札幌医科大学医学部

分子医学研究部門

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**「バイオ研究者・大学院生のための便利メモ」**

***このページは2001年2月22日に更新しました***

バイオ研究者・大学院生のための簡単な英語文例集 その28。

コラム  英借文は禁じ手。自己模倣もダメ。

高校生時代の英語の勉強の時、教科書にでてくるような文例をよく覚えて、これを借りてきて自分のいいたいことを表現するいわゆる「英借文」をするように指導をうけられたかたも多いかと思います。

確かに、高校生ぐらいまでの英語では、教科書にでてくるようなスタンダードなよい文章をきちんと覚えて、そのまま使ってみるというのは、もっとも正統的な英語の勉強法ですし、自分でオリジナルな構文をひねり出すよりはよほど能率もよいのです。

ところが、大学院生になってもこの習慣から抜け出せない人がいます。つぎはぎだらけで、局所的に自分のデータをちりばめたような原稿です。みんなが日頃よく読むのはやはりNatureでしょうか。ところが、Natureにでてくるような凝った文章を、自分の論文にそのまま拝借して使っている大学院生の英語原稿にしばしば遭遇します。

しかし、研究者は、自分の論文の中では、決して「英借文」をしないでください。これはダメです。英語の論文は、データに限らず論理の進め方や言い回しに至るまでもすべて自分のオリジナルでなくてはなりません。最初から最後まで自分の文章で書くことが大切です。決して同業者の雑誌から切り抜いて自分の文章みたいな顔しないでください。

なにも難しいことを言っているわけではありません。中学校や高校までに習ったような、単純な構文で、自分の言いたいことをシンプルに言い表してゆけばよいのです。3手先を読みながら

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ところで、論文も似たようなのをいっぱい書いて、私ぐらいの年齢になってくると、今度は他人の英語を盗んでくるという危険よりも、自分の昔書いた英語の模倣、すなわち自己模倣に陥る危険があり、心して戒めなくてはなりません。

日本語も、だんだん似たような書きぶりになる危険があります。わたしも、自己模倣に陥らないようにしよう、ということで、大学院生に報告書の原稿を書いてもらうこともあります。ところが、---困ったことに、私が以前書いた報告書からコピーしてそのまま抜き出してくる「要領のいい」学生がいるのです。こんなのをもらうと、何をやっているのかわかりません。若返るどころか、鏡で反射してくる自分の姿が見えるだけです。

自分の言葉で自分の考えを表現しよう、というのは、英語に限らず、日本語でも、また、研究に限らず、日常の会話でも、本当に大切で、しかもないがしろにされやすいものだと思います。そして、自己の模倣にも陥りやすいのです。




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