虫垂炎過敏性大腸潰瘍性大腸炎・クローンポリープ腸悪性腫瘍イレウス腸炎 “腸の疾患”by fujii 2000.07.26

虫垂炎
概論
 急性虫垂炎は10〜30歳に多く、5歳以下や50歳以上には比較的少ない。虫垂炎は糞石やリンパ組織の肥厚その他により、近位虫垂内腔の閉塞のため、粘膜が貯留し、遠位側内腔は拡張し、粘膜は門脈血のうっ血による循環障害により破壊され、細菌が侵入・繁殖し、発症する。炎症が高度となり、膨張が進行すると、細動脈圧より内腔圧が高くなるので動脈血流障害となり、虫垂壁は梗塞を呈し、最後には穿孔に至る。

臨床症状
 @腹痛:初期には臍周囲や上腹部の広い範囲に、中等度の程度で持続的に痛みが続く。通常4〜6時間後に右下腹部に限局した間歇的な疝痛と変化するのが特徴である。
 A食欲不振・嘔気・嘔吐:食欲不振を訴えないときは本症でない可能性が強い。 
 B便秘・下痢
 C発熱:多くの症例では初期に37℃前後の軽度の発熱を伴う。初期の虫垂炎では39℃を越えることは少ない。
 D圧痛:右下腹部に圧通を伴うことが本症の特徴である。虫垂の位置によりMac Burney圧痛点(右前腸骨棘と臍とを結ぶ線の中央点)か、Lanz圧痛点(左右の前腸右骨棘を結ぶ直線上で、右前腸骨棘より1/3の点)等やその周囲に最も強い圧痛を有する。また圧痛を加えるときよりはむしろ手を離すときに強い痛みを訴える反動痛(Blumberg sign)や、触診時に腹壁が硬直する筋性防御は、腹膜に炎症がおよんでいる所見であり重要である。そのほかに左下腹部を圧すると右下腹部の痛みが増す Rovsing sign や、左側臥位で右下腹部の圧痛点を圧迫すると圧痛が増強する Rosenstein sign も、急性虫垂炎の診断に有用である。
他に、heel drop jarring test( 踵をあげてつま先立ちしたあと、踵を床につけた際炎症部位に疼痛を感じる)

一般検査所見
 ほとんどの場合に白血球数が10000〜15000と中等度の増加をしめす。白血球の増加が著明でなくとも、核の左方移動を認めることもある。きわめて重症のときや、高齢者または衰弱の著しい患者では、白血球はむしろ減少する。
 尿検査では、脱水による高比重をみたり、炎症が尿管や膀胱の周囲に及ぶと、尿沈渣に白血球や赤血球をみることがある。

特殊検査所見
 急性虫垂炎の診断は、ふつうは現病歴と臨床所見からで十分でありいたずらに特殊検査に時間をかけて、手術に踏みきるのを遅らしてはいけない。むしろ急性虫垂炎と考えにくいときに胸部や腹部のX線写真・腹部超音波検査・内視鏡検査等から他の疾患との鑑別を行う。

診断
 @初期における臍周囲や上腹部の鈍痛が次第に右下腹部に限局し、A軽度の発熱と白血球増多を伴い、B右下腹部に特有の圧痛と筋性防御や反動通を呈すれば診断は容易である。C月経前後の女性では症状が類似していても、急性虫垂炎でないこともあるので注意する。D逆に小児や老人では症状が軽いにもかかわらず、急性虫垂炎による穿孔性腹膜炎に進行していることもあり、診断が難しい。


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過敏性腸症候群(過敏性大腸)
概論
 本症は単一の疾患ではなく、下痢または下痢と便秘の交代とこれに伴う腹部症状の訴えがあるが、それらの症状を説明する器質的な病変が腸管および関連臓器に証明されないものを、腸管の機能異常によるものと推測してこう呼ばれる。その原因として精神身体医学的な面が重視されている。本来腸以外の臓器(膵等)の機能異常を考えた方が妥当な疾患まで本症に入れられている場合があり、心身相関の明白な例以外には、安易に本症と診断することは避けた方がよい。

臨床症状
 本症に特異的な症状はない。本症と診断された症例に多くみられるものは、
 @腹痛 A下痢と便秘 下痢と便秘は交互にくることが多いが、下痢のみの場合もある。
 B精神、神経症状:試験、審査等のストレスを受ける時に不眠、心悸亢進等に下痢が伴うのが典型的な症状。

病歴聴取上の問題点
 本症と診断することより、本症と診断されやすい、より本質的な疾患を見落とさないことがより重要。そのため前記症状について聞くだけでなく、前記諸症状を生じる可能性のある疾患を洩れなくチェックする必要がある。

一般検査
 @本症では通常一般検査での異常は認められない。
 A他疾患の除外のため、貧血、白血球増多、ツ反や血沈、核左方移動の有無、便細菌培養などを行う。

特殊検査
 性格検査:Cornell Medical Index、Y-Gテスト等。

診断の確定
 本症と診断するのはそれ以外の消化器の器質的疾患が除外され、機能的にも他臓器の障害より腸管の異常の方が考えやすい場合、本症を疑う。心身相関の明白なものは診断できる。

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潰瘍性大腸炎・クローン病
概論
 潰瘍性大腸炎原因不明の炎症性疾患で、大腸特に直腸を侵す。30歳以下の若年者に多い。
 通常は粘血便と下痢によって急性に発症し、治療が奏効すると寛解するが、容易に再燃して慢性の経過をとる。病変部位は直腸に始まり連続して深部大腸に広がる。病変の飛び越し(スキップ)はない。炎症の深さは粘膜層、粘膜下層に限られる 。また、癌化の危険がある

 クローン病若年者に多い原因不明の炎症性疾患であるが、炎症は主に回盲部を侵し、口腔から肛門までの全消化管に起こり得る
 病変は肉眼的に正常にみえる領域を飛び越して(スキップ)区域性に存在し、組織学的に肉芽腫を伴う全層性炎症である。
 本疾患は潜行性に発症し、さらに発熱、貧血、栄養障害等の全身症状を伴うことも多く、関節炎、虹彩炎、肝障害等の他臓器の病変を伴う場合もある。経過は緩徐ながら常に進行性で、罹患した病変部位を全部切除しても高率に再発して根治は期し難い。

臨床症状
 @潰瘍性大腸炎:最も高頻度でほとんど必発の初発症状は粘血便であり血便、下痢、腹痛が主症状で、重症例では頻回(1日6回以上)の下痢に血便、発熱、貧血等が加わる。 重篤な合併症に中毒性巨大結腸症がある。また、発癌を合併することがある。
中毒性巨大結腸症: 筋層の破壊、神経叢の麻痺などにより結腸が拡張。穿孔しやすく、穿孔による致命率は高い。

 Aクローン病腹痛が最も多く、この他に下痢、軟便、発熱、体重減少、貧血等が主なものである。ときに不明熱のみで初発して膠原病や悪性リンパ腫を疑われる場合もある。痔瘻、肛門周囲膿瘍等の肛門病変を伴うこともあり、これがあれば診断は容易である。

一般検査所見
 @潰瘍性大腸炎特有の所見はない。他の炎症性疾患一般と同様に炎症の程度を知る指標として、CRP陽性、血沈亢進、白血球(好中球)増多等が認められるが、クローン病に比べて軽度である。

 Aクローン病特有の所見はなく、CRP 陽性、血沈亢進、白血球(好中球)増多、貧血および血清鉄低下等がみられるが、一般に潰瘍性大腸炎よりも異常値の程度が大きい。

形態学的所見(X線、内視鏡、病理)
 @潰瘍性大腸炎
偽polyposis
粘膜に炎症がおこり、浅い潰瘍ができる。この潰瘍を修復するために肉芽形成、粘膜下肥厚、充血浮腫を生じる。⇔ポリープは腫瘍性の場合に用いる。
陰窩膿瘍(crypt abscess)
生検で陰窩に好中球が詰まった像が見られる。
易出血性
haustra(結腸膨起)の消失(鉛管像)
慢性炎症の結果、瘢痕化により結腸のだぶつきがなくなる。

 Aクローン病
縦走潰瘍
腸間膜付着部に一致して深い潰瘍が縦に走る。
敷石像(cobblestone appearance)
縦走潰瘍と直交する細い潰瘍と縦走潰瘍により残った正常粘膜が敷石状に見える。
非乾酪性類上皮肉芽腫
腸管に肉芽腫を作る代表的な疾患は、結核あるいはクローン病で、結核は乾酪壊死を伴うので、鑑別に重要。
副所見
縦列する不整形潰瘍またはアフタ
上部消化管と下部消化管の両者に認められる不整形腫瘍又はアフタ

 生検組織診断では、特有の肉芽腫が得られれば確診できるが、それ以外の場合臨床検査とX線および内視鏡所見を総合する必要がある。

診断
 潰瘍性大腸炎、およびクーロン病の診断および鑑別に最も有効なものは、発症経過と病変の存在部位の分布、および形態学的所見(X線、内視鏡、生検)であり、大部分の症例では鑑別は難しくない。特にクーロン病の可能性を否定できない症例では必ず上部消化管内視鏡検査(特に疑わしいビラン等からの生検)や小腸造影を行うべきである。生検で診断できなくとも小腸に特徴ある潰瘍像等がみられれば、それで確診ができる。特徴的な肛門病変があっても同様である。

潰瘍性大腸炎と鑑別を要する疾患
 1.感染性腸炎:細菌性赤痢、アメーバ赤痢、カンピロバクター大腸炎、腸炎ビブリオ、サルモネラ腸炎。便培養による病原菌の検索、ただしアメーバだけは材料の暖かいうち生理食塩水に希釈して直ちに検鏡。腸炎ビブリオは原因食品も検索する。海外渡航歴等を考慮する
 2.虚血性大腸炎:高血圧、動脈硬化、常習便秘の既住、激しい疼痛に伴う排便、下血で急激に発症、通常短期間で自然回復し再発しない。
 3.偽膜性大腸炎抗生物質服用中または服用後発症。大腸粘膜上のフィブリン偽膜の存在、Clostridium difficileの検出。
 4.薬剤性出血性大腸炎:抗生物質服用後短期急性発症、暗赤色発赤し白苔はない。粘膜全体からび慢性ににじみでる出血(大量)。Klebsiella oxytocaの高率分離。
 5.アフタ様大腸炎:アフタ様潰瘍の生検(リンパ濾胞と炎症)、アフタ以外病変のないこと。

クーロン病と鑑別を要する疾患
 1.腸結核:羅患部の生検により、@組織像から結核性肉芽を証明するか、A培養して結核菌を証明すれば確定。B便連続培養で結核菌を証明すれば確実(まれ)、Cツ反陽性で抗結核療法で改善をみる。
 2.エルシニア腸炎:細菌培養、血清抗体価上昇。
 3.ベーチェット潰瘍:ベーチェットを疑わせる全身諸症状の存在。通常単発で打ち抜き型、粘膜下の肉芽腫性変化に乏しい。
 4.小腸悪性リンパ腫:発熱のみを主症状にしている時期には鑑別が難しい。全身リンパ組織検索、小腸造影、上部および下部消化管の生検でも決め手がなければProbe Lapaも必要。
 5.アミロイドーシス:終末回腸に生じたとき、問題となる。生検組織からアミロイドの検出が決め手。

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ポリープ
ポリープ 腫瘍性 腺腫(良性) 腺管腺腫
腺管絨毛腺腫
絨毛腺腫
癌(悪性)  
非腫瘍性 過誤腫
炎症性
その他

癌に進展しやすいあるいは癌化している可能性の高いポリープ
ポリポーシス
ポリポーシスとはポリープが多発している状態。

腺腫
家族性大腸腺腫症(FAP: Familial adenomatous polyposis)
大腸全域に何百という腺腫が発生する遺伝性疾患で100%癌化する。癌抑制遺伝子であるAPC ( 5q21、常優 )の欠損によって生じる。治療は大腸全摘。
Gardner症候群
FAPの亜型。デスモイド(筋腱膜線維腫症)合併。
Turcot症候群
FAPの亜型。medulloblastoma合併。原因遺伝子はAPCだが常染色体劣性遺伝。
HNPCC(遺伝性非ポリポーシス大腸癌;hereditary nonpolyposis colorectal cancer)
ミスマッチ修復遺伝子の欠損。常染色体優性。大腸癌、卵巣癌、子宮内膜癌の危険大。

過誤腫(正常細胞のが配列を変えて過形成したもの。≠腫瘍 基本的に癌化なし)
Peutz-Jeghers 症候群
散発性のポリープが小腸を中心とした全消化管に発生。常染色体優性。口唇、手足への色素沈着と腸重積を特徴とする。まれに、多臓器癌、卵巣癌併発。
若年性ポリポーシス(juvenile polyposis)
非常に希な疾患。奇形を伴う。
Cowden病
PTEN(10q23)欠損。皮膚結節を合併。常染色体優性。

その他
Cronkhite-Canada症候群
炎症性ポリポーシス類似のポリポーシスで組織型未確定。遺伝性なし、癌化ほとんどなし。脱毛、爪の萎縮、蛋白漏出性胃腸症合併

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腸悪性腫瘍

小腸悪性腫瘍
概論:小腸悪性潰瘍としては、腺癌、悪性リンパ腫、平滑筋肉腫、カルチノイドなどがあるが、十二指腸乳頭部癌以外には小腸の癌の頻度は低く、全消化管癌の1%程度で、腺癌が約半数を占める。
 症状:腹痛、出血、狭窄、イレウス、腸重積、穿孔、腸捻転、体重減少など。食道、胃、大腸、十二指腸、胆嚢、膵臓に病変の認められない原因不明の腹痛や消化管出血では、小腸の腫瘍も考慮する必要がある。

大腸悪性腫瘍
 大腸癌以外の悪性腫瘍としてはカルチノイド、大腸肉腫(悪性リンパ腫・悪性黒色腫・平滑筋肉腫など)がある。カルチノイドの好発部位は虫垂、ついで直腸である。肉腫では悪性リンパ腫が約半数を占め、盲腸に多い。 転移は血行性に肝臓および肺が多く、リンパ行性転移は上方転移、側方転移、下方転移の3パターンがある。

大腸癌
概論
 早期大腸癌(胃癌の早期癌の定義と同様、癌の浸潤が粘膜下層までにとどまっているもの)と進行大腸癌(癌の浸潤が固有筋層以下に及んでいるもの)とに分類されている。
 @疫学:本邦では近年大腸癌が増加しており、21世紀には欧米と同じく、癌死の第1位を肺癌と競うと予想されている。発生部位も欧米のように直腸癌の割合が減り、S状結腸および右側結腸の割合が増えてきている。高脂肪食、低残渣食の食生活が発癌に関与しているとの報告がある。
 A発生部位:直腸およびS状結腸に約60〜80%発生し、肛門よりに多い傾向がある。
 B発生母地:大腸癌は腺腫から発生すると考えるadenoma-carcinoma sequence説正常粘膜から直接発生すると考えるde nova説があり、いずれも正しいと考えられているが、両者の存在頻度についてはなお議論が少なくない。大腸癌の発生母地として、100個以上の腺腫性ポリープが密生多発する家族性大腸腺腫症(常染色体優性遺伝)は重要であり、10歳代でもすでに癌の合併がみられることがあり、年齢が増すにつれて大腸癌の発生頻度が増大する。
 C肉眼分類:表1および表2参照。
 D病理学的分類:腺管腺癌(高、中、低分化型)、粘液癌、印環細胞癌、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌など。
 E病期分類:表3参照。

  表1 進行大腸癌の肉眼分類(図1) ※2型が一番多い。
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0型:表在型。1型:腫瘍型。2型:限局潰瘍型。3型:浸潤型。4型:び慢浸潤型。5型:特殊型。
0型は早期癌に属し、1〜4型はそれぞれ胃癌のBorrmann1〜4型に相当する。
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  表2 早期大腸癌の肉眼分類(図2)
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沍^:隆起型(殫型:有茎性、殱型:広基性)。
a型:表面隆起型。
b型:表面平坦型。
c型:表面陥凹型。
。型:陥凹型。
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  表3 Dukes分類
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A:癌腫が腸壁内に限局して存在し、リンパ節転移のないもの(腸壁内とは固有筋層まで  をいう)。
B:癌腫が腸壁外に広がっているがリンパ節転移のないもの。
C:リンパ節転移のあるもの。
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臨床症状
腹痛、血便、便通異常(便秘も下痢も起こる)。


進行大腸癌の肉眼分類

早期大腸癌の肉眼的分類

診断
 小腸腫瘍では上記症状などより小腸二重造影検査を行い、診断されることが多いが、大腸腫瘍では症状以外に健診にて便潜血を発見され、注腸造影や内視鏡にて診断が確定することが多い。特に小さいものは、注腸検査や内視鏡により初めて見つかり、内視鏡的ポリペクトミー後の病理組織検査にて癌と確定することが多い。この場合、断端に癌の浸潤がなければそのまま内視鏡あるいは注腸造影にて経過観察する。ただし、径が10mm以上のものや形態的に内視鏡で取れないときには手術が原則である。a+c(平皿状)発赤型の癌は大きさの割にsmへの浸潤傾向が強い場合もあるので、手術的に切除するのがよい。

一般検査
@直腸指診
A便潜血反応:高率に陽性となる。最近は抗ヒトヘモグロビンAo抗体を用いた方法が開発され、ヒトヘモグロビンに対する特異性が高く、偽陰性や偽陽性が少ない。したがって、従来行われていた、便潜血反応検査用の食事も不要である。また、大腸癌のスクリーニングに用いられるようになり、効果をあげている。
B鉄欠乏性貧血 C低蛋白血症
D血中CEA値の上昇:血中CEA(carcinoembryonic antigen)値は進行した大腸癌の場合には約90%に上昇が見られるが、早期癌では陽性率が低い。

CEA値:CEAは癌細胞の量とよく相関し、外科治療後の再発の有無や完全に病巣が切除されたかどうかの判定に用いられる。手術により正常化した値が上昇してきたときは再発が疑われる。

特殊検査
@Χ線造影:終末回腸の腫瘍は注腸造影にても描出することができる。進行癌ではapple-core像を呈することがある。
A内視鏡検査:
B骨Xp:家族性大腸腺腫瘍のGardner症候群では骨腫や軟部組織腫瘍を合併する。

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イレウス
概論
 イレウスとは、小腸の通過障害により、腸内容が完全にまたほとんど通過しない状態のことで、腸閉塞症という。嘔気・嘔吐・腹痛・腹部膨満・排ガスおよび排便の消失等の症状を伴う。イレウスは、腸管の狭窄や閉塞による機械性イレウス(器質性イレウス)と、腸管の狭窄や閉塞をまったく伴わず、運動機能低下が原因の通過障害による麻痺性イレウス(機能性イレウス)とに分類される。さらに、機械的イレウスのなかで腸管の血行障害のないものを単純性イレウス、血行障害を伴う場合を絞扼性イレウスと呼び、機能性イレウスは麻痺性イレウスと痙攣性イレウスに分けられる。

単純性イレウス
閉塞部位の口側では、閉塞部位を通過させようとして蠕動不穏がおこる。また、蠕動不穏では聴診で金属音が聞こえる。
肛門側では内容物がなくなり大腸ガスが移らなくなり、排便停止になる。
より口側に閉塞が生じるほど、ためらえる量が少ないので、嘔吐の回数が多くなり、早期に嘔吐する。また、回盲弁の存在と容積が大きいので大腸閉塞による嘔吐は起こらない。嘔吐物は、十二指腸下降脚より上の閉塞では胆汁が混じらない。回盲弁不全により大腸狭窄による嘔吐がある場合、便臭がすることがある。
立位のX線像では、液面形成(Niveau)と呼ばれるガスと液面の境が観察される。仰臥位では、小腸のイレウスでは拡張腸管にKerckring襞(細かい)を認めるが、大腸のイレウスではhaustra襞を有する腸管像を認める。回盲弁の存在により小腸閉塞では小腸ガス、大腸閉塞では大腸ガスしか観察されず、両方が観察された場合は、単純イレウス+回盲弁不全or麻痺性イレウスである。
※正常の腹部X線では小腸ガスはない。

絞扼性イレウス
血流障害が壊死に進行すれば、痛みは持続性になり放置すれば穿孔し、腹膜炎をおこし、麻痺性イレウスに進展し、危険なので緊急手術の適応

麻痺性イレウス
単純性イレウスでは蠕動運動が亢進するのに対し、蠕動運動が消失する。そのため、腸管雑音が観察されない。腹膜炎では炎症が全般に波及するので、小腸、大腸ともに蠕動が低下するので両方にガスが認められる。

イレウスで特徴的なその他の画像
 coffee bean sign: S状結腸軸捻転によりコーヒー豆状の像が見える。

検査所見
 閉塞部より口側の腸管内に多量の体液性水分の貯留をみるので脱水状態となり、血液は濃縮するので、血色素・ヘマトクリット・血漿蛋白濃度は上昇する。また尿量は減少し、尿比重は増加する。血液中のNa、Clは減少しアルカローシスを呈する。
 発熱、白血球増多、白血球の左方移動を伴うときは絞扼性イレウスを考える。(∵腹膜炎)

治療
保存的治療(補液と、チューブによる減圧、禁飲食など)が原則だが、絞扼性イレウスでは緊急外科手術を行う。

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腸炎
概論  
  腸管に生じる炎症の総称であり、種々の原因によって発生し得る(表1)。
感染、毒素、食品中毒、化学薬品、抗生物質服用による菌交代現象、X線などの物理的作用、循環不全、アレルギーなどによる病因の明らかなものと、潰瘍性大腸炎とCrohn病などがある。

    表1 腸炎の病因と分類
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@感染性腸炎:
a.細菌性腸炎:サルモネラ症、大腸菌性腸炎、細菌性赤痢、キャンピロバクター腸炎、エルシニア腸炎、コレラ、ブドウ球菌や腸炎ビブリオによる食中毒etc. 
b.ウイルス性腸炎:エンテロウイルス(ポリオ、コクサッキー、エコー)、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、ロタウイルスetc。 
c.原虫:ランブル鞭 毛虫etc。
d.真菌。
A化学物質などによるもの:
a.毒キノコなどの中毒。
b.制癌剤、下痢などの薬品。
c.アルコール。
B物理的作用によるもの:
a.x線などによる放射線照射性腸炎。
b.寒冷など。
C抗生物質:
a.過敏反応によるもの。
b.菌交代現象によるもの:偽膜性腸炎。
D腸管粘膜循環不全:
a.虚血性腸炎。
b.ショック。
c.尿毒症性。
Eアレルギー性腸炎:好酸球性腸炎。
F病因不明なもの:
a.潰瘍性大腸炎。
b.Crohn病。
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※食中毒 "ブ腸サんはボツ"
ドウ球菌 毒素 30min
炎ビブリオ ↑ 1〜2hrs
ルモネラ ↓ 3〜8hrs
ボツリヌス 感染 24hrs
診断

 腸炎の鑑別には問診が必要であり、食事の内容、抗生物質など薬剤の服用の有無、放射線治療あるいは被曝の有無などを丁寧に質問する必要がある。

参考
北里大学 内科診断検査アクセス

http://bme.ahs.kitasato-u.ac.jp/qrs/imd/index.html

わかりやすい内科学 文光堂
病態生理できった内科学−Part6-消化器疾患 医学教育出版社

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