2008年12月26日


2008年の終わりと2009年の始まりのご挨拶

 

札幌医科大学 分子医学研究部門 教授 濱田洋文

 



私たちの研究ですが、標的化の仕事が期待以上の大きな成果を生みました。概要は以下のWEBサイトにも公開しております。パラパラッとご覧いただければ幸いです。ここ10年間にわたって集中してきた標的化分子探索の仕事は、ユニークで大きなもの。これからも多くの成果が確実に期待できるものです。今後もたゆむことなく、着実に進めてゆきたいと考えています。

 

 


 

たとえば以下のWEBサイトをご覧ください。08/12/26

 

現在までの教育研究活動とその特色 <http://www.sapmed.ac.jp/~hhamada/page2-1-081215.htm>

 

主要論文15編の要約と被引用回数 <http://www.sapmed.ac.jp/~hhamada/page2-1-081210.htm>

 

標的化プロジェクト: 現在までの成果と今後の課題  <http://www.sapmed.ac.jp/~hhamada/page2-1-081125.htm>

 

腫瘍の特異的標的化を目指した遺伝子治療法の開発 Antibody-targeted selective gene delivery through FZ33 fiber-modified adenoviral vectors  <http://www.sapmed.ac.jp/~hhamada/page2-1-081107.htm>

 

肺癌の標的化プロジェクトに関しては: <http://www.sapmed.ac.jp/~hhamada/page2-1-050624.htm>

 

治療法開発のための研究スタンスに関しては: これ(難病で苦しむこと)を自然の摂理とはとらえず、あってはならない不条理、戦うべき敵と考える。 <http://www.sapmed.ac.jp/~hhamada/page2-1-050520.htm>

 


 

 いっぽうで、成果を実用につなげられるよう、そろそろ次の展開を模索すべき時期かとも感じています。私たちは現時点で、癌の固まりを標的化できる手段は(恐らく)樹立できましたので、次に着手する課題はこの固まりを現実にどうやって制御するかということだと感じます。非常にプリミティブな疑問ですけれど、たとえば、肺癌や膵癌。小指の先よりもずっと小さい癌の固まりでも、化学療法や放射線では全く治せないのです。メスを振るって周りの正常組織ともども大きく切り捨てる以外には、根治手段がありません。手術で取りきれない転移が見つかればほぼ絶望であることはよく知られています。

 私たちは「標的化はできる」という新技術を携えています。癌をどうやって小さくするかという課題に立ち向かって、この新技術を基盤として、実際に使える新兵器へと練り上げるかがこれからの仕事になりそうです。手がとても広いところ。多くの奇抜なアイデアも試してみるとよいのかもしれません。

 30年前の研究者もすでに同じようなことやっていましたから、古くさいこと考えるのはイヤ、ましてや古くさいことやって失敗するのはもっとイヤ、という人々には耐え難いようなプロジェクトでしょう。立ち止まって何もしないでもどんどん時間が過ぎてゆきそうな立ち位置です。優先順位を決める規範のための手がかりがほとんどないのです。

 私たちは、全く作用機序が同じとされているA酵素とB酵素とでどちらがこの膵癌を良く殺してくれるか、というタイプの素朴な実験から開始してみるつもりです。もしB酵素がA酵素よりも10倍も効き目が高いとすれば、迷わずB酵素を選ぶでしょう。「標的化」という新技術を手にしている以上、とりあえずは副作用をおそれる必要がなくなったからです。そこが標的化の手段を持っていなかった従前の研究者よりも優位に立てるポイントです。

 たといA酵素よりもはるかに良く効くB酵素を選んでも、その治療効果が癌細胞を殺すのに不十分な場合には、B酵素を改変してC酵素を作り上げることが課題となってくるかも知れません。最強のトキシンの創薬プロジェクトがなりたつかもしれません。


 

 

課題の多くを来年に引き継いでしまいますが、どうぞ皆さんも良い年の暮れ、そして良い新年をお迎えください。2009年もよろしくお願いいたします。

 

   濱田洋文