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頚部から顔面

顎下三角  (Fig.699,724,726)

顎下三角  とは、顎二腹筋 前腹後腹下顎底 がつくる三角である(Fig.724)。広頚筋を上方に下顎骨まで完全に反転する。反転した広頚筋の内面で顔面神経頚枝  が見つかる(Fig.699)。深側の構造を傷つけないように注意しながら、 顎下三角を覆う浅頚筋膜を除去する。

Submandibular triangle 顎下三角 724
Digastric muscle 顎二腹筋 726 M.digastoricus
Anterior/Posterior belly 前腹/後腹
Base of mandible 下顎底 754Basis mandibulae
Platysma muscle 広頚筋 699Platysma
Facial nerve 顔面神経(VII) 699 Nervus facialis
Cervical fascia (Superficial layer) 浅頚筋膜 726

顎下腺 の輪郭を明らかにする(Fig.726)。顎下腺に埋没するように蛇行上行していく顔面動脈 その枝を損傷しないよう注意する。ピンセットで浅側にえぐり出すように顎下腺の剖出を進める。無理をすると顎下腺管 や血管が切れてしまう(Fig.855)。顔面動脈枝のオトガイ下動脈 を温存しながら 顎下リンパ節  を丁寧に剖出する(Fig.716,726)。深頚リンパ節鎖との連絡が確認(想像)できたら最終的にはリンパ節をすべて除去する。舌癌 の臨床などで重要になるリンパ節 である。

外頚静脈の根をできれば残しながら、耳下腺 の輪郭を剖出していく(Fig.699)。特に下部では皮下の固い結合組織を除去するのに難渋する。メスを小刻みに用いて大耳介神経 を助ける。この機会に胸鎖乳突筋をさらに上方まで反転し、合せて副神経を上方まで剖出温存しておくと、後で大きな時間的節約になる(Fig.701)。

Submandibular gland 顎下腺 726
Facial artery 顔面動脈 726 Arteria facialis
Submandibular duct 顎下腺管 855
Submental artery オトガイ下動脈 727
Submandibular nodes 顎下リンパ節 726
External jugular vein 外頚静脈 699
Parotid gland 耳下腺 699Glandula parotidea
Great auricular nerve 大耳介神経 699 Nervus auricularis magnus
Sternocleidomastoideus muscle 胸鎖乳突筋 699 Musculus sternocleidomastoideus
Accessory nerve 副神経(XI) 701 Nervus accessorius

■付図(顎下三角) 

figure1237

 

担当者指定課題 リンパ節実習(詳細は配布プリント参照)

実習の進行に応じてリンパ節を採取し,整理箱(工具ネジ箱)の所定の区画に入れる。

採取リンパ節(ABC・・は整理箱の区画名)
A.気管前リンパ節+前縦隔リンパ節(肺3a番:ほぼ腕頭静脈周囲)(p.gif)
B.右気管傍リンパ節(肺2番)+右気管気管支リンパ節(肺4番)(p.gif)
C.左気管傍リンパ節(肺2番)+左気管気管支リンパ節(肺4番)(p.gif)
D.前縦隔リンパ節(肺3p番:ほぼ大動脈弓周囲、左総頸動脈根部)(p.gif)
E.気管分岐下リンパ節(肺7番) (FはEより下方で食道に接する)(p.gif)
F.傍食道リンパ節(肺8番)+肺間膜リンパ節(肺9番) (食道108、110番)(p.gif)
G.腸間膜根部リンパ節(胃14番) (上腸間膜動静脈根部の周囲)(p.gif)
H.肝十二指腸間膜内リンパ節(胃12番)(p.gif)
I.腹腔動脈幹リンパ節(胃9番)+左右胃動脈幹リンパ節(胃8番)+脾動脈幹リンパ節(胃11番)(p.gif)
J.大動脈周囲リンパ節(胃16番) (腹腔動脈、上腸間膜動脈根部を除く)(p.gif)
K.上深頸リンパ節(肩甲舌骨筋・内頸静脈交叉部より上方)+(顎下リンパ節)(p.gif)
L.下深頸リンパ節(肩甲舌骨筋・内頸静脈交叉部より下方) (食道102、104番)(p.gif)
M.閉鎖リンパ節(大腸282番)+内腸骨リンパ節(閉鎖動脈根部から内腸骨動脈周囲)(p.gif)
N.狭義の腋窩リンパ節(鎖骨下縁より遠位)(p.gif)

舌骨上筋群  (Fig.727,853,854)

舌骨上筋群 とは次の4つの筋を指し、支配神経はそれぞれ異なる。

Suprahyoid muscles 舌骨上筋群 854
Digastric muscle 顎二腹筋 854M. digastoricus
Anterior/Posterior belly 前腹/後腹
*Stylohyoid muscle *茎突舌骨筋 854
*Mylohyoid muscle *顎舌骨筋 853M. mylohyoideus
*Geniohyoid muscle *オトガイ舌骨筋 853

舌骨上筋群は、口腔底 を形成する一種の「横隔膜」であると同時に、開口筋嚥下筋  である(Fig.854)。まず、顎二腹筋 前腹中間腱が最初に確認できる。中間腱の浅側に密着して、大きなリンパ節 がしばしば観察される。頚静脈二腹筋リンパ節 という。 頚部リンパ節鎖の最上部に位置しており、医師がルーチンに触診で検索する。また顎二腹筋中間腱には、後方から茎突舌骨筋 が巻きつくように合流している。茎突舌骨筋は、後に茎状突起 を探す手がかりになる(Fig.859)。顎二腹筋中間腱のすぐ下方には太い舌下神経 とその伴走静脈 があり、必ず見つけて温存する(Fig.727)。

顎二腹筋前腹下顎底 から切離して下方に反転すると、外側から来る支配神経(顎舌骨筋神経) が見つかる(Fig.727,付図解剖体左)。後の側頭下窩の解剖の際(p.gif)に中枢側(下顎神経)とつながるから温存しておく(Fig.751)。顎二腹筋前腹舌骨レベルまで下方に反転し、顎下腺を適当に上方に反転すると、口腔底の主体をなす顎舌骨筋 の広がりが分かる(Fig.727)。支配神経は浅側(外面)を走る。顎二腹筋前腹と同じ下顎神経枝(V-3) である。前正中線付近で顎舌骨筋を下顎骨から一部剥がして深側を剖出すると、強力なオトガイ舌骨筋 が見つかる(Fig.855,付図解剖体右)。

以上の剖出過程で同定しがたい神経を発見することがある。例えば、顎舌骨筋神経皮枝舌咽神経 皮枝など。これより先の口腔底の解剖は、頭部を切半してから舌・ 咽頭などと同時に行なう(p.gif)。

Floor of the oral cavity 口腔底 855 tex2html_wrap_inline9403
Styloid process 茎状突起 859
Hypoglossal nerve 舌下神経(XII) 727N. hypoglossus
Accompanying vein of hypoglossal nerve 舌下神経伴行静脈 727
Base of mandible 下顎底 754
Mylohyoid nerve 顎舌骨筋神経727
Mandibular nerve 下顎神経(V-3) 751
Hyoid bone 舌骨 854

外頚動脈の枝  (Fig.702,746)

総頚動脈 外頚動脈 内頚動脈 に分れる部位を確認する(Fig.702)。2動脈にはさまれた股の部位には、頚動脈小体 など重要な血圧受容体と感覚性神経が存在するから、動脈をツルツルにしてはいけない(Fig.769)。まず、現在分かる範囲で外頚動脈の枝を下から順に確認する(Fig.746)。

External carotid artery 外頚動脈 746
Common carotid artery 総頚動脈 702 Arteria carotis communis
Internal carotid artery 内頚動脈 702 Arteria carotis interna
Carotid body 頚動脈小体 769

1)

第1枝である上甲状腺動脈 を下方にたどり甲状腺まで追求する(Fig.702)。周囲には頚神経ワナの枝や上喉頭神経 などがある。上甲状腺動脈から上喉頭動脈が分れているだろうか。上喉頭神経と上喉頭動脈 は、甲状舌骨膜を貫通して喉頭に入る(Fig.711,p.gif)。

2)

外頚動脈の第2・3枝である舌動脈 顔面動脈 の根部には、自律神経叢が固く巻きついている(Fig.892)。この2つの動脈の根部には共同幹形成 などの変異が見られる。

Superior thyroid artery 上甲状腺動脈 702
Ansa cervicalis 頚神経ワナ 702
Superior laryngeal artery/nerve 上喉頭動脈/神経 702
Lingual artery 舌動脈 701
Facial artery 顔面動脈 702

3)

オトガイ下動脈 は、顎下リンパ節を観察しながらすでに剖出している(Fig.727,p.gif)。舌動脈 は舌骨舌筋 の深側を走行してに向かうので、舌下神経 とは伴走しない(Fig.724)。舌下神経はすでにきれいに剖出されているだろう。舌骨舌筋を少しずつ舌骨から剥がして上方に反転し、舌動脈の走行を確認する(Fig.897)。

以上3本の外頚動脈枝は、口腔・咽頭の運動のためか根部で迂曲蛇行している。

4)

後頭動脈上行咽頭動脈は深くてまだ確認できないかも知れないが、いずれ副咽頭間隙の解剖の際に確認したい(p.gif)。後頭動脈の末梢は、背部(後頭部)の皮下で大後頭神経の剖出に苦労した折に、すでに観察している(Fig.698,p.gif)。

Submental artery オトガイ下動脈 727
Hypoglossus muscle 舌骨舌筋 724
Occipital artery 後頭動脈 748
*Ascending pharyngeal artery *上行咽頭動脈 892


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