V 北海道教育のめざす姿

 北海道がさらに発展するためには、四季の変化に富んだ豊かな自然の中で、だれもが安心 して暮らせる住みよい社会をつくり、北の大地に芽ぶき世界へ伸びる人と文化を育み、豊か な生活と地域を支える産業を創ることが重要です。このため、北海道の風土や郷土の特色を生かした活力ある生涯学習社会を築き、地域の特性を生かした魅力ある地域づくりを進めな がら、豊かな心をもち、社会の変化に柔軟に対応できる人を育成し、地域の産業、文化を支え、地域に誇りをもって生き生きと活躍する人づくりをめざします。

1 活力ある生涯学習社会の構築

 生活水準の向上や自由時間の増大、価値観の多様化などに伴い、人々はそれぞれのライ フスタイルを選択し、生きがいのある充実した生活を営むため、生涯を通じて、文化、ス ポーツなどに親しむとともに、絶えず新たな知識や技能を習得するなど、自己を豊かにす ることを求めています。

 また、少子化、核家族化、都市化等により家庭や地域社会の教育力の低下が指摘されて います。子供の健全な人間形成を図るためには、学校教育への過度の依存を改め、家庭、学校、地域社会がそれぞれの役割を果たしながら相互に連携し、生活体験や社会体験など を豊富にすることにより、生きる力を育てることが求められています。

 さらに、これまでの学社連携を一歩進め、生涯学習関連施設や地域の人材を活用した学 校の教育活動の展開、学校の施設や人材を活用した社会教育活動の推進、さらには学校の 教育活動と地域の社会教育・文化・スポーツ活動を共同で実施するなど、学校教育と社会 教育が一体となって子供たちの指導に取組むという学社融合の理念に立った教育活動や事 業を進めることが大切です。

 このようなことから、学校教育をはじめ、社会教育、民間の教育関連事業など様々な教育機能を総合的に整備し、人生の各時期に応じ、いつでもどこでもだれでも学ぶことがで き、その成果が適切に評価され、社会に生かせる生涯学習社会の構築をめざします。

2 豊かな心を育てる教育

 子供たちに他人を思いやる心や美しいものに感動する心、正義感や公正さを重んじる 心など豊かな心を育むことは、いつの時代においても、最も大切なことです。

 特に、過度の受験勉強などでゆとりのない生活を送り、多感な時期に自己を見つめ、人 間としての在り方や生き方を考える機会を見失いがちな現在の子供たちに、ゆとりを与え て、生きる力を育てることが強く求められています。

 このため、子供たちの自然体験や生活体験・社会体験の機会を拡充するなど、学校、家 庭、地域社会での教育が十分に連携し、相互に補完しつつ、一体となって、明るくいきい きとした子供たちを育てる教育をめざします。

3 社会の変化に対応する教育

 今後の社会は、様々な面で激しく変化し、先行きを見通すことが難しい状況となること が予想されますが、特に、国際化や情報化、科学技術の発展、環境問題などは教育に与え る影響が大きいことから、こうした社会の変化に対応した教育を進め、変化の激しいこれ からの社会をしなやかに生きていくことのできる人づくりをめざします。

○ 国際化への対応

 北海道においては、北方少数民族などとの多様な交流の歴史があり、また、明治以  来、欧米諸国との交流が進められてきました。さらに近年は、北方圏やアジア、環太平 洋の国々との交流を行っていますが、経済、社会、文化等の様々な面で国際交流がさら に進展し、国際的な相互依存の関係が深まっています。このため、教育・文化・スポー ツなど様々な分野において外国人を積極的に受け入れるなど、地域に根ざした交流を通 して、広く国際理解を深め、国際社会において信頼される人材を育成します。

 また、国際的な広い視野をもち、我が国や諸外国の歴史や文化、伝統などを理解する とともに、相手の立場を尊重しつつ自分の考えを表現できる基礎的な力などを育成する 国際理解教育を進めます。 外国人留学生への支援や在日外国人の子供の教育の改善・充実のため、学校や地域の 関係機関、ボランティアなどの協力の下に、地域社会が一体となった取組を進め、受入 れ体制の一層の充実に努めます。

○ 情報化・科学技術の発展への対応

 情報機器やネットワーク環境の整備に伴い、都市部やへき地を問わず、地域からの情 報発信が可能になってきていることから、学校間や生涯学習関連施設などとの情報通信 ネットワーク化を進めるとともに、コミュニケーション能力など高度情報通信社会に対 応した資質や能力を育成します。

 また、学校教育においても、マルチメディア、情報通信ネットワークを活用した学校 間における遠隔授業などを進めるとともに、児童生徒が適切な情報を主体的に選択し活 用できる情報活用能力や、情報を利用する上でのモラルの育成に努めます。

 さらに、科学技術が目覚ましい進歩をとげている中で、将来これらの発展を担うべき 児童生徒の理科離れが懸念されていることから、自然に親しみ観察や実験などを通し て、楽しく学び自然に対する科学的な見方や考え方など豊かな知性を育てる教育を進め ます。

○ 環境問題への対応                          

 社会経済活動などによる資源やエネルギーの大量消費などに起因する環境問題は、水 質汚濁、ごみ問題などの身近なことから、地球温暖化、オゾン層の破壊など地球規模に いたるまでの広がりをもった大きな問題であることから、環境についての教育も、単に学校教育だけではなく、家庭、地域社会のそれぞれの場において様々な実践的な取組のを行うことが求められています。

 このため、子供が、豊かな自然や身近な地域社会の中での多様な体験活動を通して、 環境から学び、環境について学び、環境のために学ぶことができるよう、環境教育の改 善・充実を図ります。また、地域社会においても、様々な学習機会や活動の機会を提供 するなどの取組を促進し、環境への理解を深め、大切にする心を育成するとともに、自 ら率先して環境を保全し、よりよい環境を創造していく人づくりを進めます。

4 地域を創る教育・文化・スポーツ


 地方分権時代を迎え、自らの主体性と責任に基づく自立した地域づくりが求められてい ますが、北海道は、異なる気候・風土や歴史をもち、特色のある発展をしてきた地域から 成り立っていることから、それぞれの地域の特性を生かし、教育の充実や文化、スポーツ の振興を図り、活力ある地域を創造する人づくりをめざします。

○ 学校教育の充実

 幼児児童生徒の発達段階に応じて、自ら考え、主体的に行動できる資質・能力を育て る教育が求められています。生きる力を育てるという基本的な考え方に立って、学校に おける教育内容を厳選し、基礎基本を確実に身に付けさせるとともに、将来の地域を創 り支える児童生徒が、学ぶ喜びにあふれる地域に根ざした教育活動を推進します。

 さらに、障害がある人には、その状態に応じた適切な教育を一層きめ細かに進めると ともに、ノ−マライゼ−ションの理念に基づき、障害のある人もない人も地域の中で共 に学ぶ交流の場や機会を拡充します。

 また、私立学校においては、それぞれの建学精神や教育理念に基づいて、様々な分野 で活躍する多くの優れた人材を輩出するなど、本道教育の振興に大きな役割を果たしており、今後、教育活動の一層の充実を促進します。

 高等教育機関においては、高度化・多様化する社会の変化に対応する専門分野の研究 を行う大学や大学院などの整備充実を促進します。また、留学生の受け入れや産・学・ 官の連携による北海道の特色を生かした共同研究のためのネットワークづくりを促進す るとともに、高度な教育研究機能を地域に生かすなど開かれた大学づくりを促進します。

○ 社会教育の充実

 人々が充実した生活を営むとともに、次代を担う青少年の健全な育成を図るため、社会教育関係団体などの活動を促進するとともに、自然体験活動を重視した青少年教育や子育て支援などの家庭教育、さらには、社会の変化への対応や生きがいを高める成人教 育を充実させることが大切です。

 このため、青少年から高齢者まであらゆる人々が自発的に参加するボランティア活動 の促進や地域ぐるみで青少年の育成に取り組むなど、活力ある地域づくりをめざした社 会教育を推進します。

○ 文化の振興

 人々の間には、心の豊かさなどを求め、地域文化を創造し文化の香りに満ちた社会を つくりたいという気運の高まりがみられます。特に、近年は、自主的な文化活動が盛ん になるとともに、景観やまちづくりなどへの関心も高まっています。

 また、北海道の歴史・文化の正しい理解は、将来の文化の向上・発展の基礎であるこ とから、アイヌの人たちや全国の各地から移り住んできた人たちが、北海道の気候・風 土の中で育んできた豊かな文化を保存・伝承するとともに、有形・無形の文化財や文化 遺産の保護・活用が求められています。

 このため、自主的な文化活動の促進や文化施設の整備充実を図るとともに、先人たち  の培ってきた文化財の保存・活用を充実するなど、北国らしい地域文化の創造に努めま す。

○ スポーツの振興

 人々が心身ともに健康で充実した生活を営むため、一人一人のライフステージや能 力、適性などに応じて、だれもが気軽に参加し親しみさわやかな汗をかくことのできる ニュースポーツなど生涯スポーツの振興や本道の恵まれた自然を活用したキャンプ、ハイキング、スキ−などの野外活動の推進が求められています。

 また、高度に洗練されたスポーツは、競技する人々だけでなく観戦する人々にも感動 を与え、社会に明るい話題や活力を与えています。これまで、本道はオリンピックなど 様々なスポーツ大会で活躍する数々の名選手を生み出しており、その伝統を引き継ぎ、 発展させることが求められています。

 このため、野外活動や生涯スポーツ、競技スポーツの充実を図るとともに、子供から 高齢者まですべての人々が、健康づくりやスポーツに参加する気運を高め、全国に誇れるスポーツ北海道の実現をめざし、総合的・計画的なスポーツの振興に努めます。


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