【総論】 【T 教育の現状】
− 第1章 総 論 − 目次へ戻る
T 教育の現状
U 時代の潮流
V 基本理念
W 基本姿勢
X 北海道教育のめざす姿
Y 施策の体系
T 教育の現状
我が国の教育は、戦後、教育基本法の制定、六三制を中心とする新学制の実施、教育委員会の設置など、教育の機会均等の実現などをめざして、教育制度の抜本的な改革が行われました。昭和30年代後半になると、高度経済成長などを背景にして、高等学校や大学等への進学率が上昇し、学(校)歴偏重の社会的風潮と相まって偏差値偏重による過度な受験競争を招き、さらに受験競争の低年齢化が進んでいます。
その後、都市化・過疎化の進行や核家族化などに伴い、子どもたちの人間関係や生活体験の希薄化が進み、昭和50年代後半から昭和60年代前半にかけて校内暴力や登校拒否、中途退学など青少年の問題行動が大きな社会問題となり、現在も依然として大きな課題となっています。また、最近、いじめが深刻化する中で自殺が起きるなど憂慮すべき状況にあります。同質の集団の限られた人間関係の中で、一人一人の違いを個性として認めるのではなく、異質なものを排除しようとする傾向が見られるなど、多様な個性への配慮の乏しさが問題となっています。
また、大学進学を中心とした知識偏重の教育などによる学校教育の画一化をはじめ、核家族化や少子化などに伴う家庭の教育力の低下、都市化・過疎化の進行に伴う連帯感の希薄化などによる地縁的な地域社会の教育力の低下、さらには、モラルの欠如や俗悪な大衆文化の氾濫など大人社会が子どもたちにとってモデルにならないことなどが指摘されており、これらは教育にかかわる重要な課題となっています。
本道においては、地理的な広域性に加えて、産業構造の変化などにより都市化・過疎化が急速に進み、小中学校の半数以上はへき地にあり、また、高等学校においても、都市部と郡部では学級規模や進学率などが大きく異なっていることなどから、それぞれの地域の実態に応じた施策が求められています。
また、近年、人々の文化に対する関心や期待が高まり、地域における自主的な文化活動が盛んになってきていることから、本道の地域に根ざした特色ある文化を創造し、発展させていくことが必要です。
また、心身ともに健康で活力ある生活を送るためには、健康・体力つくりや北海道の特性を生かしたニュースポーツや冬のスポーツなどの生涯スポーツの振興や競技スポーツの向上が求められています。
さらには、今日、豊かで充実した人生を送るためには、教育を青少年期に限るのではなく、生涯にわたる学習活動を行い、その努力が正当に評価され、社会に生かされる生涯学習社会の実現が求められています。
*1 学制
学校制度の略で学校教育の枠組みをいう。第二次世界大戦後、民主的な教育理念を実現するため、633
制
をとり、現在に至っている。
*2 偏差値
テストの難易度にかかわらず、成績が集団のどの位置にいるかを判定するための指標。
*3 ニュースポーツ
体力、技術、性別、年齢に左右されず、勝負や記録・技術よりもだれもが楽しむことを大切にする比較的新
しいスポーツ種目の総称。グラウンドゴルフ、ミニバレー、パークゴルフ、ゲートボールなどがある。
【総論】 【U 時代の潮流】
U 時代の潮流
我が国の社会においては、21世紀に向けて様々な潮流が生まれており、北海道の教育において
も、これらの潮流を的確に把え、社会の変化に対応できる人を育成する必要があります。
1 少子・高齢社会
未婚率や出産年齢の上昇などにより出生率が低下し、少子化が進む中で、児童生徒の減少期
を迎え、教育条件の質的な向上を図る好機であるという見方もある一方、子ども同士が互いに
競い高め合う機会の減少や親の子どもへの過剰な期待などを背景に、子どもたちが受験競争な
どに駆り立てられて、自然に親しむ機会や社会性を育む機会が減少していることなどの問題が
指摘されています。
また、子育て期間の短縮や男女の多様なライフスタイルの選択、核家族化など、家庭の状況
や子どもを取り巻く環境も大きく変化しています。
一方、2020年代には、老年人口が総人口の4分の1を超える世界でも例を見ない高齢社会を
迎えると予測されており、特に、北海道においては、全国平均を上回るペースで高齢化が進ん
でいます。高齢社会においては、人々がそれぞれの興味・関心などに応じた多彩な趣味や学習
に生きがいを見いだしたり、若年労働力の不足などに伴う高齢者の雇用が拡大することが予想
されることなどから、生きがいのための学習や社会の変化に伴う新たな知識や技術を習得する
ための学習機会の拡充が求められています。
2 自然と共生する社会
これまで人々は豊かで便利な生活を求め、快適さを享受してきましたが、そのための資源や
エネルギーの大量消費は自然環境に大きな影響を及ぼしており、日常生活の便利さの追求や経
済活動などと自然資源の保護や自然環境の保全などとの均衡を図ることが重要となっています。
北海道の四季の変化に富む恵まれた自然環境は、人々の豊かな生活や心を支え、育むための
貴重な財産であり、この自然を次世代に継承していくことが大切です。また、近年、都市化の
進展により身近な自然が減少するとともに、ごみ問題などの都市型・生活型の環境問題が広ま
り、自然環境にも大きな影響を与えています。このため、優れた自然を適切に保全すると同時
に、動物や植物などにとっても健全な生態系であるよう、都市の緑化、河川や湖沼の浄化など
を進めるとともに、省資源・省エネルギー運動やリサイクル運動など身近な環境問題について
の地域ぐるみの取組などを通して、自然保護や地球規模の環境問題についての理解を深め、実
践的に行動する資質・能力を育成することが求められています。
3 地球市民の時代
世界的な交通網の発達や情報化の進展などに伴い、社会、経済、文化等の様々な分野におい
て、国際化が進展し、我が国は、経済的な援助だけでなく、科学技術の供与や医療などの援助、
指導者・技術者の派遣、さらに外国人留学生の受入れなど一層積極的に国際社会に貢献してい
くことが期待されています。
国際化の進展は、人と人との相互理解・相互交流が基本であり、我が国や郷土の歴史、文化
・伝統はもとより、外国の歴史や文化、習慣、価値観等について理解を深めるとともに、進ん
で国際社会において活躍し、信頼される日本人を育成することが重要となっています。
また、地域と世界の各地域が直結する地球市民の時代となっており、世界に開かれた魅力あ
*1 *2
る地域づくりを進めるため、グローバルに考えローカルに行動する国際性豊かな自立した人材
の育成が求められています。
4 人間に身近な科学技術の時代
科学技術は、現代文明の発展を支え、人類の活動範囲を拡大してきました。今日の情報化の
著しい進展に伴い、コンピュータが身近なものとなり、また、高度情報通信網の発達により多
様なコミュニケーションが緊密になるなど、社会の仕組みも大きく変化しています。特に、広
域な北海道においては、教育をはじめ様々な分野への活用が期待されています。
また、生命科学や宇宙科学などの最先端技術を生活関連技術に活用したり、産業技術の発展
などにより、日常生活は便利になり、生活様式も大きく変化しています。これまで、既存の科
学技術を改良し、活用してきた我が国は、今後、独自で新たな科学技術を生み出すなど豊かな
創造性を発揮することが求められています。特に、省資源・省エネルギーなど地球環境問題の
解決に向けた新たな技術開発の分野において大きな期待が寄せられています。
一方、児童生徒の理科離れや若者の科学技術に対する関心の低さが懸念されており、国民の
知的創造力が最大の資源である我が国の将来を危惧する声があります。
このようなことから、身近な物事を科学的に見る見方や考え方を身に付けるため、科学に親
しむ機会を拡充し、論理的に考える力や判断力、創造力の育成が求められています。
5 多様化と選択を重視した人間尊重の時代
所得水準の向上や自由時間の増大に伴って、人々の価値観も、ものの豊かさから心の豊かさ
へ、集団への帰属から個人の尊重へと移行し、個性や多様性を認めあう中で、自らのライフス
タイルを選択し、自由に学ぶことができる多様な機会や場を求めています。
特に、我が国の長い歴史の中で培われた社会習慣、慣行の中に根強く残っている男女の役割
に対する固定的な考え方は、男性、女性それぞれが主体的に生きるための多様な選択や能力を
発揮していく妨げになっていることから、男女が政治的、経済的、社会的及び文化的利益を均
等に享受し、共に責任を担う男女共同参画社会の実現が求められています。 *3
また、いじめ、登校拒否や体罰など、子どもの人権をめぐる様々な問題が生じており、児童
の権利に関する条約や宣言など教育に関する国際的取り決めを踏まえ、子どもの人格や人権を
一層尊重することが求められています。
さらに、地方分権時代を迎え、地域のことは、地域自らが選択し決定するという考えのもと
に、地域の特性を生かし、主体的な選択と責任に基づく自立した地域社会を支える人材の育成
が求められています。
*1 グローバル
世界的であるさま。全世界的。地球規模。
*2 ローカル
地方的。
*3 児童の権利に関する条約
18歳未満のすべての人の基本的人権の尊重と保護を促進することを目的とした条約であ
り、平成元年秋の国連総会で採択され、我が国は平成6年に批准した。
【総論】 【V 基本理念】
V 基本理念
21世紀の社会を展望し、新しい世紀を拓く創造性あふれる北海道をつくりあげていくためには、
教育の果たす役割は極めて大きいものがあります。
本道には、優れた自然や特色ある気候・風土があり、また、開放的で自由を尊ぶ気風などがあ
ります。このような本道の特性を生かし、人々が生涯にわたっていきいきと学び続けることがで
きるよう、生涯学習の視点に立ち、学校はもとより家庭や地域社会も含めた社会全体の中で、次
代の地域の産業や文化を担う人材を育成します。 *1
また、豊かな人間性の育成など時代をこえて変わらない価値のあるもの(不易)と国際化・情
*1
報化など時代の変化とともに変えていかなければならないもの(流行)をしっかりと見つめ、地
域の歴史や伝統・文化などを次世代に継承すると同時に、時代の新しい課題を豊かな感性で受け
止め、柔軟かつ創造的に対処していくことができる、心豊かな人の育成をめざします。
このようなことから、次の基本理念を掲げます。
『心豊かに学び 新世紀のふるさとを拓く 人を育む』
*1 不易と流行
芭蕉によって説き示された俳句を詠む上での基本理念の一つ。芸術の本質の永遠性や不変性が「不易」で
あり、その時代とともに変化する流動性が「流行」。「不易」と「流行」の根源は一つであるという理念。
【総論】 【W 基本姿勢】
W 基本姿勢
基本理念の実現のため、この計画の基本姿勢として次の二つを掲げます。
*1
『たくましく生きる力』 をもつ人の育成
時代の大きな転換期を迎えるにあたり、自己を確立し、創造性に富んだ人の育成が一層重要に
なっています。
このため、豊かな人間性をもち、心身ともに健康で、激しい社会の変化にも柔軟に対応できる
資質と能力を身に付けた人の育成を進めます。
『
ゆとりとうるおい』 のある学びの環境づくり
たくましく生きる力を育成するためには、子どもたちや学校、家庭、地域社会を含めた社会全
体が、時間的にも精神的にもゆとりをもつことが重要です。
このため、子どもから大人まで、ゆとりをもって、だれもが、いつでも、どこでも学ぶことが
できる、うるおいのある環境づくりを進めます。
*1 生きる力
自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する能力や、自
らを律しつつ、他人と協調し、他人を思いやる心や感動する心など豊かな人間性とたくましく生きるための健
康や体力を指す。第15期中央教育審議会の第1次答申において用いられた言葉。
【総論】 【X 北海道教育のめざす姿】
X 北海道教育のめざす姿
北海道がさらに発展するためには、豊かな自然の中で、だれもが安心して暮らせる住みよい社
会をつくり、北の大地に根ざし世界と交流する人と文化を育み、豊かな生活と地域を支える産業
を創ることが重要です。このため、北海道の風土や郷土の特色を生かした活力ある生涯学習社会
を築くとともに、豊かな心をもち、社会の変化に柔軟に対応できる人を育成し、地域の産業、文
化を支え、地域に誇りをもって活動をする人材の育成をめざします。
1 活力ある生涯学習社会の構築
価値観の多様化などに伴い、人々はそれぞれのライフスタイルを選択し、生涯を通じて、文
化、スポーツなどに親しむとともに、絶えず新たな知識や技能を習得するなど、自己を豊かに
することを求めています。
また、少子化、核家族化、都市化等により家庭や地域社会の教育力の低下が指摘されていま
す。子どもの健全な人間形成を図るためには、学校教育への過度の依存を改め、家庭、学校、
地域社会がそれぞれの役割を果たしながら相互に連携し、生きる力を育てることが求められて
います。
*1
さらに、これまでの学社連携を一歩進め、学校教育と社会教育が一体となって子どもたちの
*2
教育に取り組むという学社融合の理念に立った活動などを進めることが大切です。
このため、学校教育をはじめ、社会教育、民間の教育関連事業など様々な教育機能を総合的
に整備し、人生の各時期に応じ、いつでもどこでもだれでも学ぶことができ、その成果が適切
に評価され、社会に生かせる生涯学習社会の構築をめざします。
*1 学社連携
青少年の健全な育成のため、学校教育と社会教育とがそれぞれ独自の教育機能を十分に発揮し、調和を保
ち、必要な連携を密にしていく活動。
*2 学社融合
学校教育、社会教育、家庭教育がそれぞれの機能を生かしながら互いに連携協力し、重なり合う部分につ
いては融合して取り組むという、学社連携の一層進んだ取組形態。
2 豊かな人間性の育成
子どもたちに、生命を大切にし、他人を思いやる心や美しいものに感動する心、正義感や公
正さを重んじる心など豊かな心を育むことは、いつの時代においても、最も大切なことです。
特に、過度の受験勉強などで多感な時期に自己を見つめ、人間としての在り方や生き方を考
える機会を見失いがちな現在の子どもたちに、ゆとりを与えて、生きる力を育てることが強く
求められています。
このため、子どもたちの自然体験や生活体験・社会体験の機会を拡充するなど、学校、家庭、
地域社会が十分に連携し、相互に補完しつつ、一体となって、明るくいきいきとした子どもた
ちを育てる教育をめざします。
また、児童の権利に関する条約などを踏まえ、子どもたち一人一人をかけがえのない存在と
して認め、人間として生きる希望や学ぶ喜びがもてる教育をめざします。
3 社会の変化に柔軟に対応する人材の育成
今後の社会は、様々な面で激しく変化し、先行きを見通すことが難しい状況となることが予
想されますが、特に、国際化や情報化、環境問題などは教育に与える影響が大きいことから、
社会の変化に対応する教育を進め、変化の激しいこれからの社会をしなやかに生きていくこと
のできる人の育成をめざします。
○ 国際化への対応
*1
北海道においては、北方少数民族などとの多様な交流の歴史があり、また明治以来、欧米
諸国との交流が進められてきました。さらに近年は、経済、社会、文化等の様々な面で北方
*2 *3 *4
圏やロシア連邦極東地域、姉妹友好提携地域、東アジア地域などとの交流が進展し、国際的
な相互依存の関係が深まっています。
*1 北方少数民族
アラスカを含むアメリカ北部、カナダ、北欧諸国、ロシア極東・シベリア地域、中国北東部で構成される
北方圏地域に住むイヌイットなどの少数民族。
*2 ロシア連邦極東地域
サハ共和国、沿海地方、ハバロフスク地方、アムール州、マダガン州、サハリン州、カムチャッカ州から
構成される地域
*3 姉妹友好提携地域
カナダ・アルバータ州、中国・黒竜江省及びアメリカ・マサチューセッツ州のこと
*4 東アジア地域
香港、シンガポール、台湾、韓国(アジアNIE4カ国)とタイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、フ
ィリピン、ブルネイ、ベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマー(ASEAN10ケ国)、中国をさす。
このため、教育の様々な分野において外国人を積極的に受け入れるなど、地域に根ざした
交流を促進します。
国際的な広い視野をもち、我が国や諸外国の歴史や文化、伝統などを理解するとともに、
相手の立場を尊重しつつ自分の考えを表現できる基礎的な力などを育成する国際理解教育を
進めます。
また、外国語の重要性がますます高まっていることから、コミュニケーション能力の向上
など外国語教育を改善充実します。
さらに、外国人留学生への支援や在日外国人の子どもの教育の改善・充実のため、学校や
地域の関係機関、ボランティアなどの協力の下に、地域社会が一体となった取組を進め、受
入れ体制の一層の充実に努めます。
○ 情報化・科学技術の発展への対応
情報機器や情報通信ネットワーク環境の整備に伴い、都市部やへき地を問わず、地域から
の情報発信が可能になってきています。このため、学校間や生涯学習関連施設などとの情報
通信ネットワーク化を進めるとともに、高度情報通信社会に対応した資質や能力を育成しま
す。 *1
また、学校教育においても、マルチメディア、情報通信ネットワークを活用した学校間に
*2
おける遠隔授業などを進めるとともに、児童生徒が適切な情報を主体的に選択し活用できる
情報活用能力や、情報を利用する上でのモラルの育成に努めます。
さらに、科学技術が目覚ましい進歩をとげている中で、将来これらの発展を担うべき児童
生徒の理科離れが懸念されていることから、自然観察や実験などを通して、楽しく学ぶ中で
自然に対する科学的な見方や考え方など豊かな知性を育てる教育を進めます。
○ 環境問題への対応
資源やエネルギーの大量消費などに起因する環境問題は、水質汚濁、ごみ問題などの身近
なことから、地球温暖化、オゾン層の破壊など地球規模にいたるまでの広がりをもった大き
な問題であることから、環境教育も、単に学校教育だけではなく、家庭、地域社会において
様々な実践的な取組を行うことが求められています。
このため、子どもが、豊かな自然や身近な地域社会の中での多様な体験活動を通して、環
境から学び、環境について学び、環境のために学ぶことができるよう、環境教育の改善・充
実を図ります。また、地域社会における様々な学習や活動などの取組を通して、失われた自
然を回復し、北海道の風土にふさわしい快適な環境を創造していく人の育成に努めます。
*1 マルチメディア
映像、音響、活字などの種々の伝達媒体を同時に組み合わせて使う技法で、新しい情報通信手段として注
目されている。
*2 遠隔授業
衛星通信などを用いて、離れた地域の学校間を結び、一方で行われている授業を他方に送り、遠隔地で同
時に同じ授業を受けたり、授業の中で互いに討論に参加するなど、双方向の情報交換による授業。
4 地域を創る教育・文化・スポーツの振興充実
地方分権時代を迎え、自らの主体性と責任に基づく自立した地域づくりが求められています。
広域な北海道は、異なる気候・風土や歴史をもち、特色のある発展をしてきた地域から成り立
っていることから、それぞれの地域の産業や文化などの特性を生かし、教育の充実や文化、ス
ポーツの振興を図り、活力ある地域を創造する人材の育成をめざします。
○ 初等中等教育の充実
幼児や児童生徒の発達段階に応じて、自ら考え、主体的に行動できる資質・能力を育てる
教育が求められています。このため、生きる力を育てるという基本的な考え方に立って、学
校における教育内容を厳選し、基礎基本を確実に身に付けさせるとともに、地域に根ざし、
子どもにとって魅力ある教育活動を推進します。
さらに、障害がある人には、その状態に応じた一層きめ細かな教育を進めるとともに、
*1
ノーマライゼーションの理念に基づき、障害のある人もない人も地域の中で共に学ぶ交流の
場や機会を拡充します。
また、私立学校は、様々な分野で活躍する多くの優れた人材を輩出するなど、本道教育に
大きな役割を果たしており、それぞれの建学精神や教育理念に基づいた教育活動の一層の充
実を促進します。
○ 高等教育の充実
来るべき時代を担う人材の育成や、新たな知識・技術の研究や開発、あるいは、地域社会
への知的貢献などにおいて、高等教育機関の果たす役割に大きな期待が集まっており、高等
教育機関の整備充実を図り、その機能を一層高めて、地域社会との関わりを強めていくこと
が求められています。
このため、高度化・多様化する社会経済状況の変化に対応する専門分野の教育・研究を行
う大学や大学院等の整備充実を促進するとともに、地域の生涯学習や産・学・官の連携によ
る共同研究、地域の国際化などを進める開かれた高等教育機関づくりや高等教育機関の総合
力を高めるためにネットワーク化を促進します。
また、様々な分野の専門教育を進める専修学校などの充実を促進します。
○ 社会教育の充実
次代を担う青少年の健全な育成を図るため、社会教育関係団体などの活動を促進するとと
もに、自然体験活動を重視した青少年教育や子育て支援などの家庭教育、さらには、社会の
変化への対応や生きがいを高める成人教育を充実させることが大切です。
このため、青少年から高齢者まであらゆる人々が自発的に参加するボランティア活動の促
進や地域ぐるみで青少年の育成に取り組むなど、活力ある地域づくりをめざした社会教育を
推進します。
○ 文化の振興
人々の間には、個性豊かな地域文化を創造し文化の香りに満ちた社会をつくりたいという
気運の高まりがみられます。特に、近年は、自主的な文化活動が盛んになるとともに、景観
やまちづくりなどへの関心も高まっています
また、北海道の歴史・文化の正しい理解は、将来の文化の向上・発展の基礎であることか
ら、本道の先住民族であるアイヌの人たちや全国の各地から移り住んできた人たちが、北海
*2
道の気候・風土の中で育んできた豊かな文化を保存・伝承するとともに、有形・無形の文化財
*3
や文化遺産の保護・活用が求められています。
このため、自主的な文化活動の促進や文化施設の整備充実を図るとともに、先人たちの培
ってきた文化財の保存・活用を充実するなど、北国らしい地域文化の創造に努めます。
○ スポーツの振興
人々が心身ともに健康で充実した生活を営むため、だれもが気軽に参加しさわやかな汗を
かくことのできるニュースポーツや冬のスポーツなど生涯スポーツの振興や本道の恵まれた
自然や積雪寒冷など特色ある気候を生かしたキャンプ、ハイキング、スキーなどの野外活動
の推進が求められています。
また、高度に洗練されたスポーツは、競技する人々だけでなく観戦する人々にも感動を与
え、社会に明るい話題や活力を与えます。本道はオリンピックなど様々なスポーツ大会で活
躍する数々の名選手を生み出しており、その伝統を引き継ぎ、発展させることが求められて
います。
このため、野外活動やスポーツの充実を図るとともに、子どもから高齢者まですべての人
々が、健康づくりやスポーツに参加する気運を高め、全国に誇れるスポーツ北海道の実現を
めざし、総合的・計画的なスポーツの振興に努めます。
*1 ノーマライゼーション
障害のある人々や高齢者など社会的に不利を負う人々を当然に包含するのが通常の社会であり、そのある
がままの姿で他の人々と同等の権利が享受できるようにするという福祉理念。
*2 文化財
建造物、絵画、彫刻など(有形文化財)、芸能や工芸の「技」など(無形文化財)、衣食住等に関する風俗
慣習など(民俗文化財)、遺跡、名勝地、動植物など(記念物)、伝統的建造物群で、芸術上、学術上、歴史
上の価値が高いもので文化財保護法で定めているもの。
*3 文化遺産
建造物、絵画、彫刻、歴史資料、遺跡など芸術上、学術上、歴史上の価値が高いもの。
目次へ戻る