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眼窩内容

生体観察  (Fig.819)

結膜 隅角 眼底 の生体観察は眼科外来にて希望者10名程度の小グループで行なう。

Conjunctiva 結膜 783
Iridocorneal angle 隅角 819
Fundus of the eye 眼底 822 tex2html_wrap_inline9403

眼窩の開放  (Fig.780,787,790)

眼窩  はとても複雑なので図譜などでよく予習せよ。特に外眼筋 の位置関係と神経の走行は必須で、何も分からないままに進むとすっかり破壊してしまい、眼窩の解剖がただの思い出作りになってしまう。

眼の解剖は、まず一側で行ない、さらに復習をしてから残り一側を解剖する。一度に左右とも解剖してはいけない。

頭蓋底を再度よく観察した後に(p.gif)、前頭蓋窩 硬膜 を剥がす。前頭蓋窩を作る前頭骨 篩骨 蝶形骨 の縫合を確認する(Fig.780)。

Orbita 眼窩 787 tex2html_wrap_inline9403
Anterior cranial fossa 前頭蓋窩 779
Dura Mater 硬膜 767
Frontal bone 前頭骨 780
Ethmoid bone 篩骨 780
Sphenoid bone 蝶形骨 780

頭蓋底 から慎重にノミを当てて、眼窩上壁を一部開放する。強靱な眼窩骨膜 が見えたら(Fig.808)、それを破らないように押込み、リューエルで眼窩上壁を割りながら除去し、広く開放する。眼窩上壁に進入した前頭洞 (Fig.837)が眼窩と一緒に開放されることがある。眼窩口上方に前頭骨が残るので、これもリューエルと鋸で除去する。眼窩上神経 滑車上神経 は、眼窩内容側に付けて温存すること。篩骨篩板 を含む眼窩内側壁(Fig.789)も温存する。

Periorbita 眼窩骨膜 808
Frontal sinus 前頭洞 837
Supraorbital nerve 眼窩上神経 791
Supratrochlear nerve 滑車上神経 791
Cribriform plate 篩骨篩板 780Lamina cribrosa

続いて眼窩 の外側壁を開放する。開放された眼窩上壁からピンセットを入れて、眼窩骨膜 に包まれた眼窩内容 を内側上方に寄せる。この際、眼窩外側壁との間に緊張する細い神経が見つかれば、涙腺 に副交感神経 成分を運ぶ涙腺神経-頬骨神経交通枝である(Fig.797)。側頭筋 側頭骨から剥がして下方に反転しながら、眼窩外側壁(Fig.790)をリューエルと鋸で除去する。眼窩内容、特に涙腺 を損傷しないように注意する。涙腺が分からなければ早くスタッフに聞く。

Lacrimal gland 涙腺 797
Communicating branch between
zygomatic and lacrimal nerve 涙腺神経-頬骨神経の交通枝 797
Temporalis muscle 側頭筋 733
Temporal bone 側頭骨 790

眼窩内容  (Fig.803,805,807,808)

1)

眼窩内容を覆う眼窩骨膜 を上方と外側から除去する。筋や血管・神経を温存しながら、眼窩脂肪体 をひたすら除去していく。

2)

上斜筋 は最も壊れやすい。最初に輪郭を明らかにする(Fig.809)。その後部上縁で細い滑車神経 を確保する(Fig.803)。上斜筋の滑車は、周囲の解剖を進めないとスルスル動いてはくれない。

3)

涙腺 上眼瞼挙筋 上直筋 外側直筋 内側直筋 を同定する(Fig.809)。ここでいきなり深部に進もうとすると、すっかり破壊してしまうので注意すること。前頭神経 を浮していく(Fig.803)。

Superior oblique muscle 上斜筋 809
Trochlear nerve 滑車神経 803 N. trochlearis(IV)
Levator palpebrae superioris muscle 上眼瞼挙筋 809
Superior/Inferior rectus muscle 上/下直筋 808,809
Medial/Lateral rectus muscle 内側/外側直筋 809
Frontal nerve 前頭神経 803

4)

上眼瞼挙筋 上直筋 だけを前端で切断して後上方に反転する(Fig.803,804)。他のすべての外眼筋 は最後まで切らずに温存する。注意深く脂肪を除去して視神経 に至る。視神経の剖出を急ぐと、細かい鼻毛様体神経 短毛様体神経(Fig.805)を切ってしまう。くれぐれも無理しないで、詳細は眼窩内容を脱転して視野を広げてからの方がいい。長・短毛様体神経を後方にたどり、外側直筋の内側面に接して小さな毛様体神経節を探す。

5)

眼窩内容を内眼角外眼角  からメスではずして、上方に脱転する。内眼角上方で骨ぎりぎりに眼窩内容を剥がせば、上斜筋 滑車眼球側に温存される。眼窩内容を骨から剥がし取るように上方に脱転する過程で、下斜筋 が骨から剥がれる。下斜筋の輪郭を明らかにすると、太い動眼神経下枝 が容易に見つかる(Fig.806)。下方で眼窩下動脈 の枝が緊張することがある。外側壁で涙腺に至る細い神経が緊張したら、糸をかけてラベルしておく。

上記の作業で眼瞼靭帯 が切れる。内眼角・外眼角では、眼瞼の芯を作る瞼板 内側外側眼瞼靭帯によって 眼窩に固定されており、そのすぐ深側後方では眼窩隔膜という結合組織が眼窩口を塞いでいる(Fig.792,796)。

Optic nerve 視神経(II) 803 Nervus opticus
Nasociliary nerve 鼻毛様体神経 805
Long/Short ciliary nerve 長/短毛様体神経 805
Ciliary ganglion 毛様体神経節 805
Medial/Lateral angle of the eye 内/外眼角 783,784
Superior/Inferior oblique muscle 上/下斜筋 808,810
Infraorbital artery 眼窩下動脈 806
*Palpebral ligament *眼瞼靭帯 796
Superior/Inferior tarsus 上/下瞼板 796

6)

内眼角を切断する際、時には鼻涙管 も切断されるのでその断面を確認する(Fig.799,800)。しかし多くの場合、眼輪筋に続く丈夫な膜に覆われたまま涙嚢 は眼窩側に残っている。この膜をメスで切開すると初めて涙嚢の広がりと鼻涙管が見える。鼻涙管からゾンデを下方に挿入し、鼻腔側から観察する。

7)

上下左右あらゆる方向から、神経と血管を剖出する。繰り返すが、上眼瞼挙筋 上直筋 以外の筋を切ってはいけない。眼窩内容を覆う眼窩骨膜は全周にわたり除去されただろうか。眼窩内側に緊張する動脈があれば前篩骨動脈 であろう(Fig.806)。

Nasolacrimal duct 鼻涙管 800
Lacrimal sac 涙嚢 799
Anterior ethmoidal artery 前篩骨動脈 806

8)

脂肪 を完全に除去して、神経を筋から後方にたどる。眼球の後方も清掃して、細い血管・神経を剖出する。眼球と眼筋停止部の間にあるヌルヌルしたテノン鞘 Tenon's  (Fig.801,802)は、その気でいないと除去してしまう。

9)

次の神経(枝)、神経節、動静脈を確認せよ。眼動脈 以外では、中硬膜動脈 が眼窩内容に分布することも多い。静脈は上眼静脈 が主流である。     

Ophthalmic artery/nerve 眼動脈/神経 806
Middle meningeal artery 中硬膜動脈 803
Oculomotor nerve 動眼神経 806 N. oculomotorius (III)
Abducens nerve 外転神経 805 N. abducens (VI)
Lacrimal artery 涙腺動脈 804
Superior ophthalmic vein 上眼静脈 777,807

眼球  (Fig.819,823)

1)

外眼筋や眼窩の血管・神経を温存したまま、上方から下方に向けて眼球によく切れるメスを入れて、視神経 の一部と眼球 を直線的に矢状断する。ジグザグしてはいけない。

2)

ドロドロの硝子体 を慎重に除去する。黒い網膜色素上皮層がブドウ膜(脈絡膜)と共にはがれてくる。強膜 ブドウ膜 網膜色素上皮層 網膜神経部の4層を区別する(標準組織学各論 p.436-437)。眼球の発生はラングマン p.322-330 参照。

3)

虹彩 瞳孔 水晶体(レンズ) を観察する(Fig.819)。コリコリしたレンズをはずしてもいい。網膜 の光受容部と非受容部の間の鋸状縁 を見て、これを虹彩と誤解しないように。

4)

鋸状縁で後方から網膜を除去しながら毛様体 を観察する(Fig.823)。前眼房 角膜 を観察する。毛様体と角膜の間の隅角 について、希望者は隅角鏡の示説を受ける。隅角は、緑内障 を理解する上でポイントになる。隅角から前眼房内の眼房水を吸収するシュレム管 Schlemm's  についてはFig.823及び標準組織学各論 p.419,422,425 参照。

Eyeball 眼球 Bulbus oculi
Vitreous body 硝子体 819
Sclera 強膜 819
Chorioid ブドウ膜(脈絡膜) 819
Retina 網膜 819
Iris 虹彩 819
Pupil 瞳孔 819 tex2html_wrap_inline9403
Lens 水晶体 819
*Ora serrata *鋸状縁 819
Ciliary body 毛様体 823 tex2html_wrap_inline9403
Anterior chamber of eye 前眼房 819
Cornea 角膜 819
Iridocorneal angle 隅角 823

眼窩から頭蓋底  (Fig.780,807)

 

外眼筋が後方で付着する総腱輪 (Fig.815)を観察する。と言っても、切開しないと理解できないかも知れない。総腱輪の中を視神経眼動脈 が通る。視神経に進入する眼動脈枝は何本見つかったか。細いが重要な栄養動脈だ。その1枝は、眼底で見る網膜中心動脈 になる(Fig.821,822)。上眼窩裂 を剖出しながら、そこを通る神経(IIIIVV-1VI)を同定する(Fig.780)。下眼窩裂 下眼静脈が通る。眼窩の下壁で眼窩下動脈神経 を見つけ、骨を慎重に割りながら長く剖出する(Fig.807)。余裕があればノミを用いて上顎1-3歯の歯槽まで追求する。

頭蓋底の解剖と脳外科の研修が終了してから、動脈・神経を眼窩から海綿静脈洞(Fig.773)まで連続させる。総腱輪は最後にメスで開放する。前後の篩骨動脈  (Fig.806)は、鼻の解剖に支障が出るので末梢までは追及しない。

*Common tendinous ring *総腱輪 815
Optic nerve 視神経(II) 815 Nervus opticus
Opthalmic artery 眼動脈 803
Central artery of retina 網膜中心動脈 821
Superior/Inferior orbital fissure 上眼窩裂/下眼窩裂 787
*Inferior ophthalmic vein *下眼静脈 747,807
Infraorbital artery/nerve 眼窩下動脈/神経 807
Cavernous sinus 海綿静脈洞 773
Anterior/Posterior ethmoid artery 前/後篩骨動脈 806


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