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外耳道を開放する過程で鼓膜が露出する以前に、錐体内側部で突然、鼓室上陥凹 という部分が開放されることがある(Fig.922,924)。今までの乳突洞 とは様子が違うことを感じ取れるかどうかが勝負だ。それらしい腔所が開いたら、ピンセットでそっと中を探り、耳小骨 の有無を確認する(Fig.926)。鼓膜が露出してから鼓室上壁を開放すると、覚悟ができていて確実である。鼓室の上陥凹であることが確認されれば、さらに錐体上面もノミで剥離して、上方と前方から視野を広げる。

慎重に作業しないと、耳小骨がはずれたり飛んで行ってしまう。そうなると、ツチ骨 に密着して鼓室を横切る鼓索神経 も切れてしまう(Fig.927)。耳小骨はむやみにはずしてはいけない。後の作業中に耳小骨がはずれないように、原位置のままゼリー状アロンアルファで軽く固定しておく(Fig.926,927)。ツチ骨にはを区別する。キヌタ骨 には長脚短脚がある。アブミ骨 は内耳の剖出が進んでから見た方がいい。繰返すが、耳小骨をはずさないように注意する。

*Epitympanic recess *鼓室上陥凹(上鼓室) 922
Auditory ossicles 耳小骨 926 tex2html_wrap_inline9405
Malleus ツチ骨 926
*Manubrium of - *ツチ骨柄 926
*Head of - *ツチ骨頭 926
Chorda tympani nerve 鼓索神経 927 Chorda tympani
Incus キヌタ骨 926
*Body of - *キヌタ骨体 926
*Long/Short crus of - *長脚/短脚 926
Stapes アブミ骨 926

ここで余裕があれば、乳突洞を外側からノミでクレーター状に削って、鼓室を後下方からも解放してみる。見えにくかった岬角 アブミ骨が直視下に見える(Fig.922)。外耳道骨壁をできるだけ温存しながら鼓室のすべての部分を直視下に見えるようにする。これは耳鼻科でしばしば行うposterior tympanectomy という手術アプローチである。外耳道の壁はなるべく温存する。顔面神経 の下行部を温存するため、クレーターをあまり拡大してはいけない。



Akiko Oshiro
1998年01月19日 (月) 16時56分03秒 JST