付録
■リンパ管系総論■
- リンパ管系 Lymphatics とは
- 全身からの第2の排液系。静脈に注ぐ。リンパ(液)が流れる(リンパ流)。
- 悪性腫瘍の転移経路として重要(リンパ行性転移、血行性転移)
(リンパ管系自体の疾患は我国では比較的少ない)
- 脳、角膜にはリンパ管系がない。
- リンパ節とリンパ管から構成される。
- リンパ管の太さは、静脈のように1+1=2とはならない(2未満)
※「リンパ系」:「リンパ管系」とはニュアンスが異なり、しばしば免疫系と同義。
- リンパ流の駆動力
(方向は弁によって決まる)
- 筋・動脈などによるマッサージ
- 濾過圧(浸透圧)
- 胸腔内が陰圧であること
- 胸管では平滑筋の収縮
- (あまり使わないが)教科書的な分類
- [浅リンパ管系] 皮下組織内に発達しているリンパ管網。
色素注入しないと肉眼では 見えない。
特定の部位で深リンパ系に注ぐ(図222)=皮静脈が深部に注ぐ部位に同じ
【例】腋窩(図3)、鼠径部(図415)
- [深リンパ管系] いわゆる「リンパ管系」と同義
- 「リンパ路」の概念
- 特定部位に発するリンパは特定の経路(リンパ管系)を経て静脈に注ぐ。
(但し、癌のリンパ節転移後など病的条件下では経路が大きく変りうる)
- [主要リンパ路] 多くのリンパ路が集まった共通経路。
リンパ本幹よりも末梢側で用いることが多い。
特定部位に発するリンパ路が複数ある中で主要なもの。
- すべてのリンパ路は静脈角およびその付近に集まり、静脈系に注ぐ。
(発生学的には下大静脈に注ぐ可能性も残るが、成人では証明されない。)
- [静脈角] 鎖骨下静脈と内頚静脈が作る外側に開く角(図587,593)
- 正中交叉律:正中線上の器官に始まるリンパ流は、対側に(も)向かう
【例】舌、顔面、咽頭、喉頭
※左側の気管支・肺からのリンパ流は下方から始まるものほど右に集まる
- リンパ節
- 「○○リンパ節」と呼ぶ時も多くは複数のリンパ節からなる
- 時には腋窩リンパ節、深頚リンパ節、大動脈周囲リンパ節のように、複数のリンパ節群 の総称として用いられることがある
- 戦前は「リンパ腺」と呼んだ。
- [所属リンパ節 regional lymph nodes] ある器官に発したリンパ流が静脈に注ぐまでの間 に存在するリンパ節を、その器官の所属リンパ節という。
(上流から下流に向け て)一次(所属)リンパ節、二次リンパ節、三次リンパ節、(四次リンパ節)を 区分する。
- [介在律] すべてのリンパ流は少なくとも1個のリンパ節を経て静脈に注ぐ。
但し胸 管に隣接する構造、例えば食道では、リンパ節を経ずして胸管に注ぐことが少なくな い。
この場合、さらに下流で胸管に介在リンパ節がなければ、リンパ流はリンパ節 を通らずに静脈に注ぐことになる。
- [介在リンパ節] 所属リンパ節を結ぶ連絡リンパ管に介在。
(曖昧な定義)
- [最終介在リンパ節 last-intercalated nodes] ある器官からのリンパ路が静脈(あるいは 胸管)に注ぐ直前に介在する。
<「癌取扱い規約」における所属リンパ節分類>
- 主に臨床経験から判断して、転移しやすいリンパ節を臓器(部位)ごとに3(4)群に分けて いる。
上述 一から三(四)次所属リンパ節とほぼ同義。
【例】幽門部胃癌(胃A領域癌)の第1群リンパ節は○○○○
※胃(癌)の所属リンパ節は特に有名で国試対策でも番号で呼んでいる。
- 各臓器の所属リンパ節には、各臓器ごとに番号(と名称)が決められている。
近年統一番号が設けられたが、まだ普及していない。
【例】胃癌の16番リンパ節(大動脈周囲リンパ節)は○○○○
【例】乳癌・食道癌の鎖骨上リンパ節(一般外科)
= 頭頚部癌の下深頚リンパ節内側群(耳鼻咽喉科)
<独特の愛称で呼ばれる有名リンパ節>
- [ウィルヒョウリンパ節 Virchow's node] 大鎖骨上窩に存在する深頚リンパ節群の中で、胸管 の最終介在リンパ節として機能したもの。
胃癌末期の転移で有名。
厳密な意味で胸管の途中に介在していなくても、静脈角付近のリンパ節が腹部からの癌転移 によって腫れれば臨床的にはウィルヒョウリンパ節と見なしている。
- [斜角筋リンパ節 scalene node] 前斜角筋前面。
肺疾患でしばしば穿刺生検 biopsy を行なう。
必ずしも前斜角筋前面に発達しているとは限らない
- [ハルステッドリンパ節 Halsted's node] 鎖骨下リンパ節の一つで第一肋骨に近接。
「最上部鎖骨下リンパ節」とも言う。
- [ロッターリンパ節] 大胸筋・小胸筋の間にある。
進行乳癌の際に腫張が認められることで有名。
- [ (Kuttnerの) principal nodes(頚部主要リンパ節)] 下顎角下方で医師が触診する部位。
顎二腹筋中間腱直下で内頚静脈前面。
- [ルビエールリンパ節] 咽頭後面に1個程度。
健常者では稀。
- [ローゼンミューラーリンパ節] (=クロケーリンパ節 Cloquet) 深鼠径リンパ節群の中で大腿 管(鼠径靭帯後方)にはいりこんだもの。
=婦人科の鼠径上節
- [よこね] (浅・深)鼠径リンパ節が性病で腫大したもの。
- [肺門リンパ節] 気管気管支リンパ節との境界は不明瞭。
肺根に集族。
- [右最上縦隔リンパ節(癌研)] 右反回神経リンパ節(鎖)(がんセンター)、トップリンパ節 (Top=高い、東北大他)。
右反回神経起始部にある。
食道癌が早期に転移する。
右気管傍リンパ節と斜角筋リンパ節に近接。
- リンパ管
- (末梢の)リンパ管、集合リンパ管、リンパ本幹、胸管
(図221,223,593)
- リンパ本幹:頚リンパ本幹、鎖骨下リンパ本幹、
気管支縦隔リンパ本幹、腰リンパ本幹
※各リンパ本幹は必ずしも1本ではない。
- リンパ管は一般に、血管に伴走すると考えられているが、必ずしも血管に沿うわ
けではない。
(リンパ管にはリンパ管の意志(原則)がある。)
【例】動脈に沿う:大動脈周囲リンパ節と腰リンパ本幹
胃の所属リンパ節とリンパ路
静脈に沿う:右半結腸所属リンパ節郭清のポイントとされる
surgical trunk(上腸間膜静脈の一部)
腋窩のリンパ管、鎖骨下リンパ本幹、頚リンパ本幹
自律神経叢・神経に沿う:骨盤神経叢、反回神経(特に右)
独立して走行する:胸管起始部(しばしば横隔膜脚を単独で貫通)
【例】直腸癌の転移経路(国試問題)
上方へ:下腸間膜動脈枝に沿うリンパ路
外側方へ:骨盤神経叢の枝(外側靭帯)に沿うリンパ路
下方へ:外陰部静脈に沿うリンパ路
それぞれ転移リンパ節が異なる。
筋膜総論
deep fascia or fascia (昔は深筋膜と和訳した)
- 骨格筋の筋膜
- 個々の筋の筋膜
【例】胸筋筋膜:大胸筋(特に前面)の筋膜
- 筋群を一括して外から覆う筋膜
【例】大腿筋膜:大腿の筋を包む強靱な筋膜で、腸脛靭帯が外側から補強する。
【例】深下腿筋膜:下腿屈筋群深層を後方から包む強い筋膜
- 筋間中隔:筋群の境界にあって、(2)が癒合したもの
【例】上腕外側筋間中隔(上腕筋/上腕三頭筋)
【例】外側大腿筋間中隔(外側広筋/大腿二頭筋短頭)
※しばしば筋群と筋群の間に広い隙間(筋膜隙)が生じ、筋間中隔が不明瞭になる。
筋膜隙は、脈管神経路(導通路)として利用される。
(実習で分かる例:上腕内側筋間中隔=より伸側に尺骨神経&尺側側副動脈)
(不明瞭な例:内側大腿筋間中隔=大腿動静脈・大腿神経等の導通路になっている)
- 一般外科で重要な骨格筋の筋膜(後述する内臓の筋膜に含めて扱われることあり)
【例】鼠径ヘルニアに関係して:腹横筋膜(横筋筋膜)、クーパー靭帯、iliopubic tract など
【例】頚部リンパ節郭清(radical neck dissection)に関係して:頚筋膜椎前葉 - 気管前葉・浅葉など
【例】乳癌opeに関係して:浅胸筋膜、腋窩筋膜、烏口腋窩筋膜、鎖骨胸筋筋膜など
内臓の筋膜(後述)
内臓・血管・神経などを包む膜状の結合組織のことも筋膜と呼ぶことがある。
骨格筋の場合同様、芯になる構造が必ずある。
組織学で言う内臓の外膜とは、しばしば分けがたい。
皮下組織の特殊化したもの(superficial fascia、昔は浅筋膜と和訳した)
典型例:カンパー筋膜(下腹部の皮下脂肪層が板状になったもの)、スカルパ筋膜(下腹部の皮下脂肪層のすぐ深側の結合組織層)
その他:コレ筋膜(会陰:別紙参照)、 クーパー靭帯(乳房で発達した皮膚支帯)など
<内臓の筋膜について>
A. 血管鞘 あるいは 血管・神経鞘
- 典型例:頚動脈鞘(芯:総頚動脈+内頚静脈+迷走神経)、ゲロータ筋膜(腎筋膜)(芯:腎臓+腎動静脈+尿管+副腎)
- その他:基靭帯(子宮支帯の主要部分である中部支帯、芯:子宮動静脈等)、(直腸の)外側靭帯あるいは側方靭帯(芯:骨盤神経叢+中直腸動脈)、窩間靭帯(芯:下腹壁動静脈→外側臍索)、下腹血管鞘(芯:内腸骨動静脈)
B. 内臓の外膜(組織学用語)の特殊化したもの
- 子宮・膀胱・直腸の外膜が癒合したもの
【例】前部子宮支帯(膀胱子宮靭帯)、後部子宮支帯(直腸子宮靭帯)
cf. 仙骨子宮靭帯という構造もある:神経鞘か? 外膜の癒合か?
- 直腸外膜と尾骨骨膜が癒合したもの
【例】尾骨直腸靭帯(posterior lig.)
- 横隔膜胸腔面の筋膜と食道外膜が癒合したもの(上に凸のドーム状)
【例】横隔食道膜
- 恥骨骨膜と前立腺外膜の癒合したもの(強靭)
【例】恥骨前立腺靭帯
C. 漿膜(特に腹膜)の変化したもの
- 血管ヒダ(例:胃膵ヒダ)と同様に、何等かの構造が漿膜を持上げて形成
【例】子宮広間膜、骨盤漏斗靭帯、膀胱下腹筋膜(膀胱側方靭帯を含む)など
- 胎生期に機能していた or 明瞭だった構造が変化したもの
【例】円靭帯(子宮円索)、(腹膜)鞘状突起、ディノビエ筋膜、仙骨前靭帯など、トライツ靭帯(十二指腸空腸曲--膵臓後方--腹腔神経叢後方--横隔膜右脚)、甲状腺心膜筋膜
cf. 肝円索、静脈管索、正中・内側臍索は通常筋膜には含まない。
- 漿膜の癒着部(その結果、膜が消失している場合は、膜ではなくて癒着部位ないし癒着面すなわち剥離面(シヒト)を指す。
その剥離面を癒着筋膜 fusion fasciaと呼ぶ。
)
【例】肺間膜(胸膜間靭帯)、気管支心膜結合組織性膜、横隔結腸ヒダ、脾結腸靭帯(間膜)=載脾靭帯、左右のトルト筋膜(結腸の生理的癒着部)、トライツの膵後筋膜など
- 漿膜(間膜)そのものだが、靭帯と呼ばれることがあるもの
【例】肝十二指腸靭帯、脾腎ヒダなど
<陰茎の筋膜>
- 浅陰茎筋膜
- カンパー筋膜とスカルパ筋膜が癒合して陰茎を包む。陰嚢の肉様膜に続く。
※陰茎ワナ靭帯:スカルパ筋膜の一部。白線前面から下方に延びて陰茎体基部を抱く。浅陰茎筋膜に続く。
※陰茎堤靭帯:陰茎ワナ靭帯の深側で、白線・恥骨結合・恥骨弓靭帯から陰茎海綿体に至る索状の結合組織。バック筋膜に続く。
- 深陰茎筋膜(バック筋膜 Buck)
- 浅腹筋膜および深会陰筋膜に続く。
- 精索・精巣を包む外精筋膜も浅腹筋膜の膨出部なので、精索・精巣と陰茎の間は、深陰茎筋膜と外精筋膜の間で容易に裂くことができる。
<会陰部の筋膜>会陰部皮膚から深側へ
- 皮下筋膜浅層(特に名称なし)
- 下腹部のカンパー筋膜に続く。
- 男性では他に、陰嚢の肉様膜に続く。
- 浅会陰筋膜(コレ筋膜 Colles)
- 皮下筋膜深層を指し、下腹部のスカルパ筋膜に続く。
- 男性では他に、陰嚢の肉様膜および陰茎の浅陰茎筋膜に続く。
☆superficial perineal fascial cleft (仮訳:浅会陰筋膜陥凹)
- 後大腿皮神経会陰枝が走る
- 深会陰筋膜(外会陰筋膜、ガロード筋膜 Gallaudet)
☆浅会陰隙(時には浅会陰筋膜と下尿生殖隔膜筋膜の間を指す)
- 男性では、陰茎根を構成する海綿体とそれを覆う筋、そこに至る血管・神経
- 女性では、バルトリン腺(大前庭腺)が位置する。
- 下尿生殖隔膜筋膜(会陰膜)
- 尿生殖隔膜(主に深会陰横筋)下面に密着。
- 最前部を尿道が貫通。
男性ではさらにその前を陰茎背神経・動静脈が貫通する。
☆深会陰隙
- 尿生殖隔膜(主に深会陰横筋)、内陰部動静脈、陰部神経が位置する。
- さらに男性では、クーパー腺(尿道球腺)が位置する。
- 上尿生殖隔膜筋膜
- 尿生殖隔膜(主に深会陰横筋)上面に密着。
- 貫通する構造は同上。この膜の上面に男性では前立腺が乗る。
- 下骨盤隔膜筋膜
- 骨盤隔膜(主に肛門挙筋・尾骨筋)下面に密着。
- 肛門挙筋腱弓に沿って(内)閉鎖筋膜に癒合。
- 上骨盤隔膜筋膜
- 骨盤隔膜(主に肛門挙筋・尾骨筋)上面に密着。
- 肛門挙筋腱弓に沿って(内)閉鎖筋膜に癒合。
- (内)閉鎖筋膜
- 坐骨直腸窩の外側壁および(小)骨盤腔の側壁を作る。腹横筋膜に続く。
- 同窩の外側壁では、2葉に分かれてアルコック管 Alcock(陰部神経管)を作る。
- 閉鎖動静脈・神経を包んで、閉鎖孔から膨出する閉鎖管を作る。
※(坐骨直腸窩の)前陥凹:上尿生殖隔膜筋膜、下骨盤隔膜筋膜、(内)閉鎖筋膜に囲まれたポケット状の間隙で、後方に開き坐骨直腸窩に続く。坐骨直腸窩同様に脂肪組織(坐骨直腸窩脂肪体)で充たされる。
参考書に関するコメント
1. このマニュアルの主な引用・参考文献は下記の通りです
標準外科学 医学書院
標準整形外科学 医学書院
NIM 臨床診断学 診察編 医学書院
◎消化器外科別冊 手術のための局所解剖アトラス へるす出版
◎新 画像診断のための解剖図譜 メジカルビュー社
イラストレイテッド外科手術 医学書院
臨床解剖学ノート 木村書店
国試対策シリーズ 産婦人科 金芳堂
医師国家試験一般問題 外科 医学評論社
2. 内臓に関して言えば、学生向けの日本語のマクロ解剖学教科書(分担解剖学2・3巻やグレイ訳本も含めて)は、臨床の講義にとっては不要な記載が多すぎ、また卒業して臨床各科の専門を志す上では、肝心なことが書かれていないので使えないでしょう。
スネル臨床解剖学、解剖学講義は、学生向けとしては比較的臨床対応ですが、現場で使える本とは思いません。上述の◎の2つは購入して損はないでしょう。私見を述べれば、教科書に金を費やすのではなく、図譜に投資すべきと思います。臨床の医局には、学生向けの日本語のマクロ解剖学教科書はなくても、優れた図譜(ペルンコップフ、ズボッタ、ネッター、西など)が備っていることにお気付きでしょうか。
3. それでも推薦に代えて何かを述べれば下記の通りです。
a. 臨床各科用に推薦されている朝倉の内科学、標準外科学、胸部X線写真のABC、標準耳鼻咽喉科学、国試対策シリーズ産婦人科など多数の臨床の教科書では、要点を押えて各臓器の解剖が記述されています。
b. 新外科学大系や現代産科婦人科学大系の解剖の記載は、学生が容易に使える文献としては最も詳しいものです。
c. 消化器外科臨床外科など臨床雑誌の解剖学総説は、学生が読んでも分かりやすいものです。
図書館でコピーできます。
例えば東京医科歯科大学から出ているものでは、骨盤内臓なら、
「講座 泌尿器手術に必要な局所解剖」臨床泌尿器科 42--7 から 46--6 (1988--1992)
泌尿器外科 1:293(1988)
腹部内臓と乳腺・食道に関しては、
消化器外科13:1262,1522,1678(1990)/14:423(1991)
手術 38巻(10,11,12.1984).前後1983--1985/41:725(1989)/46:1337(1992)
外科診療 32:902(1990)
頭頚部内臓なら、
耳喉頭頚 65--66(1993,1994)
d. どうしてもマンガでないとダメと言う人には、
マンガで見る手術と処置(エキスパートナース 1991年の各号)(例えば肝は6号)。
e. 英文ならば、Gray's Anatomy. Churchill-Livingstone. 1995. 38th ed. (2万円弱)が定評があり、大学によってはかなりの学生が購入してチャレンジしています。
英語の入門としては病理から始める(本学では多くの学生が輪読会を始める)よりもeasyでしょう。
f. リンパ(管)系については、
外科医のためのリンパ系アトラス(南江堂,近刊)
消化器外科 13:1957(1990)/14:78(1991)/14:153,1875
手術 45:1341(1991)/47:1527(1993)外科 45:400(1993)
g. 筋膜に関しては、臨床対応の日本語のまとまった教科書はまだありません。
フランスの学生向け教科書(!)を訳した臨床解剖学ノート(小骨盤編が特に優れ物)は詳し過ぎます。
脳神経のまとめ (求心性神経,sensory nerve)
◇:末梢における神経細胞体の位置
■I(嗅神経) 鼻粘膜嗅部
■II(視神経) 眼球の網膜
■III(動眼神経) 支配筋からの深部感覚 III→三叉神経節◇?
■IV(滑車神経) 支配筋からの深部感覚 IV→三叉神経節◇?
■V(三叉神経)
顔面、前頭部の皮膚感覚(V1,V2,V3)
角膜の感覚(V1)
脳硬膜の感覚(硬膜枝)(V根部へ) V→三叉神経節◇
鼻腔、口腔、舌の粘膜の温痛覚など(V1,V2,V3)
顎関節、歯根膜、支配筋からの深部感覚(V2,V3)
■VI(外転神経) 支配筋からの深部感覚 VI→三叉神経節◇?
■VII(顔面神経)
外耳道の温痛覚など→耳介枝→小管を経て頚静脈孔→内耳の顔面神経管→膝神経節◇→
舌の前2/3の味蕾→舌神経(V3)→鼓索神経→顔面神経管下行部のVII→膝神経節◇→
支配筋からの深部感覚→三叉神経枝または頚神経枝→三叉神経節または後根神経節◇→
■VIII(内耳神経)
蝸牛のコルチ器→蝸牛神経節◇→膨大部稜、平行斑→前庭神経節◇→
■IX(舌咽神経)
外耳道の温痛覚など→耳介枝→小管を経て頚静脈孔→IXの上神経節◇→
口腔後部、咽頭、中耳、耳管の粘膜の温痛覚→IXの舌枝など→IXの下神経節◇→
頚動脈小体、頚動脈洞→頚動脈洞枝→IXの下神経節◇→
舌の後1/3と軟口蓋の味蕾→IXの舌枝→IXの下神経節◇→
咽頭の筋の深部感覚?
■X(迷走神経)
耳介、外耳道の温痛覚など→耳介枝→小管を経て頚静脈孔→Xの上神経節◇→
咽頭、喉頭の温痛覚など→上喉頭神経、反回神経→Xの上神経節◇→
胸腹部内臓、大血管の感覚受容器、喉頭蓋の味蕾、SA node、AV node→Xの下神経節◇→
■XI(副神経) 支配筋からの深部感覚
■XI→頚神経叢との交通枝→脊髄神経節
■XII(舌下神経) 支配筋からの深部感覚?
脳神経のまとめ (遠心性神経,motor nerve)
■I(嗅神経) なし
■II(視神経) なし
■III(動眼神経)
5つの外眼筋
瞳孔括約筋の運動:III→毛様体神経節◇→短毛様体神経→
交感神経系の節後線維:瞳孔散大筋(平滑筋)、動脈の平滑筋など(脳の動脈)→上頚神経節◇→内頚動脈神経叢(節後線維)→海綿静脈洞内でIIIへ(他の脳神経へも)→
毛様体筋(=遠近調節):III→毛様体神経節◇→短毛様体神経→
■IV(滑車神経) 上斜筋の運動、交感神経系の節後線維?
■V(三叉神経)
4つの咀嚼筋、2つの口腔底の筋、鼓膜張筋、口蓋帆張筋 (いずれもV3)
交感神経系の節後線維→上頚神経節◇→海綿静脈洞内で or 顎動脈周囲(節後線維)→
■VI(外転神経)外(側)直筋の運動、交感神経系の節後線維?
■VII(顔面神経)
顔面筋(広頚筋、耳介筋も)、あぶみ骨筋、顎二腹筋後腹
交感神経系の節後線維?(主に動脈周囲から)
内耳のVII→大錐体神経→翼突管神経→翼口蓋神経節◇→
翼口蓋神経節◇→頬骨神経(V2)→涙腺神経(V1)→涙腺の分泌
翼口蓋神経節◇→大口蓋神経、他→鼻粘膜の腺、口蓋の腺
顔面神経管下行部のVII→鼓索神経→舌神経(V3)→顎下神経節◇→顎下腺の分泌
翼口蓋神経節◇→三叉神経枝?→脳の動脈(血管拡張性)(VIIか否か?)
■VIII(内耳神経) 交感は動脈周囲のみ?
■IX(舌咽神経)
咽頭の筋、茎突舌骨筋(嚥下運動)(延髄内に◇)
交感神経系の節後線維(小管を経て鼓室神経叢、他に動脈周囲から)
頚静脈孔直下のIX→小管を経て中耳の鼓室神経叢→小錐体神経→耳神経節◇→V3→耳介側頭神経(V3)→VII枝と交通→
耳下腺の分泌
■X(迷走神経)
上/下喉頭神経→喉頭の筋(延髄内に◇)、いわゆる心臓神経(心臓に◇)→心筋、SA node、AV node
上部消化管の筋層と分泌腺、気管枝の平滑筋(肺枝)(消化管、気管枝に◇)
血管の平滑筋?
交感神経系の節後線維?
(星状神経節◇と反回神経などの交通、頚部のXと交感神経幹との交通?)
■XI(副神経)
胸鎖乳突筋と僧帽筋(頚神経叢からの交通枝にも運動神経線維が含まれる)(脊髄内に◇)
■XII(舌下神経)
内舌筋、2つの外舌筋、甲状舌骨筋(延髄内に◇)
交感神経系の節後線維?
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