“SLE関連用語” 2000.7.18


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膠原病

全身性エリテマトーデス 全身性進行性硬化症 結節性多発性動脈炎 皮膚筋炎
リウマチ熱 慢性関節リウマチ
自己免疫疾患

ループス腎炎

ループス抗凝固物質

狼瘡紅斑(>蝶形紅斑) ジスコイド疹 カルジオリピン リウマチ因子
抗核抗体 LE細胞

【膠原病】
collagen disease〈CD〉
《結合織病;collagenosis, connective tissue disease》
 Klemperer(1943年)により提唱された病理学的な疾患概念で,全身性エリテマトーデス全身性進行性硬化症結節性多発性動脈炎皮膚筋炎リウマチ熱慢性関節リウマチの6疾患を包括的にさす.すなわち,Klempererは,これらの6疾患においては,全身に系統的にみられる病変部にフィブリノイド変性と結合組織の粘液性膨化が共通してみられることから,これらの疾患は結合組織の膠原線維に変化が起こるという共通点をもっていることを指摘した084.

【全身性エリテマトーデス】
systemic lupus erythematosus〈SLE〉
《全身性紅斑性狼瘡,播種性エリテマトーデス,急性エリテマトーデス,急性び漫性紅斑性狼瘡;disseminated lupus erythematosus, lupus erythematosus acuta, acute disseminated lupus erythematosus》
 皮膚,腎,漿膜,神経,関節などの多臓器を侵す慢性全身性炎症疾患で,膠原病の一つ.病因は不明であるが,遺伝的素因,ウイルス感染,免疫異常の要素が複合的に関与して発症すると考えられる.組織学的には,諸臓器にヘマトキシリン体と血管壁や結合組織へのフィブリノイドの沈着がみられる.免疫組織学的にはIgG, IgM, IgAおよび補体成分の沈着がみとめられ,CoombsとGellの分類によるIII型アレルギーによる組織障害の型がみられる.本症は女性の発症が男性の5〜10倍多く,特に10〜30歳代の妊娠可能な女性に好発する.発熱,蝶形紅斑,関節痛,腎炎,漿膜炎,中枢神経症状,脱毛,光線過敏症,Raynaud症状,白血球あるいは血小板の減少症など,多彩な症状を呈する.皮膚症状としての紅斑は露光部に多く,顔の両頬から鼻背にかけての蝶形紅斑が特徴的.頸部,体幹,手や前腕にも少量の鱗屑を付着した紅斑がほぼ対称性にみられることが多い.検査では抗核抗体,特に抗二重鎖DNA抗体,抗Sm抗体,LE細胞,LE試験,梅毒血清反応の生物学的偽陽性反応などが重要で,上記臨床症状および腎生検所見とともに,本症の診断に利用される.副腎皮質ホルモンおよび免疫抑制剤が有効である

【進行性全身性硬化症】
progressive systemic sclerosis〈PSS〉
《進行性強皮症,全身性強皮症,汎発性強皮症,進行性皮膚硬化症;progressive scleroderma, systemic scleroderma, diffuse scleroderma》
 皮膚の硬化を主症状とし,全身の諸臓器特に食道,肺,胃,腸,関節などに進行性の線維化を生ずる難病で,膠原病の一つ.好発年齢は45〜65歳で,男女比は1:3で女性に多い.多くはRaynaud症状を初発とし,手指と顔面に浮腫状硬化を生じ,中枢側へと進行する.体幹の皮膚の硬化より始まるものもある.顔は表情乏しくなり,とがった鼻,小口症,舌小帯の短縮などが特徴.体幹の硬化部では色素沈着と光沢のある脱色素斑が混在することが多い.指趾尖に潰瘍を生じやすく,指趾短縮,指の屈曲拘縮など,ときに肢端壊疽を生じる.特徴的な皮膚の硬化以外に,関節痛,筋肉症状,肺線維症,心筋障害,嚥下障害,逆流性食道炎,消化管の壁の硬化症状,腎症状(蛋白尿,高血圧)などを合併する.病理組織学的には,真皮内膠原線維のび漫性硬化による皮膚萎縮のほか,多臓器にわたり,細動脈の内膜肥厚あるいは内腔狭窄がみられるが,原因は不明である.予後は良好ではなく10年生存率は約50%で,死亡症例の40%は腎不全あるいは悪性高血圧症が直接死因となる.確立された治療法はない

【結節性多発性動脈炎】
polyarteritis nodosa〈PN〉
《多発性結節性動脈炎,多発性動脈周囲炎,結節性動脈周囲炎;periarteritis nodosa》
 全身の中・小動脈に動脈全層炎の形で生じ,多発する性質をもつ系統的疾患で,結節性動脈周囲炎はKussmaul(1886年)の名づけた病名であるが,動脈の炎症は外膜だけでなく,中膜,内膜の全層にわたり,急性期には好中球,リンパ球浸潤の強い滲出性壊死性血管炎であり,フィブリン様変性を混じえることが多い.時がたつと肉芽形成,瘢痕性変化に進む.心臓の冠動脈に生ずると心筋梗塞で直接的な死因となる.血管炎の病巣にはIgGと補体がみられることなどから,自己免疫機序による疾患と考える人が多いが,抗原‐抗体系は確かめられていない.形態学的に似たものにWegener肉芽腫症の血管変化,川崎病の血管変化がある595

【皮膚筋炎】
dermatomyositis
 顔面,体幹,四肢に対称性に特徴的な紅斑,浮腫を生じ,筋症状としての筋力低下,自発痛,圧痛を生じる.中枢側の筋肉が侵されやすい.上肢挙上困難,首のささえが悪い,発声や嚥下障害を伴うことがある.典型例では眼瞼部のヘリオトロープ様の蒼紅色斑が特徴的である.爪囲,指関節背面に蒼紅色斑,爪床部の毛細血管拡張など.心筋障害,間質性肺炎,肺線維症,関節痛,成人例ではRaynaud症状などを合併.検査所見では筋原性酵素(AST, CPK,アルドラーゼ)の上昇が特徴的.小児ではしばしば石灰沈着を生じ,生命の予後は良いが機能障害を残す.成人では内臓の悪性腫瘍の合併が多い

【リウマチ熱】
rheumatic fever
 A群溶連菌の上気道感染に続発(通常は1〜4週後)する膠原病で,心炎,多関節炎,小舞踏病,輪郭状紅斑,皮下結節を主要症状とする.このうち最も重大なのがリウマチ性心炎であり,治療の目標は心臓弁膜症への移行を防止することにある.経口ペニシリンによる溶連菌感染予防が,再発予防に有効である048.

【慢性関節リウマチ】
rheumatoid arthritis〈RA〉
《リウマチ様関節炎;chronic rheumatoid arthritis》
 結合組織に炎症をきたす全身的な疾患であり,主に関節の滑膜に非特異的炎症を起こし,全身の多発性関節炎の病像を呈する.股関節や膝関節のほか,手関節や手指関節が侵されやすい.通常軽快と増悪を繰り返しながら関節の変形や軟骨の破壊をもたらす.一般に女性に多く,男性の3倍の罹患率である.初発症状は手指の朝のこわばり,関節の腫脹,貧血,発熱などがあり,しだいに定型的病像となる.末期には関節の著しい破壊のために荷重関節では人工関節に置換されることもある.治療には基礎的療法として,肉体的・精神的ストレスを減らし,局所を固定して安静を図ること,それに抗炎症剤の投与が行われる.基礎療法が効果がなければ金塩製剤の投与を行う

【自己免疫疾患】
autoimmune disease
《自己アレルギー疾患;autoallergic disease》
 自己の組織を構成する成分に反応する抗体,あるいはリンパ球が,持続的に産生されることによって組織障害をきたす疾患.Roittによると,1)臓器特異的自己免疫疾患で自己抗体も臓器特異的なもの(橋本病,自己免疫性溶血性貧血,交感性眼炎,天疱瘡,Goodpasture症候群など),2)臓器特異的自己免疫疾患で自己抗体は臓器非特異的なもの(原発性胆汁性肝硬変症,Sjo¨gren症候群など),3)臓器非特異的自己免疫疾患で自己抗体も臓器非特異的なもの(全身性エリテマトーデス,全身性進行性硬化症など)に分類される

【ループス腎炎】
lupus nephritis〈LN〉
《SLE nephritis》
 全身性エリテマトーデス(SLE)の腎合併症で,核成分を抗原とする典型的な免疫複合体糸球体腎炎である.無症状,あるいは軽微な蛋白尿程度のものからネフローゼ症候群を呈したり,急速進行性糸球体腎炎の形をとるものまで臨床像は様々である.SLEにおける腎病変は患者の60%程度といわれているが,臨床症状がなくとも光顕上変化があったり,光顕上変化がみとめられなくとも,螢光抗体法により糸球体に免疫グロブリンおよび補体の沈着がみとめられる例があるので,その頻度はさらに高いと思われる.組織学的には次の6型に分類する(WHO).1)正常糸球体型,2)メサンギウム増殖型,3)巣状分節型,4)び漫性増殖型,5)び漫性膜性型,6)末期硬化型.4)6)の予後は悪いが,ステロイド剤の大量投与を行うようになって4)の予後は著しく改善された。

【ループス抗凝固物質】
lupus anticoagulant
 全身性エリテマトーデス患者の血中に後天的に出現する凝固抑制物質.5〜10%の頻度でみられる.血清中にも存在し,Ba塩に吸着されず,56°Cで安定,33%飽和硫安で沈殿する.γ-グロブリン分画にあり,多くはIgGであるが,IgM例の報告もある.プロトロンビン活性化因子の作用を阻害し,プロトロンビンからトロンビンへの転化を妨げることが多いが,他の凝固因子やリン脂質と中間複合体を阻害することもある.検出法は患者血漿と正常血漿を混和し,プロトロンビン時間(PT)または活性化部分トロンボプラスチン時間(A-PTT)の凝固時間の補正効果により判定する

【狼瘡紅斑】
ろうそうこうはん
erythema lupinosum
 円板状エリテマトーデスにみられる紅斑.頬部,鼻部,手背,指背,耳介などに,対側性または片側性に境界鮮明な浮腫性,浸潤性の紅斑を生じ,多少の灼熱感を伴う.慢性に経過するうちに,角化萎縮性の局面を形成し,後に色素脱失を伴う瘢痕を残す.皮疹が四肢,体幹に汎発する場合は,全身性エリテマトーデス(SLE)に発展することが多い086.


蝶形紅斑


【〔慢性〕円板状エリテマトーデス】
discoid lupus erythematosus〈DLE〉;[lupus] erythematosus chronicus discoides
《円板状紅斑性狼瘡》
 皮膚疾患の一つで,皮疹は限局した隆起性の紅斑で,徐々に拡大し,中央部には萎縮,脱色が,周辺では色素増強がみられることが多い.顔面,特に鼻背,頬部,耳垂,側頸部,頭部,指背に好発する.頭部では脱毛斑となる.境界明瞭な角化性紅斑で,多くの場合薄い鱗屑が付着する.慢性に経過し,治癒後萎縮状の瘢痕を残す.全身状態は良好.日光照射により増悪することが多い.皮膚病変のみに終始することが多いが,汎発性の場合は全身性エリテマトーデスに移行することがある

【カルジオリ(ライ)ピン】
cardiolipin
《ジホスファチジルグリセロール;diphosphatidylglycerol》
 Wassermann反応の抗原で,梅毒の診断に他の方法と併用される.哺乳動物心筋から得られるジホスファチジルグリセロールで,コレステロールやレシチンも混合して,補体結合反応あるいはフロキュレーション反応の抗原となる.本抗原に対する抗体の消長は梅毒の経過とよく並行するが,他の自己免疫病でも陽性となるので注意を要する

【カルジオリ(ライ)ピン試験】
cardiolipin test
 カルジオリピン(動物細胞に普遍的に存在する)を抗原とする梅毒血清反応(STS)のこと.通常,レシチンを混合して特異性や鋭敏度を高める.1)補体結合反応によるWassermann法とその変法,2)抗原をカオリン粒子に吸着させて行う凝集法,3)同じくコレステロール,カーボンなどとともに浮遊液で行うガラス板法(VDRL法),4)その変法であるRPRカードテストなどがある.いずれも梅毒トレポネーマそのものを抗原とするTPHA法やFTA法より特異性において劣り,いわゆるBFP(生物学的偽陽性)が問題になるが,感染初期のスクリーニング検査や治療経過の追跡に有用である

【リウマチ因子】
rheumatoid factor〈RF〉
《リウマトイド因子》
 IgGのFc部分に対する自己抗体.慢性関節リウマチ患者の80%前後において血清リウマチ因子が陽性であるが,健常人でもみとめられることがある.慢性関節リウマチ患者関節液中にもみとめられる.検出は主として凝集反応が用いられるが,ヒトIgGを吸着させたラテックス粒子を用いるRA試験,ウサギIgGを吸着させたホルマリン処理赤血球を用いるRAHA試験,ウサギの抗ヒツジ赤血球IgG抗体を結合させたヒツジ赤血球を用いるWaaler-Rose試験などがあり,主としてIgMクラスのリウマチ因子を検出する

【抗核抗体】
antinuclear antibody〈ANA〉
《抗核因子;antinuclear factor〈ANF〉》
 真核細胞の核を構成する種々の物質に対する自己抗体の総称.全身性エリテマトーデス,混合性結合組織病,進行性全身硬化症,皮膚筋炎,多発性筋炎,Sjo¨gren症候群などの膠原病に高頻度,高力価に検出される.通常,動物細胞を用いた螢光抗体法で検出される.また抗核抗体陽性の場合でも,種々の異なる染色パターンが観察され,それらは通常5型に分類される.すなわち,1)均質型,2)辺縁型,3)斑紋型,4)核小体型,5)特異な染色型(たとえば抗セントロメア抗体など)で,これらの染色型と膠原病のタイプおよび病型との間に一定の関連性がみとめられている

【LE細胞】
lupus erythematosus cell〈LE cell〉
 Giemsa染色で赤紫色で染まる無構造な封入体をもつ多核白血球由来の細胞.全身性エリテマトーデス(SLE)において最も高頻度に検出される.DNA-ヒストン複合体に対する抗体(LE因子)が作用することにより膨化した核(LE体)を補体の存在下に多核白血球が貪食することにより形成される.通常茶こし法などのin vitroの操作を経て検出されるが,稀にin vivoでもみとめられる.Hargravesらが1948年に初めて報告した

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