第1章
-皮膚と皮下-
1.3 深部の触診
(図1,40,225,241,282,481,483,490,494,623)
皮下の剖出が一段落したところで全身の触診を行なう。ライヘの固い皮膚に邪魔されずに深部 に触れることができる。本当は諸君を裸にして生体で触診すればいいのだが、ライヘのように遠 慮なく触れることは困難であろう。
体表観察 体幹(図1,623)、上肢(図40)、下肢(図481,483)
骨に触れてみる=その骨の部分名称は?
筋と腱に触れてみる=その筋・腱の名称は?
内臓に触れてみる=肝、顎下腺、甲状腺、腎、脾、膀胱(図282)
脈に触れる部位(全身の動脈は図225) =動脈にコリコリ触れるライヘもある。
末梢神経に触れてみる=総腓骨神経、尺骨神経、鎖骨上神経、大耳介神経・・・
人体の柔らかい部位=腋窩、鼡径部(大腿三角)、大鎖骨上窩(外側頚三角)・・・
皮静脈と皮下リンパ管が深側にはいる部位を整理する(図xxx,241,490,xxx,xxx)
頚部で固い部位と柔らかい部位を明確に分ける=胸鎖乳突筋をはさんで
フィンガーディセクション
(指先による解剖)
四肢の
筋間中隔
に手を突っ込んである程度裂いてみる。最初は
内側上腕筋間中隔
(図xxx)と
大腿三角
(内側大腿筋間中隔)(図494)。自然に指を動かさないと筋をむしり 取ってしまう。次いで、後大腿筋間中隔の中で坐骨神経を探ろう。指先で太い動脈や神経に触れた ら、それらをえぐり出してみよう。人体のどこが柔らかいか、どこが緊張して固いか、それは何が あるからか、切れば著しく
QOL(Quality of Life)
を損ねる構造あるいは致命的な血管・神 経がどこを通るか、それは柔らかい部位を通るのか固い部位を通るのか、深いか浅いかといった原 始的な感覚を養うことは、今後大いに役立つと信じている。今回は体表から分かる範囲で行なう が、深部に進んでも同様にフィンガーディセクションを大切にする。
Intermuscular septum(septa)
筋間中隔
Medial brachial intermuscular septum
内側上腕筋間中隔
Medial femoral intermuscular septum
内側大腿筋間中隔
Posterior femoral intermuscular septum
後大腿筋間中隔
特に下記の部位で必ず実施する:
上縦隔の大血管と筋膜→
後腹膜の生理的癒着と腎筋膜→
骨盤内筋膜、特に子宮支帯→
体表からの臨床基本手技
以下の臨床基本手技を模してライヘに行ってみる。解剖の進行状況によってそのつど指示する。
ヤコビー線
Jacoby's からスパイナル針で
ルンバール(腰椎穿刺)
を行う。 背部の剖出中、遅くとも深背筋の剖出() までに行なう。
ヤコビー線
は
腸骨稜
の最高点を結ぶ線で、
4-5腰椎間
付近を通る。 手技説明はビデオで行なう。刺した針は当日内に返却する。 骨に当たらずスッと針がはいる感触を知る。 ルンバールは麻酔目的の他に診断でも用いる基本手技である。
神経ブロック
(特に
星状神経節ブロック
)→
麻酔科医の研究のため白いゴム液を3-4ml注入してある。
鎖骨下静脈穿刺 IVH
の模擬→
基本手技中の基本手技。
長期絶食の場合、生存に必要な栄養(高カロリー輸液)を皮静脈からは投与できない。静脈炎をおこし激痛をともなうからである。そのため、鎖骨下静脈から上大静脈へカテーテルを通して高カロリー輸液を流す。
気管内挿管
→ 意識のない患者の気道を確保し、レスピレーター(人工呼吸器)につなぐため、気管内にチューブを挿管する。喉頭鏡を用いて確実に喉頭展開しないと、食道挿管という失態をおこす。
胸腔穿刺 トラカール
の模擬→ トラカール針という太い管を用いて肋間から胸膜腔にチューブを通す。胸膜炎は高齢者や末期にしばしば見られ、抗生剤投与だけではなかなか改善しない。体位交換によって胸水を穿刺部位に集める必要がある。
ボスミンの左室内注入
→
心停止時にボスミンを直接心腔内に注入する手技は、現在救急現場ではほとんど行われない。しかし、全国的に市中病院では死亡確認のためしばしば行われている。実際には、刺しやすい右室に注入していることが多いと思う。
■付図(抹消静脈の確保)
■付図(ルンバールの模擬)
■付図(心腔穿刺)
■付図(神経ブロック
)
■付図(各部の触診)
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