表情筋の解剖はすでに触れた(p.)。皮下組織内で、表情筋を剥離除去しながら深側の血管・神経を剖出する(Fig.736)。顔面動脈 は表情筋の剖出の際にすでに下顎底 で捉えているだろうか。自分で拍動を触れて、生体における位置を確認する。顔面動脈と言っても、主な分布域は口の周囲である。上唇動脈 、下唇動脈 を剖出する。キーセルバッハ部位 Kiesselbach に分布しそうな上唇動脈は見つかるだろうか。キーセルバッハ部位とは、鼻中隔最前部の鼻出血の好発部位である(Fig.830)。さらに顔面動脈を上方にたどる。顔面動脈の終枝である眼角動脈 には個体差が多い。弱い場合は、浅側頭動脈枝の顔面横動脈 が代償している。
Facial muscles | 表情筋(顔面筋) | 728 | ||
Subcutaneous tissue | 皮下組織 | |||
Facial artery | 顔面動脈 | 746 | ||
Base of mandible | 下顎底 | 754 | ||
Superior/Inferior labial artery | 上/下唇動脈 | 736 | ||
Kiesselbach's (Little's) area | キーセルバッハ部位 | 830 ![]() | Locus Kiesselbachii | |
*Angular artery | *眼角動脈 | 736 | ||
Superficial temporal artery | 浅側頭動脈 | 736 | ||
*Transverse facial artery | *顔面横動脈 | 735 |
眼窩上動脈 ・滑車上動脈 を、 眼窩口上縁内側部で、同名の神経と共に剖出する(Fig.791)。まずは正統的に皮下組織をほぐして剖出してみよう。頭蓋冠をはずし(p.)、頭皮を帽状腱膜ごと前頭骨から眼窩に向けて剥離していくと、これらの血管・神経を速やかに捉えることができる。眼窩上動脈・神経、滑車上動脈・神経の区別は、眼窩内容の解剖が始まるまで待つ(p.
)。両者は親動脈(あるいは神経の根部)が異なる。
Supraorbital artery/nerve | 眼窩上動脈/神経 | 791 | ||
Supratrochlear artery/nerve | 滑車上動脈/神経 | 791 | ||
Orbita | 眼窩 | 787 ![]() | ||
Frontal bone | 前頭骨 | 787 |
眼窩下動脈・神経 は学生の予想よりも深い部位で枝分れする。眼窩口下縁から眼輪筋 を下方に剥がしながら深く掘り下げ、上顎骨 に接して動脈・神経を捉える。眼窩下神経は本来は ヒゲ(重要な触覚)の神経だが、上顎歯前部の支配神経としても重要である(Fig.866)。
Infraorbital artery/nerve | 眼窩下動脈/神経 | 791 | ||
Maxilla | 上顎骨 | 787 | ||
Upper teeth | 上顎歯 | 866 ![]() |
オトガイ動脈 ・神経はオトガイ上方で下顎骨に接して表情筋を剥がしながら見つける。後に下顎骨を砕いて下歯槽動脈・神経を剖出する際に指標とする(Fig.748)。
Mental artery/nerve | オトガイ動脈/神経 | 736 | ||
Mandible | 下顎骨 | 754 | ||
Inferior alveolar artery/nerve | 下歯槽動脈/神経 | 748 |
頬部で耳下腺管 をあらかじめ温存しておく(Fig.856)。耳下腺管に沿って独立した副耳下腺 があるだろうか(Fig.731)。耳下腺 をくずしながら、顔面神経
根部に近い耳下腺神経叢 を剖出する(Fig.736)。耳下腺手術 の際には温存に苦慮する。耳下腺と下顎骨の位置関係に注意して、生体で耳下腺を触診してみる。広頚筋と顎下三角の剖出の際に顔面神経頚枝が見つかっていれば(p.)、これを顔面神経根部までつなぐ(Fig.735)。
顔面筋(表情筋)を剥離しながら顔面神経 の分枝を剖出する(Fig.730)。上顎神経 ・下顎神経 ・頚神経叢 などの末梢と細い交通があるはずだ(Fig.699,736)。こうした交通を介して感覚成分を受けている。ただし、耳介側頭神経 (下顎神経枝)との交通は耳下腺分泌の副交感神経成分 を運ぶ(Fig.730,732)。1か所でも見つけたいところだ。この交通を見つけるためには、耳下腺くずしを丁寧に行なわねばならない。耳介側頭神経は、浅側頭動脈が現段階で同定できればその近傍を走行する枝から下方に追求することができる(Fig.736)。顔面における顔面神経枝については興味があれば詳細に剖出してほしい。耳下腺くずしの最中に温存すべき構造として、神経の他に下顎後静脈 がある(Fig.716,747)。変異に富み知名度は低いが、頭部と頚部を結ぶ静脈路の要をなす。剖出しながら顔面静脈 、外頚静脈、内頚静脈などと連絡させる(Fig.736)。なお、耳下腺は後方までピンセットできれいに除去されているほど、後の解剖がはかどる。
Parotid gland | 耳下腺 | 856 | Glandula parotidea | |
Facial nerve | 顔面神経(VII) | 730 | Nervus facialis | |
Parotid duct | 耳下腺管 | 856 | ||
Accessory parotid gland | 副耳下腺 | 856 | ||
Parotid plexus | 耳下腺神経叢 | 736 | ||
Maxillary/Mandibular nerve | 上顎/下顎神経(V-2/V-3) | 835 | ||
Branches of the cervical plexus | 頚神経叢の枝 | 699 | ||
Auriculotemporal nerve | 耳介側頭神経 | 736 | ||
Superficial temporal artery | 浅側頭動脈 | 736 | ||
Retromandibular vein | 下顎後静脈 | 736 | ||
Facial vein | 顔面静脈 | 736 | ||
External/Internal jugular vein | 外/内頚静脈 | 736 |