札幌医科大学医学部

分子医学研究部門
  近況と話題

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2003年5月2日a  Insulin/IGFと再生・遺伝子治療  濱田洋文
                        


Song, J. et al. Axons guided by insulin receptor in Drosophila visual system.  Science  300: 502-505, 2003.

Dickson, BJ Wiring the brain with insulin.  Science 300: 440-441, 2003.

 インシュリン受容体が脳で軸索 (axon) の配線のガイド (axon guidance) として機能しているという発見。インシュリン受容体にさらに新たなシグナル伝達経路 (Dock, Pak) を介して、軸索の配線ガイドという新規の働きが加わった。これだからバイオロジーは面白くて仕方ない、という研究者と、ああどうしてこんなに複雑なんだろう、やりきれない、という研究者とに分かれるかも知れません。ショウジョウバエのインシュリン受容体は1つしかないとのこと。でもヒトでは3つの受容体がこのファミリーに入ります。それぞれがどのように役割分担しているかも含めて、ずいぶん複雑そうです。私も、脳・神経・神経系の幹細胞などでインシュリン・インシュリン受容体(それぞれ3種)、インシュリン結合蛋白(これも6種以上)などが、どのように働いているか疑問に思いつつ、とっかかりのところで進まないで留まっている状況です。

 Chao W et al.  Strategic advantages of insulin-like growth factor-I expression for cardioprotection. J.Gene Medicine 5: 277-286, 2003.

 Ischemic-reperfusion injury (IRI) の前にIGF-Iを発現するアデノウイルスを心臓に局所投与すると梗塞のサイズを50%縮小できたというもの。IGF-Iペプチドを全身投与するよりも有利なのではないか、と論じています。私(HH)の感覚では心臓に梗塞前に投与するモデルは余り現実の臨床を反映していないように思えます。ストラテジーには難があるものの、この強い効果を何とかして臨床へ役立てられないかと考えてみたいものです。

 

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