第7章-下肢・下肢帯-
7.3 下腿 (図616-618)

下腿筋膜をメスで除去すると筋の輪郭が見えてくる。まず、4つの筋区画(伸筋区画、腓骨筋区画、浅屈筋区画、深屈筋区画)とその間の筋間中隔を確認する(図616-618)。以下、筋の解剖と血管・神経の剖出は並行して行なう。


7.3.1 伸筋区画 (図522,524,525,527,541)

前脛骨筋長母指伸筋長指伸筋の3筋の同定(図522)は、足背まで腱を追求した段階で行なう。足背で伸筋支帯を剖出して、そのを上方にたどりながら各筋を遊離する。伸筋支帯は切らずに温存する。骨から剥離しないと3筋を区別できないと思ったら、腱をたよりに下方から順次、しかし必要最低限の範囲で骨から剥がす。その過程で剖出された血管・神経は温存して、後で本幹とつなげて同定する。

Leg下腿
Crural fascia下腿筋膜
Tibialis anterior muscle前脛骨筋
Extensor hallucis longus muscle長母指伸筋
Extensor digitorum longus muscle長指伸筋
Dorsal foot足背
Extensor retinaculum伸筋支帯


7.3.2 腓骨筋区画 (図522,524,525)

長腓骨筋短腓骨筋外果下方の扁平なからつかまえる。腱に伴走する腓骨神経枝を損傷しないように、腱と筋を腓骨から離していく。筋に分枝した後に足背皮下に至る浅腓骨神経をつかまえたら、上に追求して深腓骨神経を見つける(図525)。総腓骨神経はすでに腓骨頭直下の皮下で見つかっているはずだ。深腓骨神経はいきなり数枝に分れて、前脛骨筋長母指伸筋長指伸筋の3筋に上端から分布するので、これら3筋をある程度腓骨上部から剥離しないと観察できない。以上の過程で前脛骨動脈枝が出てくる。前脛骨動脈の本幹は、下腿屈側の解剖が進んでから確認する。

Peroneus longus/brevis muscle長/短腓骨筋
Lateral malleolus外果
Superficial/Deep peroneal nerve浅/深腓骨神経
Common peroneal nerve総腓骨神経
Anterior tibial artery前脛骨動脈


7.3.3 浅屈筋区画 (図539,540,543,575)

皮神経、皮静脈をよけながら、下腿筋膜をメスで除去する。特に腓腹神経(皮神経)と小伏在静脈は剥がして、温存しておく。

1) 下腿三頭筋(腓腹筋の内側頭・外側頭、ヒラメ筋)とアキレス腱を確認する。アキレス腱周囲の清掃も始める。

2) 腓腹筋の内側頭・外側頭をそれぞれ大腿骨から剥がして、腓腹筋を下方に反転していく。同筋の血管が緊張したら膝窩の剖出を加えてできるだけゆるめる。

3) 膝窩で膝窩動静脈脛骨神経総腓骨神経が剖出できたら、それらを下方に追求する。次の4)を同時に進める。膝窩の剖出が進んでいれば膝窩筋の輪郭も確認できる(図543)。膝窩筋を剥がして後方から膝関節の補強構造を観察する(図575)。

4) ヒラメ筋腓骨から剥がして、内側(脛骨側)に反転する。腱性の組織を介してヒラメ筋は脛骨に付着している部分がある。血管・神経を下方に追求する邪魔になるので、ヒラメ筋ヒラメ筋線(および脛骨)から剥がし、筋をさらに下方に反転ないし浮かせる。腓腹筋の血管・神経が緊張して視野を妨げたら、膝を屈曲させ、2頭の間を下方に向けて裂くことで対応する。ヒラメ筋を浮かせると、深屈筋区画が見える。ヒラメ筋の裏に足底筋がはりついて残っているだろうか(図543)。足底筋の長い腱をアキレス腱までたどることができる。ヒラメ筋の裏には、しばしばもう1匹ヒラメが張りついている。

Sural nerve腓腹神経
Great/Small saphenous vein大/小伏在静脈
Triceps surae muscle下腿三頭筋
Gastrocnemius muscle腓腹筋
Soleus muscleヒラメ筋
Popliteal fossa膝窩
Popliteal artery/vein膝窩動脈/静脈
Popliteus muscle膝窩筋
Calcaneal tendon (Achilles')踵骨腱(アキレス腱)
Fibula腓骨
Femur大腿骨
Tibial nerve脛骨神経
Tibia脛骨
Plantaris muscle足底筋


7.3.4 深屈筋区画 (図525,545,546,548)

筋膜を剥がして脛骨神経後脛骨動脈を下方に追求しながら、筋の輪郭を明らかにしていく。後脛骨筋長指屈筋長母指屈筋の同定は、内果下方から足底にかけて腱の剖出(7.4.2)後でいい。後脛骨動脈から伸筋区画に向かう前脛骨動脈を探す(図525,546)。長母指屈筋に覆われて下行する腓骨動脈を同筋を腓骨からはがしながら剖出する(図546)。解剖学では知名度が低いが、骨付き筋皮弁フラップ作成のため重要な動脈である。アキレス腱周囲の清掃は終わったか。外果内果周囲には多くの動脈吻合がある。動脈吻合は、足底足背の剖出が進んでから確認する。

立位における膝関節ロッキングについて示説を受けよ。

Posterior tibial artery後脛骨動脈
Tibialis posterior muscle後脛骨筋
Flexor hallucis longus muscle長母指屈筋
Flexor digitorum longus muscle長指屈筋
Lateral/Medial malleolus外/内果
Sole of foot足底
Peroneal artery腓骨動脈

<膝関節を動かす筋の作用>
屈曲半膜様筋、半腱様筋、大腿二頭筋、薄筋
伸展大腿四頭筋


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