第4章-体壁-
4.6 脊髄と脊髄神経 (図13,238,626,667,679--684,686,688,690)

脊髄神経後枝を各分節ごとに長く剖出して、横突起から外側に向けて寝かせる。こうして神経を助けたら、椎弓棘突起に付着する軟部組織をメスで完全に除去する。さらにノミでこすって骨を露出させる。ルンバールの模擬をまだ練習していない者は、最後のチャンスなので以下の作業の前にスパイナル針で実行する(付図 1.3)。

最初はノミとリューエルで少しずつ椎弓を削り、1-2個の胸椎で椎弓切除(ラミネク)を行なう。椎弓間にある黄色靭帯を少しずつ削り取る(図667)。脊髄(正確には硬膜)の深さがある程度分かったら、脊椎双鋸という特殊な鋸を用いて一気に作業を進める。脊椎双鋸は高価なので大切に扱うこと。ラミネク laminectomyは椎間板ヘルニアに対してしばしば行なわれる手術である。双鋸の幅は、棘突起をはさんで遊び部分が左右に各0.5-0.8cm程度にセットする。脊柱の湾曲に合せて鋸を引き、音が変ったら後は慎重にノミで割る。大きな棘突起のC2から仙骨後面まで完全に鋸を入れる。連続して椎弓がはずれればベストだが、断片的にはずれてもよい。剖出した脊髄神経後枝や、まだ見えぬ深部の脊髄神経根を損傷しないことが第一である。双鋸を入れすぎて神経根を切ると後の楽しみが半減する。

Spinal cord脊髄
Transverse process横突起
Vertebral arch椎弓
Spinous process棘突起
Ligamenta flava黄色靭帯

Vertebral column脊柱
Spinal nerve root脊髄神経根

ラミネクが終了したら、さらにノミやリューエルを用いて脊柱管を広く開放し、同時に脊髄神経節を求める。すでに助けてある脊髄神経後枝や、肋骨挙筋の深側で見つけた肋間神経を内側にたどる。硬膜上腔の内椎骨静脈叢を観察しながら、脊髄硬膜に慎重にメスを入れる(図684,690)。視野を確保するため、脊髄硬膜は背側から見て幅2cm程度のベルト状に切除する。クモ膜に包まれた脊髄が見えたか。後根根糸を確認する。1つのライヘの中で頚部・胸部・腰部と分担して作業を進める。馬尾は確認できたか。

Vertebral canal脊柱管
Spinal ganglion脊髄神経節
Dorsal root ganglion後根神経節
Epidural space硬膜上腔
Internal vertebral venous plexus内椎骨静脈叢
Dura mater硬膜
Arachnoidクモ膜
Dorsal/ventral root of spinal nerve後根/前根
Cauda equina馬尾

脊髄神経後枝に続いて、腕神経叢頚神経叢脊髄まで連続させる。この際に神経叢の後方にある筋(主に後斜角筋、そして肩甲挙筋の起始部)を少しずつ除去する。本日のハイライトである。

一部でいいから脊髄側方の歯状靭帯を慎重に除去し、歯状靭帯の前に隠れている前根根糸も確認する(図238,684)。最後に脊髄を指定の高さで切断し、部位ごとの前角後角の大きさについて断面の計測を行なう(レポート課題参照)。以上の過程で椎間関節を2-3か所で開放して観察する。脊髄を摘出したら後縦靭帯を一部で剥がし、脊柱管の前面で椎体から出てくる太い静脈を確認する。椎間円板の厚さと硬さをメスで確認する。椎間関節の小さな関節腔を腰部・胸部で各1-2か所開放する。この関節包から腰痛が発信されているのだろうか。

*Denticulate ligament歯状靭帯
Ventral/Dorsal horn前角/後角
Facet joint椎間円板
Posterior longitudinal ligament後縦靭帯
Intervertebral disc椎間円板


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