札幌医科大学医学部

   分子医学研究部門
  近況と話題

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                          2003年6月16日更新

2003年6月11日

 

近況と話題---年金の話「年金を知れば国の仕組みが見えてくる」

 

 ここ1年間ほど、札幌医科大学では医師の免許貸しないし免許貸し類似行為の問題がクローズアップされています。「免許貸し」は、働いた実績なしにお金をもらっている行為で、違法。絶対ダメ。これは明らかです。一方、「免許貸し類似行為」は、実際にその病院で働いている実績のある医師が対象となるので、「免許貸し」とは、明確に区別されます。「免許貸し類似行為」という言葉は、わかったようなわからないような、どことなく判然としない、という方も多いのではないでしょうか。「免許貸し類似行為」という言葉は、私も最近になって初めて聞きましたので、充分に理解できているとは言えません。もし、以下の記載に誤解があればよろしくご指摘下さい。医師が勤務先で、常勤医師として認められるためには、月に16日以上の勤務を行っている実績が必要とのことです。大学院生などが、外勤先で、月に16日未満、たとえば、10日しか勤務していないような場合は、常勤としては認められず、非常勤となります。実際には非常勤なのに、常勤として数えられ、厚生年金などの被保険者にしてもらっている場合には、「免許貸し類似行為」となるとのことです。現在の年金制度では、パートタイマーで厚生年金に加入するのは、労働時間が正職員の4分の3以上とされているとのこと。ですから、研究生や大学院生などが、月に16日未満、たとえば、10日しか勤務していないような場合は、その勤務先で厚生年金などの被保険者にしてもらうことなく、国民年金の手続きをして月額13,300円(定額制、03年)を支払ってください。その勤務先で(こちらが頼まないのに)自動的に、厚生年金などの被保険者にしてもらえたなどということが、もしあっても、現在の制度では、「免許貸し類似行為」となると思います。ですから、本人が自覚と責任をもって、このようなことがないように勤務先と交渉して下さい。ただし、以下に述べるように、パートタイマーの厚生年金に関しては、次の年金制度改正次第では事情が変わってくるかも知れませんのでご注意下さい。
 以前、税金の話を「その1 序に変えて 税金を知れば社会の仕組みが見えてくる」2001年3月5日(月曜日)付けのホームページに紹介しました。今日は年金の話をしたいと思います。公的年金の話は、日本という国の基盤となるシステムなので、国家・国民に直接かかわる大切な話となり、非常に難しいのです。「年金を知れば国の仕組みが見えてくる」というわけですが、これは複雑。簡単に論ずることはできません。そこで、今回は当部の職員、学生や研究生や研究助手の方に関連した知識のみに絞って紹介します。医師や研究者としてだけでなく、日本の国民として、社会保険に関しての基本的な知識を持っておくことが非常に大切です。

 以下、断片的ですが、書いてゆきます。主に週刊東洋経済2003/6/14「年金カットに勝つ」から、引用・参考にしました。また、社会保険庁のホームページ、「年金基礎知識、公的年金とは」、というページ

http://www.sia.go.jp/outline/nenkin/chishiki/chmain.htm 

も参考にしました。

 年金の給付水準の削減

 今年の6月1日塩川財務相が、年金の給付水準の削減が避けられない見通しを示しました。高齢者の夫婦世帯への年金給付額が、月額23万円から、17万円程度に3割削減されるというもの。

 「総報酬制度」

 今年度から、毎月の給与とボーナス時の保険料率が同率になったため、社会保険料の徴収額がかなり増えているに違いありません。従来は、月給の17.35%、ボーナスの1%(それぞれ労使折半)であった保険料率が、月給、ボーナスとも区別なく13.58%(自己負担は6.79%、ボーナス上限額150万円)となりました。各月の保険料負担は若干少なくなるものの、ボーナス時の負担が重くなります(年金といっしょに控除されている健康保険料も同様)。年間賞与が月収の約2.5ヶ月以上、支払われている場合、負担額が増加することになります。ボーナスをもらう公務員や会社員の方々は、今度の夏のボーナスの明細が昨年までと大きく違っていることに気づくはずです。
 このような改正に伴い、給与の支給の方法も変わってきそうですね。

 第1-3号被保険者とは?

 1号被保険者、自営業者や学生。

 2号被保険者は、会社員と公務員。

 3号被保険者は、第2号被保険者の夫に扶養されている専業主婦。

 第2号被保険者は年金に関する手続きをしなくてもよい。勤務先の会社や役所が全て代行してくれるから。

 第1号、第3号の被保険者はきちんと手続きをしておかないと無年金になる。傷害年金、遺族年金などの仕組みもあり、税の面でも優遇されるため、入っておく方がメリットがある。

 次期の年金改正(04年度)にも注目しましょう

 先ごろ、厚生労働省では、制度の支え手を増やそうとパートタイマーの厚生年金加入を増やそうという案を示した。現在パートタイマーで厚生年金に加入するのは、労働時間が正社員の4分の3以上とされていて、収入要件はない。

 「免許貸し類似行為」の項で16日という数字が出てきましたが、普通の勤務日数を月当たり22日とすると、22 x 0.75=16.5、なので、この辺から算定された数字かも知れません(HH推測)。次期の年金改正(04年度)によっては、月に10日しかその勤務先で働かないパートタイマー(非常勤)でも厚生年金の被保険者になることができるようになるかも知れません。ただし、厚生年金の被保険者になったからといって常勤となったわけではないのは明らかです。常勤・非常勤の区別は、病院などの施設の認可・無認可などの規定に関連していますので、年金とは明確に区別して理解して下さい。

 質問: 共働きで厚生年金加入は損? もし厚生年金に入れるチャンスがあったらたとえ1ヶ月でも入っておいた方がよいのか?

 年収850万円未満の妻が厚生年金に20年以上加入すると、夫の厚生年金から加給年金や振り替え加算が付かなくなるので、夫婦の年金受給総額が少なくなることがある。夫婦の年齢差が大きい場合などは影響が大きいので、年金額の試算をしておくべき、とのことです。(週刊東洋経済2003/6/14「年金カットに勝つ」p48より)

 「専業主婦の年金優遇をどうするか」非常に難しい課題ですが、やはり、夫に寄りかかった老後、という考え方は捨てるべき時代(ibid、p34)ではないかと私HHも思います。すなわち、もし厚生年金に入れるチャンスがあったらたとえ1ヶ月でも入っておいた方がよい。年金の2階部分が大きくなりますから。もちろん、強制したり、説得したりする事柄ではありませんが、私はそう思います。

 自分の年金の履歴を確認しよう

 私HHも、今回の記事を書くために、わざわざ社会保険事務所(札幌医科大学から歩いてほど遠からぬところにあります)

http://www.sia.go.jp/intro/soshiki/jimusho/

に行って「被保険者記録」をプリントアウトしてもらいました。年金手帳を持参してゆけばすぐにやってもらえます。簡単ですので、自分の履歴の不確かな方は是非確認しておくと良いと思います。

 私の場合ですと、20歳から就職までの学生の期間(4年5ヶ月)がブランクですし、研究生として研究を始めてから全くの無収入の期間が2回ほどあり、ここでも未加入です。この頃も含めて、本来は、20歳から国民年金の手続きをして支払いを続けるべきだったのですね。60歳を過ぎてから実績をつくるよりも、若くて収入のない時期にちゃんと実績を作っておいた方が当然賢いわけで、失敗です。18歳で田舎から都会に出て、一人っきりのような生活だったし、年金のことなど一度も考えたことがないような気がします。

 このホームページを読む方の多くにとってはずいぶん先のことのように思われるかも知れませんが、自分や家族の、そしてみんなの老後を考える上でも、年金の知識はとても大切だと思います。

 社会保険事務所にいくと

 社会保険事務所にいくと「そこが知りたい国民年金」、「頼りになります。頼りにしてます。国民年金」というパンフレットがおいてありました。漫画で書いてあって、面白く読めますので、是非どうぞ。その中に、25歳の時に「どうせ60歳まで生きられまいと思った」、70歳で「人間なかなか死なんもんじゃ、年金払っときゃ良かった」、という4コマ漫画があります。とても面白い絵の漫画ですが、、、、私も実は、46歳になってしまった今でも、65歳まで生きているという気がしないのです。20年も先のことって、20歳だった昔から見ての40年先と、感覚的にはほぼ同等ですね。「60歳を過ぎてから実績をつくるよりも、若くて収入のない時期にちゃんと実績を作っておいた方が当然賢いわけで、失敗です。」と、今書いたばかりですけれど、実はこの考え方は正しくないのです。狭い範囲の損得勘定で年金を考えると、すぐにどこかでほころびが出ます。今、元気に働いている自分が、保険料を支払っていることによって、前の世代や不幸にして傷害を負った方々をいくぶんか支えることに役立っているのです。


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