日本解剖学会 100周年 ミニシンポジウム'95

テーマ「解剖学とコンピュータ」


2. コンピュータによる脳発生の解析
    藤田 晢也(京都府立医大・病理学)

 脳に限らず、人体に見られるような複雑なマクロ的形態を細胞がどのように 増殖し分化して、再現性高く形成するかというプロセスは、一部が変化すると 全体が複雑に影響をうけるという典型的な非線形的合成問題である。これを解 析するには、コンピュータ・シミュレーションが最適な手段であると考えられ た。そこで、実際の脳発生における細胞増殖と細胞分化の実体を踏まえて、単 純な神経管からヒトの脳が出来上がってくる過程をCGで再現する試みを行なっ た。その結果、一組の基本的な生長方程式を用いるだけでヒトの脳の発生がシ ミュレートできることが分かったが、同時に、そのパラメータを変えると、サ ルやネズミやホヤの脳発生まで再現できることが明らかになった。このパラメー タの分析から脳の進化の、細胞レベルのメカニズムが推定できるという興味あ る結果がえられた。
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