1. 登録コード 8229 2. 欧文タイトル Activities of the academic societies and JCRN (Japan Committee for Research Networks): the activities using the Internet 3. 欧文著者名 Haruyuki Tatsumi 4. 和文所属名 札幌医科大学 医学部 解剖学第一講座 5. タイトル 学会活動と研究ネットワーク連合委員会 (JCRN:Japan Committee for Research Networks) :インターネットを利用した学会活動 6. 著者名 辰巳 治之 7. リード (80字) 最近、インターネットの整備が急速になされ、それが研究活動や学会活動に使えるよう な環境になってきた。それで、実際にどのようなことにつかえるのだろうか? 8. キーワード 学会活動, インターネット, JCRN, JPNIC 9. 校正送付先 〒060 札幌市中央区南1条西17丁目 札幌医科大学 医学部 解剖学第一講座 TEL (011):611-2111(2241) FAX:(011)612-5861 E-mail: tatsumi@sapmed.ac.jp * 学会活動と研究ネットワーク連合委員会 (JCRN:Japan Committee for Research Networks)(1) :インターネットを利用した学会活動 -- コンピュータ・リテラシー この特集「医学領域におけるコンピュータ利用」のはじめに述べたように[a]、 コンピュータの使い方が変わってきた。それほどまでに我々の生活の中に入ってき てはいるのだが、やはり、馴染めないことも多く、コンピュータをいろいろな ところで、正式に導入する際に問題となっているようだ。そこで近年、 computer literacy(コンピュータを使える能力)という言葉もできてきた。も ともとliteracyとは読み書きの能力のことである。しかし、日本では、読み書 きだけではなく、ソロバンまでいれ、寺小屋で習う基本的なもののようにいわ れてきた。ソロバンまで入っているところに、私は密かな喜びを感じている。 コンピュータの世界においては、日本はかなり遅れをとっており、また、 keyboardや日本語入力という点において大きなハンディキャップがあり、一種 の劣等感すら感じることがあるので、なおさら嬉しい。コンピュータは、初め、 このソロバンの部分として使用されていたものが、最近、文字などの情報処理 装置として、多用されるようになってきたので、computer literacyとは、次 世代のいわゆる読み書きソロバンの能力ということができるだろう。しかし、 まだ一般的にはなっておらず、解剖学者の私が、コンピュータを使うことが不 思議らしく、よく何にお使いですか?という質問をされたり、コンピュータに ついての講演や原稿依頼がきたりする[b,c]。普通、読み書きソロバンを何に お使いですかなどと聞く人はいないのにと、ときどき思うことがある。ともか くワークステーションとインターネットの組合せは、知的生産活動をするのに は便利なものである[d-f]。 この次世代の読み書きソロバンは、個人レベルよりも、社会全体が対応できる ようになって、はじめて威力を発揮する。 卑近な例をあげると、自分のデータは電子化されコンピュータのなかに入って おり、そのコンピュータはインターネットに接続され、全世界からアクセスが 可能であっても、本当に情報を交換したい相手の研究者は、インターネットに 接続されておらず、電子化データは送れず、逆に向こうから紙で送られてきて 閉口する。しかも、奇妙なことに、相手はコンピュータの専門家であったりす る。彼の所属する大学の正面玄関には、大きなパラボラアンテナがどんなデー タでも受け取れるかのように誇らしげにおいてあるのに、インターネットはま だない。どこかおかしい。 これとは逆にインターネットとかワークステションの噂は聞いたことがあり、 インターネットやワークステーションが近くにある贅沢な環境にあっても、な んとなく敷居がたかく、気軽につかえる状態にはなっていないことも多い。 また、単にきっかけがない、知らないだけという場合も結構あるようだ。 欧米諸国では、このあたりのことを面倒見てくれるtechnologistがいるという。 日本、特に大学ではこの手の分業が非常におくれており、また期待することも 不可能にちかく、研究者や、医師自身がある程度自分でしなければならない。 その為にはコンピュータとユーザーの両者からのあゆみよりが必要である。す なわち、コンピュータはもっとユーザーフレンドリーになり簡単に且つ楽しく 使えるようにならねばならないし、ユーザーもコンピュータについて勉強する 必要があると考える。 実は密かに、医学研究者はどのようにすれば、UNIXワークステーションを使い こなすことができるか? を実験させてもらっている。ある程度のお膳立てさ えしてあげれば、かなり使いこなすことができる。このインターネット・コン ピューティング環境のお膳立、その使い方の教育、そしてmotivationとのコン ビネーションがポイントである。 このmotivationの一つとして、学会レベルでインターネットを使うような活動 がなにかできれば、いろいろな点で影響力もつよく、学会員に対する刺激や啓 蒙にもなる。このような活動により、インターネットを使う研究者がふえれば、 情報交換もスムーズにでき、研究活動や学会活動が活性化されるであろう。ま た、わが国独自のデータベースの数は少なく、大多数は外国製で、日本では それを購入し利用するだけで、データベース作成に関して、日本の世界に対す る貢献度は極めて低い。 そこで、先ほど述べた、両者からの歩み寄りを考慮し、学会レベルでデータベー スが簡単につくれるように、インターネットを使った抄録投稿および収集シス テムを提案し、第98、99回日本解剖学会全国学術集会にて実験的に試行した [g]。この概略は、紙で集めて手入力しデータベース化していた内容を、すべ て電子メールを使い、インターネット経由で集めるというものである。電子メー ルで受けとったものを自動チェックして登録し、受付通知の電子メールを返送 する。データフォーマットなどに不備があれば、自動的に再提出のお願いメー ルを送る。集まったデータをもとにLaTeXの書式[f]に変換し、学会誌にのせる版 下に似た印刷ができるようにした。さらに実験的にgopher[h]による情報公開 サービスをしており、インターネットに接続されている人ならだれでも無料で 情報検索ができる。 この実験は、電子メール投稿という思い切った試みであるが、そのかわり、各 研究者の状況に応じ、投稿方法を選択できるように工夫した。 1. 学内LANが整備されておりインターネットのmailをすぐにだせる人は、自分 の机の上から、db-abst@sapmed.ac.jp宛に、mailを出すだけでよい。 2. 現在では、全国共同利用施設である大型計算機センターにloginすれば、イ ンターネットのmailが使えるようになっているので、学内LANがない場合でも、 そこへ電話などでアクセスすれば投稿できる。 3. さらにWIDEやSINETではネットワークプロジェクトの一環として、パソコン通 信システム(商業ネット)とインターネットとの電子メール交換実験をおこなっ ているので、PC-VANやNIFTYからも電子メールによる投稿が可能である。 4. インターネットやパソコン通信に馴染みの少ない研究者に、インターネッ トの環境を体験してもらえるように、学会会場に投稿用のワークステーション を用意した。フロッピーディスクに入れて持ってきてもらったテキストデータ を、電子メールにより発表者自らの手でワークステーションを操作し投稿して もらった。幸い、学内LANの敷設が全国的に進行していたので、学会会場となっ た北海道大学(1993年)、山形大学(1994年)では、いずれもインターネットの口 があり、会場でインターネットを使った投稿がスムーズにできた。 この実験中、いろいろな研究者に訊ねたところ、まだ各大学におけるthe Internet Computing Environmentの格差はけっこうあるようだが、只今、整備 中というところも多く、状況はここ数年で大きく変わりそうである。また、 JPNIC(日本ネットワーク・インフォーメーション・センター)[i](2)からのドメイ ン名取得情報をみていると、大学だけでなく、国立病院をはじめ、医学系の機 関も数多く接続されはじめている。 これらインターネットの発達の陰にはJCRNやJPNICの貢献が多大である。すで に平成元年頃から、コンピュータ・コミュニケーションが学術分野において研 究活動の一つの重要な基盤であるとの認識に立ち、これを学術研究の発展に有 効利用するために、関連した諸ネットワーク相互間の連携を図り、かつ、今後、 国内における研究ネットワークのあるべき姿を学術団体の立場から提示する委 員会が必要だと考えられ、平成二年に研究ネットワーク連合委員会(Japan Committee of Research Networks)が設立された[j]。 このJCRNでの議論のな かで、日本のインターネットが健全に発達していく為には、国内のインターネッ トの情報をどこかがしっかり把握し、その情報を提供し、さらにドメイン名と IP Address(Internet Protocol Address:電話番号のようなもので全世界でユ ニークな番号でなければならない。) の割当を迅速に行う組織が必要であると 結論され、平成四年にはJCRNから独立した組織としてJPNICが設立された。こ のようにJPNICが機能しているおかげで、大きな混乱もなく、インターネット は着実に発達をつづけている。平成五年度には新社会資本整備の一環として、 多くの大学や研究所にネットワークが敷設され、さらに省際ネットワーク構想 や建設省の情報網バックボーン構想などがあり、ますますハード面のインター ネット環境が整ってくる。次は、ソフト面の整備である。すなわちこれらを各 部局でどのように運営し、利用していくかがcomputer literacyの問題と同様 に、人材育成を含め大きな問題となってくる。 このような情勢を鑑み、日本解剖学会は逸速くJCRNに参加し[k]、各ネットワー クプロジェクトと協調し、積極的にインターネットを利用した抄録投稿実験や 啓蒙活動をしている。そこでいま国家レベルで実施されている物理的なネット ワーク整備後には、インターネットを活用したシステムが多く導入され、定常 的ないろいろな学会の活動のなかに組み込まれることを期待する。これは北海 道のように中央から離れた場所で研究活動をしている者の悲願でもある。さら にその上にいろいろなインターネットのサービスが提供され、学術研究や教育 活動に活用できるようになることを強く望むとともに、今後のJCRNやJPNIC、 そして地域ネットワーク[l]の活躍にも期待したい。 参考文献 [a] 辰巳治之: コンピュータ利用の現状とthe Internet. 特集「医学領域におけるコンピュータ利用」(1) 医学のあゆみ ???:???(1994) [b] 辰巳治之:解剖学者によるコンピュータと生物のアナロジー :Electronic Network Consortium No 4 Pp12-13 (1993) [c] 辰巳治之:知的生産物の共有化とthe Internet めでいあ No 31:14(1994) [d] 辰巳治之: 医学の分野におけるコンピュータ利用の方向と期待:快適な研究環 境をめざして. 医学のあゆみ 152:107(1990) [e] Tatsumi H : "Comfortable Research Environment":Academy Equipment from Personal Computing to Interpersonal Communication via Computer Network. Proceedings of the 6th Sapporo International Computer Graphics Symposium pp 12-14 (1992) [f] 中村正弘: 知的生産活動の道具としてのアプリケーション 特集「医学領域におけるコンピュータ利用」(2) 医学のあゆみ ???:???(1994) [g] 辰巳治之:The Internet を利用した学会データ収集システムの開発 解剖学雑誌 68:564-579 (1993) [h] 大柳俊夫:広域情報検索 特集「医学領域におけるコンピュータ利用」(3) 医学のあゆみ ???:???(1994) [i] JPNIC News letter 1 (1994) pp1-52 [j] JCRNセミナー抄録:学術研究とネットワーク(1992年3月10日) pp 1-86 JCRN Newsletter 1(1991)、2(1992) (anonyomous ftp.nic.ad.jp:/pub/jcrn) [k] 辰巳治之 : 研究活動とコンピュータ・ネットワーク: 解剖学会が 研究ネットワーク連合委員会(JCRN)に参加. 解剖学雑誌 68:231-234(1993) [l] 北田 義孝、辰巳 治之 :北海道地域ネットワーク協議会(NORTH)について. WINC Network Symposium集 Pp 1-6 (1993) *解説 --(1) JCRN(研究ネットワーク連合委員会)(JCRN Newsletter等より 引用) JCRNは日本のアカデミック・ネットワークの発展を推進する目的で、いろいろな 学会の代表およびネットワーク関係者により1990年10月16日に設立された組織である。 その目的は“研究ネットワーク委員会規約”で明文化されている。 参加学会・ネットワーク組織 : 情報処理,電子情報通信,人工知能,日本物理,応用物理, 日本数学,日本統計,地震,ソフトウェア科学,認知科学, 原子力,計測自動制御,テレビジョン,精密工学,日本音響, 日本OR,地球電磁気,応用数理,解剖, TISN, JUNET, WIDE, JAIN, HEPNET, NACSIS, BITNET, INTAPnet, Inetclub Japan Organized InterNetwork(JOIN)、 日本ゲノムデータベースネットワーク(GDBnetJP) 相互接続ネットワーク(電気・電子情報学術振興財団)(JIX) 北海道地域ネットワーク協議会(NORTH) 東北学術研究インターネット(TOPIC) 東北インターネット協議会(TiA) つくば相互接続ネットワーク協議会(RIC−Tsukuba) 東京地域アカデミックネットワーク(TRAIN) 東海地域ネットワーク(TRENDY) 第5地区ネットワークコミュニティ(NCA5) 大阪地区大学間ネットワーク(ORIONS) 中国・四国インターネット協議会(CSI) KARRN 協会 --(2) JPNIC Newsletter No. 1 (1994)より抜粋 1. 組織の概要 日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)は、コンピュータネッ トワークを円滑に運営するために必要となる各種の登録管理業務および情報提 供業務を行なうための組織です。コンピュータネットワークが著しい速度で発 展しつつある現在、その役割は極めて重大なものとなっています。特に、世界 的な広がりを持つインターネットの運営に不可欠なインターネットドメイン名 とIPアドレス(Internet Protocol address)の日本国内における割り当ておよ び割当て情報公開の業務については、既に確実に成果を上げつつある他、コン ピュータネットワークの国際的な広がりに対応するための国際調整業務、およ び将来の技術発展に対応した登録管理業務のあり方の検討作業を行なっていま す。 JPNICはこれらの業務を行なうために、国内のネットワーク運営団体を会員と して組織され、会員よりの拠出金と人材提供によって運営されています。 参加ネットワークプロジェクト 会員名 一覧 (anonymous ftp.nic.ad.jp:/pub/jpnic-pub/jpnic-members.txtのデータより) No.1  つくば相互接続ネットワーク協議会 No.2 東北インターネット No.3  中国・四国インターネット協議会 No.4  東海地域ネットワーク No.5  国際理学ネットワーク No.6  IIJ インターネット No.7 東北学術研究インターネット No.8  Japan Academic Inter-university Network No.9  JUNET協会 No.10 WIDE インターネット No.11 Japan Organized InterNetwork No.12 "Because It's Time" Network in JaPan No.13 学術情報ネットワーク No.14 関西ネットワーク相互接続協会 No.15 九州地域研究ネットワーク No.16 大阪地域大学間ネットワーク No.17 東京地域アカデミックネットワーク No.18 北海道地域ネットワーク協議会 No.19 Spin プロジェクト No.20 InfoWeb No.21 日本ゲノムデータベースネットワーク運営委員会 No.22 インターコン・インターナショナル株式会社