next up previous
Next: 下腸間膜動脈  (Fig.331334) Up: 腹部消化管 Previous: 腹腔動脈、上腸間膜動脈  (Fig.293295,326,365)

消化管の内景  (Fig.296,318,335)

消化管は摘出しないで、原位置で切開を加える。 

 の名称について復習せよ(p.gif)。胃を大弯 に沿って噴門 から幽門 まで切開する(Fig.296)。胃を腹部から切除してはいけない。中がよごれていれば、スポンジや布で拭き取る。粘膜面のヒダ を造影写真(MDL:Fig.304)と比較して観察する。大弯に沿って粗大なヒダfold, Falte が縦走する。胃の3部における粘膜ヒダの違いをよく頭に入れる。胃小窩(Gastric foveolae) は分かりにくいかも知れない。粘膜をできるだけ剥がして筋層3層を確認する。C領域を中心に行う。幽門括約筋 は明瞭だが、噴門 はどうだろうか。斜走筋が噴門に集まることが確認できるライヘがあれば報告する。胃と食道 を切り離してはいけない。噴門は逆流しやすい部位だが、胃内圧が高いことを応用して手術で治すのは比較的やさしい(食道アカラシア の手術)。どこをどうしたらいいと思うか。

Greater curvature 大弯 295
Cardiac orifice 噴門 296
Cardia 噴門部 296
Body 胃体(部) 296
Pylorus 幽門 296
(pyloric)Antrum 幽門洞(しばしば幽門部と同義) 296
Pyloric sphincter muscle 幽門括約筋 296

十二指腸 ではループの外まわりから切開を入れて、典型的な輪状ヒダ を観察する。絨毛はこのヒダの辺縁に並ぶ。膵頭部 を前面から必要最小限で崩しながら、総胆管 膵管(ウィルズング管)  副膵管(サントリーニ管)  を剖出する(Fig.318)。サカナの骨のように膵管枝が配列する。剖出した総胆管と膵管が開口するファーター乳頭(大十二指腸乳頭)  を確認する。中にオッデイ括約筋 がある。胆膵管合流異常が認められたら報告する(Fig.318-324)。合流異常の型によっては高率に胆管癌 を発症する。副膵管は小十二指腸乳頭 に開口したか。膵頭部の膵管の枝分れには変異が多い。膵の発生と膵管、副膵管の位置関係はラングマン p.232-233 参照。なお、十二指腸球部は十二指腸上部の胃側大部分を指す。生体では十二指腸球部の右下縁に、鋭い上十二指腸角(SDA)  がある(内視鏡ビデオ参照)。        

Duodenum 十二指腸 316
Superior part(portion) 第1部(上部) 317
Descending part(portion) 第2部(下行部) 318
Horizontal part(portion) 第3部(水平部) 318
Ascending part(portion) 第4部(上行部) 318
Circular fold 輪状ヒダ 318
Common bile duct 総胆管 318
(Main)Pancreatic duct 膵管(ウィルズング管 Wirsung's) 318
Accessory pancreatic duct 副膵管(サントリーニ管 Santorini's) 318
Greater duodenal papilla 大十二指腸乳頭(ファーター乳頭 Vater's) 318
Sphincter at duodenal papilla オッディ括約筋(Oddi's) 319
Lesser duodenal papilla 小十二指腸乳頭 318

回腸内面で、米粒様の集合リンパ小節(パイエル板 Peyer's)    が見つかったら報告する。切開した腸間膜付着対側に多いという。高齢者では、退縮して不明瞭。

回盲部 の内腔を観察するため、血管のない側つまり自由ヒモ から盲腸 terminal ileumIleumende(回腸末端を指す慣用名)  を切開して、バウヒン弁(回盲弁)  虫垂口 を確認する(Fig.335)。横行結腸 で3本の結腸ヒモ 結腸膨起、結腸膨起と結腸膨起の間の半月ヒダ を確認する(Fig.341)。アッペ(虫切) 天国日本の虫垂切除痕 とまれな先天性虫垂欠損 をマクロで鑑別するのは案外むずかしい。        

Ileum 回腸 340
Ileocecal junction 回盲部 335
Cecum 盲腸 335
Ileocecal valve 回盲弁(バウヒン弁 Bauchin's) 335
Appendix 虫垂 335
Orifice of appendix 虫垂口 335
Transverse colon 横行結腸 341
Taenia 結腸ヒモ 341
Taenia libera 自由ヒモ 341
Taenia mesocolica 間膜ヒモ 341
Taenia omentalis 大網ヒモ 341
Haustra 結腸膨起 335
Semilunar fold 半月ヒダ 335

ここで腹部断面のイメージができるかどうか、友人を透視しながら繰返し頭の中で再現する。そのためには、第1腰椎体の高さ、第2腰椎体の高さと決めて、集中的に同一平面を剖出・観察する必要がある(Fig.370-373)。最初から教科書の図を覚えても短期記憶にしかならず、また応用が効かない。 

ビデオで『胃上部早期癌の手術』 を供覧する。次のような手順で作業が進む。

          <手術のストーリー>
(腹腔を開放後)              (左下から)
                        ↓
左右胃大網動脈にクリップ      膵前筋膜の剥離、膵の露出
    ↓                   ↓
肝十二指腸間膜の開放          横行結腸間膜の剥離
    ↓                   ↓
右胃動脈の結紮,切離           胃大網動脈の切離
    ↓                   ↓
  小網切開                大網の切除
    ↓                   ↓
腹部食道の露出,切離   胃幽門部の切離(噴門側3/4を切除)、残胃断端の縫合
    ↓                   ↓
脾を前方へ脱転、短胃動脈の結紮,切離  脾門部から脾動脈根部の郭清
    ↓                   ↓
左胃動脈の結紮,切離            消化管再建
     (右上へ)

next up previous
Next: 下腸間膜動脈  (Fig.331334) Up: 腹部消化管 Previous: 腹腔動脈、上腸間膜動脈  (Fig.293295,326,365)

Akiko Oshiro
1998年01月19日 (月) 16時56分03秒 JST