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● 第12回日本脳低温療法医学会開催にあたってのご挨拶


札幌医科大学医学部 救急集中治療医学講座、高度救命救急センター

                                             浅 井 康 文


 第12回日本脳低温療法学会開催にあたってのご挨拶いたします。本年(2009年)7月3〜4日と、札幌市のライフォート札幌にてこの会を主催いたします。テーマは「脳低温療法の新たなる試みを探る」といたしました。この研究会は、脳外科医、救急医、さらには循環器の諸先生を中心とする脳低温療法に関する、臨床経験や研究を発表する場でございます。このように日本脳低温療法学会は縦割りの学問ではなく、横の連携がある学会に発展していると思います。
 低体温の歴史は古いのですが、私は医学部卒業後に第2外科(心臓血管外科)に所属しましたが、入局時の和田壽郎教授が低体温療法で博士号を取っておられ、Hypothermiaには特に興味を示す環境におりました。最初は1975年後半から1980年代にかけて、乳幼児心疾患に対する手術の手段として世界的に有名となった京大方式の表面冷却と人工心肺によるCore coolingによる超低温療法に、人工心肺班として従事しました。そして後半は実際にこの方法を使った乳幼児心疾患の手術に加わりました。その後1989年に救急集中治療部に移動し、心肺停止患者の心肺脳蘇生に従事しました。この時おられた金子正光教授は私と同じ人工心肺班に所属されたことがあり、人工心肺を心肺停止患者に応用されました。胸部外科医にとって術後の低心拍出量症候群の患者に人工心肺をつないでおくのは普通のことでしたが、これが人工心肺の小型化、膜型人工肺や遠心ポンプの普及、さらには経皮的に行うセルジンガー法を用いた方法の普及で、PCPS(経皮的心肺補助)として現在の普及を見ております。
 当時は透析患者の高カリウム血症による心停止に人工心肺をまわして救命し、心肺停止患者の救命率の向上が期待されましたが、その後の心肺停止患者の救命には繋がりませんでした。1995年頃より脳低温療法の効果が発表されるようになり、人工心肺による蘇生とその後の蘇生後脳症の改善を目指して脳低温療法が加わりました。しかし頭部外傷の患者に対する効果はエビデンスがなく、1999年から循環器疾患である急性心筋梗塞による心室細動による心肺停止患者にこの方法とPCI(経皮的冠動脈形成術)を応用いたしました。この内科的心肺停止に第1位を占める急性心筋梗塞による心肺停止症例に対して、PCPSやIABPによる循環の維持、そしてPCIによる原因の除去、危惧される蘇生後脳症に対しての脳低温療法が加わり、この総合的な治療が、日本から発信され、昨年の米国心臓病学会でもトピックとなっておりました。現在このエビデンスのために厚生労働省の班研究が2010年のAHAのガイドラインに採用されるべく、研究報告が作成されています。今回はこのトピックをシンポジウムとしました。

 特別講演として、この学会の理事長である日本大学名誉教授の林先生に最近の脳低温療法のトピック「知能障害を残さない脳低温療法のノウハウ」、事務局長である山口大学の前川剛志教授には頭部外傷患者への脳低温療法のエビデンスの現在の状況を含む「軽度脳低温療法の現状と展望」を講演して頂きます。教育講演としては札幌医科大学医学部脳神経外科の本望修特任教授に「自己骨髄幹細胞による脳梗塞治療(蘇生後脳症への応用の可能性について)」 について講演をお願いしており、今後の脳低温療法の発展のヒントを期待しております。

2009年3月27日

第12回 日本脳低温療法学会