病原大腸菌O-157感染症の臨床上の特徴
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〜 市立堺病院 入院50例(1996年7月18日現在)についての検討から 〜


HUS(溶血性尿毒症症候群)の発症は急激です。
以下の点に注意してください

●ポイント●
  1. HUSの発症はきわめて急激です。
    • 毎日、血小板数、LDH、尿蛋白を " 至急検査 " でチェックしてください。
    • 上記3項目の異常例は早期の血漿交換療法が必要です。
  2. 腸重積も多いです。
    • 必ず、患児の腹部触診を継続して行ってください。


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臨床上の特徴

1.年  齢: 6〜8歳と低学年の子が多い。
2.症  状: 腹痛、下痢、血便は必発。
逆に、吐気。嘔吐は稀で、発熱も37.0〜37.7℃程度。
3.バイタル: 血圧は正常。ショック例はなし。
心拍数も正常〜やや徐脈傾向が多い。頻脈の例は少ない。
4.腹部所見: 圧痛はあるが、筋性防御はない。
腸重積例では拡張した腸管を触れる。
5.検査所見: 一般に白血球数は正常〜軽度上昇まで。
CRP<2〜3がほとんど。
BUN、Crがはじめから上昇している患児はいない。

●まとめ●
血圧、脈拍数、体温、炎症反応は重症例でも正常に近く、重傷度やHUS発症予測のリスクファクターとしては役に立たない。


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合併症

(1)HUS(溶血性尿毒症症候群)

 50例中、1例:確定診断。1例:疑い。いずれも7/17血漿交換療法開始。

  1. きわめて急激な発症。
  2. 血小板数の低下、溶血の先行。
  3. 症状・徴候の欠如。
  4. 早期発見のモニター
    血小板数、LDH、尿タンパク

(2)腸重積

 50例中、5例(6エピソード)

  1. 触診すると、拡張した腸管を触れる。
  2. 逆に、どの患児も腹痛の訴えが強いので、触診しないとわからない。
    毎日、必ず腹部の触診を


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HUS症例


【症例1】7歳男子

7/13 7/15 7/16 7/17
血小板 17.4 16.9   2.2↓
LDH 422 310   2824↑
尿蛋白 (-) (-) (++)  
腹 痛 (+++) (-)-(+) (-) (-)

血漿交換


【症例2】6歳男子

7/15 7/16 7/17 7/18
血小板 39.7 40.2 17.1↓ 9.1↓
LDH 488 370 967↑ 810↑
尿蛋白 (-) (-) (++) (+++)
腹 痛 (++)   (-)-(+)  

血漿交換


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