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カウンタ
(Reset at 2002.1.21)
館長ご挨拶

 昨年は東日本大震災があり、私たちは命の重みを考えされられている。私は教室員とともに震災直後に不幸にしてお亡くなりになった方々の検案に宮城県に入った。遺体安置所の多くの犠牲者の方々のご遺体を見て自身の仕事の使命感と共にこれからの災害対策のあり方に強い決意を抱いている。実は阪神・淡路大震災の際も震災後に同様に入り、同じように遺体安置所で多くの犠牲者の方々の検案をさせていただいている。この時の経験や、かつて本州から北海道を襲った台風による風水害の犠牲者等の方々の経験を持って、今世紀初頭には、風水害被害に関する提言策定に加わらせていただいたが、残念ながらその後の政策には反映されておらず、危機管理のあり方の難しさを感じている。おそらくは、大きな自然現象を科学的に再現できること、予想できることが難しいことに起因しているのかも知れない。
 一方、医学・医療はどうだろうか。今、ここ標本館には、医学・医療への崇高なお考えによって献体なされた標本が多数あり、その展示数はわが国で最も多い。これらの貴重な標本から経験していない傷病の病態等を学ぶことができる。このことは、医学・医療の学徒のみならず、私達医療人が何を学び、何を感じ取り、そしてそれを実践にどう生かすか試されているとも言えよう。不安、昏迷の時代とも言われつつあるこの2010年代。私は、この標本にふれ、そして、そこから学び続ける以上、少なくとも医学・医療には不安、昏迷はないものと思っている。


松本 博志
医学部医学科基礎医学部門講座
法医学講座教授

 

 

 

 

 

 


 

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