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収蔵標本解説


 第48号(2020年 3月発行)

『Wada-Cutter弁』

浅井 康文
札幌医科大学名誉教授

 札幌医科大学胸部外科初代教授である和田壽郎先生が「船の舵のように血流をスムーズに制御出来る、蝶番がなく、中心流でselfwashingする弁」を北海道大学工学部の有江幹夫教授と考案し、1966年に米国Cutter社のWada-Cutter弁(W-C弁)が誕生した。それまでなかった弁の構造であったことから、「非蝶番(ヒンジレス)弁」と命名された。1969年4月、ヒューストンのベイラー医科大学でクーリー博士により、世界で初めて臨床応用された完全植込み型人工心臓(Liotta)に用いられ、W-C弁4個を内蔵した人工心臓は、ワシントンD.C.にあるスミソニアン博物館に展示されている。この弁はこれまでのボール弁に変わる、傾斜ディスク弁の開発の先駆けとなり、米国のクリストファー外科学書に写真入りで掲載された。当時の材質はテフロンのため耐久性の問題(hinge wear)などで使用されなくなったが、現在の宇宙産業から生まれた抗血栓性のパイロライト・カーボン材質が使用出来ていれば、結果は変わっていたかも知れない。

   

 

 


 

 

 

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