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館長ご挨拶   〜新型コロナパンデミックと標本館〜

 2022年度から標本館館長を拝命しました。どうぞよろしくお願いいたします。
 2020年初頭から始まった新型コロナウイルスパンデミックは、3年経った今でも終息することなく、人間界に大きな傷跡と社会の変革をもたらし続けています。多くの人の命を奪ったこのウイルスは、改めて新興感染症の脅威を人間に知らしめ、人間社会の脆さを露わにしました。まさか、100年前に大流行したスペイン風邪の時と同じ光景が21世紀の現代で繰り広げられることになるとは想像さえしていませんでした。しかし、発達した科学技術のおかげで被害を最小限にくい止めることができたことも事実です。その4大技術を挙げるならば、PCR技術とO2センサーとインターネットとmRNAワクチンではないでしょうか?
 PCR技術によって、微量のウイルスであっても迅速かつ鋭敏に検出できるようになり、感染拡大の早期抑制に大きな役割を果たしました。O2センサーは、非侵襲的に血液酸素分圧をモニターすることのできる装置で、重症化患者の早期発見に重要な役割を果たしました。また、インターネットのおかげで人類はウイルスの情報と感染の広がりを迅速に共有することができ、非接触型コミュニケーションによって社会を維持することができました。そして、mRNAワクチンは膨大な数の人命を救いました。振り返ってみると、私たちは実に多くのState-of-the-artテクノロジーによって救われたことに気づきます。
 ポストコロナ時代に重要なことは、将来必ず来襲するはずの新たなパンデミックに備えて、COVID-19に立ち向かった人類の知恵と経験をアーカイブし、組織化することではないでしょうか。このメモリーこそが、人類に免疫を附与する貴重な情報源です。標本館というのは、まさに医学情報アーカイブの格納庫であり、温故知新の場を提供するセンターであると言えます。不幸にもCOVID-19で亡くなられた患者さんの病理解剖によって得られた貴重な標本や情報を可能な限りアーカイブすることなどは、標本館に課された重要な使命であると思います。歴史的なCOVID-19パンデミックを後世に伝えるために、皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。


鳥越 俊彦
医学部 病理学第一講座 教授

 

 

 

 

 


 

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