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胸部  (Fig.631-633)

 

温存されている皮神経 を再確認する。腸肋筋 と最長筋 の間から脊髄神経後枝外側枝 が皮下に出現する。腸肋筋の肋骨付着を少しずつ剥がしながら、後枝外側枝を追求する。支配神経は見つかっただろうか。腸肋筋などの深背筋 は、肋骨角 (Fig.155)より背側に位置する。

次に、最長筋 を処理する(Fig.631)。最初に表面に見える腱あるいは腱膜性の部分をすべてメスで剥がすように除去する。次いで最長筋を外側に寄せながら、横突起 (副突起)に付着する深い腱を探す。その白い腱に沿って、外側下方にピンセットで筋をほぐすように分けていく。最長筋をタテにほぐすように骨付着からピンセットで一気に引き下ろすのが、分かりやすく解剖するコツである。不思議な程、神経(後枝外側枝)は切れない。筋全体としては外側に反転しつつ、内面で外側枝由来の支配神経を調べていく。最終的に、最長筋を横突起より外側まで大きく寄せてしまう。以上の過程で、後枝外側枝が横突起のレベル(横突起を結ぶ横突間靭帯 のすぐ深側)まで剖出されていなくてはならない。

Spinal nerves 脊髄神経
Lat. cutaneous branch of post. ramus 後枝外側枝 626
*Iliocostalis muscles *腸肋筋 631
Costal angle 肋骨角 155
*Longissimus muscles *最長筋 631
Transverse process 横突起 658
*Intertransverse ligament *横突間靭帯 633,663

腸肋筋の外側に近接して肋骨挙筋 がある(Fig.632,633)。脊髄神経前枝後枝の支配域境界にあり、系統解剖学・比較解剖学上は興味深い筋である。何枚かの筋の肋骨付着を剥がして内側上方に反転する。注意して行なえば支配神経が見つかる。脊髄神経後枝 からも前枝(ここでは肋間神経) からも神経が来る可能性がある。肋骨挙筋 のすぐ外側に連続している胸壁筋は外肋間筋 だ。肋骨挙筋を反転したら、その深側を注意深く剖出して肋間神経(脊髄神経前枝) を見つける。深側の後縦隔や肺を損傷しないよう注意する。

横突間靭帯 (Fig.632,663)を切断して後枝外側枝 を中枢側に追求すると、椎弓 の浅側、つまり横突起 より内側に後枝内側枝 血管が見つかる。今度は、内側の血管・神経を末梢側に向けて剖出する。血管・神経を追求する過程で、長い筋束の1本1本がどこに付着するかを確認しながら、半棘筋 棘筋 を次第に除去していく(Fig.632)。この部位はしばしば針も刺す(傍脊柱ブロック) 手術も多いのだが、多くの医師は血管・神経をきちんと見たことがない。血管・神経をできるだけ温存して観察する。

半棘筋は、浅い筋束ほど長く棘突起 と横突起を結び、深い筋束ほど短くなり、ついには隣接する椎骨 を結ぶようになる。1椎骨飛ぶ筋束を多裂筋 と呼び、隣接して張る筋束(剖出がそこまで到達できたか)を回旋筋 と呼ぶ(Fig.633)。

脊髄神経後枝内側枝は、基本的には多裂筋のすぐ浅側を内側に走行し、その後は棘突起に密着して下行する。神経に伴走する動脈もあるが、血管の多くは椎弓に密着して内側に向い、棘突起に密着して浅側下方に向かう。外椎骨静脈叢 と呼ばれる発達した静脈網を上胸部で観察せよ。できるだけ多くの脊髄神経後枝内側枝 を見つけて、棘突起から剥離する。

*Levator costae muscles *肋骨挙筋 632,633
Spinal nerves 脊髄神経
Anterior(Ventral) ramus 前枝 626
Posterior(Dorsal) ramus 後枝 626
Lateral cutaneous branch 外側枝 626
Medial cutaneous branch 内側枝 626
External intercostal muscle 外肋間筋 632
Intercostal nerve 肋間神経 632
*Intertransverse ligament *横突間靭帯 633,663
Semispinalis muscles 半棘筋 632
Spinalis muscles 棘筋 632
*Multifidus muscles *多裂筋 632,633
*Rotatores muscles *回旋筋 633
Vertebral arch 椎弓 627
External vertebral venous plexus 外椎骨静脈叢 689

■付図(腰痛) 

■付図(椎間板ヘルニア) 

☆脊髄の観察 

作業1. 脊髄を摘出しても根の高さが分かるように、下記の高さの後根を束ねて色糸を結べ(剖出してあれば神経根に結んだ方が明確)
C5:青 T1:緑 T5:黄色 T10:黒 L1:赤 S1:白

☆☆脊髄に明確な節が刻まれているわけではない。第7頸髄とは、第7頸神経の最も頭側の根糸が起こる部位から第8頸神経の根糸が起こり始める直上までの範囲を指す。

作業2. 第2外科のDrが苦労してアダムキービッツ動脈(前根動脈の太いもの)に糸を結んでいるはずなので、確認する。(アダムキービッツ動脈の糸は、脊髄摘出の際に必ず体側に残すこと)

<観察1> C2後根の最も頭側の根糸が起こる部位から脊髄円錐までの長さを測れ
定規は器具戸棚にある(   mm)

<観察2>脊髄の分節と椎骨の分節のズレを確認する(上述☆☆参照)。
第7頸随は、C(  )-C(  )の横突起の高さにある(C7ではないはず)
第5胸随は、T(  )-T(  )の横突起の高さにある
第10胸随は、T(  )-T(  )の横突起の高さにある
第1腰随は、T(  )-T(  )の横突起の高さにある
第1仙随は、L(  )-L(  )の横突起の高さにある
脊髄円錐は、L(  )-L(  )の横突起の高さにある

作業3. 脊髄を全長にわたり摘出する。硬膜は体側に残す。脊髄をつぶさないように慎重に。作業1でつけた色糸は脊髄につける。神経節や神経根が剖出されていなければ脊髄につける。アダムキービッツ動脈とそれに結んだ糸は、脊髄摘出の際に必ず体側に残すこと!!

<観察3>脊髄を指定の高さで横断して計測し、各断面の特徴を明らかにする。
第6-7頸随、第5-6胸髄、第1-2腰髄、第1-2仙髄

脊髄の最大幅前角の最大幅左右の前角間の距離
第7頸随mmmmmm
第5胸随mmmmmm
第1腰髄mmmmmm
第1仙髄mmmmmm


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Akiko Oshiro
1998年01月19日 (月) 16時56分03秒 JST