札幌医科大学医学部

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                          2003年5月9日更新
                                        
2003年5月8日a 癌学会抄録2003
 「殺腫瘍アデノウイルスを用いた遺伝子治療」
Cancer gene therapy using fiber-modified oncolytic adenoviral vectors

腫瘍に対して選択的に増殖する殺腫瘍ウイルスは、進行癌の治療として従来から行われてきた化学療法・放射線療法・サイトカイン療法などと交差耐性を示さない、高い治療効果と選択性が期待されるものである。p53に結合するE1B55K欠失型アデノウイルスは、正常細胞での増殖は非常に弱いのに対して、p53経路(p14ARFないしp53の欠失)を持つ腫瘍細胞では増殖できる、腫瘍特異性の高いベクターである。またさらにE1AのRb結合部位を欠失した制限増殖型は、Rbによる細胞周期の制御が不能になった細胞、すなわちp16ink4aなどの変異をもつがん細胞ではウイルスの増殖が進むのに対し、正常細胞ではウイルスの増殖が起こらない。E1A変異とE1B55K欠失を併用すると、腫瘍特異性がさらに高まる。私たちは、殺腫瘍ウイルスにさらに外被ファイバータンパクの修飾を施して、感染効率を高めたり腫瘍選択性を付加した遺伝子治療ベクターの開発を試みている。キャプシド変異型の殺腫瘍ウイルスによる基礎実験結果をもとに、進行膵癌に対する臨床研究を計画している。

濱田洋文


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