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すでに肘窩で剖出した皮神経や皮静脈を左右に寄せて残しながら、メスで前腕筋膜 を遠位から近位に向けて除去し、筋の輪郭を明らかにする。腱の間を清掃し、遠位から近位に向けて各筋を浮かせて輪郭をより明確にする。深部にある血管・神経を損傷しないように注意する。前腕筋膜は手くびから上方に剥がして、上腕二頭筋に付けて残しておく(Fig.48)。メスで前腕筋膜を剥がす時、肘近くで前腕筋の筋質が若干剥がれるのはやむをえない。
前腕筋膜は腱膜状で強靱である。強靱な上腕二頭筋停止腱膜 が前腕近位内側に巻きついている(Fig.60)。この腱膜によって、上腕二頭筋 の回外作用 が得られる。二頭筋の力こぶは回外位でさらに大きくなる。食物を口に運ぶ時に役に立つことを考えてみよ。
| Cubital fossa | 肘窩 | 40 | |
| Antebrachial fascia | 前腕筋膜 | 48 | |
| Biceps tendon (Biceps aponeurosis) | 上腕二頭筋停止腱(腱膜) | 60 | |
| Supination | 回外 | | |
橈骨 、そして尺骨 の肘頭 に触れる。ここで 前腕浅層の筋群の配置を確認する(Fig.60,69)。各筋の同定は後述の前腕屈側(p.
)及び前腕伸側と関節の開放(p.
)の節で行う。屈筋群 は上腕骨内側上顆 に収斂し、伸筋群 は外側上顆 に収斂している。腕橈骨筋 および長短の橈側手根伸筋 は、肘の橈側で上腕にはみ出して区別できる一群をなしている(Fig.55,70)。
手くびでは屈筋支帯 ・伸筋支帯 を温存する(Fig.73,89)。腱が指まで行くか手関節 付近で終わるかが分かれば、筋の同定は容易になる。浅層の解剖を手掌・手背まで進める。
| Radius | 橈骨 | 110 | |
| Ulna | 尺骨 | 108 | |
| Olecranon | 肘頭 | 69 | |
| Humerus | 上腕骨 | 104 | |
| Medial/Lateral epicondyle | 内側/外側上顆 | 60,69 | |
| Brachioradialis muscle | 腕橈骨筋 | 55 | |
| Extensor carpi radialis longus/brevis muscle | 長/短橈側手根伸筋 | 55 | |
| Flexor retinaculum | 屈筋支帯 | 89 | |
| Extensor retinaculum | 伸筋支帯 | 73 | |
| Wrist joint | 手関節 | 126 | |
<肘関節を動かす筋の整理(作用別)>
屈曲 | 上腕二頭筋、上腕筋、腕橈骨筋 |
伸展 | 上腕三頭筋 |
回内 | 方形回内筋、円回内筋、橈側手根屈筋 |
回外 | 回外筋、上腕二頭筋、長母指外転筋 |
手背 ではまず伸筋支帯 を確認し、以後できるだけ温存する。透明な腱鞘(滑液鞘) を通して伸筋腱 が見えてくる。伸筋腱鞘 は6管に分れているとされており、解剖を急がずにゾンデを入れて腱鞘の広がりを確認する(Fig.77)。
腱鞘を除去して腱を露出させ、まず第1、3指で確実に指先まで追求する。指の血管・神経も合せて剖出していく。
母指 のつけねに生じるタバチエール(スナッフボックス=タバコ入れ) という凹みでは、これを構成する腱をきちんと剖出する(Fig.75,79)。
タバチエールの底(ないし近傍)で橈骨動脈 を確認し、第一背側骨間筋 に進入していくまで追求する。手背から指に行く橈骨動脈枝は見られるか。
最後に伸筋支帯 を切断して伸筋腱 を完全に露出させる。伸筋腱は切断しない。
| Dorsum of hand | 手背 | 77 | |
| Extensor retinaculum | 伸筋支帯 | 79 | |
| Synovial(Tendon) sheath | 滑液鞘(腱鞘) | 77 | |
| Tendon of extensor muscles | 伸筋腱 | 77 | |
| Digital arteries/nerves | 指の動脈/神経 | 76 | |
| Radial artery | 橈骨動脈 | 79 | |
| First dorsal interosseous muscle | 第一背側骨間筋 | 79 | |
<手関節を動かす筋の作用別整理>
背屈 | (総)指伸筋、(長・短)橈側手根伸筋 |
掌屈 | 浅指屈筋、深指屈筋、尺側手根屈筋 |
尺屈(尺側偏位) | 尺側手根伸筋、尺側手根屈筋、(総)指伸筋 |
橈屈(橈側偏位) | 長橈側手根伸筋、長母指外転筋、長母指伸筋 |
手掌 の皮下組織を除去して手掌腱膜 の輪郭を明らかにする(Fig.80)。母指球 ・小指球 という手掌両側にある筋のふくらみには、まだ触れない。手掌腱膜を剖出する過程で短掌筋 や正中神経手掌枝に気付くかも知れない。
手掌腱膜が確認されたら、今のうちに正中神経反回枝 (Fig.89)を助けておく。母指球筋 の支配神経で走行は浅い。手掌腱膜と母指球の境界を丁寧に解剖して探す。これを損傷するとQOL を著しく損ねる。手掌の創(傷のこと)をナートする(縫う)時に損傷することがある。
屈筋支帯 を剖出しながら、長掌筋腱 と手掌腱膜 が連続していることを確認する(Fig.82)。長掌筋腱がはがれてもよい。
手掌腱膜の遠位縁で指に行く血管・神経を捉え、指先に向けて剖出する。まず第1、3指で確実に行なっておく。
手掌腱膜をメスで遠位から剥離して近位(手くび)に向けて反転する(Fig.80)。ぬるぬるした透明な腱鞘 (滑液鞘) に包まれた屈筋腱 が見えたら、伸筋腱鞘同様、解剖を急がずにゾンデを入れて腱鞘の広がりを確認する(Fig.81)。指の屈筋腱 が通るPIPから手掌中央付近の範囲では、20年前までは手術が困難で no man's land と呼ばれた。現在は区画 の理解が深まり、積極的に手術されるようになった。
| Palm | 手掌 | 88 | |
| Palmar aponeurosis | 手掌腱膜 | 80 | |
| Thenar | 母指球 | 82 | |
| Hypothenar | 小指球 | 82 | |
| *Palmaris brevis muscle | *短掌筋 | 80 | |
| Recurrent branch of median nerve | 正中神経反回枝 | 89 | |
| Flexor retinaculum | 屈筋支帯 | 89 | |
| Tendon of palmaris longus muscle | 長掌筋腱 | 82 | |
| Synovial(Tendon) sheath | 滑液鞘(腱鞘) | 81 | |
薄い屈筋支帯 を3-4cm幅で(同時に豆鈎靭帯 も)切除して、強靱な横手根靭帯 との間の狭い空間(ギヨン管 Guyon's =尺骨神経管) を開放し、尺骨動脈・神経 を剖出する(Fig.89)。屈筋支帯と横手根靭帯を区別しない解剖学教科書が多く、しばしば横手根靭帯を含めて屈筋支帯と呼ぶ。
手掌 では滑液鞘 を除去しながら腱、血管、神経を剖出していく。浅掌動脈弓 はほとんど尺骨動脈枝である(Fig.88,89)。多数の深部受容器官が分布する虫様筋 も温存する(Fig.83)。
手掌の剖出がある程度終わったら、横手根靭帯を完全に切除して手根管 を広く開放する。これによって、前腕から連続的に屈筋腱 と正中神経 を観察できようになる。
手根管の壁を作る手根骨 を確認する(Fig.112,114,137)。豆状骨 、舟状骨結節 、有鈎骨鈎 などに触れる。手根管症侯群 については整形外科教科書を調べてみる。
| Carpal tunnel, Flexor tunnel, Carpal canal | 手根管 | 83 | |
| Flexor retinaculum | 屈筋支帯 | 82 | |
| *Pisohamate ligament | *豆鈎靭帯 | 127 | |
| Transverse carpal ligament | 横手根靭帯 | 89 | |
| Ulnar artery/nerve | 尺骨動脈/神経 | 89 | |
| Superficial palmar arch | 浅掌動脈弓 | 89 | |
| Lumbrical muscle | 虫様筋 | 83 | |
| Median nerve | 正中神経 | 89 | |
| Pisiform bone | 豆状骨 | 112 | |
| *Tuberosity of scaphoid bone | *舟状骨結節 | 112 | |
| *Hamulus of hamate bone | *有鈎骨鈎 | 112 | |
前腕の筋は屈側 と伸側に分けられるが、両側を同時に浅層から順に同定しながら解剖を進める(伸側は p.
)。その際、多くの大学では次々に腱を切断するが、その必要はない。復習のためなるべく残そう。
前腕屈筋 は浅深2層からなる。まず腕橈骨筋 と浅層の3筋(尺側手根屈筋・橈側手根屈筋・長掌筋) の輪郭を明らかにする(Fig.60)。腕橈骨筋は屈筋だが屈側ではなく、伸側の筋群に分類されている。これらの筋を浮かすと、尺骨動脈 と尺骨神経 、橈骨動脈 と橈骨神経浅枝 が、それぞれ尺側と橈側に伴走して見つかる(Fig.63)。生体の尺骨動脈と橈骨動脈を脈診してみよ(付図 p.
)。橈側手根屈筋腱だけを切断して筋を近位に反転、筋の内面で橈骨動脈と橈骨神経浅枝を剖出する。
| Brachioradialis muscle | 腕橈骨筋 | 60 | |
| Flexor carpi ulnaris muscle | 尺側手根屈筋 | 60 | |
| Flexor carpi radialis muscle | 橈側手根屈筋 | 60 | |
| Palmaris longus muscle | 長掌筋 | 60 | |
| Ulnar artery/nerve | 尺骨動脈/神経 | 63 | |
| Radial artery/nerve | 橈骨動脈/神経 | 63 | |
| Superficial branch of radial nerve | 橈骨神経浅枝 | 63 | |
浅指屈筋 、円回内筋 を同定したら(Fig.61)、前腕屈筋深層へのアプローチのため、浅指屈筋と円回内筋の橈骨付着を剥がして、橈骨 から前腕屈筋浅層を浮かし(ここが手技のポイント)、浅指屈筋の深側にある正中神経 や血管を剖出する(Fig.64)。
深側では、深指屈筋 、長母指屈筋 、方形回内筋 を同定する(Fig.62)。深指屈筋と長母指屈筋の間で正中神経枝の前骨間神経 が見えるはずだ(Fig.65)。
| Flexor digitorum superficialis muscle | 浅指屈筋 | 61 | |
| Pronator teres muscle | 円回内筋 | 61 | |
| Median nerve | 正中神経 | 89 | |
| Flexor digitorum profundus muscle | 深指屈筋 | 62 | |
| Flexor pollicis longus muscle | 長母指屈筋 | 62 | |
| Pronator quadratus muscle | 方形回内筋 | 62 | |
| Anterior interosseous nerve | 前骨間神経 | 65 | |
腕神経叢から上腕骨内側上顆 まで尺骨神経 が剖出されていることを確認する。尺骨神経は尺側手根屈筋 の起始部を貫通する(Fig.66)。尺側手根屈筋の上腕骨起始を注意深く剥がして、内側上顆直下の尺骨神経溝=肘部管 を開放し、尺骨神経を前腕につなげる。この過程で尺側手根屈筋枝が見つかる。肘部管も障害を受けやすい部位だ。
同じく正中神経 を上腕から肘窩 にたどると、円回内筋 に埋没していく(Fig.64)。円回内筋の橈骨付着を剥がして正中神経を前腕につなげる。前腕では正中神経は浅指屈筋 の深側をまっすぐに手根管 まで走行している(Fig.65)。この過程で円回内筋枝やその他の前腕屈筋の支配神経が見つかる。
橈骨神経深枝 は、回外筋 を橈骨 から剥がして追求する(Fig.65)。前腕伸側の筋(p.
)を同定して筋間を広げると深枝が見つかる。筋の発達が良くて間を分け難い時は、スタッフの指導のもと、前腕伸筋を上腕骨外側上顆 から剥離し、神経を追跡する視野を広げる。
現段階で全体像が見えない構造は尺骨動脈 だけであろう。尺骨動脈は円回内筋 の深側にいったんもぐりこむ。肘窩の底で、尺骨動脈は総骨間動脈 を放ち、さらに総骨間動脈は屈側深層に向かう前骨間動脈 と伸側に向かう後骨間動脈 に分かれる(Fig.65)。肘窩では、この点が浅層を走る橈骨動脈と異なる。円回内筋を必要の範囲でくずし、後骨間動脈を前腕伸側につなげる。
| Medial epicondyle | 内側上顆 | 66 | |
| Supinator muscle | 回外筋 | 62 | |
| Common interosseous artery | 総骨間動脈 | 65 | |
| Anterior/Posterior interosseous artery | 前/後骨間動脈 | 65 | |
復習のため再度、前腕屈側 から手掌 まで、腱と血管・神経を連続させ同定する。
指の屈側では腱鞘 を開いて浅指屈筋腱 と深指屈筋腱 の交差状態を剖出する(Fig.82,84)。腱鞘は滑液鞘 に裏打ちされている。中手指節関節MP 、近位・遠位指節間関節PIP/DIP の各関節に対応して、腱鞘(線維鞘)は輪状の線維(プーリー )によって補強されている。腱のヒモと呼ばれる固定装置は分かるか。浅指屈筋腱と深指屈筋腱の停止部位を確認する。指に至る神経を麻酔するには(オーベルスト麻酔 Oberst )、手掌・手背各2本ずつ計4本を麻酔する必要があることを確認する(Fig.91,139)。
| Synovial(Tendon) sheath | 滑液鞘(腱鞘) | 81 | |
| Tendon of flexor digitorum superficialis muscle | 浅指屈筋腱 | 82 | |
| Tendon of flexor digitorum profundus muscle | 深指屈筋腱 | 82 | |
| Phalanx | 指節(骨) | 128 | |
| Metacarpophalangeal joint(MP) | 中手指節関節 | 128 | |
| Proximal/Distal interphalangeal joint (PIP/DIP) | 近位/遠位指節間関節 | 128 | |
前腕屈筋とその腱の解剖が終了し、腱が自由に動かないと深部への視野が広がらない。場合によっては、浅・深屈筋腱を一部切断して視野を作る必要があるかも知れない。
母指球 の解剖に先立って正中神経反回枝(Fig.89) を再確認する。手掌腱膜の剥離の際に剖出したはずだ(p.
)。
| Thumb | 母指 | 82 | |
| Thenar muscles | 母指球筋 | 82 | |
| Recurrent branch of median nerve | 正中神経反回枝 | 89 | |
前腕から筋の輪郭を確認しながら、母指球 におよそ3層の筋(母指外転筋 、短母指屈筋 、母指対立筋 )を区別する(Fig.82,83)。しかし、深層では境界が不明瞭だ。以上の過程で長母指屈筋腱 の手掌における走行を明らかにする。橈骨動脈枝 が母指球筋を貫通している場合は、深くたどって手掌深部の解剖につなげる(Fig.89)。
| *Abductor pollicis muscle | *母指外転筋 | 82 | |
| *Flexor pollicis brevis muscle | *短母指屈筋 | 82 | |
| *Opponens pollicis muscle | *母指対立筋 | 83 | |
| Tendon of flexor pollicis longus muscle | 長母指屈筋腱 | 83 | |
小指球筋 の解剖は尺骨神経 を追求しながら行なう。小指球 にもおよそ3層の筋(小指外転筋 、短小指屈筋 、小指対立筋 )を区別する(Fig.82,83)。手掌 の深部に入る尺骨神経を確認する(Fig.89)。
| Little finger | 小指 | 82 | |
| Hypothenar muscles | 小指球筋 | 82 | |
| Ulnar nerve | 尺骨神経 | 89 | |
| *Abductor digiti minimi muscle | *小指外転筋 | 82 | |
| *Flexor digiti minimi brevis muscle | *短小指屈筋 | 82 | |
| *Opponens digiti minimi muscle | *小指対立筋 | 82 | |
手掌の深層の母指内転筋 の輪郭を確認する(Fig.83)。骨間筋 や母指球筋との境界がはっきりしないところがあって、昔から議論になっているが、今は細部にはこだわらない。
橈骨動脈 は、手くび橈側の凹みタバチエール 付近で捕まえてあるだろうか(Fig.79)。小指球筋の解剖で捕まえた尺骨神経 と、タバチエールの橈骨動脈を深部に追求する。これら血管・神経を母指内転筋の深側(手背側)まで追及する。浅掌動脈弓 は主に尺骨動脈枝から、深掌動脈弓 は主に橈骨動脈枝から構成される(Fig.89,90)。浅掌動脈弓ほど太くはない。
最後に骨間筋 だが、少なくとも第一背側骨間筋(Fig.86)だけは丁寧に剖出して起始停止と尺骨神経支配 を確認する(Fig.90)。
| *Adductor pollicis muscle | *母指内転筋 | 83 | |
| Radial artery | 橈骨動脈 | 79 | |
| Superficial/Deep palmar arch | 浅/深掌動脈弓 | 89,90 | |
| First dorsal interosseous muscle | 第一背側骨間筋 | 86 | |
前腕伸側 で腕橈骨筋 と浅層の5筋を順に同定をして手背の停止腱を確認する(Fig.69,70)。伸筋腱と連続している指背腱膜 (Fig.84)は、むやみに剥離しないで、骨間筋の停止を観察するまで温存する。
| Brachioradialis muscle | 腕橈骨筋 | 69 | |
| Extensor carpi ulnaris muscle | 尺側手根伸筋 | 69 | |
| Extensor digiti minimi muscle | 小指伸筋 | 69 | |
| Extensor digitorum muscle | 指伸筋 | 69 | |
| Ext. carpi rad. long./brev. m. | 長/短橈側手根伸筋 | 70 | |
| Extensor expansion | 指背腱膜 | 84 | |
肘頭近くの伸筋起始腱膜をメスで削り取ると、各伸筋の間に分け入ることができる。手背から肘頭(外側上顆)に向けて部分的に伸筋を浮かしながら、橈骨神経深枝 と後骨間動脈 を剖出する。回外筋 を橈骨から剥がすと視野が広がる(Fig.73,74)。
| Olecranon | 肘頭 | 73 | |
| Lateral epicondyle | 外側上顆 | 73 | |
| Deep radial nerve | 橈骨神経深枝 | 74 | |
| Posterior interosseous artery | 後骨間動脈 | 74 | |
| Supinator muscle | 回外筋 | 72 | |
スナッフボックス snuff box(昔はタバチエール と言った)(Fig.90)を作る筋を確認する(Fig.72,75)。
| Extensor pollicis longus muscle | 長母指伸筋 (尺側縁) | 72 | |
| Extensor pollicis brevis muscle | 短母指伸筋(橈側縁) | 72 | |
| Abductor pollicis longus muscle | 長母指外転筋 (橈側縁) | 72 | |
| Extensor carpi radialis longus/brevis muscle | 長/短橈側手根伸筋(へこみの底) | 72 | |
肘筋 を同定し(Fig.72)、三角をしたこの筋の輪郭に沿って骨まで深くメスを入れ、肘関節 を開放する。3つの関節面が確認できるまで深くメスを入れる。回内・回外 の際の骨の動きを観察する(Fig.116-120)。太い血管・神経を切らないように注意しながら、上腕骨外側上顆 、内側上顆 、肘頭 の輪郭をメスで明らかにする。
近位橈尺関節 の脱臼(肘内障とよぶ) の整復について示説を受ける。しばしば現場で遭遇する子供の脱臼で、橈骨輪状靭帯から橈骨頭が抜ける。ごつごつした骨折の痕跡が見つかることもある。上腕骨顆上骨折 は、小児で最も多い骨折の一つである。腕尺関節 、腕橈関節 、近位橈尺関節の3部分から肘関節 が構成されていることがわかるだろうか(Fig.116-120)。
| *Anconeus muscle | *肘筋 | 72 | |
| Elbow joint | 肘関節 | 117 | Articulatio cubiti |
| Humeroulnar joint | 腕尺関節 | 119 | |
| Humeroradial joint | 腕橈関節 | 119 | |
| Proximal radioulnar joint | 近位橈尺関節 | 120 | |
| Pronation/Supination | 回内/回外 | | |
| Humerus | 上腕骨 | 104 | |
| Medial/Lateral epicondyle | 内側/外側上顆 | 104 | |
手背 では伸筋腱 と指背腱膜 (Fig.84)を側方に寄せて靭帯を除去し、手根骨 を手背から露出させる。特に臨床で重要な舟状骨 、月状骨 を確認する(Fig.112)。
手関節 も手背に続けて開放し、関節円板(手関節三角線維軟骨複合体) と橈骨 ・尺骨 の関係を見ながら橈骨手根関節 、遠位橈尺関節 を確認する(Fig.130)。
| Extensor expansion | 指背腱膜 | 84 | |
| Carpal bones | 手根骨 | 112 | |
| Scaphoid | 舟状骨 | 112 | |
| Lunate | 月状骨 | 112 | |
| Wrist joint | 手関節 | 130 | |
| Radiocarpal joint | 橈骨手根関節 | 130 | |
| Distal radioulnar joint | 遠位橈尺関節 | 130 | |
| Articular disc | 関節円板 | 128 | |
1-2本の指で指背腱膜 と骨間筋 を剥がし、MP、PIP、DIP を手背側から開放する(Fig.128)。第1指の手根中手関節 も手背から開放し、鞍関節 であることを確認する(Fig.128)。各指節骨 を分離してもよい。
最後に1、2指でいいから爪 を剥がして、爪床 の構造を理解する(Fig.143)。爪床の炎症を慣用的にpanaritium(ひょう疽) という。日常臨床で非常に多い。
| Interosseous muscles | 骨間筋 | 86 | |
| Metacarpophalangeal joint (MP) | 中手指節関節 | 128 | |
| Proximal/Distal interphalangeal joint (PIP/DIP) | 近位/遠位指節間関節 | 128 | |
| Carpometacarpal joint | 手根中手関節 | 130 | |
| Phalanx | 指節(骨) | 128 | |
| Nail | 爪 | 143 | |
| Nail bed | 爪床 | 143 | |
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