肋骨弓 と胸骨剣状突起 に付く横隔膜 の起始が見えたら、いったん開胸作業をやめて、全員で横隔膜を観察する(Fig.162,233,245)。素人には横隔膜が水平に位置するという誤解があるが、筋性部分はむしろタテ方向に走る(Fig.362)。タテ方向の筋束は後体壁にもあり、後日解剖する(p.)。
横隔膜と他の筋の位置関係を確認する。腹直筋 の肋骨起始は胸壁の前面にあるから横隔膜とは離れている。反転した前胸壁の内面に胸横筋 があり、下方は腹壁で観察した腹横筋 と連続している。肋骨弓では、胸横筋 ・腹横筋と横隔膜の起始が噛み合っている(Fig.261,p.) 。胸部と腹部を区切りたい横隔膜と、胸部から腹部まで連続したい横筋が、いかに肋骨弓を住み分けているか理解する。横隔膜の胸骨部・肋骨部の間は、解剖では胸肋三角 と呼ばれ、上腹壁動静脈 が通過する (Fig.162)。臨床では左をラーレー孔 Larrey 、右をモルガニ孔 Morgagni と呼び、腹部消化管が上方に脱出してくる。小児外科で緊急を要する横隔膜ヘルニア の1つである。左右ではモルガニ孔ヘルニアの方が多い。 内胸動脈 は上腹壁動脈 と筋横隔動脈 に分れる(Fig.260)。
反転した胸壁 は、必要に応じて横隔膜起始を剥がし、本体から完全にはずしても差し支えないが、急ぐことはない。前胸壁自体の解剖は p. を参照する。後で再び胸壁を乗せて復元し、胸部内臓との位置関係を確認するので、肋骨を追加切除してはいけない。肋間と胸部内臓の位置関係がずれるからである。
Diaphragm | 横隔膜 | 162 | ||
Rectus abdominis muscle | 腹直筋 | 162 | ||
Transversus thoracis muscles | 胸横筋 | 162 | ||
Transversus abdominis muscles | 腹横筋 | 162 | ||
Costal arch | 肋骨弓 | 261 | ||
Sternum | 胸骨 | 153 | ||
Xiphoid process | 剣状突起 | 153 | ||
Sternocostal triangle | 胸肋三角 | 162 | ||
Superior epigastric artery/vein | 上腹壁動/静脈 | 162 | ||
*Musculophrenic artery | *筋横隔動脈 | 162 |