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咀嚼筋と側頭下窩  (Fig.733,740,751)

顔面の血管・神経を適宜寄せながら深部の解剖にはいる。血管・神経が邪魔になる時は、名称を同定しながら末梢側からはずして中枢側に反転しておく。まだ頭頚部を切半していなければ、5)までの範囲で咀嚼筋 側頭下窩  を解剖する。

1)

咬筋 を下顎骨からメスで剥離して上方に(必ず、下から上に)反転する(Fig.748)。下顎切痕 から筋に進入する咬筋動脈神経 を温存する。下顎骨筋突起  関節突起 の間の下顎切痕 という大きな窓を骨標本で確認する(Fig.869)。三叉神経 卵円孔 のすぐ内側で、3本の枝を出す(Fig.777)。ここを通って下顎神経 が頭蓋の外に出たところを下顎切痕中央部から穿刺針を刺入してブロックすることがある(付図p.gif)。 咬筋頬骨弓 からも剥離し、側頭筋と咬筋の移行筋束と血管・神経だけでぶら下げる。咬筋と頬筋の間の頬脂肪体を除去し、頬筋 (口腔壁)の輪郭を明らかにする。

2)

頬骨弓を鋸で広く切除する。深側を損傷しないように注意(Fig.733)。

Masticatory muscles 咀嚼筋 738 tex2html_wrap_inline9403
Infratemporal fossa 側頭下窩 750
Masseter muscle 咬筋 748
Masseteric artery/nerve 咬筋動脈/神経 748
Coronoid process 筋突起 869
Condylar process 関節突起 869
Mandibular notch 下顎切痕 869
Zygomatic arch 頬骨弓 733
Buccinator muscle 頬筋 733

3)

顎関節 の輪郭を明らかにする(Fig.740,742)。外側面だけ関節包を切除して関節円板を露出させる。ライヘによっては、下顎骨 を動かして咀嚼運動を再現することができる。どのような運動の際に関節窩の後方に乗り上げるか。臼歯の擦り合わせはどのような関節運動か、よく観察せよ。

4)

あらかじめ関節突起 の下部を鋸で切断して顎関節 周辺を温存する。

5)

側頭筋 を起始から剥がして下方に反転する(Fig.733)。最初に側頭筋膜 を除去し、側頭筋の輪郭を明らかにする。前方ほど意外に厚い。側頭筋に分布する深側頭動脈深側頭神経 は、筋側に付けて剥離し、筋と共に下方に反転する(Fig.750)。下顎骨筋突起から下方に腱性に停止する部分をメスで注意深く切除し、筋突起をリューエルで割る。先に温存した咬筋動脈神経 を切らないように注意する。側頭筋の停止部も浮す。最終的に側頭筋と咬筋は血管・神経だけでつながる。下顎枝 も割ってよいが、深側の神経、血管の温存に注意(Fig.749)。

Temporomandibular joint 顎関節 740 tex2html_wrap_inline9405
Articular capsule 関節包742
Articular disc 関節円板742
Temporalis muscle 側頭筋 733
Deep temporal artery/nerve 深側頭動脈/神経 750
Ramus of mandible 下顎枝 868

6)

頭部切半後、口腔壁の剖出で見つけた舌神経 顎舌骨筋神経 を上方に、下顎骨と口腔壁を徐々に引き離しながら追求する(Fig.751)。あまり引き離すと神経が切れる。下顎骨内面で下顎孔 の位置(Fig.869)と下顎に隠れていた頬筋 の広がりを確認する(Fig.750)。 顔面動脈枝の上行口蓋動脈 が副咽頭間隙(p.gif)を経て、口腔壁に分布しているだろうか。

7)

下顎管 を開放して下歯槽動脈神経 を剖出するため、下顎骨(下顎枝)をノミとリューエルで慎重に砕いて除去する(Fig.750)。有歯顎ならば、歯槽に出入りする細い血管・神経を観察する。できれば下歯槽神経オトガイ神経 に連続するまで骨を除去する(Fig.748)。

Lingual nerve 舌神経 751
Mylohyoid nerve 顎舌骨筋神経 751
Mandibular foramen 下顎孔 869
Mandibular canal 下顎管 749 tex2html_wrap_inline9403
Ascending palatine artery 上行口蓋動脈 751
Inferior alveolar artery/nerve 下歯槽動脈/神経 749
Mental nerve オトガイ神経 749

8)

下顎神経枝 顎動脈枝 を確認する(Fig.751)。舌神経を注意深く上方へ追求して、まず鼓索神経 を剖出・温存する。鼓索神経は味覚線維と副交感神経 成分を運ぶ重要な神経だ。意識していないと切りやすいので、注意する。

内側翼突筋 外側翼突筋 の輪郭を明らかにする(Fig.750)。外側翼突筋が顎関節近傍に付着していることを確認する。顎動脈枝の中では中硬膜動脈 が圧倒的に有名である。最初に外側翼突筋を浮し、次いで筋束を除去しながら、下顎神経枝を剖出していく。頬神経 耳介側頭神経 は同定したか(Fig.751)。耳下腺が残存していれば顔面神経を残して耳下腺を完全に除去し、外頚動脈が浅側頭動脈 顎動脈 の2終枝に分れる部位を清掃する。側頭下窩で中硬膜動脈蝶口蓋動脈 は確認できたか。下顎神経根部の内側面には耳神経節 がある(Fig.835)。深いので、 中耳・内耳の解剖を終えて、頭部の最後に剖出した方がいい(p.gif)。 

Mandibular nerve 下顎神経 751
Maxillary artery 顎動脈 750
Chorda tympani nerve 鼓索神経 751Chorda tympani
Medial/Lateral pterygoid muscle 内側/外側翼突筋 750
Middle meningeal artery 中硬膜動脈 750Arteria meningea media
Buccal nerve 頬神経 751
Auriculotemporal nerve 耳介側頭神経 751
Superficial temporal artery 浅側頭動脈 750
Sphenopalatine artery 蝶口蓋動脈 751
Otic ganglion 耳神経節 835


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