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5)

三尖弁中隔尖 を同定し、これを慎重にハサミでめくる。ヒス束 の示説標本を参考にしてヒス束の剖出を試み、房室結節 AV node   の位置を想定する(Fig.215,216)。ヒス束は心内膜 直下にあれば容易に剖出できる。洞房結節 SA node   は、左右冠状動脈の根部から上大静脈基部 に向かう2本の動脈枝がぶつかる場所にある(Fig.218)。

Aortic sinus (Valsalva's) ヴァルサルバ洞(大動脈洞) 210
Septal cusp, tricuspid valve 三尖弁中隔尖 207
Atrioventricular bundle ヒス束 216
Atrioventricular node(AV node) 房室結節 218
Endocardium 心内膜 211
Sinoatrial node(SA node) 洞房結節 218

4室4弁4中隔の立体的な構成については、心エコー  と関係して何度も復習する。膜性部 は、左ヴァルサルバ洞・無冠ヴァルサルバ洞および三尖弁中隔尖 ・前尖のいずれに近接しているだろうか。ヴァルサルバ洞動脈瘤破裂 が右房(ないし右室)に連続して左-右シャント(シャント =短絡路 )を作るというのは納得できるか。筋性部 漏斗部(流出路) の境界が稜をなしており、両者の平面は90-120度の角度で交わるだろうか。卵円窩 心房中隔欠損ASD(atrial septal defect)  の、膜性部 心室中隔欠損VSD(ventricular septal defect)  の、それぞれ好発部位だ(ラングマンp.182,189)。 

Interventricular septum 心室中隔(室中隔) 216
Muscular part 筋性部
Membranous part 膜性部
*Conus arteriosus *漏斗部 208
Fossa ovalis 卵円窩 207

その他、以下の項目を確認せよ。

       

Apex/Basis of the heart 心尖/心底 193 Apex cordis, Basis cordis
Opening of coronary sinus 冠状静脈洞開口部 207
Ascending aorta 上行大動脈 193
Pulmonary trunk 肺動脈幹 193

■表: 形態から見た右室・左室の区別 

右室 左室
漏斗部 あり なし
拡張期形態 丸いおむすび型 しっぽ(尾)型
収縮期形態 三角おむすび型 足型
肉柱全般 粗大で互いに直交 微細で斜走
中隔面の肉柱 発達 上方1/2-2/3で欠如(平滑な面)
乳頭筋 主:1、小:複数 主:2、小:1
乳頭筋の中隔起始 複数 欠如
房室弁 三尖弁 二尖弁(僧帽弁)
半月弁 肺動脈弁 大動脈弁
刺激伝導系 1本 2本

*心奇形では右室が左側にあり、左室が右側に位置することがある。 

左房: 櫛状筋が心耳内に限局して心房洞部の内面は平滑
右房: 密な櫛状筋が心耳内に限らず心房洞部後面まで十分に進展(Fig.206)

--memo--

この時期にステート(聴診器)を用いて心音聴診 の課題を出す。心音と音源の位置は必ずしも一致しない(Fig.182,183)。

担当者指定課題   心音聴診に関するレポート(詳細は配布プリント参照)

ステート(聴診器)は窓側にぶら下げてある。心音は『タッ-トン』(あるいはトン-タン)という感じの2音に分解できる。第1音『タッ』は心室壁の収縮と房室弁の閉鎖により、第2音『トン』は動脈弁(半月弁)の閉鎖によると考えられている。1音と2音の間を収縮期と呼ぶ。

聴診対象は男子3名。各音が最も大きく聞こえる部位(聴診部位)を、『左第4肋間で胸骨縁から2横指左方』のごとく記載する。

心臓の各部を前胸壁に投影させる。前胸壁のどの位置に心臓のどの部位が対応するかは、シリンジに付けたカテラン針を用いて刺しながら検索する。はずした前胸壁 をかぶせ、ボスミン(アドレナリン)の左室内注入 を模して行なう(p.gif)。 第○肋間の胸骨○縁○横指から刺すと、4室のどこに刺さるか。シリンジに付けたカテラン針でボスミンを左室内注入する行為は、今も死亡確認の一種の儀式として行なわれている。この機会に前胸壁肋間筋血管神経(Fig.162,234)を剖出してもいい(p.gif)。

■付図(右心室の内景)  

■付図(冠状動脈の分布域) 

■付図(刺激伝導系 の剖出法)


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Akiko Oshiro
1998年01月19日 (月) 16時56分03秒 JST