第2章-頭頚部-
2.6 頭蓋底 2(図756,759,761--767,770,771,773,774,777,780)

脳出し後の頭皮縫合を切断して頭蓋冠をはずす(図756)。頭蓋腔に血液などが残っていれば、洗い流してスポンジや布できれいに拭取る。硬膜が付いた状態で前頭蓋窩中頭蓋窩後頭蓋窩大孔を確認する(図777,780)。脳付きの班があれば必ず見学しておく。

Skull base (Base of the cranial cavity)頭蓋底
Anterior/Middle/Posterior cranial fossa前/中/後頭蓋窩
Foramen magnum大孔

1) 脳神経の切り口を確認・同定する(図767,777,642)。脳神経は( )のごとく略記する。

Olfactory nerves嗅神経Nervi olfactorii(I)
Optic nerve視神経Nervus opticus(II)
Oculomotor nerve動眼神経N.oculomotorius(III)
Trochlear nerve滑車神経N.trochlearis(IV)
Trigeminal nerve三叉神経N.trigeminus(V)
Ophthalmic nerve眼神経N.ophthalmicus(V-1)
Maxillary nerve上顎神経N.maxillaris(V-2)
Mandibular nerve下顎神経N.mandibularis(V-3)
Abducens nerve外転神経N.abducens(VI)
Facial nerve顔面神経N.facialis(VII)
Vestibulocochlear nerve内耳神経N.vestibulocochlearis(VIII)
Glossopharyngeal nerve舌咽神経N.grossopharyngeus(IX)
Vagus nerve迷走神経N.vagus(X)
Accessory nerve副神経N.accessorius(XI)
Hypoglossal nerve舌下神経N.hypoglossus(XII)


ライヘによってはIVとVIが少々難しい。近所の班でも確認する。

2) 硬膜硬膜静脈洞を観察する(図767,774,777)。多くの班では脳出しの際に切れているから復元しよう。まず、そのまま硬膜を観察する。

Dura mater硬膜
Dural sinus硬膜静脈洞
Falx cerebri/cerebelli大/小脳鎌
Tentorium cerebelli小脳テント
Diaphragma sellae鞍隔膜



適宜メスで内腔を開きながら、以下の静脈洞を観察する 。クモ膜顆粒(図766)という粒々の集合に注目する。脳脊髄液の吸収装置である。

Superior/Inferior sagittal sinus上/下矢状静脈洞
Straight/Transverse sinus直/横静脈洞
*Confluence of sinuses静脈洞交会
Sigmoid sinusS状静脈洞
Arachnoid granulationクモ膜顆粒



鞍隔膜を除去して下垂体を摘出する(図777)。下垂体窩の左右で、海綿静脈洞を剖出する(図777,770)。海綿静脈洞も、当然硬膜に囲まれている。大脳の動脈の切り口を確認して内頚動脈を求め、海綿静脈洞内の内頚動脈の走行を確認する。内頚動脈は海綿静脈洞に入ってから、さらに上方に向けてS字状の走行を呈す。これを頚動脈サイフォン部という。眼窩に出入りする神経(IIIIIIVV-1VI)を海綿静脈洞の外側壁まで追求する。

Pituitary gland下垂体Hypophysis
Pituitary fossa下垂体窩
Cavernous sinus海綿静脈洞
Internal carotid artery内頚動脈

3) 頭蓋底の硬膜を剥離する。クモ膜軟膜は摘出した脳の側に付いている。骨に溝を付けて走行する中硬膜動脈枝を剖出しただろうか(図xxx,777)。脳神経根の部分では、硬膜を剥がす際に神経を損傷しないように注意する。特に三叉神経根では、硬膜を小さく砕きながら剥がしていく。側頭骨錐体の前面には、後に内耳の解剖で必要な小錐体神経があるから、今は剥がさない(図777)。

Arachnoidクモ膜
Pia mater軟膜
Middle meningeal artery中硬膜動脈
Temporal bone側頭骨
Petrosal part側頭骨錐体Pyramis
Greater/Lesser petrosal nerve大/小錐体神経



骨標本と対照させながら次のを確認する(図780)。

Jugular foramen頚静脈孔
Foramen ovale卵円孔
Foramen rotundum正円孔
Foramen spinosum棘孔
Foramen lacerum破裂孔

骨を削って眼窩に出入りする神経(IIIIIIVV-1VI)を、全長に渡り確認する。最後に、頭蓋底を構成する骨を骨標本及びラングマン p.136 を参照し、復習する。


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