心臓外面 の心外膜 を剥がして、心筋層 との間に蓄積している脂肪をある程度除去する。冠状動脈の剖出は、内腔を見て全体のオリエンテーションが付いてから存分にやってもらう。
摘出した心臓 に、割を入れて内腔を開く。本学では中隔の温存を重視した切り方を行なう。まず左右の心房 を開放し、内面を観察する。心耳 (Fig.195,199)は発生過程で最初にできる心房の遺残であり、抗利尿ホルモンを出す内分泌器官と言われている。新しくできた心房洞部内面は平滑だが、心耳内面には櫛状筋 がある(Fig.207,ラングマン p.179)。
次いで心室 にはいる。肺動脈 から右室に向けてまっすぐに前壁をハサミで切り下ろす。できれば、肺動脈弁 の弁尖 と弁尖の間をねらいたい。大動脈 から左室に向けて一気にハサミで切り下ろすにはコツがある。左心耳を寄せて、左心耳と肺動脈の間にハサミが通ること。この際、左冠状動脈本幹(LMT) を肺動脈側に付けたい。いずれにしても直線的にハサミを入れて壁を一割する。乳頭筋 や腱索 は切れてもかまわない。弁尖と弁尖の間にハサミを入れたい。割線が小刻みにジグザグするのが一番よくない。少しでもわからなかったらスタッフに訊く。
開いたら心腔内のクロット(凝血) をピンセットできれいに除去して組織片の容器へ入れる。さらに心腔内を汚物流しで洗う(通常の流しでは詰まる)。血管内にある細長く白っぽいゴムのような塊は、死後分離した血中の蛋白成分がホルマリンで凝固したものである。
Epicardium | 心外膜 | 207 | ||
Myocardium | 心筋層 | 207 | ||
Coronary artery | 冠状動脈 | 201 | ||
Septum | 中隔 | 206 | ||
Atrium | 心房 | 206 | ||
Auricle | 心耳 | 199 | ||
*Pectinate muscles | *櫛状筋 | 207 | ||
Ventricle | 心室 | 206 | Ventriculus sinister (左室) / dexter (右室) | |
Pulmonary artery | 肺動脈 | 208 | ||
Pulmonary valve | 肺動脈弁 | 208 | ||
Left main trunk (LMT) | 左冠状動脈本幹 | 201 ![]() | ||
Papillary muscles | 乳頭筋 | 206 | ||
*Chordae tendinae | *腱索 | 206 |