肺葉の下位の単位として肺区域 がある(Fig.174,175,178,179)。肺区域は気管支分岐を基準に決められている(Fig.180)。区域の間には葉間胸膜 のような明瞭な境界物はない。強いて言えば、区域の境界近くには比較的太い静脈がある。昔は結核 、今は肺癌 の臨床を通して肺区域は日本の常識であり、国試にも毎回出題されて問題はヒネリを加えられている。
まず摘出肺 において、肺根 の断面で気管支 と動脈・静脈を区別する(Fig.176,177)。左右の肺門部(肺根)からピンセットで肺実質を徐々にくずして、区域気管支 、さらに亜区域気管支 レベルまで剖出する。最初に上葉・中葉・下葉の葉気管支 を区別する。あらかじめプリントや教科書を参考に、肺の外面から肺区域の配置の概要を把握しておく。前から見えている区域は何か、その後方に隠れている区域は何か、下葉の区域はどのような順に並ぶか、というように整理しておく。
肺 の解剖は、肺の縦隔面から肺実質 をくずし、肋骨面と横隔面を最後まで温存するのがオリエンテーションを失わないコツだ。それでも剖出とともに肺がつぶれていくので、ヘリカルCT で見るほどの立体感は得られない。その代り解剖学実習では、多くの肺を観察して区域気管支レベルの変異を直視下に体験して欲しい。区域気管支 ・亜区域気管支には個体ごとに多くの変異がある。変異の詳細は実習室前に出すプリントを参照すること。血管は必要に応じて切断し、血管を両開きに反転して気管支を剖出するための視野を作る。しかし、血管を除去してはいけない。
摘出肺における気管支の剖出過程で、気管支動静脈 が見つかる。気管支動脈は、縦隔側(気管側)の切断端を確認し、後で剖出するために糸でラベルしておく(Fig.186)。気管支静脈の多くは肺静脈 に注ぐが、主気管支 に近い一部の静脈は奇静脈 などに注ぐ(Fig.187)。
Pulmonary segment | 肺区域 | 174 | ||
Root of the lung | 肺根 | 171 | ||
Trachea | 気管 | 180 | ||
Bronchus | 気管支 | 180 | ||
Left/Right primary bronchus | 左/右主気管支 | 180 | ||
Upper/Middle/Lower lobar bronchus | 上/中/下葉気管支 | 180 | ||
Segmental bronchus(bronchi) | 区域気管支 B1+2,B3,... | 180 | ||
Subsegmental bronchus(bronchi) | 亜区域気管支 B3a,b,... | |||
Bronchial artery/vein | 気管支動/静脈 | 188 | ||
Pulmonary vein | 肺静脈 | 187 | ||
Azygos vein | 奇静脈 | 187 |