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[new-north:00190] Joint R&D with WIDE Satellite Networking Task Force ?



 new-north各位:

 北田@札幌エレクトロニクスセンターです

 当財団が参画しているWIDEプロジェクト(http://www.wide.ad.jp)の
中で、衛星回線によるインターネットの構築実験を進めている
ワーキング・グループ(WISH TF)があります。 今度の、WIDEプロジェクトの
研究会で、活動成果の発表をしますので、その発表概要をお知らせします。

 札幌市エレクトロニクスセンターに設置してあるWIDEの
パラボラアンテナ(2Mbps,JCSAT)を、以前から、活用したいとは考えて
いるのですが、具体的な(札幌での....)活動とメンバーとが決まりません。
 地上回線は細〜くて、衛星回線が太〜いなんて、絶好の ^_^;; 条件ですし、
イベント会場からのマルチキャスト配信を受けるだけでも、価値がある
でしょうから。

 どなたか、この研究開発プロジェクトに参画してみたい方は、
new-northの中には、おりませんでしょうか?
 いらっしゃいましたら、個人メールでmailto : kitada@sec.or.jp
まで、ご連絡をお願いいたします。

 ちなみに、機材/部屋は、一応あります。 後は、やってくれる人
だけかもしれません! (お金はこれから.......)

------- Forwarded Message
To: wish-tf@wide.ad.jp
Subject: WIDE kenkyuu-kai yokou
Date: Mon, 10 Nov 1997 19:10:34 +0900
From: IZUMIYAMA Hidetaka <izu@jcsat.co.jp>

wish-tf各位

11/15のWIDE研究会の研究発表の予稿を
お送りします。
こっちはあまりUDLRの技術的なことには触れておらず、
衛星通信とUDLR技術をつかったら
どういう嬉しいことができるかという
視点で書きました。

泉山@JSAT

-----Next_Part(Mon_Nov_10_19:10:33_1997)--
                                   [WIDE November'97 研究発表資料]

        通信衛星を利用した大規模IP Multicastについて
        -- Unidirectional Link Routing 技術の利用 --

				           (株)日本サテライトシステムズ
				                               泉山英孝

◇背景と重要性

  IP Multicast技術は、Internetにおいて、もっとも期待されている技術の
  うちの一つである。なぜならば、この技術によって、ある情報を複数の人に
  送るために、同じ情報が複数回、同一のリンクを流れることが
  なくなり、効率的に情報が送れるようになるからである。

  このIP Multicast技術を利用することによって、
    - Internet上での音声や映像を使った放送型サービス
    - 同報的情報提供サービス
      (プッシュ型サービスといわれているものもこれに含まれる)
    - 分散したデータベースの更新サービス
    - :
  など、いろいろなアプリケーションが容易に実現できると
  期待されている。

  したがって、InternetでこのようなIP Multicastを実現するプロトコルが
 
 いろいろと提案、設計、実装されている。そして、それを使って、現実にいくつかの
  IP Multicastネットワークが運用され、上記のいくつかのアプリケーションが
  使われている。
 
  しかし現在の地上網をベースにしたInternetにおいて、
  このIP Multicast技術を使って、経済的で、運用性に優れた広域での
  IP Multicastネットワークを実現することは、容易ではない。

  このような問題点を解決し、ScalableなIP Multicastを実現するために、
  いくつかの試みがなされている。
  一つのアプローチとしては、経路制御の面からこれを解決していこう
  とするものである。多くのInternetの多くの研究者/開発者がより
  ScalableなIP Multicastのプロトコルをつくろうと日夜取り組んでいる。

  もう一つのアプローチは、今までにない特性をもつ伝送路をInternetに使う
  ことによって、これを実現しようとするものである。
  このアプローチの一つとして、衛星通信という、広域性、同報性というIP
 Multicastに
  向いた特性をもつ伝送路を使うことにより、経済的で、運用性に優れた広域で
  大規模なIP Multicastネットワークを提供しようというのが我々の
  取り組みである。

◇衛星 IP broadcastはTrue Internetではない。

  衛星を使ってIP packetを空から降らせることを衛星 IP broadcastと
  呼ぶことにすると、これは、IP packetを使っていても、プロトコル
  的にはInternetとは呼べない。なぜならば、衛星リンクを単純に
  片方向回線として使うので、双方向性を前提としているInternetの
  多くのプロトコルあるいはアプリケーションを利用できないからである。

  より具体的に言うならば、TCPのセッションが張れないので、TCPプロトコル
  を利用するものは、全て使えない。UDPプトロコルを使ったアプリケーションも、
  アプリケーションレベルで双方向性を前提としているものが多いので、それらも
  そのままでは、使えないわけである。
  したがって、しかたなく、双方向通信、いいかえれば、
  信頼性のある通信を行うには、既存のInternetとは別の、
  何らかの仕組みを考えることが必要となる。

  このようなアプローチは、Internet上の資源
    - インターネットに接続されているコンピュータ
    - Internetで利用されているソフトウエア
  を"そのままでは、利用することができない"。
  この"そのまま"の部分が非常に重要である。たとえ軽微な変更であっても、
  それを、Internet上のホスト/ソフトウエア全部に施すことは決して
  容易ではないからである。

◇片方向の衛星回線をTrue Internetとして使う技術
  -- UDLR(UniDirectional Link Routing) --

  衛星回線は、
    - 広域性(1つの衛星回線で、広地域にひろがった地域と通信できる)
    - 同報性(1つの衛星回線で、同時に複数の人と通信できる)
    - 柔軟性(ネットワークのトポロジを動的に変えられる)
  という、有線をベースにした地上回線にはない特徴をもった伝送路である。

  また、安価な受信専用端末を用いる場合には
    - 片方向性(送信者から受信者という方向のみ通信できる)
  という特徴も持つことになる。

  一方、Internetでは、頑丈な通信を提供するために、ハードウエア障害等により
  ネットワークの状態が変化した場合に、これを自動的に感知し、代替経路を通る
  ような動的経路制御の技術が用いられている。
  この動的経路制御の技術は、「伝送路は双方向性をもっている」という前提の
  もとにつくられている。パケットを受信することのできない伝送路は、
  障害のある伝送路であるとして、利用しないようになっているのである。

  したがって、安価な受信専用端末を用いた衛星回線を構築し、これを
 
 Internetの伝送路として利用しようとしても、衛星回線が片方向性を持っているために、
  そのままでは、Internetでうまく利用できない。どうやって片方向の衛星回線を
  "True Internet"として、Internetで使うかということが非常に課題である。

  このような課題を解決するUDLRの技術の必要性は、世界中のInternet関係者
  に認識されている。Internetの技術的な標準化作業を行っているIETFでは、
  1997年3月にUDLR WGが設立され、現在そのWGで標準化活動が行われている。

  以下にその概要を述べる。

◇UDLR 技術について

1.UDLR WGの目的

  ディジタル技術の発達とともに、片方向の高速伝送が安価に
提供できるようになってきており、受信専用ハードウエアが
現実のネットワークの構成物になってきている。
たとえば、同報型の衛星リンクや、CATV等のケーブルリンクが
この具体的な例である。

このようなUDLを使うケースとして
次の2つのケースが想定される。

(1)UDLが、bidirectionalな既存の有線ベースのネットワーク
   の上にある。

(2)Bidirectionalな2つのネットワークをUDLで接続する。

どちらのケースにおいても、小規模なネットワークであれば、
経路情報を静的に設定する方法で、
UDLを利用することはできるが、この方法ではScaleしない。

したがって、どちらのケースにおいても、ある程度以上の
ホストを有するネットワークにおいて、UDLを使うには、
これらのリンクの間での動的経路制御の仕組みが必要となる。

短期的な解法は、既存の経路制御技術をそのまま利用する、
あるいは可能な範囲で変更して採用するものである。
長期的な解法は、リンクの双方向性についての前提を除く
プロトコルを提案し、設計し、実装するものである。

短期的な解法にはいくつかの提案が行われている。
最初のものは、現在の経路制御プロトコル(RIP,OSPF,DVMRP)を
UDLをサポートするために変更しようと
するものである。
2つめのものは、Tunneling技術を用いて、UDLを双方向性があるリンクように
エミュレートし、既存の経路制御プロトコルを
そのまま使おうとするものである。

UDLR WGの目的は、これらのアプローチを検討し、
UDLが存在する中で、動的経路制御(Multicastを含む)
を提供するための一つの短期的な解法を決めることである。

2.RPM vs Tunnel

(1)RPM(Routing Protocol Modification)
  フランスのINRIAが最初に提案した方法であり、
今の動的経路制御プロトコルを修正して、
UDLを扱えるようにしようとするアプローチ。

具体的にいうと、あるリンクの経路情報を
他のリンクを経由して送れるように既存の
経路制御プロトコルを変更するもの。
既存の動的経路制御プロトコルには、このようにあるリンクの経路情報を
別のリンクを経由して送る機能がない。これは
Internetで使われている今までリンクはBDLなのでこういう
ことは想定する必要がなかったためである。

このアプローチの問題点は、
    - 既存の経路制御プロトコル全部を修正しなければならない。
    - UDLに直接つながっていないルータまでも
      修正しないといけない可能性がある。
ということから、既存のInternetに与える影響が大きいことである。

(2)Tunnelingを使った方法
  WIDEおよびU.S.のHughes Research Lab.が提案した方法。
ReceiverからFeederというUDLの逆方向の通信には、
Tunneling技術を使って、UDLとは別にあるBDL回線を使うことにより、
仮想的にUDLをBDLに見せるという方法。

  こうすることによって、既存の経路制御プロトコルの変更なしに、
UDLの逆向きの方向にも経路情報を送ることができる。
実際にはTunnel技術を利用し、別のリンクでUDLの経路情報が送れれて
いる様に見える。この視点で考えると、実現方法が違うだけで、
基本的なコンセプトはRPMと同じともいえる。

  この際、Tunneling Pathへのcostを高くすることにより、ReceiverからFeeder
方向へ向かうデータパケットは、Tunneling Pathを通らないで、
普通にBDLを通るので、うまくUDLを使える。

  UDLR WGは、以上の特性を考慮した上で、後者の方法を、
既存のネットワークへのインパクトが少なく、実現可能と判断し、
採用を決定した。(97.4の38th IETF)

3.Tunnelの詳細の検討(97.8の39th IETF)

  38th IETFで得られた合意に基づき、Tunnelを使った方法の詳細仕様について
議論が行われた。いくつかの具体的な場面を想定し、それぞれの場合において、
Tunnelを用いた場合に問題点はないかの検討を行った。
  主な議論のポイントは、
    - データリンク層のアドレスをどのようにして、受信者(Receiver)から
      送信者(Feeder)に伝えるか。
    - Tunnelを設定したり、解除したりする方法はどうするか。
  ということであり、これらについても概ね合意できた。

4.今後のスケジュール
  39th IETFでの合意事項にしたがって、各自実装を進め、
その結果をもとに次の 40th IETF(97.12)で、UDLR WGとして統一の
Intenet Draftをまとめることとなった。
順調に進めば、このInternet Draftが、RFCになる。

◇UDLR技術と通信衛星を使った大規模IP Multicastの実現

Layer 4  既存のIP Multicast application
Layer 3  既存のIP Multicast技術
Layer 2  UDLR技術
Layer 1  通信衛星

というように、これらの技術を組み合われることにより、
広域ネットワークにおいて、経済的で運用性に優れた大規模 IP Multicast
ネットワークを実現することができる。

(1)運用面での評価

  衛星回線を使うことにより、広域のネットワークにおいても
単純なトポロジーでIP Multicastネットワークを構築できる。

  DVMRPを使う場合でも衛星回線部分については、DVMRPの
Tunnelを構築する必要がないので、設定が容易である。

(2)広域性の評価

  衛星のもつ広域性は、日本国内にとどまらない。弊社のJCSAT-3衛星を利用す
れば、技術的には東はハワイから西はインドまでを1ホップの衛星回線でカバー
できるので、InternationalなIP
 Multicastネットワークを構築する場合であっても、
ネットワークのトポロジは、上述の通り、単純にできる。

(3)コスト面の評価

  受信拠点数が多くなればなるほど、地上回線と比較して、安価に
IP Multicastネットワークを構築できる。送信局と受信局間の距離にもよるが
10受信拠点程度でも十分にコストメリットを得ることができる。

◇まとめ

  このようにして、UDLR技術と通信衛星により、経済的で運用性に優れた広域
の大規模IP Multicastの実現することが可能となる。これを実現するために
必要なUDLR技術のIETFでの標準化も順調に進んでいる。

							-- 以上 --

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