腹膜実習の時に観察した項目を再確認する。そのためにはライヘを選ばなくてはならない。衝立状の子宮広間膜 の上縁には卵管 があり、下縁には基靭帯 がある(Fig.401,419)(C.D.Clemente のAnatomy の図は今1つ分かりにくい、付図参照)。
Uterus | 子宮 | 401 | ||
Broad ligament of uterus | 子宮広間膜 | 399 | Lig. latum uteri | |
Round ligament of uterus | 子宮円靭帯 | 399 | Lig. teres uteri | |
Ovary | 卵巣 | 401 | Ovarium | |
*Fimbriae of uterine tube | *卵管采 | 401 | ||
Uterine tube | 卵管 | 401 |
すでに腹膜を剥がしている。解剖開始前にまず子宮支帯 の配置を知識として整理する。「子宮支帯」は日本で頻用されるノミナである。まず、前部子宮支帯 を切断して子宮 と膀胱 を大きく引き離す。やや不明瞭な後部子宮支帯を切断して子宮と直腸 を引き離すと、 ディノビエ筋膜 という疎性結合組織層が下方に展開する。子宮広間膜 の基部を指で探って、静脈にうっ滞した血液でコリコリした基靭帯(中部子宮支帯) を同定し、ヒモか糸でラベリングして温存する。これが広範子宮全摘術 ならば尿管トンネル作成という作業が続く。
*(Mesometrium) | *子宮支帯 | 419 ![]() | ||
*Vesico-uterine lig.(Ant. lig.) | *前部子宮支帯 | 419 ![]() | ||
Cardinal lig. | 基靭帯 | 419 ![]() | ||
*Recto-vaginal lig.(Post. lig.) | *後部子宮支帯 | 419 ![]() |
骨盤神経叢 や上膀胱動脈 を温存しながら、尿管 を膀胱 につなげる(Fig.397)。蔓状に発達した静脈は、視野を塞ぐようならある程度刈り詰めていい。詳細は切半してから十分にできるから、今は無理しないこと。ここでは位置関係の把握に重点を置く。
Pelvic plexus | 骨盤神経叢 | 456 ![]() ![]() | ||
(Inderior hypogastric plexus) | (下-下腹神経叢) | 456,344 | ||
Superior vesical artery | 上膀胱動脈 | 414 | ||
Ureter | 尿管 | 397 | ||
(Urinary)Bladder | 膀胱 | 397 |
総腸骨動脈 を確認し、さらに外・内腸骨動脈 を剖出する(Fig.410)。周囲のリンパ節 は子宮癌 取扱い規約で重要なもので、可能な範囲で残しておく(Fig.414)。特に閉鎖動脈根部 で発達する。内腸骨動脈の枝をたどり、基靭帯 の中に入る血管を確認する(Fig.405)。膀胱 に至る血管も剖出する。視野が狭いので、できる範囲で行ない無理はしない。診断や手術の場合と同じように、原位置でオリエンテーションを付けるのが目的である。
以下の項目で、確認できたものをチェックせよ。残りは骨盤を切半してからでよい。
Common iliac artery | 総腸骨動脈 | 410 | ||
Int./Ext. iliac artery | 内/外腸骨動脈 | 410 | ||
Obturator artery | 閉鎖動脈 | 410 | ||
Vagina | 腟 | 405 | Sheide | |
Rectouterine pouch | 直腸子宮窩 | 394 | Excavatio rectouterina | |
(Douglas') | (ダグラス窩) | |||
*Greater vestibular gl. | *大前庭腺(バルトリン腺) | 430 |
腟内 に綿が詰めてあれば除去し、指で内診してダグラス窩 Douglas' の位置を腟から確認してみる。外陰部では慎重に皮膚ないし粘膜を剥がして、大前庭腺(バルトリン腺 Bartholin's) を探してみる(Fig.430)。綿で圧迫されて原型を留めていないことが多い。腟の内診で、子宮腟部の突出が確認できる場合は、供覧するので報告する。
分娩時 に、子供が頭から出ていく通路(産道)の中で、どこが広いか狭いかを考えてみる(Fig.382-389)。児頭は前後に長い。骨盤 の前後径と横径を比較して、長い方に児頭の前後径を合せて移動するしかない。だから児頭は回旋する。 産道としての骨盤:みなさんに比べて数値が小さ過ぎる?(82年のデータ)
前後径 | 横径 | |||
骨盤入口部 | 岬角中央-恥骨結合後面中央上縁 | 11cm | 13cm | 左右最大距離 |
骨盤潤部 | 2-3仙椎間-恥骨結合後面中央 | 13.5 | 12.5 | 寛骨臼内面中央間 |
骨盤峡部 | 仙骨下端-恥骨結合下縁中央 | 11.5 | 10.5 | 坐骨棘間 |
骨盤出口部 | 尾骨先端-恥骨結合下縁中央 | 11.5 | 11 | 坐骨結節間 |