2001年7月3日c Daedalus(デダラス)って知ってましたか?
Natureからずいぶん紹介致しましたので、さらにもう一つ。昔からあるデダラスというコラム欄について紹介します。デダラスという人は、"an
Athenian architect who built the labyrinth
for Minos and made wings for himself
and
his son Icarus to escape from Crete.
と辞書には書いてあります。Nature のコラムの中では、異色の面白さです。
Daedalus: Phones and the brain
David Jones
One of the problems of using a mobile phone
is the brain's sensitivity to
microwaves.
Moving the antenna towards the
mouthpiece
would be a way to avoid this....
Nature 411, 1012 (28 June 2001)
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みなさんは、ディジタル世代ですから、活字になっているものはみんな正しいなんて信じるお馬鹿さんではありませんよね。私は、前ディジタル時代の生まれ。初めてこのデダラスの文章を読んだ時には驚きました。Nature誌に嘘が書いてあるわけないと、本気で信じていた若者にとっては、ショックでした。
今にして思うと、Nature誌はずいぶん間違いも嘘も多く活字になっている、そんな雑誌です。前の編集長のマドック氏が言っていましたが、Nature誌では、嘘か嘘でないか、読者が考えれば明らかにわかるような論文は、リビューアーの意見を聞いたりしないでそのまま掲載する方針だそうです。この意味わかりますか? つまり、明らかな嘘の書いてある論文も、ちゃっかり載せちゃうぞってことです。だって、読者が読めば、嘘かどうか一目瞭然じゃないか、だれにも迷惑かからないぞ、というわけです。
この態度、Nature誌に投稿して、「スペースの都合上、君の論文を載せる余裕がありません、本当にいい論文なのにゴメン」、なんて手紙をもらった経験のある人には許せないことですよね。こんな嘘の論文よけいに載せるぐらいなら、俺の論文載せてくれてもいいじゃないか、と怒りがこみ上げてくるのでは? 心配いりません。あなたの論文がNatureに通らないのは、スペースのせいなんていうのは嘘に決まってます。当然、一般の読者を楽しませるほどは面白くないからです、あしからず。それはそれは多くの実験の積み重ねで真実の固まりでしょうけれど、面白くないんじゃNatureには載りにくいのです。嘘の論文は面白い。日頃、こうあって欲しいなとでたらめに思った通りのことが、Natureには書いてあったりする。逆に、世の常識を180度回転させるような嘘が書いてあることもある。嘘の論文もあってこそ、本当の論文の読み方も楽しく読めるし、読み方もうまくなるのでしょう。嘘が5割、とびっきりの面白い本当の話が5割ぐらいと思ってNature誌を読んでみてください。
そのNature誌の中でも飛び抜けて面白いのがこのデダラスのコラムです。嘘800%の実力、あなたは楽しむゆとりがありますか。どうか、優雅なサイエンスのゆとりも身につけた紳士淑女に育ってください。私の未だに到達できない目標です。
濱田洋文