十二指腸動脈
162下垂体
51下垂体窩
51,215下膵動脈
162,164仮声帯
41鵞足
,鵞足包 196下双子筋
191肩
11下腿
11,197,234,241下腿機能軸
241下腿筋膜
197,198下腿三頭筋
198肩関節
77,228下大静脈
126,152下大静脈窩
153下腸間膜静脈
146,163,168下腸間膜動脈
146,168下直筋
46下直腸動脈
184下椎切痕
220滑液鞘
79,80,83,200滑液包
76,188,195,196顎下三角
31顎下神経節
57顎下腺
,顎下腺管 31,56顎下リンパ節
31,245滑車上動脈
/神経 43,46滑車神経
46,49滑車切痕
230下殿動静脈
189下殿神経
95,185,187,189下頭斜筋
104下肺静脈
126下鼻甲介
,下鼻道 59下腹神経
150,167,171,172,175,182下副腎動脈
169下腹壁動静脈
91下方
9下膀胱動脈
180,184下葉
120下葉気管支
121カロー三角
150肝胃間膜
144,151肝円索
143,152肝円索裂
153眼窩
13,43,45,209,215眼窩下孔
209眼窩下動脈・神経
44,47,49,60眼角動脈
43眼窩骨膜
45,46眼窩脂肪体
46眼窩上孔
209眼窩上動脈
/神経 43,46眼窩内容
46肝鎌状間膜
143,144,152肝管
151肝冠状間膜
144,152眼球
48肝区域
154眼瞼靭帯
47寛骨
234,235寛骨臼
187,192,235寛骨臼切痕
236肝枝
151環軸関節
225肝十二指腸間膜
144,151冠状溝
133冠状静脈洞
133冠状静脈洞口
129冠状動脈
127,133,134,135冠状動脈の分布
131冠状縫合
208肝静脈
152,154眼静脈
152,154眼神経
48,50肝膵ヒダ
146関節
206関節円板
58,69,86,111,226関節窩
228関節唇
192,241関節突起
57,215,220関節半月
241関節包
58,195肝臓
117,143,144環椎
53,104,109,225環椎後頭関節
52,225環椎十字靭帯
53貫通動脈
195,196眼底
45カントリー線
154幹動脈
158肝動脈
153,164眼動脈
48,49肝内門脈
153肝の触診
24カンパー筋膜
16,248,249間膜ヒモ
166肝無漿膜野
152顔面横動脈
43顔面筋
14,43顔面神経
31,34,44,50,61顔面神経管
63,64顔面神経膝
62顔面静脈
45顔面動脈
14,31,43肝門
152岩様部
213眼輪筋
14,47キーセルバッハ部位
43気管
35,38,115,121気管支
115,121気管支縦隔リンパ本幹
116,118,247気管支動静脈
121,141気管切開
36気管内挿管
22,40気管分岐部
139気管傍リンパ節
118,122,123,138,140奇静脈
117,121,141,172奇静脈弓
117,141奇静脈溝
120基靭帯
173,175,176,183,248基節骨
233気道異物
140キヌタ骨
63キャノン収縮輪
168球海綿体筋
185臼後三角
56臼歯
56,217弓状靭帯
98,170弓状線
91,235弓状動脈
200嗅神経
49胸横筋
114胸管
28,98,115,140,171頬筋
14,57胸筋神経
67,71胸筋神経ワナ
胸腔
91(体腔),111,115,220胸腔穿刺
22,112胸腔内リンパ節の位置
122,123胸肩峰動脈
70,71胸骨
15,66,112,114,221頬骨
209胸骨角
112,115,221頬骨弓
57,209胸骨筋
67胸骨甲状筋
26胸骨舌骨筋
26胸骨端
226胸鎖関節
69,111,226胸鎖乳突筋
15,25,31,100,226頬神経
59胸腺
,胸腺脂肪体 115,116頬側
217胸椎
218,220胸背動脈
/神経 70,74,76,100胸部
221胸腹壁静脈
15,69胸壁
96強膜
48胸膜
111,117,138胸膜腔
117胸膜頂
117,172胸腰筋膜
103胸肋三角
98,114胸肋面
133仰臥位
8棘筋
106棘孔
51,213,215棘上窩
,棘下窩 76,228棘上筋
,棘下筋 76,77棘突起
52,99-101,103,109,220挙睾反射
92距骨
,距骨下関節 202,243距骨滑車
,距骨溝 244距踵関節
,距腿関節 202,243鋸状縁
48ギヨン管
233近位
9近位指節間関節
83,86,233近位橈尺関節
85,86,231筋横隔動脈
114筋間中隔
18,21,72,193,196,197近心
217筋性部
(筋性中隔) 128,129筋注
75緊張部
62筋突起
57,216筋皮神経
72筋膜
19,58,93,190,197,247区域気管支
121,122,124クイノー肝区域
153,154隅角
45,48空腸
145空腸動脈
158,165クーパー靭帯
70クーパー腺
180櫛状筋
127屈曲
,屈側 9屈筋
81,198屈筋支帯
(手の) 78,80,81,233頚
(くび) 10,205クモ膜
51,109クモ膜顆粒
50,206鞍関節
232クラックス
(十字) 133グリソン、グリソン系脈管
153頚横動脈
30,99,101頚横神経
29鶏冠
214頚胸移行部
138頚胸神経節
29,138,172脛骨
199,241脛骨神経
20,95,196,199,200茎状突起
33,55,61,210,213,230,231頚静脈孔
51,213,215頚静脈二腹筋リンパ節
246頚神経叢
25,29,44,100,110頚神経ワナ
26,34頚切痕
221頚長筋
38頚椎
218,225頚動脈管
64,213,215頚動脈サイフォン
51頚動脈鞘
29頚動脈小体
34茎突咽頭筋
, 茎突舌筋 54,55茎突舌骨筋
33,55茎乳突孔
61,213頚板状筋
,頚半棘筋 104頚部
10頚部主要リンパ節
246脛腓靭帯結合
202,241,242頚リンパ節鎖
28頚リンパ本幹
28外科頚
229外科的肝区域
,外科的左/右葉 153,154血管
8血管鞘
28,93,116,248結節間溝
229結合腱
93楔状骨
243月状骨
86,233月状面
236結腸
145,163,168結腸動脈
165結腸膨起
166結腸ヒモ
163,166結膜
45ゲロータ腎筋膜
148腱画
91腱弓
170,184,198肩甲回旋動脈
75,77肩甲下筋
76,77肩甲下筋神経
74肩甲下動脈
73肩甲挙筋
69,101,105,110肩甲棘
76,99,228肩甲骨
17,76,99,228肩甲骨内側縁
101,103,228肩甲上動脈
/神経 73,77肩甲舌骨筋
26,69肩甲切痕
76,101,228肩甲背神経
101肩鎖関節
69,226腱索
127犬歯
217腱中心
152腱鞘
79,80,83剣状突起
114,143,221瞼板
47腱板
74,228肩峰
226,228肩峰端
226腱裂孔
195後胃間膜
145後胃動脈
159,164後腋窩線
111口蓋
9口蓋咽頭弓
54口蓋骨
209,213口蓋垂
54口蓋舌弓
54口蓋舌筋
55口蓋粘膜
60口蓋扁桃
54口蓋帆挙筋
61口蓋帆張筋
61後角
110岬角
(鼓室の) 64岬角
(仙骨の) 167,174,218,224口角下制筋
14後下行枝
134後下膵十二指腸動脈
162交感神経系
65,142,251交感神経幹
29,38,98,138,141,142,172交感神経節
141後胸壁
96,97後鋸筋
103後筋
41咬筋
57咬筋動脈
/神経 57後弓
225後区域
154口腔
53口腔底
33,56口腔粘膜
56広頚筋
15,17,25,31後結節
225硬口蓋
53後口蓋弓
54咬合面
217後骨間動脈
82,85後根
109虹彩
48後左室枝
134後枝
17後篩骨洞
54,60後篩骨動脈
49後斜角筋
105,110後縦隔
138,172後縦靭帯
52,110,182,220後床突起
215甲状頚動脈
73後上歯槽神経
60後上膵十二指腸動脈
162甲状舌骨筋
26甲状腺
24,35,116甲状腺静脈
35,38甲状腺動脈
35,116鈎状突起
60,225,230甲状軟骨
26,36甲状披裂筋
41後上腕回旋動脈
74,76後上腕皮神経
18,75項靭帯
104後膵動脈
162,164後膵静脈
163後尖
128口側
9後前腕皮神経
18,75後側壁枝
134後大腿筋間中隔
21,196後大腿皮神経
20,95,196後膣円蓋
177,183交通枝
141,142喉頭
35咬頭
217喉頭蓋
39,41,53,55喉頭筋
41,42後頭顆
52,213後頭下三角
104後頭下神経
105後頭蓋窩
214後頭骨
52,208,213後頭前頭筋
13後頭動脈
13,34,55,104鈎突窩
229広背筋
70,76,94,100,111後半規管
64後鼻孔
213後腹膜腔
143,169後腹膜の生理的癒着
149,150後部子宮支帯
176後方
8硬膜
45,50,109硬膜上腔
109硬膜静脈洞
50肛門
17,174,190肛門括約筋
174,185肛門管
174肛門挙筋
174,184,190肛門側
9肛門部
205口輪筋
14後輪状披裂筋
41後彎
218鼓索神経
59,63鼓室
62鼓室上陥凹
62骨幹
,骨端 229骨間縁
,骨間膜 230,231,241骨間筋
79,84,86,201骨硬蓋
213骨盤
190,234,235骨盤隔膜
174,184,190骨盤腔
235骨盤神経叢
150,167,172,173,175,176,182,183,186骨盤底
186,191骨盤内筋膜
178,248,249骨盤の各部と計測
177,178,236骨盤内臓神経
95,172,182,186骨盤壁
99,184,190骨鼻中隔
209,213コッヘル授動術
150骨膜
13,66鼓膜
62鼓膜張筋
64固有肝動脈
151,164固有背筋群
103固有卵巣索
147根治的頚部郭清術
28臍
16,143,152最下甲状腺動脈
35載距突起
244最長筋
105,108左胃大網動脈
164左胃動脈
146,151,163,164,247臍動脈索
175最内肋間筋
97臍ヒダ
175下がり手
88鎖骨
15,67,226坐骨海綿体筋
184鎖骨下筋
, −神経 69鎖骨下静脈
15,67,70鎖骨下静脈穿刺
22,67鎖骨下動脈
30,70,115,138鎖骨下リンパ本幹
71鎖骨下ワナ
138鎖骨胸筋筋膜
67,71坐骨結節
185,188,190,192,235鎖骨上神経
25,29鎖骨上リンパ節
71坐骨
235坐骨神経
21,95,185,190,196,235坐骨大腿靭帯
192坐骨直腸窩
174,190左室
127左半結腸
168左房回旋枝
134猿手
88左葉
144,152三角胸筋溝
66三角筋
66,74三角筋粗面
229三角隙
75三角靭帯
202三角骨
,三角骨線維軟骨複合体 233三叉神経
50,250,251三叉神経根
60三叉神経節ブロック
216三尖弁
128産道
177,237サントリーニ管
166サントリーニ静脈叢
180三半規管
64耳介
61耳介側頭神経
45,59四角隙
75耳下腺
,−管,−神経叢 31,44死冠
186歯冠
217耳管
53,60,62,213耳管咽頭口
53弛緩部
62耳管隆起
54,60子宮
147,175,176子宮円索
16,92,176子宮円靭帯
147,176子宮頚部
183子宮広間膜
147,175,176子宮支帯
176,183子宮体
,子宮底 183子宮動脈
184軸椎
52,53,225刺激伝導系
131,132篩骨
45,209,214篩骨篩板
46,214篩骨洞
(篩骨蜂巣) 53,54,60歯根
217耳小骨
62歯状靭帯
110矢状断
9矢状縫合
208耳状面
224,236指伸筋
84視神経
47,49視神経管
210,215耳神経節
59指節間関節
86,233指節骨
83,86,233,243歯槽
209,213,217舌→ぜつ
下
9膝窩
196,198,234膝蓋骨
20,195,241膝蓋上包
195膝蓋靭帯
195,241膝窩筋
199膝窩動静脈
195,198室間溝
133膝関節
195,199,241膝関節筋
195膝神経節
64櫛状筋
127室ヒダ
41児頭の回旋
237指動脈
,−神経 79歯突起
53,225指背腱膜
84,86脂肪被膜
169斜角筋
29,71,73,105,110,111斜角筋リンパ節
28,246尺側
9尺側手根屈筋
81,233尺側手根伸筋
84尺側側副動脈
72尺側皮静脈
18斜台
52,213,215尺骨
78,230尺骨神経
72,81,84尺骨神経管=ギヨン管
80,232尺骨神経溝=肘部管
72,229尺骨動脈
81斜裂
120縦隔
115,119,137縦隔胸膜
138縦隔面
120縦隔リンパ節
117,122,123集合リンパ管
247集合リンパ小節
166十字靭帯
53,197舟状骨
81,86,233,243十二指腸
145,147,150,162,166十二指腸空腸曲
145,147,158十二指腸乳頭
166十二指腸の各部
150自由ヒモ
166手関節
78,86,233主気管支
121,140手根管
81,233手根骨
86,233手根中手関節
86,233手掌
80手掌腱膜
80手背
79手背静脈網
18シュレム管
48上
-下腹神経叢 167上咽頭
36,62上咽頭収縮筋
55小円筋
75,76,77上外側上腕皮神経
74上角
228上顎骨
44,213上顎歯
44,217上顎神経
44,50,60上顎体
209,210上顎洞
60,213上関節突起
220上眼窩裂
49,210,215上眼瞼挙筋
46上眼静脈
48小臼歯
57,217小胸筋
67,76,96上頚神経節
55小結節
77,229上瞼板
147上行咽頭動脈
34,55小口蓋孔
213上後鋸筋
101,103上行結腸
145,150上行口蓋動脈
55,58上甲状腺動脈
/静脈 34,35上項線
213上行大動脈
129上後腸骨棘
235小後頭神経
13,100上喉頭神経
34,36,39上喉頭動脈
34,39上鼓室
62踵骨
201,243,244踵骨腱
198,244小骨盤
(腔) 169,235上肢
66,226小指外転筋
84,200,201小指球
80上矢状静脈洞
,上矢状洞溝 50,208小指伸筋
84硝子体
48上肢帯
99,226小指対立筋
84上斜筋
46,47上尺側側副動脈
72上縦隔
112,115上十二指腸角
166小十二指腸乳頭
166上十二指腸ヒダ
147上唇動脈
43上唇鼻翼挙筋
14小錐体神経
51,64小泉門
208上前腸骨棘
19,147,235上双子筋
191上大静脈
117,126小腸
145小腸間膜
159上腸間膜静脈
163,168上腸間膜動脈
155,158上直筋
46上直腸動脈
165,168小転子
95,191,241上殿神経
95,185,189上殿動静脈
17,187,189上殿皮神経
17上頭斜筋
104小内臓神経
138小脳鎌
50小脳テント
50上肺静脈
126上鼻甲介
,上鼻道 59小伏在静脈
20,198上副腎動脈
169上腹壁動静脈
91,98,114上方
9上膀胱動脈
175,176,180漿膜性心膜
126静脈
8静脈角
28,71,115静脈管索
152静脈穿刺
22,67静脈洞
,静脈洞交会 50小網
144,151上葉
120上葉気管支
121小翼
209,215小菱形筋
99,101小菱形骨
233小弯
144,151,160上腕
10,226上腕筋
75,230上腕骨
72,75−78,85,229上腕三頭筋
75上腕深動脈
74,75上腕動脈
72上腕内側筋間中隔
18,21,72上腕二頭筋
18,72,231上腕二頭筋長頭腱
77,229上腕二頭筋停止腱膜
78触診
24褥創
17食道
38,115,139,171食道狭窄部
139食道神経叢
140食道の区分
139食道の血管
140食道裂孔
98,139,141,171鋤骨
213自律神経系
65自律神経叢
163心圧痕
120深陰茎筋膜
17,249心エコー
127,136心音聴診
130心外膜
126,127,133伸筋区画
197伸筋腱
79,197伸筋支帯
78,79,197,200腎筋膜
148,150,163,169腎脂肪被膜
169心腔穿刺
23神経
8神経節
29,47,57,59,60,109,138,172,250,251神経線維束
89神経点
25深頚動脈
104,138神経ブロック
13,22,139,216深頚リンパ節
28,70心腔穿刺
22,23心耳
127深指屈筋
82深屈筋区画
198心室
127,129心室中隔
128,129深掌動脈弓
84心静脈
133心尖
129心尖拍動
24腎静脈
146,170心臓
126−腎臓
145,150,170心臓神経
29,141,142伸側
, 深側 9深側頭動脈
/神経 58深鼡径輪
92,187伸展
79心電図
130,133腎動脈
140,146,170腎盤
,腎杯,腎門 170心内膜
128心嚢
117,126深背筋
103真皮
8,11心房
127,129心房中隔
128心膜
112,116,126心膜横洞
,心膜斜洞 126心膜腔
126膵横動脈
162髄核
182膵管
166膵十二指腸動脈
162水晶体
48髄質
170膵前筋膜
149膵臓
146,158,162膵臓の区分
162膵臓の動脈
161錐体
51,62,213錐体葉
35垂直板
213膵頭
162水平断
9水平板
213水平裂
120皺眉筋
14頭蓋底
49,53,213スカルパ筋膜
16,248スカルパ三角
19,193スナッフボックス
84,85スパイナル針
21スピーゲル葉
152背
11,205正円孔
51,60,215精管
16,92,147,180,183精索
16,92,147星状神経節
29,138,172星状神経節ブロック
139精巣
17,92,180精巣挙筋
92精巣上体
180精巣動静脈
92,163,168,169声帯
, 声帯筋 41正中環軸関節
52正中臍索
174正中臍ヒダ
175正中神経
72,81,82正中神経反回枝
83正中神経ワナ
72正中仙骨稜
224精嚢
182声門
41,54声門裂
41生理的癒着
149脊髄
109,218脊髄神経
15,17,99,103,109,220脊髄神経後枝
17,101,103,105−109脊髄神経根
52,109,141,182脊髄神経節
109脊髄神経前枝
103,106,224脊柱
115,141,155,218脊柱管
109,182,218脊柱起立筋
103舌
54舌咽神経
50,54,55,57舌下神経
26,33,39,50,55,57舌下神経管
52,213舌下神経伴行静脈
33舌骨
26,33,55舌骨下筋群
26舌骨上筋群
33舌骨舌筋
34,55,57舌骨大角
55切歯
217舌枝
54,55切歯孔
213舌側
217舌根
57舌神経
56,57舌動脈
34,57舌乳頭
54舌扁桃
54前胃間膜
144線維性心膜
112線維輪
182前右室枝
134前角
110前額断
9前下行枝
134前下膵十二指腸動脈
162前眼房
48前距腓靭帯
202前胸壁
96前鋸筋
69,70,74,76,94,96,103,111仙棘靭帯
174,184,186,190,235前弓
225前筋
36,41前区域
154浅頚筋膜
25,31前脛骨筋
197前脛骨動脈
198前傾前屈
182前結節
225仙結節靭帯
174,186,188,235前口蓋弓
54仙骨
17,109,186,188,218,224前骨間神経
/動脈 82仙骨神経
186仙骨神経叢
95,185仙骨前神経
167仙骨内臓神経
172仙骨盤面
236仙骨裂孔
224前根
109浅指屈筋
82前篩骨洞
54,60前篩骨動脈
47,49前斜角筋
29,71,73,111前縦隔
115前縦隔リンパ節
116前縦靭帯
141前上膵十二指腸動脈
162浅掌動脈弓
84前床突起
215前十字靭帯
197前尖
128前仙骨孔
186,224浅側
9浅側頭動脈
43,45,59浅鼡径輪
92浅鼡径リンパ節
19前膣円蓋
177,183仙腸関節
236前庭窓
64前庭ヒダ
41前庭部
159前頭蓋窩
49,214前頭筋
14前頭骨
43,45,208,214前頭神経
46前頭断
9前頭洞
46,54,60浅背筋
99前半規管
64前鼻孔
,前鼻棘 209浅腓骨神経
198前皮枝
15,16,19浅腹壁動静脈
17,19前部子宮支帯
176前方
8前立腺
182,183前腕
10,218,226前彎
218前腕筋膜
78前腕骨間膜
230総肝管
151総肝動脈
146,151,163,164総頚動脈
34,38,115,116総腱輪
49総骨間動脈
82双子筋
191爪床
86臓側胸膜
9臓側胸膜
117臓側心膜
126臓側面
152総胆管
151,166総腸骨静脈
146総腸骨動脈
146,177総腓骨神経
20,95,196,198,199僧帽筋
17,25,99,103僧帽弁
128側筋
41足関節
202,242足弓
201,243足根骨
242足根中足関節
243足根洞
244足底
199,202足底筋
199足底筋膜
201足底方形筋
201側頭窩
210側頭下窩
57側頭筋
46,58側頭筋膜
58側頭骨
46,58,61,213,214側頭骨錐体
51,62,213側頭骨岩様部
213,214側頭鱗
62,210,215側頭下顎関節
210,216足背
197,200足背動脈
200側腹筋
94側副靭帯
92,197,233側彎
218鼡径管
92鼡径靭帯
19,92,193鼡径部
11,92鼡径ヘルニア
91,92鼡径鎌
91咀嚼筋
57粗線
241
第
5中足骨の突出部(−粗面) 200,243大円筋
75,76,100大胸筋
66,76,96大頬骨筋
14大結節
77,229大孔
49,52,213−215大口蓋神経
60大後頭神経
13,100大後頭直筋
104第
3後頭神経 13,100大坐骨孔
186大耳介神経
15,25,29,31大十二指腸乳頭
166大静脈孔
141,152大心静脈
133大錐体神経
51,62,64大膵動脈
162,164大前根動脈
141大前庭腺
177,185大泉門
208大腿
10,192,234大腿筋膜
190,192大腿骨
189,191,198,241大腿骨小転子
95,191,241大腿骨頭
192,241大腿三角
19,193大腿四頭筋
194,195大腿神経
19,95,193,194大腿深動脈
194−196大腿直筋
194大腿動静脈
93,187,193大腿二頭筋
191,196大腿方形筋
191大腸
145大殿筋
188大転子
188,241大動脈
155大動脈弓
115,118,139大動脈弓溝
120大動脈枝の高さ
187大動脈周囲の神経叢
163大動脈周囲リンパ節
168,171大動脈洞
128大動脈弁
127大動脈裂孔
98,141,171大内臓神経
98,138,142,163,171大内転筋
191,193,194,196大脳鎌
50大伏在静脈
19,198体壁
91大網
144大網ヒモ
166大腰筋
95,170,172太陽神経節
163大翼
209,210,213大菱形筋
233大弯
144,158,160,165唾液腺
31ダグラス窩
147,177,183タバチエール
79多裂筋
106,108短胃動脈
159,164短回旋筋群
191短肝静脈
155短掌筋
80短小指屈筋
84胆道
153短橈側手根伸筋
84,85胆嚢
144,151胆嚢窩
153胆嚢管
151,153胆嚢床
153胆嚢動脈
151,164短腓骨筋
198,200短母指屈筋
83短母指伸筋
85,200短毛様体神経
47胆路
153恥丘
16恥骨
143,183,184,190,235恥骨弓
236恥骨筋
191,194恥骨結合
236恥骨前立腺靭帯
183恥骨直腸筋
184腟
177,182腟円蓋
177,183中咽頭
36中咽頭収縮筋
55肘窩
18,78,226中隔
127中隔枝
134中隔尖
128中間広筋
194,195肘関節
85,231肘筋
85中頚神経節
28中結腸静脈
159,165中甲状腺静脈
35中硬膜動脈
48,51,59,208中手指節関節
83,86,233,244中手手根関節→手根中手関節
中耳
61,215中斜角筋
105,110中手骨
233中縦隔
115中縦隔リンパ節
115中心静脈
125,133虫垂
145,166虫垂間膜
159,163虫垂動脈
159,165中枢側
9肘正中皮静脈
18中節骨
233中足骨
200,202,243中直腸動脈
184中殿筋
188,189,191中殿皮神経
17肘頭
18,85,78,230肘頭窩
229中頭蓋窩
49,214中鼻甲介
59中鼻道
59肘部管
72中副腎動脈
169中部子宮支帯→基靭帯
中葉
120中葉気管支
121虫様筋
81腸間膜
144,159,168長胸神経
70,74蝶形骨
45,213蝶形骨小翼
209,215蝶形骨大翼
209,210,213,215蝶形骨洞
53,60腸脛靭帯
189,192,241蝶口蓋動脈
59,60腸骨
235腸骨筋
95,194腸骨稜
17,188,189,235長指屈筋
199,200長掌筋
80,81長足底靭帯
201,202聴診
130腸恥索
93短橈側手根伸筋
78,84長橈側手根伸筋
78,85長内転筋
19,191,193,194長腓骨筋
198,200,201長母指外転筋
85長母指屈筋
82,83,199,201長母指伸筋
85,197,244長毛様体神経
47腸腰筋
191,194腸腰動脈
187腸リンパ本幹
171腸肋筋
105,108直静脈洞
50直腸
147,174,175直腸の区分
174直腸外側靭帯
175,248直腸子宮窩
147,177,183直腸指診
174直動脈
158椎間円板
110,141,182,218椎間関節
110,220椎間孔
109,172,182,220椎間板
110,141椎間板ヘルニア
106椎弓
,椎弓板,椎弓根 109,220椎孔
220椎骨
218椎骨静脈
138,225椎骨動脈
52,53,105,138,172椎体
38,138,141,220通過管
183ツチ骨
62爪
86手
10,226ディノビエ筋膜
248手関節
78,233手の骨
233テノン鞘
47デルマトーム
10天蓋
242殿筋群
188殿筋群と歩行
189転子窩
,転子間稜 191,241転子包
189殿部
10,205,234頭蓋
13頭蓋窩
214頭蓋冠
13,208頭蓋底
49,53,213動眼神経
48,49瞳孔
48豆鈎靭帯
81橈骨
78,231橈骨手根関節
86,233橈骨神経
74,75,81,85橈骨神経溝
229橈骨切痕
230橈骨動脈
79,81,84頭斜筋
104橈尺関節
85,231豆状骨
81,233頭側
9橈側
9橈側手根屈筋
81橈側手根伸筋
78,84,85橈側皮静脈
18,66,67導出静脈
218導尿
179頭頂骨
208頭半棘筋
,頭板状筋 104頭皮
13頭部の交感神経系
65洞房結節
128洞房結節枝
134動脈
8動脈管索
138トライツ靭帯
158,162トライツ膵後筋膜
149,248トラカール
22,112トルコ鞍
215トルト筋膜
149,150,248トレンドレンブルク徴候
189鈍縁枝
134
内陰部動静脈
184,187,190内果
199,200,242内眼角
47内胸動静脈
66,70,96,112,115,116内胸リンパ節
115内筋
41内頚静脈
28,29,45内頚動脈
34,38,51内後頭隆起
215内耳
61,215内耳孔
,内耳道 64,215内耳神経
50,64内頭蓋底
214内精筋膜
17,249内舌筋
57内旋
77内臓神経
138,142,163,172内側
8内側腋窩隙
75内側縁
228内側顆
241内側胸筋神経
71内側弓状靭帯
98内側筋間中隔
18内側広筋
193,194内側臍ヒダ
175内側上顆
72,78,82,85,229内側上腕筋間中隔
18,21,72内側上腕皮神経
18内側前腕皮神経
18内側足底神経
201内側大腿回旋動脈
187,191,195内側大腿筋間中隔
21,193内側直筋
46内側乳腺枝
70内側半月
241内側ヘルニア
91,92内側翼突筋
59内鼠径輪
92内腸骨動脈
177,180,184,185内椎骨静脈叢
109内転
77内転筋
194内転筋管
20,193,195内腹斜筋
94内閉鎖筋
185,186,191内肋間筋
96,97軟口蓋
53軟膜
51肉柱
128肉様膜
16,93,188,249二分靭帯
202乳腺
,乳頭 70乳頭筋
127乳頭突起
108,223乳突洞
,乳突蜂巣 62乳び槽
171乳房
15,69乳房の血管
70乳様突起
61,210,213乳輪
15尿管
147,150,163,169,176尿管口
183尿生殖隔膜
185,190,249尿道
92,180,183尿道海綿体
,尿道球腺 180尿道口
183尿膜管
175脳神経
50,250,251ノドボトケ
53ノミナ
2,8歯
57肺
111,117背臥位
8肺間膜
118肺区域
121肺根
117,120,121肺静脈
121肺神経叢
141肺尖
117,120肺尖静脈
125背側
9背側骨間筋
79,84肺底
120肺動脈
120,127肺動脈幹
129肺動脈弁
127肺の圧痕
120肺面
133肺門
120パイエル板
166バウヒン弁
166白膜
180薄筋
191,194,196バック筋膜
249馬尾
109ハムストリング
190,191,196腹
10,205バルサルバ洞
128ハルステッドリンパ節
28,246バルトリン腺
177,185破裂孔
51,213,215バンカ−トリ−ジョン
228反回枝
80,83反回神経
35,36,38,117,118,140半規管
64半奇静脈
141半棘筋
104,106半月ヒダ
166半月弁
127,128半腱様筋
,半膜様筋 191,196板状筋
104皮下
11皮下組織
11,43,248鼻腔
53,209鼻甲介
,鼻中隔 59,209腓骨
20,199,242尾骨
177,224,235鼻骨
47,209尾骨筋
174,184,190腓骨筋
,腓骨筋区画 197,198腓骨神経
95,186腓骨動脈
199膝
11,234膝関節
195,199,241膝関節筋
195膝神経節
64肘
10,226肘関節
85,231皮質
170皮静脈
14,16,18,19脾静脈
159,164,168尾状葉
153,154皮神経
8,13−20ヒス角
171ヒス束
128脾臓
24,145,146,159尾側
9左胃動脈
146,151,163,164,247左冠状動脈
134左冠状動脈本幹
/主幹 127,134左気管傍リンパ節
123,140左鎖骨下動脈
138左主幹部
134左総頚動脈
138左前斜位
8鼻中隔
53,59,209鼻道
59脾動脈
146,159,162−164皮膚
11腓腹筋
198腓腹神経
20,198腓腹部
234鼻毛様体神経
47描円
77表情筋
14,43ひょう疽
86表皮
11ヒラメ筋
198ヒラメ筋線
241ヒルザックリ−ジョン
229鼻涙管
47,54,209披裂軟骨
41ピンチコックアクション
171ファーター乳頭
165プーリー
83副咽頭間隙
55腹横筋
92,94,96,114腹横筋
91,92伏臥位
,腹臥位 8副肝動脈
164腹腔
91,143腹腔枝
158,163腹腔神経節
163,169,171腹腔動脈
151,155,158,163,164副交感神経系:
65,迷走−,骨盤内臓−副甲状腺
35,37伏在静脈
19,20伏在神経
20,193,194伏在裂孔
19,192副耳下腺
44副腎
152,163,169副腎の血管
169副神経
25,31,38,50,99,100副膵管
166腹側
9腹大動脈
95,146,172腹直筋
91,94,96,114腹直筋鞘
16,91,94副突起
108,223副半奇静脈
141副鼻腔
53,209腹部
10腹部エコー
161腹壁
91腹膜
91,143腹膜陥凹
146腹膜腔
143,168腹膜後器官
168腹膜後隙
143,169腹膜反転部
174腹膜ヒダ
146ふくらはぎ
234ブドウ膜
48分界線
235吻側
9ぶんまわし
77噴門
165,171噴門部
158,165閉鎖管
186閉鎖孔
186,236閉鎖神経
19,95,186,194閉鎖動脈
177,187,194壁側
9壁側胸膜
112,115,117壁側心膜
126壁側腹膜
168,175臍
16,143,152ヘルニア
92,106,114,170,171辺縁動脈
158弁尖
127,128扁桃
, 扁桃窩 54ヘンレの胃結腸静脈幹
159,162方形回内筋
82膀胱
147,175,176,183膀胱下腹筋膜
174,248縫工筋
19,193,196膀胱三角
183膀胱子宮窩
147房室結節
128房室結節枝
134房室弁
128房室束
128帽状腱膜
13母指
83母指外転筋
83,201母指球
80母指球筋
83母指対立筋
83母指内転筋
84,201ボタロ管索
138ボホダレック孔ヘルニア
98,170前
8膜性部
128,129膜迷路
64末梢側
9末節骨
233蔓状静脈叢
183右胃動脈
151,164右胃大網動脈
164右肝静脈
152,154右冠状動脈
131,133,134右肝動脈
164右気管傍リンパ節
118,137眉間
209右結腸動脈
165右下肝静脈
155右前斜位
8,135耳神経節
59,251脈診
24脈絡膜
48胸
205無名静脈
116無名動脈
117,138無名の間隙
75迷走神経
29,38,50,118,140,172メズサの頭
17,153迷走神経肝枝
151迷走神経腹腔枝
158,163盲腸
145,150,166網嚢
144,146網嚢孔
144,146,151網膜
48網膜中心動脈
49毛様体
48毛様体神経節
47,251モルガニ孔
98門脈
151,154,159,162,168門脈側副路
16,153ヤコビー線
21有郭乳頭
54有鈎骨
81,233有鈎骨鈎
81,232幽門
,幽門括約筋 144,165幽門前庭
,幽門洞 159,160,165癒着筋膜
149,150,248指の神経
/動脈 79葉間胸膜
,葉気管支 120腰神経叢
95,172,185腰仙骨神経幹
95,185腰仙骨神経叢
95腰椎
108,218,223腰痛
110腰動脈
95,172腰内臓神経
95,172腰背腱膜
103腰部
11腰部交感神経幹
172腰方形筋
95,170腰リンパ本幹
168,171腰肋三角
170翼口蓋窩
59,210,213,215翼口蓋神経節
60,251翼状靭帯
53翼状突起
210,213翼突管神経
60翼突筋粗面
216翼突鈎
60ラーレー孔
114ラセンヒダ
151ラパ胆
150ラミネク
108ラムダ縫合
208卵円窩
128卵円孔
51,213,215卵管
147,176,183卵管采
147,176卵巣
143,147,176,183卵巣周辺の小構造
148卵巣提索
147卵巣動脈
163,168,169梨状陥凹
39,41梨状筋
186,189梨状孔
209立方骨
243流出路
128,129,136菱形筋
69,76,99,101輪状甲状筋
36,41輪状軟骨
36,38輪状ヒダ
166リンパ管
19,118,170リンパ節
19,28,31,32,71,115,116,118,122,123,159,160,168,171,184,246
リンパ節課題
32鱗部
62,215涙丘
45涙骨
209涙腺
46涙腺神経
46涙腺動脈
48涙嚢
47ルシュカ関節
225ルンバール
21,23漏斗部
128,129肋横突関節
220,221肋下筋
97肋間筋
111肋間上腕神経
72肋間神経
15,16,66,91.96,97,103,106,107,109,138,172
肋間神経外側皮枝
/前皮枝 15,16,66,94肋間動静脈
97,112,138,141,172肋頚動脈
138肋硬骨
221肋骨
67,111,221肋骨窩
220肋骨頭関節
97,141,220,221肋骨突起
223肋骨横隔洞
117肋骨角
105,221肋骨弓
96,114,221肋骨胸膜
120肋骨挙筋
106肋骨縦隔洞
117肋骨面
120肋鎖靭帯
226肋軟骨
221ロ−テ−ターカフ
77,228ロッターリンパ節
67,246濾胞
35
わし手
88腕尺関節
231腕神経叢
72,110,111腕橈関節
85,231腕橈骨筋
75,78,81,84腕頭静脈
116腕頭静脈角
115腕頭動脈
115,116,117,138