日本解剖学会 100周年 ミニシンポジウム'95

テーマ「解剖学とコンピュータ」


3. コンピュータと唯脳論
    養老孟司(東京大学・医学部・解剖)

 計算機的機能が脳機能を延長したものであることは明らかだが、それが脳機 能の一部であることは明白であろう。そこから、計算機自体を脳に近付けよう とする試みが一方で生じ、他方では計算機を人間がより利用しやすい形に発展 させようとする試みが生じる。前者は当然専門家がとりやすく、後者は利用者 が考えやすい方向である。ここで当面われわれが考えるべきであるのは、後者 をどのように支援するかである。その点について具体的に述べたい。しかし、 同時に、前者でなくては解答不能な形の問題がいくつかあることを、考えてお くことはムダではあるまいと思う。たとえば、視覚系では、鳥の視覚系を設計 するという問題が典型である。鳥は四色原理とされるので、これを人間が理解 する方式は、計算機を利用するしかないはずである。こうした型の問題は、中 枢機能を詰めていけば、つぎつぎに発生するはずである。それを解く論理の開 発をさらに論じたい。
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