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腋窩の内側壁:前鋸筋の処置  (Fig.252,253,630)

背部の解剖で菱形筋の剖出と起始切断が終了していれば(p.gif)、今や肩甲帯の動きを制限する構造は前鋸筋 だけである(Fig.630)。肩甲挙筋 はまだ肩甲骨に付いていてもよい(Fig.629)。前鋸筋の外面を清掃しながら、肋間神経外側皮枝 やタテ方向に走る血管を剖出する(Fig.29)。胸腹壁静脈 の他にもタテに走る太い静脈がある。乳房 が大きい場合は、難渋するが、メスは使わない。 

Rhomboid muscle 菱形筋 629
Serratus anterior muscle 前鋸筋 252
Levator scapulae muscle 肩甲挙筋 629
Thoracoepigastric vein 胸腹壁静脈 29
Breast 乳房 6 Mamma

乳房の血管  (Fig.15)を整理しておく。乳房 の動脈は外側乳腺枝内側乳腺枝に分けられる。内側乳腺枝は主に内胸動脈 の穿通枝由来で、肋間神経前皮枝 と共に前胸壁に出現する。外側乳腺枝は、一般には外側胸動脈 (Fig.19)の枝と理解されている。しかし確かに乳腺枝も出すが、前鋸筋に接して走行する深い外側胸動脈の他に、腋窩動脈 から直接分れる枝(下胸筋動脈浅胸動脈)や胸肩峰動脈 枝が乳房に分布している(Fig.23,30)。乳房の所属リンパ管系も、これらの血管と共に腋窩及び上縦隔(p.gif)に至る。この過程で乳房が剥離・除去されても差し支えない。最後に、乳頭 を含む矢状断を行ない、内部に管腔が存在するか、乳腺 が残存しているか、乳房を区切る結合組織索及びクーパー靭帯 (付録「筋膜総論」p.gif 参照)の存在を確認する(Fig.8-10)。  

Lateral/Medial mammary (arterial) branch 外側/内側乳腺枝 15 tex2html_wrap_inline9403
Internal thoracic artery 内胸動脈 23,162
Lateral thoracic artery 外側胸動脈 23,24
Axillary artery 腋窩動脈 23
Thoracoacromial artery 胸肩峰動脈 23,30
Nipple 乳頭 9
Mammary gland 乳腺 9

前鋸筋 の外面がある程度きれいになったら、ライヘを傾けながら前鋸筋の広がりを改めて確認する(Fig.21)。この筋と外閉鎖筋 は、解剖しながら確認しないとイメージが浮かばない。多くのライヘでは背部からの作業の際に(p.gif)、前鋸筋と広背筋 を一緒に動かしていると思うが、今のうちに前から、前鋸筋広背筋の境界(噛み合い)を明らかにする。背部からの作業を終えていれば、広背筋は胸背動脈神経 と共に腋窩 にぶら下がるはずだ(Fig.29)。

最後に前鋸筋  の外面に張りついて走行する支配神経(長胸神経 )を剖出する(Fig.29)。昔は乳房切除 に伴う腋窩リンパ節郭清    の際に、この神経を切断して障害を残すことがあった。今なら言語道断であろう。同神経を確認できたら、神経の経過よりも前方、つまり肋骨付着に近い部位で前鋸筋を切断する。視野が悪いが、できれば前鋸筋の上部筋尖も第12肋骨から剥がしておく。なお、作業中に神経よりも後方で前鋸筋が裂けてしまったら、わざわざ筋を肋骨から剥がさずに肩甲骨から剥がせばよい。 

Serratus anterior muscle 前鋸筋 21
Latissimus dorsi muscle 広背筋 21
Thoracodorsal artery/nerve 胸背動脈/神経 29
Long thoracic nerve 長胸神経 29
Axillary (lymph) nodes 腋窩リンパ節 19


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Akiko Oshiro
1998年01月19日 (月) 16時56分03秒 JST