北海道における人工内耳の現況

1996/8/20現在

札幌医科大学耳鼻咽喉科  新谷朋子
 1985年、東京医科大学で日本で最初の人工内耳埋め込み手術が施行され、次いで87年に虎ノ門病院、京都大学で手術が行われました。88年4月に日本で第4番目の施設として、札幌医大で北海道、第1例目の手術が行われました。当初、保険適応となっていないため、適応患者さんはいましたが実際に手術が行われたのは1年に1〜2名でした。91年に札幌医大が高度先進医療の適応となり、入院費用の一部が軽減され、更に94年に健康保険が適応となり、新聞、テレビ等で広く知られるところとなり、希望者が増え、現在では年9〜10名の手術が行われています。96年8月現在で札幌医科大学での手術患者数は38名となっています。また、札幌の耳鼻咽喉科麻生病院でも96年6月から現在までに3名の人工内耳手術がおこなわれています。全国的には96年7月末現在で34施設、665名の人工内耳手術が行われ、内72名が小児例です。
 手術適応については、当初、18歳以上の中途失聴者、中耳炎などがないこと、という制限がりましたが、人工内耳の有用性、手術方法の改善・発展、機種の改善等により適応は広がり、小児の先天聾や中耳炎症例でも補聴器の効果がない100dB以上の高度難聴者であれば大部分手術可能となっています。小児例では96年4月以降、4才と7才の髄膜炎による中途失聴例に手術を行っています。
 以下に札幌医科大学で手術を行った38名の内訳ですが、男性13名、女性25名、年齢は4才から75才(平均50.0才)、失聴期間は6ヵ月〜50年(平均16.1年)、失聴原因は進行性難聴11名、慢性中耳炎9名、髄膜炎8名、ストマイ難聴4名、その他、メニエル病、熱傷、等様々です。装用者の居住地は近郊を含め大きく分けると、札幌17名、旭川4名、小樽3名、帯広3名、北見5名、釧路1名、苫小牧1名、函館2名、道外1名と広がっています。札幌より遠方の患者さんも多いので、年に数回、札幌医大やかたつむりが主催してリハビリや親睦を目的に勉強会、懇親会等を行い、交流を深めています。来年、人工内耳ACITAの総会、懇談会が6月に札幌で開催されることになり、かたつむり運営委員が中心となって、その準備が進められているところです。